(株)ヒューマン・エッジ代表取締役社長・斧出吉隆のブログ -41ページ目

キャリアパス標準化の現状

先日、あるメーカーで次世代のグローバルリーダーを育成するための研修を担当させていただきました。その会社は、いわゆる日本発のグローバル企業を目指している会社で、売り上げの6割がすでに海外での売り上げであり、今後成長が期待できるのも海外市場の潜在力であるという認識を強くお持ちの会社です。

この会社は、すでに海外での拠点を北米や欧米に持っており、そして今後は中国にもより積極的に進出を展開していきたいと思われています。ですから、必要な人材をそれらの拠点に送り込めばよいだけなのですが、なんと、次世代のグローバルリーダーを育成するための社内カレッジをお持ちなのです。

毎年、約15~16名程度のグローバル人材候補生が1年間の教育を受けて、グローバルな役職に任命され巣立っていくのです。もちろん、このカレッジに参加した全ての人が海外での仕事に就くわけではありませんが、こういった取り組みを会社の仕組みとしておこなっていくと、社員の間に「うちの会社はグローバルに展開していくグローバル企業なんだ」という文化が根付いてきます。

多くの日本企業が「海外の売り上げは海外部門の売り上げであって、会社全体を表している文化ではない、あくまでも海外事業部門だ」という捉え方から、グローバル企業に脱皮できないでいるのに対して、こういった取り組みは、組織全体をグローバル化してゆくために最も必要でかつ、重要な取り組みです。ビジネスの英語を使える事が当たり前の状況になり、社内にいる大勢の社員がグローバルタレントになるための教育を受ける事ができるのは素晴らしいことです。

多くの企業が「サクセッションプラン」という言葉を使いながら、でも実際には何をすれば良いのかわからないという状況にあって、この会社のようにグローバルタレントの育成と次世代リーダーの育成を兼ね合わせて考えている企業様にはあまり出会ったことがありません。日本にもこういう会社が存在することを非常に嬉しく思うとともに、本当にグローバル企業として成長していただきたいと思います。

ただ、この企業でも、まだ、グローバルでのキャリアパスを標準化していないそうです。問題意識は十分にお持ちのようですが、この部分はまだこれからだとおっしゃっておられました。海外の優秀な社員を日本発のグローバル企業の中にどうやってリテインし、会社の資産として位置づけるのか?まだまだ課題は多そうです。

キャリアパスが必要な理由

そもそもグローバルで標準化されたキャリアパスをなぜ作る必要性があるのでしょうか?

この点を明確にしておかないと何のためにグローバルなキャリアパスを作るのかがわからなくなります。各社によって理由はいろいろと想定されますが、基本的には次の2点ではないかと思います。


1.グローバルな人材を惹きつけ国際競争力を養成する

日本の人口は頭打ちで、ご存知のとおり「少子高齢化」が確実で、人口が減ることが予測されています。一方で、世界の人口は増え続け、中国、インド、インドネシアなど、アジアに人口の多い国が集中しています。

もちろんその国の経済力、貧富の差、教育レベルなどによって異なりはしますが、世界にはポテンシャルを持った優れた人材が数多くいるのは間違いないことです。そういった人材を引き付ける手段として、キャリアパスの整備は大きな武器になります。ビジネスという観点からも人口が増える可能性のある地域は魅力的です。

これらを包括的に考えると、世界中にいる優秀な人材を惹きつけ、雇用することは企業の成長につながるわけですから、結果的にその企業の国際競争力を高めることにつながります。こういった「競争力」はテクノロジーのように短期間では追いつくことができませんので、非常に強力な「競争力」となります。


2.国を超えて人材の異動をスムーズにおこない、人と組織の強化をおこなう

企業がグローバルにビジネスを展開する際には、通常、現地の企業を吸収合併したりして、何らかの足がかりをつけた上でビジネスの展開を図ります。

組織の統合をおこなう上で、重要なのは「企業理念や企業文化」をいかにして統合された組織に定着させるか?ということです。そのためにはその会社の企業理念や文化を良く知った人がリーダーとして赴任すべきですが、その際、本社の人だけが赴任するとは限りません。

例えばアジアであるならば戦略的にアジアの支社の誰かが、他の国のマネジメントとして赴任することは当然ありえる話で、その人たちの処遇や将来のキャリアパスといったことが整備されていないと、「本社から異動する人材、支社から異動する人材」といった、複雑な構造に対して、フェアな扱いができなくなります。

国を超えた「人」のモビリティが低下すると、本当に必要な「人と組織」の強化ができなくなり、一方でキャリアパスが狭まり、結果的に優秀な人材の確保ができにくくなります。

こういったことは実際経験しないとなかなかリアリティのある問題として捉えにくいのですが、優秀な人材を世界の様々な地域から採用し、リテイン(社内で保持育成)するためにはグローバルで標準化されたキャリアパスがどうしても必要になってきます。

国内外を問わず優秀な社員を育てるキャリアパス

今回からは「国内外を問わず優秀な社員を育てるキャリアパスをつくり社員の現地化をおこなう」というテーマを取り上げます。

恐らく日本のグローバル企業にとってはこれが最も大変なのではないでしょうか?

これまで私自身、日本の企業でグローバル化を推し進めている会社の担当者の方と話をさせていただく機会が結構ありましたが残念ながら、このテーマに取り組んでおられる企業はほとんどありません。理由は単純です。難しいからです。

日本企業の場合、どうしても本社は日本で現地の社員はあくまでも現地の社員という考えが強いようです。

もちろん現地の優秀な社員を採用するのに競争相手がいなければそれでも良いのでしょうが、残念ながら、現地の優秀な社員は現地の地元企業をはじめ、欧米のグローバル企業が虎視眈々と狙っているのです。まさに、優秀な人材はボーダーレスで取り合いになっているのが現状です。

そういった環境で優秀な人材になればなるほど自分のキャリアの可能性を考えますから、彼らにとって、外資の会社に勤めたのに自分のキャリアの最高が現地のマネジャー程度ということになると、見向きもしなくなります。以前ここでも紹介しましたが、中国で人気のない外資系企業のNo1が日系企業です。その理由のなかで重要なのが「キャリアパス」です。

中国の優秀な人材にとって日本の企業は、公平なキャリアパスを提供していない会社という理解をされているようです。一方で欧米の外資系企業の場合、現地の会社のトップに就くことはもちろんのこと、いわゆるリージョンと呼ばれる、例えばアジア地域を統括するリージョンのマネジャーになることも、あるいは本社のマネジャーになることも可能であるといった企業が多いようです。

こういった欧米の企業では英語が公用語の場合が多いですし、グローバルタレントを目指す優秀な人材はほとんど英語ができますから、こういった点でも日本の企業にとっては不利な状況が存在しています。日本の企業ではまず外資系の企業でない限り社内の公用語や文書が英語なんて事はないはずです。

グローバルなキャリアパスを構築するためには様々な要素を考えなくてはいけません。例えば採用基準のグローバル標準化などはグローバルなキャリアパスを作るうえでなくてはならない重要な要素です。

次回はこの部分をもう少し詳しく考えていきましょう。