4. Re-doing London -窓のデザインの転機-
ロンドン建築シリーズ
1. Roman London
2. Great Fire of London -クリストファー・レンの夢の跡-
3. Protected Vista -セントポール大聖堂を臨む-
第4回目は、またまたロンドン大火災に戻って、その後のロンドンの復興について。
再びの大火災を防ぐべく、ロンドンの建物には、更なる法規制、今でいう火災法のようなものが制定されます。
道は広くなり、木造だった建物はレンガ造りにスイッチ。
そして、窓の作りも大きく変わり、正にロンドンの家のやり直し!
建築家は、窓が大好きです。
私も、一歩外に出たら、キョロキョロずっと窓を観察して歩きます(笑)
毎回、「あ!あの窓!」と聞かされる旦那はもう全く聞いてくれません。。。
というわけで、今回はロンドンの窓のうんちく。
大火災の後、ロンドンで主流となった建物のスタイルは、ジョージアンスタイル。
シンプルで洗練されていて、建築をやっている人はこのスタイルが好きな人が多いです。
ロンドンでは、主にZone1からZone2のエリアに多く存在します。
AAスクール(Architecture Association)のあるBloomsburyが有名ですね。
バースもジョージアンの建物で有名な街です。
ジョージアンスタイルは、主に貴族や上流階級の都市部の邸宅として建てられたそうです。
(ジョージアンスタイルの詳しい話はまた別の機会に!)
さてさて。
現在のイギリスでは、どういう窓が、「いい窓」と言われているかご存知でしょうか。
簡潔に言うと、出来る限り内側にセットバックしているものが好ましい、高そうに見えると言うことになっています。
なので、外壁の外側と一直線上にガラスがあるようなものは、安っぽい、かっこ悪い、と言うことになります。(通常の窓の場合です)
もし、新築の家の購入を考えているのであれば、窓の引っ込み具合で、その家に対するデベロッパーの力の入れ方がわかるかもしれません。。。。

Proctor Matthewsのケンブリッジの再開発。窓が最低でもレンガ半分分くらいセットバックしているのがわかります。画像はこちらから。
大火災前のロンドンの家の窓は、窓のSillがなく、窓は外壁と一直線上にあり、それが火の回りを速くしたと考えられています。

チューダースタイルの窓。画像はこちらから。

ジョージアンスタイル。画像はこちらから。
(Sillの日本語ってなんて言うんでしょう?検索してみたんですが、適当なものが見つかりませんでした。日本の窓にはないのかしら?)

これは、私が学生の時に描いたものなのですが、赤丸の部分が、Window Sillです。
会社のドローイングを持ち出すわけにも行かないので、学生時代のものでご勘弁を
この、窓が後方(家の内側)に退がった理由なのですが、
外壁の外面からズレることで、下からの火が窓枠に燃え移るのを防ぐためと言われています。(その当時のキッチンは、多分常に下の階にあったんじゃないでしょうか)
そして、Sillが必須になったのも、同じく下から壁を伝ってやってくる火に対するバリアの役目なのだそうです。
現在は、他にも火の回りを防ぐ方法がありますので、窓が外面と一直線上にあっても、Sillがなくても問題はないはずですのでご安心を。
あ、火事の話繋がりで、いつかGrenfellの話もしたいですね。。。
というわけで、大火災の前と後では、窓のデザインが、より安全にと随分と変わりました。

↓平面図です。既存のジョージアンスタイルの家の3階部分を描きました。(院生の時の課題です)3階なので、外壁はかなり薄め、既存の状態なのでインシュレーションもなしです。
上部が外側になります。
窓がレンガ半分分セットバックしていますね。

