3. Protected Vista -セントポール大聖堂を臨む-
ロンドン建築シリーズ
1. Roman London
2. Great Fire of London -クリストファー・レンの夢の跡-
ロンドン大火災関連のお話を続けようかと思ったのですが、セントポール大聖堂絡みのお話をもう一つ。
話は飛んで、現代です。
セントポール大聖堂は、シティー・オブ・ロンドンのど真ん中にあります。
第一回目のお話の通り、シティーは、ローマ時代から続くロンドンで一番古い地域であり、
現在のシティーに立って周りを見渡せば、3世紀世代の違う建築が、どこででも見れると言われています。
こんなに複雑に、建築の歴史を凝縮している場所は、世界の中でも珍しく、
それでいて、現在は世界の金融の中心地でもあるので、近代のインフラストラクチャーと、数世紀に渡る歴史的街並みを、どう折り合わせていくのかが難しい場所でもあります。
この問題を手っ取り早く解決するために、サッチャー元首相が大胆な政策を打ち立てるのですが、その話はまた別の機会に。
さて、
Protected Vista というものがロンドンにあるのはご存知ですか?
まずは、Shardです。
竣工当時は、ヨーロッパで一番高いビルでした。
設計は、イタリア人建築家のレンゾ・ピアノ。
初期の段階では、もっと太く、背も高かったそうです。
シャードの問題は、北ロンドン、Hampstead HeathにあるParliament Hillからの眺めでした。
セントポールは、シャードの北側にあるので、Vistaは守られているのですが、Parliament Hillから見ると、セントポールの背後にシャード聳える感じになってしまうんですね。
セントポール大聖堂のバックグランドとして、有りか無しか。
そこが焦点でした。
そこで、より細くしたり、高さを少し変えたりとの改善があり、
最後は、ロンドンの近代化は必要不可欠なものであるという結論で、建設の許可が下ります。(シャードは、サザーク区にあります)

写真はこちらから。
建設が進むに連れて、反対意見が強くなって行ったみたいなんですけどね。
こういうのが建築の傲慢さ、と私は思うのですが、建ち始めちゃったら、当然もう手遅れですよね。
パーラメントヒルが散歩圏内の私としては、セントポールがキレイに見えないのは少々寂しいなーとは思うんですが、
こちらは、リチャード・ロジャース設計です。(パリのポンピドゥーセンターのコンビですね!)
こちらは、Vistaには引っかからなかったので、高さに制限がなかったものの、
セントポール大聖堂の正面にに向かって伸びるFleet Streetに立つと、
チーズグレーターとセントポールが近過ぎる!ということが問題になりました。
結果、建物の半分くらいを斜めにに削ることで、セントポールから出来るだけ離す、ということで解決したのですが、
これが逆にこの建物の形を特徴的に仕上げて、チーズグレーターなんて愛称もついたわけですねー。
単純そうに見える解決策ですが、裏で右往左往するアーキテクトとクライアントの姿が目に見えます。。。
これだけ床面積が減るということは、貸せる・売れるスペースが単純に減ってしまうので、色々と試行錯誤がされたであろうことが容易に想像出来ます

Leadenhall BuildingのTwitterアカウントから。
最後は、One New Chage、ジャン・ヌーベル設計です。
私は個人的に、ヌーベルらしいとても詩的ないい建物だと思っているのですが、近代建築が大嫌いなチャールズ皇太子は公然と批判をしていましたね。
Stealth Bomberなんて名前も付いてます。
セントポールのすぐ隣にあるせいで、その近代性がより際立ってしまい、現代建築が嫌いな人たちの批判の的になりやすいかもしれません。

ここも、Vistaで形がほぼ決まってしまった建物です。(こちらはVistaだけではなく、St Paul's Gridというのも大きく関わっています)
それでも、流れるようなこの形と、
実際に中に入った時に見える、セントポール。
コンテクスト(外因)を上手く活かしたいい事例だと思います。


