(株)ヒューマン・エッジ代表取締役社長・斧出吉隆のブログ -42ページ目

デリゲーション(その4)

さて、これまで、日本の企業がグローバル化を実践してゆくための6つのステップの4番目、「年齢や地位に関係なく意思決定に参加できるようデリゲーションの考えを徹底する」ということについて、時間管理の要素も含めて説明してきましたが、今回はそのまとめです。

デリゲーションで最も重要なのは、「年齢や地位に関係なく意思決定に参加できる」ということです。

2006年におこなわれたBlessingWhite社の調査で、「部下が望むこと」というのが明らかになっています。

この中にはいくつかの重要な項目が含まれています。例えば、「仕事に対する達成感」あるいは「自立性を尊重して欲しい」などが上げらていますが、私が一番重要だと感じているのは「会社や部の意思決定に参画させて欲しい」という項目です。

会社の管理職の地位にある人たちと話していると「最近の若い人たちは、言われたことはちゃんとこなすけど、自分から進んで仕事をしない」ということを良く聞きます。

これは何故なのでしょうか?

言われたことはちゃんとこなすわけですから、最低限必要な能力は身についているはずです。理由は自分自身が受身になっているからです。これは日本の教育のDNAが染み付いているのかもしれませんが、教科書や先生から与えられた事が正しくて、それ以外は間違いであるという「思考の枠組み」にとらわれているからだと推測します。

もう30年も前になりますが、私がアメリカにいたとき、親が子どもに対して「Why」と聞き、子どもが「Because」と答え、親が「You have to explain, that is your responsibility」と教えていることに驚いた経験があります。

「これは正しい、これは間違い」と教えることも大事ですが、同時に「何故そうしたのか」を自分自身で考える「習慣」を身に付けていると「次はこうしよう、あるいは、こうしたらもっと良くなるはず・・」といった具合に「発想」が広がっていきます。

企業という組織においても同じで、企業文化のDNAとして「目標を達成するまでにはいろんな考えがあって、Try & Errorを繰り返して、そこから学習し成長する」という考え方が必要です。

つまり、部下の側からすると、目標達成のプロセスに参画して、いろいろと試行錯誤を繰り返し、自ら考える事ができるようになることがデリゲーションを成功させ、自分自身の成長を加速させることになります。

また、上司の側からすると、自ら考え成長させる機会を提供して、上手くコーチングすることが結果的に「デリゲーション」を成功させ、部下の成長を加速し、自分自身の仕事の幅を広げて「人をとおして結果」を出すことにつながっていきます。

デリゲーションを上手く使って、部下の成長と自分自身の成長に役立ててください。

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<企業のグローバル化推進6つのステップ>

1.グローバル化が必要で不可避なプロセスであることを理解し、
  多様性(国籍・人種の違い、性の違い、習慣の違い、等)が
  ビジネスの発展に大きく貢献するという明確な判断。

2.国や人種の違いなどをこえて、
  社員が共通の価値観や行動の原則を持ってお互いを尊敬できるような、
  会社独自の価値観や理念を明確にし、行動のレベルまで落とし込む。

3.海外で一般的なビジネスプラクティスに精通し、考え方を導入する。
  具体的には「パフォーマンスマネジメント」「タレントマネジメント」
  「ビジネスプロポーザルの方法」「ダイバーシティ」「プレゼンテーション」等々。

4.年齢や地位に関係なく、意思決定に参加できるよう、
  デリゲーションの考えを徹底する。

5.国内外を問わず、優秀な社員を育てるキャリアパスをつくり、
  社員の現地化をおこなう。

6.社員の Role Modelを育成し、企業理念や行動を模範的に示し、
  企業文化の育成につなげてゆく。

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デリゲーション(その3)

デリゲーションを上手く進めることによって、上司は自分自身の時間が有効につかえることができるようになる。結果として、より高い次元の仕事に取り掛かる事ができるようになる、というのは前回ご紹介しました。

実はグローバルタレントに成長してゆくにはこの「デリゲーション」「時間管理」というのは、切っても切れないとても重要な関係なのです。

私は長年外資系の企業にお世話になっていましたので、年に数回海外の本社への出張がありました。私は4つの企業に勤めていましたが、どこの本社に行っても夕方5時頃からはオフィスに人がまばらになってきます。もちろん朝は8時頃から働き始めますので一概に労働時間が短いということは無いと思いますが、なんとなく感じるのは日本人の働き方とは違うのです。