ちなみに...
レンガのサイズは決まっていまして、約225 x 112.5 x 75mm (モルタルの10mm込み)なのですが、レンガで建物を作る場合は、建物の大きさはレンガのサイズが基準になります。窓の大きさも同じです。
外壁がレンガのプロジェクトは、チーム内でレンガの寸法表みたいなものが配られます(レンガ10個=XXmmとか)。
モルタルの入り方で長さが変わるので、案外ややこしかったりするんですよねー
それではまた次回!
1. Roman London
2. Great Fire of London -クリストファー・レンの夢の跡-
3. Protected Vista -セントポール大聖堂を臨む-
第4回目は、またまたロンドン大火災に戻って、その後のロンドンの復興について。
再びの大火災を防ぐべく、ロンドンの建物には、更なる法規制、今でいう火災法のようなものが制定されます。
道は広くなり、木造だった建物はレンガ造りにスイッチ。
そして、窓の作りも大きく変わり、正にロンドンの家のやり直し!
建築家は、窓が大好きです。
私も、一歩外に出たら、キョロキョロずっと窓を観察して歩きます(笑)
毎回、「あ!あの窓!」と聞かされる旦那はもう全く聞いてくれません。。。
というわけで、今回はロンドンの窓のうんちく。
大火災の後、ロンドンで主流となった建物のスタイルは、ジョージアンスタイル。
シンプルで洗練されていて、建築をやっている人はこのスタイルが好きな人が多いです。
ロンドンでは、主にZone1からZone2のエリアに多く存在します。
AAスクール(Architecture Association)のあるBloomsburyが有名ですね。
バースもジョージアンの建物で有名な街です。
ジョージアンスタイルは、主に貴族や上流階級の都市部の邸宅として建てられたそうです。
(ジョージアンスタイルの詳しい話はまた別の機会に!)
さてさて。
現在のイギリスでは、どういう窓が、「いい窓」と言われているかご存知でしょうか。
簡潔に言うと、出来る限り内側にセットバックしているものが好ましい、高そうに見えると言うことになっています。
なので、外壁の外側と一直線上にガラスがあるようなものは、安っぽい、かっこ悪い、と言うことになります。(通常の窓の場合です)
もし、新築の家の購入を考えているのであれば、窓の引っ込み具合で、その家に対するデベロッパーの力の入れ方がわかるかもしれません。。。。

Proctor Matthewsのケンブリッジの再開発。窓が最低でもレンガ半分分くらいセットバックしているのがわかります。画像はこちらから。
大火災前のロンドンの家の窓は、窓のSillがなく、窓は外壁と一直線上にあり、それが火の回りを速くしたと考えられています。

チューダースタイルの窓。画像はこちらから。

ジョージアンスタイル。画像はこちらから。
(Sillの日本語ってなんて言うんでしょう?検索してみたんですが、適当なものが見つかりませんでした。日本の窓にはないのかしら?)

これは、私が学生の時に描いたものなのですが、赤丸の部分が、Window Sillです。
会社のドローイングを持ち出すわけにも行かないので、学生時代のものでご勘弁を
この、窓が後方(家の内側)に退がった理由なのですが、
外壁の外面からズレることで、下からの火が窓枠に燃え移るのを防ぐためと言われています。(その当時のキッチンは、多分常に下の階にあったんじゃないでしょうか)
そして、Sillが必須になったのも、同じく下から壁を伝ってやってくる火に対するバリアの役目なのだそうです。
現在は、他にも火の回りを防ぐ方法がありますので、窓が外面と一直線上にあっても、Sillがなくても問題はないはずですのでご安心を。
あ、火事の話繋がりで、いつかGrenfellの話もしたいですね。。。
というわけで、大火災の前と後では、窓のデザインが、より安全にと随分と変わりました。

↓平面図です。既存のジョージアンスタイルの家の3階部分を描きました。(院生の時の課題です)3階なので、外壁はかなり薄め、既存の状態なのでインシュレーションもなしです。
上部が外側になります。
窓がレンガ半分分セットバックしていますね。

