(株)ヒューマン・エッジ代表取締役社長・斧出吉隆のブログ -46ページ目

内なる国際化

今回は話題を少し変更して、2つのニュースをお知らせしたいと思います。

(株)ヒューマン・エッジ代表取締役社長・斧出吉隆のブログ-人材教育12月号まず、1番目のニュースは、私の論文が「人材教育」(JMAM)の12月号に掲載されました。タイトルは「グローバル人材育成のバイブル」です。この中にも書きましたが、私は1989年の「人材教育」に「P&G内なる国際化」というタイトルで論文を掲載いたしました。今回はそれから約20年たって、日本の内なる国際化は進んだのだろうか?ということから筆を進めました。



この論文の内容に関しては、これまでここのブログで書いたことが中心になっていますのでこのブログを応援してくれた方々にとってはあまり新しい内容が含まれていたわけではありませんが、何度か校正を重ねていくうちに、グローバル化にはやはり「企業理念の明確化」と「組織にいる全ての人がその理念にそって行動」することが絶対の条件であると強く感じました。組織力でグローバル化を進めてきた海外のグローバル企業と世界市場で競争してゆくには日本発のグローバル企業も組織力でグローバル化を進める必要があります。その根幹を成すのが「企業理念の明確化」と「組織にいる全ての人がその理念にそって行動」することだと思います。

実は2番目のニュースはそのことと深く関連しています。先日「エーザイ」の知創部の責任者でいらっしゃる高山千弘部長にCHO研究会で私が担当している「パフォーマンスマネジメント」でご講演いただきました。簡単にまとめると、知創部がおこなっていることは、会社の理念を現場レベルの活動にまで落とし込んで、「本当に患者の人たちにとって良いこと」とは一体何なのか?ということを、極端にいうならば「利益を度外視」してでも追求していこうというものです。

「えっ!」本当にそこまでやるんですか?と思わず聞き返してしまうほど、現場にこだわり、患者の立場に立った発想を会社の基本姿勢として決してぶれさせないこだわりがそこにありました。しかもこの活動を日本だけではなく、海外の支社にも展開し、海外の研究者が「エーザイ」の理念の実現に向けた活動(hhc 活動というそうです)に共感し、他の給与の高い会社を辞めて入社してくるというのは本当にすごい組織力だと驚嘆しました。

日本発のグローバル企業はまだまだ数少ないですが、明確な企業理念と行動の原則を持つことによって、組織的なグローバル化が推し進められることは間違いなく証明されています。トヨタやエーザイに代表されるこういった企業の行動がもっともっと多くの日本企業に広がってゆくことを期待します。

グローバル化の6つのステップ(その16)

古くから続いている日本の「老舗」企業では当然のことながら、その家の家系の方が事業を受け継いでいます。ではこういった老舗に必ず優れた後継者がいつもいるのでしょうか?勿論そんなに都合よく優れた後継者が次から次へ産み出されるはずはありません。私自身このようなデータを集めていませんが、もしデータを持っていらっしゃる方がおられれば是非教えていただきたいと思います。恐らく後継者を選ぶ際には本筋の家系から可能性のない人を消去しながら、それでも適任者がいないときには養子を迎えるといったことを選択していたのではないかと思います。こういったプロセスは老舗企業の「事業継続」のための知恵だったのではないでしょうか。

では現代の企業で失敗しない後継者作りとは「どういったプロセス」なのでしょうか?私は「優れた後継者を育成し続けているP&G」と「一代でエクセレント企業となった日本マクドナルドが後継者で苦労した」という2つのケースを見てきました。この2つの企業文化の違いから失敗しない後継者育成を推測したいと思います。

まず第1に必要なのは「優秀な人材」を採用して「育成」するということを会社の重要事項として経営課題に組み込むことです。P&Gでは私が採用のマネジャーをしていた1985年には、既にグローバルの人材リストが準備され、各国の部門本部長はグローバルの部門長に毎年次世代を担うことが出来る人材のリストを提出していました。勿論優秀な人材のリストを作る事自体は簡単なことですが、それを人事の役割としてではなく、会社の重要な経営課題としてとらえているかどうかが大切なのではないかと考えます。

ところがこの単純な作業がなかなか上手く機能しないのが現実です。具体的には初年度に後継者リストを作ったとしても翌年、翌々年も顔ぶれが変わらない。つまり新たな人材が出てこない、あるいは、組織の上層部のポジションが空かないために人材のパイプラインが詰った状態になっていたり、といったことがおこります。
こういった状態を避けるために子会社を作って人材を出向させたりするのですが、子会社は子会社で上層部が親会社から出向してくるために、結局はどこかにしわ寄せが起こる状態をくり返すことになってしまいます。

それではP&Gではどのようにしてこのような人材パイプラインの詰りを解決していたのでしょうか?次回はこの辺りの話を中心に進めていくようにします。

グローバル化の6つのステップ(その15)

日本の企業がグローバル化を実践してゆくために必要な3番目のステップ、つまり「海外で一般的なビジネスプラクティスに精通し、実践する」ということについて、「パフォーマンスマネジメント」はこれまでの話でお分かりいただけたと思いますので、今週からは「タレントマネジメント」について話したいと思います。

タレントマネジメントという言葉も最近ではよく使われるようになりました。人事という単語の代わりにタレントマネジメント部という会社もあるようです。この言葉の意図するところは「パフォーマンスマネジメント」と同じで、人材育成に関ることです。「パフォーマンスマネジメント」が組織全体に焦点を合わせているのに対して、「タレントマネジメント」はより個人の育成の仕組みについて言及するものです。具体的には「後継者の育成」をどのようにおこなうのか、あるいは個人の能力を向上するためにはどのようなプランが考えられるのか、といった事が中心になります。

ここでは主に「後継者の育成」と言う観点から話を進めましょう。後継者の育成という課題が人事を中心にして話題にされてきたのは近年のことだと思います。一般的に企業の寿命は30年前後と言われてますが、おそらくその背景には企業の設立者が一代で築き上げた会社を誰も上手く発展させることができないという一般的な傾向が指摘されるのではないでしょうか。それほど企業にとって有能な後継者を育成することは重要な課題なのです。そのために「経営」と「資本の分離」という考えがあり、経営のためには起業に関った人たちだけではなく、経営のプロを中心として会社運営をおこなうことが必要なのです。では何故に「後継者育成」が近年脚光を浴びているのでしょうか?

起業家を含めた世の経営トップは「後継者育成」の重要性をよく理解していなかったのでしょうか?もちろんそんなことはないでしょう。どこの会社でも後継者選びは重要な課題であることは理解されているはずです。それにも関らず、人選に失敗したり、いったんは後継者にビジネスを渡したものの、またCEOの座に「もどってしまうような事例が多くあります。何故こういうことが起こるのでしょうか。いくつかの原因が考えられると思います。例えば、CEOが自分の周りに優秀な「実践者」だけを集めた場合、あるいは、全ての方向性と重要な意思決定をCEOが行ってしまっている場合、あるいはまた、新しい経営者と方向性がずれてしまい「任せられない」と思って戻ってくるような場合、など、いろいろな事情が考えられます。こういったことは日本の企業だけではなく、欧米の企業でも起こっているのではないかと推測されます。だからこそ、近年特に「後継者育成(Succession Planing)」が叫ばれているのだと考えます。

次回は失敗しない「後継者育成」について話したいと思います。