(株)ヒューマン・エッジ代表取締役社長・斧出吉隆のブログ -51ページ目

グローバル化の6つのステップ(その4)

日本の企業がグローバル化を実践してゆくための2番目のステップは「国の違いや人種の違いなどをこえて、社員同士が共通の価値観や行動の原則を持ってお互いを尊敬できるような、その会社独自の価値観や理念を明確にし、行動のレベルまで落とし込む」 ということでした。

前回、ダイバーシティを実践してゆく際に大きなハードルとなるのが、「異なった価値観や慣習を持つ人たちをどのようにしてリードすればよいのか」ということであると説明しましたが、1985年頃のP&Gを例に見てみましょう。その当時、P&G内部では、まだまだ外国人VS日本人、そして出身母体の異なる日本人同士の違和感がうごめいており、決して統一の取れた、一体感のある組織ではありませんでした。何か問題があると、「外国人は日本の事がわかってないからだ」とか「日本人が変化しようとしないからだ」とか、お互いを指摘しあうような事も起こっていました。

これについてオランダ人の社長がとった行動は実にシンプルなものでした。彼が常に発したメッセージは「私たちにとって重要なことは、P&Gの米国のやり方を真似ることでも、オランダのP&Gのやり方を無理に勧めることでもない。P&Gのジャパンにとってベストなことを行うことである」というものでした。このメッセージは非常に強力で、外国人も含めて、私たちは日本のP&Gにとってベストなものは何かということを常に前提として行動し始めたのです。

実は、日本にとってベストなことを行おうと思うと各国のベストプラクティスをベンチマークしなければならないということがおこり、自然とグローバルの考え方やベストプラクティスを利用するという考え方に向かっていったのです。結果としては同じことがおこっていたかも知れませんが、自分たちが納得して取り入れたグローバルで受け入れられている価値観や、アイデアなどについては自然な形で受け入れることが出来たのも事実です。

個人が持っている価値観を変えることは恐らく不可能なことでしょうが、会社として共通の価値観を持つことによって、バラバラの個人を共通の目標に向かわせることができたのです。こういった経験が後にもっと大きな意味を持つことになりました。次回ではこの点についてもう少し詳しく説明します。

グローバル化の6つのステップ(その3)

最近の一種の流行の言葉として「グローバライゼーション」「ワークライフ・バランス」そして「ダイバーシティ」という3つのキーワードがあげられます。今回はダイバーシティの考え方が、何故にグローバル人材の育成と結びついているのかということについて考えてみたいと思います。

ダイバーシティという言葉は最近、といっても使われ始めてからもう10年ほどはたつでしょうか?もともとは米国において、いわゆる「マイノリティ」、つまり、女性、有色人種など、を法律的に保護する政策から始まったように思います。どちらかといえば最初はやや後ろ向きな形でスタートしたマイノリティ政策が、企業の海外進出にあたり、価値観の違う人材が会社にとって有益であると認められ始めたことから「ダイバーシティ」という考えかたに変わってきたようです。

つまり、「ダイバーシティ」というのは、多様性のある人材を広く社会から受け入れ、育成し、うまく組織の中で活かすことによってこれまでとは違ったビジネス機会が得られ、結果的に会社(組織)のビジネスを拡大し、企業価値を向上させること、ではないでしょうか。

日本の企業にとっては、日本国内だけからではなく広く海外からも多様な人材を登用してゆくことが、企業の発展につながり、企業価値を向上させてゆく、ということを理解し、実践してゆく必要があります。グローバル化の6つのステップ(その1) に書きましたが、中国での日系企業の人気がない理由のひとつに「キャリアパス」の不透明さがあげられます。日本の企業では「言葉や慣習の異なる人材」を、キャリアにおいて公平に扱い、うまくモチベイトして将来の幹部候補生として育成してゆくしくみが、欧米の企業と比べると希薄なのではないでしょうか?

仮に「ダイバーシティ」が必要であると理解をしていたとしても、実行に移すには大きなハードルがあります。それは「価値観や行動が私たちと異なる人々をどのようにリードすればよいのか」ということです。もちろん日本人で海外に駐在しておられた方々は、こういった難しさを身をもって体験されていることと思いますが、そういった経験は、いわゆる「暗黙知」として個人の経験として蓄積されている場合が多いのではないでしょうか?

次回はこういったことを克服するために、グローバル企業がとりくんできたことをP&Gのケースを使って話を進めたいと思います。

グローバル化の6つのステップ(その2)

前回、日本発のグローバル企業になるためには、6つのステップがある事を紹介いたしました。今回、まず第1のステップとして、「企業にとっては、グローバル化が必要で不可避なプロセスであることを理解し、多様性(国籍・人種の違い、性の違い、習慣の違い、等)がビジネスの発展に大きく貢献するという明確な判断」ということにもう少し詳しく言及してみましょう。

つまり、必然性と多様性という当たり前の事が十分に理解されて、実行されているか?ということです。

必然性ということについては、海外の売り上げをもっている企業かどうかということではなく、今の日本の企業はグローバルな経営活動から決して切り離されているわけではなく、原材料やテクノロジー/エンジニアリング等を海外に頼っているような場合、全ての経営活動はグローバルな視点を持たなくてはいけないということと関連しています。常に海外のサプライヤーの動きに注意し、自社の立場を優位にできるように交渉したり対応できるグローバルマインドを持った、グローバル人材が必要なのです。

P&Gのオランダ人社長の場合は、彼自身がオランダ出身であり、P&G米国本社から任命された人ではなかったため、彼自身がグローバルとの関連性が日本のビジネスを成長させるのに大変重要であることを十分に理解していました。例えば原材料調達の戦略としてのグローバル化は早くから進んでいましたし、日本にはない米国のテクノロジーをどうやって日本の市場の製品化に活かすのか、そのためには米国からどの人材を日本に異動させれば効果的であるのか?といったことを考えてグローバルのリソースを非常に上手く利用していました。

P&Gジャパンというのはもちろん米国P&Gの子会社ですからいずれはグローバル化が必要だという認識はもてたのでしょう。「外資の仮面をかぶった純伝統的な日本企業」が多い中、このオランダ人社長のおかげで日本におけるP&Gのグローバル化は一挙に加速されました。

グローバル化への必然性とは売り上げが海外である無いに係わらず、グローバルマインドを持った経営陣(人)が、「グローバルとのかかわりを推測し、人、物、金というリソースを上手く使うことによって更なるビジネスの機会点を見出し、それに向かって人と組織を具体的にリードしてゆくプロセス」ではないでしょうか?

次回は多様性について話を進めましょう。