(株)ヒューマン・エッジ代表取締役社長・斧出吉隆のブログ -50ページ目

グローバル化の6つのステップ(その7)

外国人の方を自分の部下に持ったり、パフォーマンスの考え方を説明したりするときには、包括的な観点から「人事評価」や「能力開発」を捕らえておくことが、より納得性のある説明につながっていきます。

パフォーマンスマネジメントの3つの役割のうち、「人事評価」については日本でもいろいろなやり方でおこなわれているのでここでは説明を割愛させていただきますが、「キャリアマネジメント」と「モチベーションマネジメント」について少し詳しくご紹介したいと思います。

「キャリアマネジメント」という言葉は最近では大学での講座の名前になったり、リストラによるアウトプレイスメント(再就職支援)をおこなう際に転職のサポートとして「自分のたな卸し」という意味で使われたりしていますが、本来は「自分のキャリアを考える」という意味ではないかと思います。つまり、大前提として「自分の人生は自分で責任をもつものであって、決して会社が決めるものでもないし、他人の責任にできるものでもない」ということを理解して、自分にとってベストなキャリアを選択するという意味です。

グローバル化の6つのステップ(その6)

CHO協会が2008年の1月にまとめたレポート、「グローバル人的資源管理に関するアンケート調査の報告書においても、日本の多国籍企業は欧米の多国籍企業に比べると「経営理念のグローバルな統一性」と「文化的多様性の尊重」について、まだまだ取り組みが不十分である事が指摘されています。

国の違いや人種の違いなどをこえて、社員同士が共通の価値観や行動の原則を持ってお互いを尊敬できるような、その会社独自の価値観や理念を明確にし、行動のレベルまで落とし込む」というのは何もP&Gだけに限ったことではありません。私が以前、人事広報部長を務めていた「シンジェンタ・ジャパン」という会社でも2004年から2006年に掛けて同じような事を行いました。

具体的にはシンジェンタでは「Quest for Purpose」というチームが3ヶ月をかけて全世界の主要な国々、例えば日本や中国など、を訪問し、そこで主要な役割を担っている社員約30名とワークショップを行ったのです。そのワークショップでは、大きな模造紙に会社の歴史がどう変わってきたのか、現在はどの様な状況なのか、そして5年後はどのように変わるのだろうか?といったことを話し合い、それを「イラスト」でビジョンとして表すというようなワークショップでした。

「Quest for Purpose」のチームは全世界の資料を持ち帰り、まとめて整理し、本社のシニアエグゼクティブを集めて「シンジェンタ」という会社が何のために存在しているのかを議論するワークショップをファシリテイトしたのです。エグゼクティブ達はオフサイトの研修所に3日間缶詰になり、そして「Purpose」である「Bringing Plant Potential to Our Life」という会社の「Purpose」にたどり着いたのです。これは農薬会社のシンジェンタとしてはそのビジネスの可能性と、そこで働くプライドを一気に加速することになりました。

シンジェンタでは「Purpose」を支えるバックボーンとしてビジョンやリーダーシップなどの考えをとりいれて、全世界の社員に対して落とし込みのワークショップを行いました。HRとライン長がファシリテイターをおこないましたが、崇高な企業理念がこれほど感動を与えるものかと思うほど社員の思いやベクトルが一致してゆきました。

日本には企業理念を朝礼の挨拶のようにしている会社がたくさんあると思いますが、理念を行動レベルまで落とし込む作業が必要があるのでは無いでしょうか。

グローバル化の6つのステップ(その5)

前回、「P&Gジャパンでベストなことを実施しよう」という共通の理念の下に価値観の違う社員がひとつになったという話をしました。この動きは具体的な形に表れて1985年から1988年の3年間を「一大飛躍」プランと銘打って、ポスターを作り、4半期ごとにマネージャー全体会議を開催し進捗を報告し、年に一度の会議にはご家族も招待するなど、会社がひとつになって進んでいるという実感を味わえた時期でした。

この頃から、米国本社でも日本の躍進が認められるようになり、日本人が米国本社で、いわゆる研修ではなく、実際のマネージャーとして働くという事が始まったのです。まさに人材のグローバル化が始まったのでした。こういったことは日本対米国本社だけではなく、世界各地で起こり始めた現象だったようです。あるとき米国本社からきた人事の担当者と話しているとき彼が「P&Gは米国に本社はあるけど、もう決して米国人のための会社ではなくなってきている。」と話していたのを今でも覚えています。

P&Gの海外事業はずいぶんと前から始まっていたようですが、本当の意味で人材のグローバライゼーションという考え方ガが始まったのはこの頃ではないかと推測します。何故ならば、その後数年たって、P&Gでは全世界の社員にたいして、「Purpose, Value and Principle」(PVP)と呼ばれる企業理念と価値に基づく行動原則を提供したのです。これは企業がビジネスを行う際の行動の規範を示し、「人」に対するP&Gの考え方を明確に示したものでした。

大切なのはP&Gが何故こういった理念や行動原則を示す必要があったのかということです。その背景には間違いなく、人材の多様性を活かすことが、ビジネスを拡大することにつながる、という学習があったからだと思いますし、また、価値観の違う人材の集まりの中に、P&Gの価値観という共通の価値観をバックボーンとして植えつける必要があったからです。

世界中でこのPVPを落とし込むワークショップが始まりました。PVPがそれぞれの個人にとってどの様な意味を持つのかを問いかけることによって日々の行動も理念や原則と結び付けられるようになっていったのです。P&Gの社員ならば世界中のどこにいっても同じ価値観で行動する事があたりまえの状態が出来上がっていきました。グローバルでビジネスを展開しようとする会社にとって、世界で共通の価値観を持てるようにする事がグローバライゼーションでもっとも重要なことではないでしょうか。