ちなみに...
レンガのサイズは決まっていまして、約225 x 112.5 x 75mm (モルタルの10mm込み)なのですが、レンガで建物を作る場合は、建物の大きさはレンガのサイズが基準になります。窓の大きさも同じです。
外壁がレンガのプロジェクトは、チーム内でレンガの寸法表みたいなものが配られます(レンガ10個=XXmmとか)。
モルタルの入り方で長さが変わるので、案外ややこしかったりするんですよねー
それではまた次回!
明けましておめでとうございます。
明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
昨年はロックダウンになり、新しくガーデニングを始めたりして、思いがけず新しい経験をすることが出来ました。
今年は、漸く仕事に復帰することになったのですが、当分は自宅仕事の予定ですし、また細々と庭の記録を続けて行くと思います。
息子とツーショット✌️
さー来週から仕事です。。
1年半も離れていたから、なんか変な感じです
戻りたかったはずなのに、いざ戻るとなると、ちょっと面倒
いやいやいや。そんなことはないです
家のリノベDIYと、庭の記録用にインスタアカウント開いてます。
インスタストーリーが、ちょっとした記録にすごく便利で。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
我が家は、お雑煮を食べて、きな粉餅を食べて(主に私)、ダラダラ過ごしてます
テムズの花火、今年はどうなるんだろーと思ってたら、上がってたんですね。
いつもより東方面だったみたい?ということは、やっぱりいつものとは違ったってことなのかな?
いつか、パーラメントヒル(ハムステッドヒースの)に行って見たいなーって思ったりもするんですがねー。徒歩圏内なのに、夜中に出て行くのが面倒でまだ行ったことなし。寒いし。
夫婦ふたりなら頑張ってたかも?
いつかね、いつか。
昨年はロックダウンになり、新しくガーデニングを始めたりして、思いがけず新しい経験をすることが出来ました。
今年は、漸く仕事に復帰することになったのですが、当分は自宅仕事の予定ですし、また細々と庭の記録を続けて行くと思います。
もちろん家のリノベDIYも!

年末に届いたSarah Ravenのカタログを眺めて楽しんでいます。

種から育てるのは、このお花の予定。
7月の娘の誕生日に上手く全部咲いて、花束に出来たらいいなぁ〜。
そうそう、年を越える前に!とキングスクロスまで息子と散歩して来ました。(息子自転車、私スクーター) Granary SquareとCoal Drops Yard。

年末に届いたSarah Ravenのカタログを眺めて楽しんでいます。

種から育てるのは、このお花の予定。
7月の娘の誕生日に上手く全部咲いて、花束に出来たらいいなぁ〜。
そうそう、年を越える前に!とキングスクロスまで息子と散歩して来ました。(息子自転車、私スクーター) Granary SquareとCoal Drops Yard。
センターのクリスマスイルミネーションを見に行けなかったので、せめて近場でと思って。
まあ、毎回用事があって出掛けてただけで、わざわざイルミネーションを見に行ってたわけでもないんですけども。
見ないで終わるとなると、なんだかそれも寂しい気がして。
写真では、あんまりわかんないですが、結構人がいました。
ここ、外のスペースが広々としているので、ソーシャルディスタンスは守れるし、ちょっとお出掛け〜♪にはいい場所なんでしょうね。
それに、春〜夏のロックダウンと違って、なんかみんなの危機感も違う気がする...
全てに慣れちゃってる。あー、良くない良くない
自転車で走り回った息子は暑いとジュース笑
Redemption coffeeは、オフィスのすぐ近くにも支店があったので、よく行ってました。自家製の焙煎でとても美味しいです。なんでも、Prisonでバリスタ講習もやっているとか。
さー来週から仕事です。。
1年半も離れていたから、なんか変な感じです
戻りたかったはずなのに、いざ戻るとなると、
いやいやいや。そんなことはないです
家のリノベDIYと、庭の記録用にインスタアカウント開いてます。
インスタストーリーが、ちょっとした記録にすごく便利で。
興味がある方は、こちらです☆
ぜひどうぞ!3. Protected Vista -セントポール大聖堂を臨む-
ロンドン建築シリーズ
1. Roman London
2. Great Fire of London -クリストファー・レンの夢の跡-
ロンドン大火災関連のお話を続けようかと思ったのですが、セントポール大聖堂絡みのお話をもう一つ。
話は飛んで、現代です。
セントポール大聖堂は、シティー・オブ・ロンドンのど真ん中にあります。
第一回目のお話の通り、シティーは、ローマ時代から続くロンドンで一番古い地域であり、
現在のシティーに立って周りを見渡せば、3世紀世代の違う建築が、どこででも見れると言われています。
こんなに複雑に、建築の歴史を凝縮している場所は、世界の中でも珍しく、
それでいて、現在は世界の金融の中心地でもあるので、近代のインフラストラクチャーと、数世紀に渡る歴史的街並みを、どう折り合わせていくのかが難しい場所でもあります。
この問題を手っ取り早く解決するために、サッチャー元首相が大胆な政策を打ち立てるのですが、その話はまた別の機会に。
さて、
Protected Vista というものがロンドンにあるのはご存知ですか?
まずは、Shardです。
竣工当時は、ヨーロッパで一番高いビルでした。
設計は、イタリア人建築家のレンゾ・ピアノ。
初期の段階では、もっと太く、背も高かったそうです。
シャードの問題は、北ロンドン、Hampstead HeathにあるParliament Hillからの眺めでした。
セントポールは、シャードの北側にあるので、Vistaは守られているのですが、Parliament Hillから見ると、セントポールの背後にシャード聳える感じになってしまうんですね。
セントポール大聖堂のバックグランドとして、有りか無しか。
そこが焦点でした。
そこで、より細くしたり、高さを少し変えたりとの改善があり、
最後は、ロンドンの近代化は必要不可欠なものであるという結論で、建設の許可が下ります。(シャードは、サザーク区にあります)