マスタープランと全体像の画像はこちらから。
サイトプランを見ると、建物がセントポールに向かって、大胆に開いていく様がよくわかります。
形では、あまり建築家の個性を発揮出来なかったかもしれませんが、
ファサードは、まるで空に溶けて行くような、ジャン・ヌーベルらしい詩的で美しい仕上がりだと思います。

ルーフテラスにあるバーからの眺めは、ロンドンで一番、セントポールを近くで見れる、貴重な場所ですよ♬

6th Floor、ルーフテラスのバーからの眺め。

Protected Vistaの一つ、パーラメントヒルからの実際の眺めです。メモリアルベンチが数個ありますが、その内一つが、アーキテクトだった方のものでした。
私もここに作ってもらおうかなー、なんて。
*クレジットが付いていないものは、私が自分で撮った写真です。
1. Roman London
2. Great Fire of London -クリストファー・レンの夢の跡-
ロンドン大火災関連のお話を続けようかと思ったのですが、セントポール大聖堂絡みのお話をもう一つ。
話は飛んで、現代です。
セントポール大聖堂は、シティー・オブ・ロンドンのど真ん中にあります。
第一回目のお話の通り、シティーは、ローマ時代から続くロンドンで一番古い地域であり、
現在のシティーに立って周りを見渡せば、3世紀世代の違う建築が、どこででも見れると言われています。
こんなに複雑に、建築の歴史を凝縮している場所は、世界の中でも珍しく、
それでいて、現在は世界の金融の中心地でもあるので、近代のインフラストラクチャーと、数世紀に渡る歴史的街並みを、どう折り合わせていくのかが難しい場所でもあります。
この問題を手っ取り早く解決するために、サッチャー元首相が大胆な政策を打ち立てるのですが、その話はまた別の機会に。
さて、
Protected Vista というものがロンドンにあるのはご存知ですか?
Protected Vistaとは、なんとも建築家泣かせのロンドンの条例なのですが、「市内の複数のキーポイントから、セントポール大聖堂が見える」のを、遮ってはならないというものです。
要するに、背の高い建物を作って遮っちゃダメだよってことです。
キーポイントの所在地ですが、
北ロンドンからは、
Alexandra Palace
Kenwood House (Highgate
Parliament Hill (Hampstead Heath)
Primrose Hill
南ロンドンは、
Greenwich Park
Blackheath Point
そして一番遠いのが、
Richmond ParkのKing Henry VIII’s Mounds

写真はこちらからです。
以上6つです。
ロンドンのビルの高さ規制ってどうなってるの?と思っていた方がいましたら、正にこれが一番難しい規制になるかと思います。
(もちろん、他にも色々と細々したものがあります)
さて、ここ10年ほどのシティーの高層ビル建設はめざましいものがありましたけど、実はこのVistaとセントポール大聖堂とのバランスによって、デザインが制限されていました。
もちろん、立地の場所によっては、Protected Vistaに影響されなかったものもあります。
シティーの高層ビル開発で、セントポール大聖堂のvistaがよく問題に上がったので忘れがちですが、実は他にもウェストミンスター宮殿へのVistaもあります。
というわけで、例を3つ。
要するに、背の高い建物を作って遮っちゃダメだよってことです。
キーポイントの所在地ですが、
北ロンドンからは、
Alexandra Palace
Kenwood House (Highgate
Parliament Hill (Hampstead Heath)
Primrose Hill
南ロンドンは、
Greenwich Park
Blackheath Point
そして一番遠いのが、
Richmond ParkのKing Henry VIII’s Mounds

