唇にヒゲが生えた男   | 人差し指のブログ

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本を読んで面白かったところを紹介します

 

 

「 ことばと社会 」

鈴木孝夫 (すずき たかお 1926~)

中央公論社昭和50年4月発行・より

 

 

 

言語が違うと、時々想像もつかないような、面白い食違いが現れてくるもう一つの実例をあげよう。

 

 

日本語で 「唇」 と言えば、口の外側の、輪状に見える、通例赤みを帯びた部分を指すことは子供でも知っている。

 

 

さて、この 「唇」 を英語では何と言うかなと思って辞書を見ると、lip と書いてある。

 

 

ドイツ語では Lippe となる。

 

 

このように唇すなわち lip という知識を持って、ゴールズワージィの有名な 「林檎の木」 という短編小説を読んで行くと、不思議なことにぶつかってしまう。

 

 

登場人物の一人が 「唇にヒゲの生えた男」 と書いてあるのだ。

 

 

こんな化物みたいな男がいる筈はないが、bearded lip を文字通り訳せば、どうしてもそうなってしまう。

 

 

実は、唇と lip は夫々が指示する対象の範囲がちがい、lip の方は、鼻と唇の間の部分も含めることが出来る言葉なのであり、その点ドイツ語の Lippe も同様である。

 

 

 

                                         

 

 

 

5月12に「お経の漢訳は正確か?」と題して谷沢永一と渡部昇一の対談を紹介しました。コチラです。 ↓

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5月13日に「聖書の口語訳がヒドイ・遠藤周作」と題して遠藤の発言を紹介しました。コチラです。 ↓

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5月14日に~「潔い」は英訳できるか?~と題して日下公人の文章を紹介しました。コチラです。↓

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2017年8月18日に~「黒い白鳥・スイスの海軍」は誤訳が原因~と題して渡部昇一と竹村健一と堺屋太一の対談を紹介しました。コチラです。↓

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2017年6月23日に「外国思想の紹介とネタ本と翻訳」と題して鹿島茂の文章を紹介しました。コチラです。↓

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2016年12月25日に「白タビを白手袋と訳す」と題して徳岡孝夫の文章を紹介しました。コチラです。↓

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2016年12月21日に「偉い先生の翻訳」と題して徳岡孝夫の文章を紹介しました。コチラです。↓

https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12229957842.html

 

 

 

朝霞(埼玉)の花火大会 8月4日 中央公園にて撮影