写真はこちらから。
建設が進むに連れて、反対意見が強くなって行ったみたいなんですけどね。
こういうのが建築の傲慢さ、と私は思うのですが、建ち始めちゃったら、当然もう手遅れですよね。
パーラメントヒルが散歩圏内の私としては、セントポールがキレイに見えないのは少々寂しいなーとは思うんですが、
こちらは、リチャード・ロジャース設計です。(パリのポンピドゥーセンターのコンビですね!)
こちらは、Vistaには引っかからなかったので、高さに制限がなかったものの、
セントポール大聖堂の正面にに向かって伸びるFleet Streetに立つと、
チーズグレーターとセントポールが近過ぎる!ということが問題になりました。
結果、建物の半分くらいを斜めにに削ることで、セントポールから出来るだけ離す、ということで解決したのですが、
これが逆にこの建物の形を特徴的に仕上げて、チーズグレーターなんて愛称もついたわけですねー。
単純そうに見える解決策ですが、裏で右往左往するアーキテクトとクライアントの姿が目に見えます。。。
これだけ床面積が減るということは、貸せる・売れるスペースが単純に減ってしまうので、色々と試行錯誤がされたであろうことが容易に想像出来ます

Leadenhall BuildingのTwitterアカウントから。
最後は、One New Chage、ジャン・ヌーベル設計です。
私は個人的に、ヌーベルらしいとても詩的ないい建物だと思っているのですが、近代建築が大嫌いなチャールズ皇太子は公然と批判をしていましたね。
Stealth Bomberなんて名前も付いてます。
セントポールのすぐ隣にあるせいで、その近代性がより際立ってしまい、現代建築が嫌いな人たちの批判の的になりやすいかもしれません。

ここも、Vistaで形がほぼ決まってしまった建物です。(こちらはVistaだけではなく、St Paul's Gridというのも大きく関わっています)
それでも、流れるようなこの形と、
実際に中に入った時に見える、セントポール。
コンテクスト(外因)を上手く活かしたいい事例だと思います。


マスタープランと全体像の画像はこちらから。
サイトプランを見ると、建物がセントポールに向かって、大胆に開いていく様がよくわかります。
形では、あまり建築家の個性を発揮出来なかったかもしれませんが、
ファサードは、まるで空に溶けて行くような、ジャン・ヌーベルらしい詩的で美しい仕上がりだと思います。

