(株)ヒューマン・エッジ代表取締役社長・斧出吉隆のブログ -52ページ目

グローバル化の6つのステップ(その1)

最近、日本CHO協会でおこなわれたグローバルHRセミナーで大阪商業大学の古沢昌之教授の資料に、中国における外資系企業で中国人が入社したくない企業として「日系企業」があげられています。歴史的な感情を別にしても何故このような評価・あるいはイメージをもたれるのでしょうか?

これまでオランダ人の社長に関するエピソードを書いてきましたが、彼が日本でおこなってきたことと、グローバライゼーションをいかにおこない、グローバル人材をどの様に育成するのかということについては大きな関連性があります。

P&Gは米国に本社がある外資系企業ですが、日本の企業がグローバル展開をおこない、優秀なグローバル人材を育成するには、彼が持っていた理念や、実際におこなったような行動を日本の企業流にアレンジして実行すれば「日本発のグローバル化」ができるのではないでしょうか?

日本の企業がグローバル化を実践してゆくためには次の6つのステップがあると思っています。

1.企業にとっては、グローバル化が必要で不可避なプロセスであることを理解し、多様性(国籍・人種の違い、性の違い、習慣の違い、等)がビジネスの発展に大きく貢献するという明確な判断

2.国の違いや人種の違いなどをこえて、社員同士が共通の価値観や行動の原則を持ってお互いを尊敬できるような、その会社独自の価値観や理念を明確にし、行動のレベルまで落とし込む

3.海外で一般的なビジネスプラクティスに精通し、考え方を導入する。具体的には「パフォーマンスマネジメント」「タレントマネジメント」「ビジネスプロポーザルの方法」「ダイバーシティ」「プレゼンテーション」等々

4.年齢や地位に関係なく意思決定に参加できるようデリゲーションの考えを徹底する

5.同時に国内外を問わず優秀な社員を育てるキャリアパスをつくり社員の現地化をおこなう

6.社員の Role Modelを育成し企業理念や行動を模範的に示し、企業文化の育成につなげてゆく

次回より、それぞれのステップをオランダ人社長の行動と照らし合わせながらもう少し詳しく考えてみたいと思います。

国際教養大学

前回はビジネス英語力をいかに実践的に身に付けるかという話を、オランダ人社長の徹底した方針を具体例としてご紹介しました。今日は英語つながりで少しお話をしたいと思います。超ユニークな教育をおこなっている大学のご紹介です。

日本人にとって英語は「たかが英語、されど英語」であり、これからのグローバルビジネスの世界で生き延びていくにはビジネス英語力は不可欠なものです。しかし、社会人になってから英語力をつけるというのはおかしな話であって、本来は中、高、大、の教育の中で身に付けるべきものだと思います。残念ながら日本の大学では英語で授業をおこなうなど無理な話だとおもっていたら、何と!ナント!国際教養大学 では全ての授業を英語でおこなっているんです。

先日、国際教養大学を訪問し、中島嶺雄学長にお話を聞きました。秋田空港から車でわずか10分のところにあり、きれいな緑に囲まれた「森の中の大学」。ここは一学年の学生数がわずか150名ほどであり、全寮制でしかも授業はすべて英語である。先生の7割が外国人の先生で非常に開かれた大学です。

これまで日本の大学では実現できなかった、国際的な視野を持ち、グローバル社会で通用する人材を育成する、という高い志をもって学長に就任されたそうです。この志を実現するために全ての授業は英語。もちろん日本人の教授が教える場合にも英語です。しかも全員が海外の提携校に一年間の正規留学をして単位をとらなければ大学を卒業できないという厳しい条件がついています。

24時間利用可能な最新式の設備が整った図書館や英語力を高めるためのLanguage Centerなどグローバルで活躍できる人材の育成の基礎を作るには最高の条件がそろっていました。

今年の3月にはじめての卒業生が旅立ったそうであるが、ここで培ったグローバルな感性を忘れないで、将来のグローバル人材として日本を代表するような人材として活躍してほしい。国際教養大学(AIU)は間違いなくグローバル人材育成の橋頭堡である。

グローバルで活躍できる人材とは(その5)

もう少しオランダ人社長が取り組んだ改革について話をしましょう。この社長は組織のリーダーとはどのような行動を取るべきなのかを模範的に私たち日本人社員に教えてくれました。もうひとつ彼が徹底しておこなったことがありました。それは英語力の育成でした。当時のP&Gでは社内文章は全て英語になっていましたが、英語でコミュニケーションできる人はまだごく一部の人に限られていました。

たかが英語されど英語です。やはり日本人にとって英語のバリアはあまりにもハードルの高いものでしたが彼の英語に対する教育は徹底していました。1985 年からマーケティングの新入社員は全員入社後の4ヶ月間はアメリカで英語の研修をまず受けるようにしたのです。マーケティング以外でも毎年約20名ほどが各部より選抜されて4ヶ月間の語学研修を受けるのです。

語学研修といっても通常の英会話ではなく「異文化コミュニケーション」と呼ばれるスキルをベースにグローバル企業で必要なビジネスの基礎的なスキル、例えばPresentation Skill、Effective Memo-writing, Discussion Skill, Management Skill 等々の実践的なプログラムを英語を使って身に付けるものでした。このプログラムはその後15年間ほど続き、このプログラムから育っていった優秀なマネージャーが数多くいます。

最近「グローバライゼーション」が流行の言葉のように扱われていますが、その一方で社員に対して徹底した英語力に対する投資をしている会社をあまり聞いた事がありません。いまだに「英語は必要な人だけできれば良い」という考えかたが主流であるように思います。しかしながら、グローバライゼーションには否が応でも英語のロジックが入ってきますし、様々なビジネスプラクティスは英語を中心とした考え方が一般的です。個人的には日本の企業はもっと英語に投資をすべきではないかと思いますし、そうしないと組織力としての英語文化が育たないと思います。

幸いなことにP&Gではオランダ人社長の英語に対する投資のおかげで、会社全体のカルチャーとして英語が定着し、今では新入社員の多くの人が英語を使える状態で入社してきます。したがって英語教育も以前とは違った内容になっているようですが、今から20年ほど前にP&Gではすでに「内なる国際化」を目指していたのです。このことは1989年に私自身が「内なる国際化」というテーマで日本能率協会の「人材教育」 という雑誌に投稿していますので、もしご興味のある方は読んでみてください。