具体的にいうと、「あれもこれも・・・」という仕事のやり方はしないようです。

日本人はもともと器用な国民性なのでしょうか・・「あれもこれも、できることは全てやる」、しかも、どれも期限がもう少しに迫っている・・という事が良くあります。そんなときには上司に「Push Back」をして「本当に必要なことは何なのか」を明確にしてもらう必要があります。

日本人はこれが上手くできないのでついつい抱え込んでしまうようです。海外本社の人達は、上司に「Push Back」しながら、本当に必要なこと、やらなければいけないことを見つけだし、仕事をしているようです。



日本人がPush Backできないのには理由があります。

1つ目は、言葉の問題だと思います。英語では上司も部下も基本はニックネームで呼び合う事が多く、また、尊敬語や謙譲語などの複雑な上下の関係を表す言葉はビジネスの世界でもあまり使われません。言葉そのものが上下の関係をあまり意識させないようになっています。ですから英語では比較的、上司に意義を唱える表現、例えば I disagree などの表現もしやすいのです。

2つ目は、日本の上司はまだまだ、ポジションパワーと年功性に頼ったリーダーシップを発揮することになれているからではないでしょうか。日本の研修制度は横並びで成長するというのが一般的ですから、部下が上司にPush Backするのはどうしても失礼になるのではないかと思い込んでしまうからです。

3つ目は、 Why と Because の文化の違いです。私がいた会社の本社は米国やスイスでしたが、何をするにも何故これをしなければならないのか、その理由は何なのかを良く話し合っていました。ごく自然にお互いがWhy と Becauseを使って会話をする文化なので、Push Backは当然のことで違和感はないようでした。



私たちも上手くPush Backを使って「本当に必要なこと」に集中して仕事を進めるようにしましょう。

デリゲーション(その2)

さて、前回デリゲーションについては大きく2つの理由があることは説明しました。つまり自分の時間を作ることと、人材の育成という意味です。

今の会社組織は以前と違って、いわゆる文鎮型のフラットな組織が多いですから、以前よりも多くの時間を取られてしまうことになります。そういった中で自分自身の時間を作るというのはとても重要なことです。デリゲーションを上手く使って自分の時間を作れるようにしましょう。

デリゲーションを上手くおこなってゆくには、いくつかのステップがあります。

1.準備
  ・本人にとってのベネフィットを明確にする
  ・本人にとって必要なスキルを提供できるサポート案を用意しておく
2.本人とのダイアログ(対話)
3.本人からのアイデアを聞く
4.話のないようにお互い同意する
5.次回のダイアログの日程を決める


1.準備

まずは対話をおこなう前の準備です。デリゲーションといっても自分が何を期待しているのか?どのような結果を出して欲しいのか?を明確にします。

次に相手の方に「なぜこの仕事を貴方にして欲しいのか」を明確にしておきます。そして最後にこの仕事をすることで本人にとってどんなベネフィットがあるのかを説明できるように考えておきます。


2.本人とのダイアログ(対話)

本人との対話を始めます。この対話の中で相手の方が固辞したり、あるいはよく納得できていないままで、でも上司からの命令なのでとりあえず同意した。ということがおこらないように「積極的傾聴」「質問力」を使って本人の納得が得られるように会話を進めてください。


3.本人からのアイデアを聞く

本人にとっては何をどのようにすすめれば良いのかがわからない場合もあります。そういった場合には答えを提供するのではなく、必ず本人にアイデアを出してもらいましょう。

そのアイデアが貴方の期待していることと同じ場合には「確かにそうすれば上手くいくかもしれない。ぜひそのようにすすめて欲しい」ことを確認します。そして必ず、貴方なら上手くできることを本人に伝えて「自信を持たせる」ようにすることです。


4.話のないようにお互い同意する

こうしてお互いに納得したことをきちんと文書かメールの確認でもかまいませんから記録しておいてください。


5.次回のダイアログの日程を決める

そして最後に次回の進捗を確認する会議を設定します。


非常にシステミックで簡単なプロセスですので、皆さんも一度試してみてください。これまでとは違った結果を出してくれますよ。