(株)ヒューマン・エッジ代表取締役社長・斧出吉隆のブログ -49ページ目

グローバル化の6つのステップ(その9)

さて、今回は元に戻って「キャリアディスカッション」の話です。会社の仕組みとして個人のキャリアについてなぜ上司と部下が話し合う必要があるのでしょうか?それは会社の業績を向上させるためです。

私がP&G社で採用を担当していたとき(1985年から1990年頃まで)、学生にどのような仕事をしたいのかとたずねると、答えはほとんど同じでした。「営業」か「企画」をやりたいというのです。なぜそういう答えが返ってくるかといえば、その当時の企業の人材育成はまず営業をやって、現場の苦労を知ってから将来は他部門へ回す。その際に企画(何の企画かは定かではない)は社内の花形(なぜ花形なのかも定かではない)なので、とりあえず自分をアピールしておく事がよかろうという考えがあったからです。

つまり、残念ながら日本ではほとんどの場合「キャリア」に対して自分はどのようなスキルを持っていて、どのようなことをやる事がもっとも満足感が得られるのか、といったことを考えることもあまりしなかったであろうし、そういった機会もなかったのでないかと推測します。もちろん就職ガイダンスなどでこういった話を聞くことはあったとしても誰かときちんとキャリアについて話し合うことはしていないと思います。

キャリアについて話しをすることは上司と部下にとって次のようなメリットがあります。

1.自分がどのようなタイプの仕事に向いているのか。例えば、新しいプロジェクトに挑戦する事がすきなのか、コツコツと進めて答えが出るような仕事がすきなのか、等々を明確にする事ができる

2.将来自分が好きな仕事に就くために必要なスキルと経験に対して現状はどうなのか。十分にスキルと経験を持っているのか、それとも欠けているのは何なのかを明確にする事ができる

3.上司(会社の立場から)は個人がより満足度を持って仕事をするために何が必要で、どういったサポートができるのかが明確になる

こういった話し合いを持つことは個人がその会社で働くことの満足感を向上します。満足感が向上することによって個人はモチベイトされ、結果として業績もあがることになります。こういったキャリアディスカッションの考え方は日本の企業よりもむしろ欧米の企業でさかんに取り組まれていてその1番大きな理由は「スキルと経験をもった優秀な人材を社外に流出させない」ためです。以前は報酬で引きとめようとしていましたが、やはり人にとってもっとも重要なのは「お金」ではないのです。

グローバライゼーションの波

今週は先週からの続きの話をしなければならないのですが、最近テレビのニュースを見ていてとても考えさせられることがあったので、ちょっと予定を変更してその話をしてみたいと思います。

お隣の韓国の話なのですが、韓国では家族のあり方として、ある社会現象が顕著になってきているという内容でした。それは「母親と子供たちはアメリカやカナダへ留学して、父親は韓国に残り働いて、海外にいる家族のために仕送りをする。いわゆる単身赴任ならぬ、単身在韓をしているような家族が増えている」というニュースでした。

韓国では日本よりも少子化が進んでいるという話を聞いたことがありますが、何故このようなことが起こるのでしょうか?私の推測ですが、おそらく韓国という国の将来を不安視しての行動ではないかと思います。つまり、韓国の人にとって、将来は韓国の国内のビジネスや韓国語だけで生き延びていくことは難しいということを敏感に感じ取っているのではないでしょうか。国境を越えたビジネスのグローバル化は日本よりもはるかに身近にせまっている問題として、企業のレベルではなく、家庭のレベルでとらえているところが「凄い」と感じたところです。

私はこれまで多くの外資系企業の管理職のかたがたや、日経企業の管理職のかたがたと接する機会がありました。日本の会社でも最近は外国の方が勤務されているケースが増えてきましたので、おおっぴらには皆さん言われませんが、本音の部分では「外人が日本でビジネスをやるんだったら日本語でやるのが当然」とか「日本は外国とは違う、日本には日本のやり方があって、外人にはそれはできない」といったことを言われている人を数多く知っています。残念ながら日本では企業のレベルでもまだまだ、グローバライゼーションが身近な脅威として認識されていないようです。

私たちが好むと好まざるに関らず、確実にグローバライゼーションの波に私たちは飲み込まれれていきます。以前にも書きましたが、グローバルビジネスの共通言語は英語になっていますし、テクノロジーの進化で情報はボーダレスになっています。世界には英語でMBAを取得した人たちがゴロゴロいてMBAの専門用語を話しています。

日本は特別であるという意識を変えてグローバライゼーションと向き合わないと日本のビジネスは本当に世界から取り残されてしまうのではないでしょうか。

グローバル化の6つのステップ(その8)

キャリアマネージメントには大きく分けて「キャリアディスカッション」と「スキルアセスメント」があります。なんとなく日本では「キャリアマネージメント」というとすぐにリストラを連想される方がおられるかもしれません。残念なことに日本では、余剰人員を整理する際の教育活動の一環として「キャリアマネージメント」が認識される事が多かったのではないでしょうか?

「キャリア」という意味は「職業上の経歴」という意味合いですので、キャリアにいろんな単語がくっついて世の中に氾濫しています。日本においていつごろからキャリア・・・という言葉がはやり始めたのかは定かではありませんが、私がP&Gで採用のマネジャーをしていた1985年ごろには、社内で「キャリアパス」という言葉を使っていましたので、もうその頃には外資系の企業では使われていたのかもしれません。

キャリアパス、キャリアデベロップメント、キャリアカウンセリング、等々それなりになんとなく意味の分かることなのですが、根本となるキャリアに関する考え方は「キャリアは自分の責任で形成するもので、会社や上司が作って与えてくれるものではない」ということではないでしょうか?ジャック・ウェルチの言葉に「Control your destiny, or someone else do」とあるように、「自分の人生は自分で決めなさい、そうしないと誰かが取っちゃいますよ」っということになってしまいます。

ところが、戦後の日本では「高度経済成長」に代表される右肩上がりの経済成長がベースとなって、労働力の確保のために「終身雇用」や「社員を家族のように扱う」ことが一般的になってしまったのではないかと思います。そのため、会社にいれば会社がなんとかしてくれるという一般的な風潮が定着してしまい、キャリアについて社内で話し合う必要がなかったのではないでしょうか。もちろん個々の個人レベルでは、昔も今も自分のキャリアを真剣に考えている人たちは大勢いらっしゃいますので、あくまでも会社内の仕組みという点での話です。

先ほど、キャリアというのは個人が考える事を前提にしているということをいいましたが、それではなぜ、会社の仕組みとして「キャリアを話し合う」事が必要なのでしょうか?次回はこの点についてまとめたいと思います。