ルーフテラスにあるバーからの眺めは、ロンドンで一番、セントポールを近くで見れる、貴重な場所ですよ♬

6th Floor、ルーフテラスのバーからの眺め。

Protected Vistaの一つ、パーラメントヒルからの実際の眺めです。メモリアルベンチが数個ありますが、その内一つが、アーキテクトだった方のものでした。
私もここに作ってもらおうかなー、なんて。
*クレジットが付いていないものは、私が自分で撮った写真です。
1. Roman London
2. Great Fire of London -クリストファー・レンの夢の跡-
ロンドン大火災関連のお話を続けようかと思ったのですが、セントポール大聖堂絡みのお話をもう一つ。
話は飛んで、現代です。
セントポール大聖堂は、シティー・オブ・ロンドンのど真ん中にあります。
第一回目のお話の通り、シティーは、ローマ時代から続くロンドンで一番古い地域であり、
現在のシティーに立って周りを見渡せば、3世紀世代の違う建築が、どこででも見れると言われています。
こんなに複雑に、建築の歴史を凝縮している場所は、世界の中でも珍しく、
それでいて、現在は世界の金融の中心地でもあるので、近代のインフラストラクチャーと、数世紀に渡る歴史的街並みを、どう折り合わせていくのかが難しい場所でもあります。
この問題を手っ取り早く解決するために、サッチャー元首相が大胆な政策を打ち立てるのですが、その話はまた別の機会に。
さて、
Protected Vista というものがロンドンにあるのはご存知ですか?
Protected Vistaとは、なんとも建築家泣かせのロンドンの条例なのですが、「市内の複数のキーポイントから、セントポール大聖堂が見える」のを、遮ってはならないというものです。
要するに、背の高い建物を作って遮っちゃダメだよってことです。
キーポイントの所在地ですが、
北ロンドンからは、
Alexandra Palace
Kenwood House (Highgate
Parliament Hill (Hampstead Heath)
Primrose Hill
南ロンドンは、
Greenwich Park
Blackheath Point
そして一番遠いのが、
Richmond ParkのKing Henry VIII’s Mounds

写真はこちらからです。
以上6つです。
ロンドンのビルの高さ規制ってどうなってるの?と思っていた方がいましたら、正にこれが一番難しい規制になるかと思います。
(もちろん、他にも色々と細々したものがあります)
さて、ここ10年ほどのシティーの高層ビル建設はめざましいものがありましたけど、実はこのVistaとセントポール大聖堂とのバランスによって、デザインが制限されていました。
もちろん、立地の場所によっては、Protected Vistaに影響されなかったものもあります。
シティーの高層ビル開発で、セントポール大聖堂のvistaがよく問題に上がったので忘れがちですが、実は他にもウェストミンスター宮殿へのVistaもあります。
というわけで、例を3つ。
要するに、背の高い建物を作って遮っちゃダメだよってことです。
キーポイントの所在地ですが、
北ロンドンからは、
Alexandra Palace
Kenwood House (Highgate
Parliament Hill (Hampstead Heath)
Primrose Hill
南ロンドンは、
Greenwich Park
Blackheath Point
そして一番遠いのが、
Richmond ParkのKing Henry VIII’s Mounds

写真はこちらからです。
以上6つです。
ロンドンのビルの高さ規制ってどうなってるの?と思っていた方がいましたら、正にこれが一番難しい規制になるかと思います。
(もちろん、他にも色々と細々したものがあります)
さて、ここ10年ほどのシティーの高層ビル建設はめざましいものがありましたけど、実はこのVistaとセントポール大聖堂とのバランスによって、デザインが制限されていました。
もちろん、立地の場所によっては、Protected Vistaに影響されなかったものもあります。
シティーの高層ビル開発で、セントポール大聖堂のvistaがよく問題に上がったので忘れがちですが、実は他にもウェストミンスター宮殿へのVistaもあります。
というわけで、例を3つ。
まずは、Shardです。
竣工当時は、ヨーロッパで一番高いビルでした。
設計は、イタリア人建築家のレンゾ・ピアノ。
初期の段階では、もっと太く、背も高かったそうです。
シャードの問題は、北ロンドン、Hampstead HeathにあるParliament Hillからの眺めでした。
セントポールは、シャードの北側にあるので、Vistaは守られているのですが、Parliament Hillから見ると、セントポールの背後にシャード聳える感じになってしまうんですね。
セントポール大聖堂のバックグランドとして、有りか無しか。
そこが焦点でした。
そこで、より細くしたり、高さを少し変えたりとの改善があり、
最後は、ロンドンの近代化は必要不可欠なものであるという結論で、建設の許可が下ります。(シャードは、サザーク区にあります)

