HiyOkO dAys -64ページ目

3. Protected Vista -セントポール大聖堂を臨む-

ロンドン建築シリーズ
1. Roman London
2. Great Fire of London -クリストファー・レンの夢の跡-




ロンドン大火災関連のお話を続けようかと思ったのですが、セントポール大聖堂絡みのお話をもう一つ。
話は飛んで、現代です。

セントポール大聖堂は、シティー・オブ・ロンドンのど真ん中にあります。
第一回目のお話の通り、シティーは、ローマ時代から続くロンドンで一番古い地域であり、
現在のシティーに立って周りを見渡せば、3世紀世代の違う建築が、どこででも見れると言われています。
こんなに複雑に、建築の歴史を凝縮している場所は、世界の中でも珍しく、
それでいて、現在は世界の金融の中心地でもあるので、近代のインフラストラクチャーと、数世紀に渡る歴史的街並みを、どう折り合わせていくのかが難しい場所でもあります。

この問題を手っ取り早く解決するために、サッチャー元首相が大胆な政策を打ち立てるのですが、その話はまた別の機会に。


さて、
Protected Vista というものがロンドンにあるのはご存知ですか?

Protected Vistaとは、なんとも建築家泣かせのロンドンの条例なのですが、「市内の複数のキーポイントから、セントポール大聖堂が見える」のを、遮ってはならないというものです。

要するに、背の高い建物を作って遮っちゃダメだよってことです。


キーポイントの所在地ですが、
北ロンドンからは、
Alexandra Palace
Kenwood House (Highgate
Parliament Hill (Hampstead Heath)
Primrose Hill

南ロンドンは、
Greenwich Park
Blackheath Point

そして一番遠いのが、
Richmond ParkのKing Henry VIII’s Mounds



写真はこちらからです。

以上6つです。

ロンドンのビルの高さ規制ってどうなってるの?と思っていた方がいましたら、正にこれが一番難しい規制になるかと思います。
(もちろん、他にも色々と細々したものがあります)

さて、ここ10年ほどのシティーの高層ビル建設はめざましいものがありましたけど、実はこのVistaとセントポール大聖堂とのバランスによって、デザインが制限されていました。
もちろん、立地の場所によっては、Protected Vistaに影響されなかったものもあります。

シティーの高層ビル開発で、セントポール大聖堂のvistaがよく問題に上がったので忘れがちですが、実は他にもウェストミンスター宮殿へのVistaもあります。



というわけで、例を3つ。

まずは、Shardです。

竣工当時は、ヨーロッパで一番高いビルでした。
設計は、イタリア人建築家のレンゾ・ピアノ。

初期の段階では、もっと太く、背も高かったそうです。
シャードの問題は、北ロンドン、Hampstead HeathにあるParliament Hillからの眺めでした。
セントポールは、シャードの北側にあるので、Vistaは守られているのですが、Parliament Hillから見ると、セントポールの背後にシャード聳える感じになってしまうんですね。

セントポール大聖堂のバックグランドとして、有りか無しか。
そこが焦点でした。

そこで、より細くしたり、高さを少し変えたりとの改善があり、
最後は、ロンドンの近代化は必要不可欠なものであるという結論で、建設の許可が下ります。(シャードは、サザーク区にあります)


写真はこちらから。


建設が進むに連れて、反対意見が強くなって行ったみたいなんですけどね。
こういうのが建築の傲慢さ、と私は思うのですが、建ち始めちゃったら、当然もう手遅れですよね。

パーラメントヒルが散歩圏内の私としては、セントポールがキレイに見えないのは少々寂しいなーとは思うんですが、
アーキテクトとしては、ロンドンの現代建築が発展していくことは、いいことだと思います。

なので、特に反対でもないですけど、
だからと言って、大賛成!でもないですね。。。


ある冬の、霧の中のシャード


次は、チーズグレーターこと、Leadenhall Building

こちらは、リチャード・ロジャース設計です。(パリのポンピドゥーセンターのコンビですね!)

