障害者雇用のニュースをよく聞くようになりましたね。ようやく世間の話題に上るようになった・・うれしいことなのですがなんとなく気になることもあります。それは障害者雇用とよくセットで出てくるダイバーシティーに関することです。
ダイバーシティー(多様性)は社会においても企業においてもキーワードになっています。耳ざわりのいい言葉で障害者雇用促進を後押ししてくれているのは事実です。よくダイバーシティーを説明するイラストで、背の高い人と背の低い人がフェンスの向こう側のスポーツゲームを観戦するイラストがあります。わかりやすいメセージでいいなと思う一方、そんなに甘くないよという自分もいます。
長く就労支援をやってきて感じるのはダイバーシティーのジレンマの存在です。多くの企業の障害者雇用はずっと総論賛成各論うやむやで取り組んできた分野ではないでしょうか。経営レベル(表向き?)では前向きな姿勢でも障害のある従業員が働く現場では双方(本人・周り)が多くの葛藤を抱えています。葛藤の多くはダイバーシティーのジレンマに関連します。
ダイバーシティーは一連取り組み(ダイバーシティーマネジメント)の成果であり、その成果を得るためには短期的でなく中長期の取り組みとなります。そこには幾多の葛藤もあります。しかしながら障害者雇用率制度の下では、どうしても短期的な思考(雇用率達成)になります。また代行ビジネスに見る、なるべく葛藤を避けたい・・・。このようなダイバーシティーマネジメント無きダイバーシティーは「トークン化のリスク」を内包しています。障害者雇用代行ビジネスを選択している企業や提携自治体のメッセージを見ると、このことを強く感じます。
トークン(少数派)について
ダイバーシティーのジレンマの一つに「トークン化のリスク」あります。トークン化とは少数派で目立つためにその人個人というより少数派の象徴(代表)のように扱われてしまうことをいいます。そのリスクについては、以下が上げられます。
①過度に注目されるため、集団での中でプレッシャーを感じることになります。
②多数派のステレオタイプに基づいた評価を受けやすい。(正当に評価されない)
③①②により集団からの役割期待に応えるような行動をすることで、自分らしさが発揮できない。
④少数派のモチベーション低下、メンタル不調、差別や対立。
多くの障害のある従業員は、実はこのような環境の下で働いています。
個人的には、ジョブコーチ養成課程でのダイバーシティー履修、職業リハビリテーションの中でダイバーシティーマネジメントの研究が進むとよいと考えます。