写真はこちらから。
建設が進むに連れて、反対意見が強くなって行ったみたいなんですけどね。
こういうのが建築の傲慢さ、と私は思うのですが、建ち始めちゃったら、当然もう手遅れですよね。
パーラメントヒルが散歩圏内の私としては、セントポールがキレイに見えないのは少々寂しいなーとは思うんですが、
アーキテクトとしては、ロンドンの現代建築が発展していくことは、いいことだと思います。
なので、特に反対でもないですけど、
だからと言って、大賛成!でもないですね。。。

ある冬の、霧の中のシャード
次は、チーズグレーターこと、Leadenhall Building。
なので、特に反対でもないですけど、
だからと言って、大賛成!でもないですね。。。

ある冬の、霧の中のシャード
次は、チーズグレーターこと、Leadenhall Building。
こちらは、リチャード・ロジャース設計です。(パリのポンピドゥーセンターのコンビですね!)
こちらは、Vistaには引っかからなかったので、高さに制限がなかったものの、
セントポール大聖堂の正面にに向かって伸びるFleet Streetに立つと、
チーズグレーターとセントポールが近過ぎる!ということが問題になりました。
結果、建物の半分くらいを斜めにに削ることで、セントポールから出来るだけ離す、ということで解決したのですが、
これが逆にこの建物の形を特徴的に仕上げて、チーズグレーターなんて愛称もついたわけですねー。
単純そうに見える解決策ですが、裏で右往左往するアーキテクトとクライアントの姿が目に見えます。。。
これだけ床面積が減るということは、貸せる・売れるスペースが単純に減ってしまうので、色々と試行錯誤がされたであろうことが容易に想像出来ます

Leadenhall BuildingのTwitterアカウントから。
最後は、One New Chage、ジャン・ヌーベル設計です。
私は個人的に、ヌーベルらしいとても詩的ないい建物だと思っているのですが、近代建築が大嫌いなチャールズ皇太子は公然と批判をしていましたね。
Stealth Bomberなんて名前も付いてます。
セントポールのすぐ隣にあるせいで、その近代性がより際立ってしまい、現代建築が嫌いな人たちの批判の的になりやすいかもしれません。

ここも、Vistaで形がほぼ決まってしまった建物です。(こちらはVistaだけではなく、St Paul's Gridというのも大きく関わっています)
それでも、流れるようなこの形と、
実際に中に入った時に見える、セントポール。
コンテクスト(外因)を上手く活かしたいい事例だと思います。


マスタープランと全体像の画像はこちらから。
サイトプランを見ると、建物がセントポールに向かって、大胆に開いていく様がよくわかります。
形では、あまり建築家の個性を発揮出来なかったかもしれませんが、
ファサードは、まるで空に溶けて行くような、ジャン・ヌーベルらしい詩的で美しい仕上がりだと思います。

ルーフテラスにあるバーからの眺めは、ロンドンで一番、セントポールを近くで見れる、貴重な場所ですよ♬

6th Floor、ルーフテラスのバーからの眺め。

Protected Vistaの一つ、パーラメントヒルからの実際の眺めです。メモリアルベンチが数個ありますが、その内一つが、アーキテクトだった方のものでした。
私もここに作ってもらおうかなー、なんて。
*クレジットが付いていないものは、私が自分で撮った写真です。