こちらは、Vistaには引っかからなかったので、高さに制限がなかったものの、
セントポール大聖堂の正面にに向かって伸びるFleet Streetに立つと、
チーズグレーターとセントポールが近過ぎる!ということが問題になりました。
結果、建物の半分くらいを斜めにに削ることで、セントポールから出来るだけ離す、ということで解決したのですが、
これが逆にこの建物の形を特徴的に仕上げて、チーズグレーターなんて愛称もついたわけですねー。

単純そうに見える解決策ですが、裏で右往左往するアーキテクトとクライアントの姿が目に見えます。。。
これだけ床面積が減るということは、貸せる・売れるスペースが単純に減ってしまうので、色々と試行錯誤がされたであろうことが容易に想像出来ます滝汗


Leadenhall BuildingのTwitterアカウントから。

最後は、One New Chage、ジャン・ヌーベル設計です。
私は個人的に、ヌーベルらしいとても詩的ないい建物だと思っているのですが、近代建築が大嫌いなチャールズ皇太子は公然と批判をしていましたね。
Stealth Bomberなんて名前も付いてます。
セントポールのすぐ隣にあるせいで、その近代性がより際立ってしまい、現代建築が嫌いな人たちの批判の的になりやすいかもしれません。



ここも、Vistaで形がほぼ決まってしまった建物です。(こちらはVistaだけではなく、St Paul's Gridというのも大きく関わっています)
それでも、流れるようなこの形と、
実際に中に入った時に見える、セントポール。
コンテクスト(外因)を上手く活かしたいい事例だと思います。




マスタープランと全体像の画像はこちらから。

サイトプランを見ると、建物がセントポールに向かって、大胆に開いていく様がよくわかります。

形では、あまり建築家の個性を発揮出来なかったかもしれませんが、
ファサードは、まるで空に溶けて行くような、ジャン・ヌーベルらしい詩的で美しい仕上がりだと思います。



ルーフテラスにあるバーからの眺めは、ロンドンで一番、セントポールを近くで見れる、貴重な場所ですよ♬


6th Floor、ルーフテラスのバーからの眺め。






Protected Vistaの一つ、パーラメントヒルからの実際の眺めです。メモリアルベンチが数個ありますが、その内一つが、アーキテクトだった方のものでした。
私もここに作ってもらおうかなー、なんて。


*クレジットが付いていないものは、私が自分で撮った写真です。

庭記録

そこまで寒くない日々が続いております、ロンドンです。

日本の方のガーデニングのブログを読んでいると、改めて思うのですが、日本って昼と夜の温度差すごいですよね。
というか、イギリスが温度差なさ過ぎるんでしょうか。
こっちだと、せいぜい最低気温と最高気温の差は、大体5以下の違いなのですが、
日本はどうも最低と最高で10度以上違うようで。
いやー、違うもんですね。びっくりです。

それを言うと、冬と夏の温度差もそんなにない気もしますね、ロンドンはニヒヒ 
冬はマイナスにならないし、夏も30度を超えることはあまりないかな... 
あ、でも今年はすごかったですね。温暖化でしょうかゲッソリ

植物の成長などにもやっぱり影響するんでしょうね。


というわけで、庭記録です!


ペチコート水仙。
12月に花咲いてない滝汗
ちょっと期待してたのになー。日が当たらないからかな?
でも花芽っぽいのが出てきてます!
いつかな、いつかな〜♪ 



リス避けの網の下で、オンファロデスの芽がもっと出て来ました、たぶん... 

網をしてても隙間から潜ってくるので、リス避けにチリ(鷹の爪)を蒔いたんですが、それの芽じゃないだろうかとドキドキしています滝汗

先に芽が出たものは、もう本葉も出てます。



そして、クリスマスローズ!
花芽がずいぶん大きくなって上がって来ました!
クリスマスには咲きませんでしたが、1月中には花が見れるかなぁ?
今週は結構冷えるようなので、クリスマスローズにはいいんじゃないかな。

でも、どうも花があっち向いてしまう気がする滝汗 

空のポットがゴロゴロあるのは、猫のフン防止です。。。
もっと花壇がワサワサしてたら、こんなのいらないんですが、まだ隙間があって寂しいから仕方ないショボーン


そして、2月、3月ごろから種まきをするために、ちょこちょこ種を買い集めてます。
今年はカッティングフラワーも色々育てたいなーと思っています。


手始めに、人気らしいグレーのポピーと、



変わった色合いの背の低いコスモス、アプリコット・レモネード。
名前も可愛いデレデレ 
これは、もしかしたらThompson & Morganのオリジナル品種なのかも。