写真はこちらからです。
以上6つです。
ロンドンのビルの高さ規制ってどうなってるの?と思っていた方がいましたら、正にこれが一番難しい規制になるかと思います。
(もちろん、他にも色々と細々したものがあります)
さて、ここ10年ほどのシティーの高層ビル建設はめざましいものがありましたけど、実はこのVistaとセントポール大聖堂とのバランスによって、デザインが制限されていました。
もちろん、立地の場所によっては、Protected Vistaに影響されなかったものもあります。
シティーの高層ビル開発で、セントポール大聖堂のvistaがよく問題に上がったので忘れがちですが、実は他にもウェストミンスター宮殿へのVistaもあります。
というわけで、例を3つ。
まずは、Shardです。
竣工当時は、ヨーロッパで一番高いビルでした。
設計は、イタリア人建築家のレンゾ・ピアノ。
初期の段階では、もっと太く、背も高かったそうです。
シャードの問題は、北ロンドン、Hampstead HeathにあるParliament Hillからの眺めでした。
セントポールは、シャードの北側にあるので、Vistaは守られているのですが、Parliament Hillから見ると、セントポールの背後にシャード聳える感じになってしまうんですね。
セントポール大聖堂のバックグランドとして、有りか無しか。
そこが焦点でした。
そこで、より細くしたり、高さを少し変えたりとの改善があり、
最後は、ロンドンの近代化は必要不可欠なものであるという結論で、建設の許可が下ります。(シャードは、サザーク区にあります)

写真はこちらから。
建設が進むに連れて、反対意見が強くなって行ったみたいなんですけどね。
こういうのが建築の傲慢さ、と私は思うのですが、建ち始めちゃったら、当然もう手遅れですよね。
パーラメントヒルが散歩圏内の私としては、セントポールがキレイに見えないのは少々寂しいなーとは思うんですが、
アーキテクトとしては、ロンドンの現代建築が発展していくことは、いいことだと思います。
なので、特に反対でもないですけど、
だからと言って、大賛成!でもないですね。。。

ある冬の、霧の中のシャード
次は、チーズグレーターこと、Leadenhall Building。
なので、特に反対でもないですけど、
だからと言って、大賛成!でもないですね。。。

ある冬の、霧の中のシャード
次は、チーズグレーターこと、Leadenhall Building。
こちらは、リチャード・ロジャース設計です。(パリのポンピドゥーセンターのコンビですね!)
こちらは、Vistaには引っかからなかったので、高さに制限がなかったものの、
セントポール大聖堂の正面にに向かって伸びるFleet Streetに立つと、
チーズグレーターとセントポールが近過ぎる!ということが問題になりました。
結果、建物の半分くらいを斜めにに削ることで、セントポールから出来るだけ離す、ということで解決したのですが、
これが逆にこの建物の形を特徴的に仕上げて、チーズグレーターなんて愛称もついたわけですねー。
単純そうに見える解決策ですが、裏で右往左往するアーキテクトとクライアントの姿が目に見えます。。。
これだけ床面積が減るということは、貸せる・売れるスペースが単純に減ってしまうので、色々と試行錯誤がされたであろうことが容易に想像出来ます


Leadenhall BuildingのTwitterアカウントから。
最後は、One New Chage、ジャン・ヌーベル設計です。
私は個人的に、ヌーベルらしいとても詩的ないい建物だと思っているのですが、近代建築が大嫌いなチャールズ皇太子は公然と批判をしていましたね。
Stealth Bomberなんて名前も付いてます。
セントポールのすぐ隣にあるせいで、その近代性がより際立ってしまい、現代建築が嫌いな人たちの批判の的になりやすいかもしれません。

ここも、Vistaで形がほぼ決まってしまった建物です。(こちらはVistaだけではなく、St Paul's Gridというのも大きく関わっています)
それでも、流れるようなこの形と、
実際に中に入った時に見える、セントポール。
コンテクスト(外因)を上手く活かしたいい事例だと思います。


マスタープランと全体像の画像はこちらから。
サイトプランを見ると、建物がセントポールに向かって、大胆に開いていく様がよくわかります。
形では、あまり建築家の個性を発揮出来なかったかもしれませんが、
ファサードは、まるで空に溶けて行くような、ジャン・ヌーベルらしい詩的で美しい仕上がりだと思います。

ルーフテラスにあるバーからの眺めは、ロンドンで一番、セントポールを近くで見れる、貴重な場所ですよ♬

6th Floor、ルーフテラスのバーからの眺め。

Protected Vistaの一つ、パーラメントヒルからの実際の眺めです。メモリアルベンチが数個ありますが、その内一つが、アーキテクトだった方のものでした。
私もここに作ってもらおうかなー、なんて。
*クレジットが付いていないものは、私が自分で撮った写真です。