(株)ヒューマン・エッジ代表取締役社長・斧出吉隆のブログ -47ページ目

グローバル化の6つのステップ(その14)

今回はマクドナルドに戻って少し一般的な「モチベイション」を考えてみましょう。マクドナルドにはクルーと呼ばれるアルバイトの人達が全国に13万人います。2006年からマクドナルドでは「Voice Of McDonald」と呼ばれるクルー対象のタレント発掘キャンペーンが始まりました。これは全世界から歌の上手なクルーを選び出し実際にCDデビューさせようとするものです。

実は全世界の規模で見るとマクドナルドで人生最初のアルバイトを経験し、その後有名になった芸能人やスポーツ選手が大勢います。このことはアメリカで「My First Job」というシリーズで様々な有名人が「人生で最初の仕事はマックでおこなった」というCMでも流されていましたが、これまではどちらかというと結果的にそのような人が多く輩出されました、という捉え方でした。「Voice of McDonald」は逆に、会社から積極的にこういったタレントを探し出そうという試みで、2008年の世界大会には厳しい予選を勝ち抜いた日本の代表者も参加しました。

この試みによって全世界のクルー達のモチベイションが向上したのは言うまでもありませんが、こういったことは何もマクドナルドのような大規模な会社に限られているわけではありません。それぞれの企業にはものすごい特技を持った方々がたくさんおられます。例えば「エクセルの達人」。エクセルを使いこなせるか否かで生産性は大きく変わってきます。このような人財を見出し、認知し、有効に活用することで企業の生産性は上がり、社員のモチベイションは挙がり、会社への忠誠心が強まり、結果的にエンゲイジメントを高める事ができやすくなるのです。

モチベイションを高めてゆくには様々な理論があることは先に述べましたが、難しく考えることは必要なくて、これまでの私の経験をふまえて要約すると、モチベイションを向上させるには以下の2点を各企業の実情にあわせて用いる事が重要です。

●認めてもらえること。具体的には「褒めてもらえる」「大切な意思決定に参画できる」「一時的なインセンティブの提供(但しこれは長続きしない)」
●自分のタレント性を発揮できる機会があること。例えば仕事上では「仕事のスキルに対するコンテスト(エクセルの達人など)」「笑顔のコンテスト」など、また直接仕事にかかわるスキルではないが会社の財産として考えられるものでは「歌の上手さ」「料理」その他ユニークな特技

各企業でいろいろと工夫をして「エンゲイジメント」の高い組織を構築してください。

国際教養大学にて講義を行いました

あと1回、マクドナルドの例を取り上げて、モチベイションマネジメントを考えたいのですが、今回は国際教養大学 で講義をしてきましたのでこの事について少し書きたいと思います。

国際教養大学は秋田県立の大学として2004年に設立されました。1学年は約150名で、規模からすると小さな大学になります。しかし、この大学はユニークな試みを多く取り入れていて、ある意味将来の大学のあり方を示してくれているのではないかと思います。

具体的には、

●原則として全寮制であること
●必ず海外の提携大学に1年間「正規留学」(交換留学ではなく正規に入学試験を受けなければならない)して単位をとらないと卒業できない
●学内の授業はすべて英語でおこなう
●生徒から先生に対する評価をおこなう。つまり、教員は常に自分自身と磨かなければ学生から飽きられてしまう、というプレッシャーを感じている。

などがあげられます。

これまで、授業を英語でおこなうという試みをした大学はあったけれども、ここまで徹底した大学はここが始めてであると思われます。

今回、私はマイク・ラクトリン教授とともに、P&Gとマクドナルドに関するハーバード大学のケースを2回に分けておこないました。学生たちは4~5人がひとつのグループを作り、ケースに対する自分たちの視点をパワーポイントに要約して発表します。

今回対象の学生たちは4年生だったので、すでに1年間の留学を終えた人たちでした。英語のプレゼンも物怖じすることなく安心して聞くことができました。もちろん学生の集めた情報ですから限界はありますが、驚いたのは、彼らがケースには載っていない情報を自分たちで集め、それらをプレゼンに活かしていることでした。言われたことに対して正しい結論を出そうという、伝統的な日本の教育で育った学生たちが、大学での自律した教育を受けることによって、SWOT分析をおこなったり、4Pのマーケティング理論を当てはめたりと、自分から行動を起こし問題を解決するという姿勢がはぐくまれているのには正直驚きました。

ケーススタディには「これが正解」といったものはありません。したがって、学生たちもいろんな切り口でケースをとらえていたのですが、その視点はかなりユニークなもので、具体的にはもっとCSRに力を入れるべきだとか、組織を戦略的に変更すべきとか、いろいろと参考になる点はありました。

これからの人材はますますグローバル化と対峙しなければなりません。その中にあって、このような取り組みをおこなっている大学が存在するのは心強い限りです。

グローバル化の6つのステップ(その13)

今回はもう少しマクドナルドのアルバイトが何故集まるのか、そして何故長続きするのか?ということを具体的に見ていきましょう。

マクドナルドのアルバイトに求められているのは、

1.業務を正確に、そして素早く処理すること
2.お客様に対して笑顔でホスピタリティにあふれた接客をすること

これだけだと、マクドナルド以外のどこのレストランに行っても同じようなことを期待されていますから、何が違うのかがわかりにくいと思います。つまり、秘密はこういった理念にあるのではなく、理念をいかに実行しているか、その現場にあります。

その秘密の部分を考えてみると

■マクドナルドの社員は自分たちのオペレーションを支えてくれているのはアルバイトの社員であることを知っていますので、アルバイトの社員をとても大切にします。例えば、いつも気を使って声をかけたり、学校の話を聞いたりしています。アルバイトの人たちにとって「社員」さんは一応「偉い人」たちなのです。声をかけてもらうことは「認めてもらっている」ことにつながりますので「モチベーション」になるのです。

■マクドナルドのアルバイトが修得するオペレーションスキルは多岐にわたっていて、その一つ一つのスキルを修得することがアルバイトの人達のモチベーションにつながっています。クルールーム(アルバイトの事務所・休憩所)には大きな紙で、誰が、どのスキルをいつマスターしたのかが一目でわかるような表が貼ってあります。もし、新しいスキルをマスターした人がいれば、誰彼となく「○○さん、良かったね」と声をかけています。つまり、「スキルアップ」と「認められた」、といういうことから2重のモチベーションにつながっています。

■また、マクドナルドはアルバイトがアルバイトに仕事を教える仕組みを作っており、これもスキルアップの証としてのモチベーションになっています。

■そしてさらに、会社を上げてアルバイトの能力を発見しようとする取り組み(例えば Voice Of McDonald )があります。全世界のアルバイトから歌の上手い人を発掘してCDデビューさせることができるのです。こういったことはアルバイトの人達を応援し元気づけることになりますからモチベーションにつながっていきます。

他にもいろいろあるかもしれませんが、こういったことの繰り返しによって、アルバイトの人達が定着し、こうやって動機付けされた人達が新たなアルバイトの人達を連れてくるのです。