こちらのインスタアカウントを参考させてもらって、色々選んでますデレデレ 
素敵なお花のセレクションなんですー。

あと他は、春に間に合う様にボチボチ集めます。
春が楽しみだなぁ。



2. Great Fire of London -クリストファー・レンの夢の跡-

ロンドン建築シリーズ
1. Roman London


ローマ時代から飛んで、今度は中世のロンドンへ。

ローマ人は4世紀ほどロンドンに居続けましたが、ついには撤退し、アングロサクソンの移植が始まります。

ローマ人の作った壁の中のロンドンは、その後人口が減ったり、壁の外に村が出来ていったりしつつも(現在のCity of Westminster)、繁栄を続けます。その結果、壁の中は、道は狭く、家が犇めき合う過密状態になっていきます。

そして、当時のロンドンの建物は木造。
チューダー様式の建物といえば、ピンと来る方も多いでしょうか。


写真はこちらから

シティーのすぐ外、チャンセリーレーンに残る建物。


あとは、リバティーが一番有名かもしれないですね。


写真はこちらから



そして、1666年9月。
Pudding Laneのパン屋から火が出ます。
これが有名なロンドン大火災の始まりです。

うちの息子はY2でこれを勉強してましたが、ロンドンの外の学校はどうなんでしょう?しましたか?

ロンドン大火災の詳細は省きますが、壁の内側の3分の2ほどが焼け落ちたそうです。


この不幸を好機に変えたのは、Christopher Wrenという建築家。
当時の王様、チャールズ2世のお気に入りでした。

フランスで当時の最新の建築(=バロック)の影響を受けたレンは、大火災の前から聖ポール大聖堂の大規模な建て替えを提案していて、チャールズ2世は賛成していたものの、その他が大反対で頓挫。


そこへこの大火災。
すかさずレンや他の建築家たちは、チャールズ2世にロンドンの建て直し計画を提出したそうですが、実現の難しいプランだったようで、反応は薄かった... というかほぼ無視されたようです滝汗 

ロンドンの再建は、現存の通りを広くすることから始まり、
レンは、セントポール大聖堂の再建と51の教会の再建を任されます。
51とは言っても、当然全ての教会をひとりでデザインしたわけではないようです。

セントポール大聖堂の再建は、大火災の約4年後の1670年から本格的に開始します。


というわけで、レンの代表的な建築であるセントポール大聖堂が出来ていくわけなのですが、完成には約11年がかかりました。

さて、セントポール大聖堂といえば、あの特徴的なドームが有名です。
世界的にも、かなり大きいそうです。




夜、対岸のサウスバンクから見た時のドームの美しさと言ったら堪りませんデレデレ

このドーム、絶妙なバランスの大きさだと思いませんか?
私は、完璧に丁度いいと思うんです。
大き過ぎず、小さ過ぎず。

そして、内側から見上げた時も、高過ぎず、丁度よく感じるんです。


それは、このドームが3層構成だからなのです。



画像はこちらから。


外観の大きさに合わせたドームだと、大き過ぎて重過ぎ、構造に無理が生じる。

中に合わせたドームだと、小さ過ぎて、外から見ると見栄えが良くない。

なので、内側用のドームと、外観用のドームが別々にあるんです。
そのお陰で、重さも半減して、構造的にも楽になったそう。

とても単純な解決策ですが、私は「あ、なるほどー!」と感心してしまいました爆笑 


当時は、建築後進国だったイギリスですが、パリの教会、パンテオンには、セントポールの影響が見られるそうですよ。



レンが憧れたバロック様式の大聖堂。
奇しくも、デザインをして却下されたその数年後に、ロンドンの3分の2をも燃やし尽くした大火災のお陰で、夢が叶ってしまったのです。






しかし、頼まれてもいないのに、ロンドン再建のプランを描き上げて提出したり、しかもそれが実現の難しい(でも実現できれば理想的ではあった)内容だったり、どの時代もアーキテクトの心意気はあんまり変わらないものなんですねぇ。
昔出席した安藤忠雄氏の講演会でも、全く同じようなこと言ってましたよ(笑)



クリストファー・レンの有名な建物
ハンプトンコート
ケンジントンパレス
王立天文台(グリニッチ天文台)
オックスフォード大学トリニティーカレッジ内、レンライブラリー などなど。