「 ことばと社会 」
鈴木孝夫 (すずき たかお 1926~)
中央公論社昭和50年4月発行・より
言語が違うと、時々想像もつかないような、面白い食違いが現れてくるもう一つの実例をあげよう。
日本語で 「唇」 と言えば、口の外側の、輪状に見える、通例赤みを帯びた部分を指すことは子供でも知っている。
さて、この 「唇」 を英語では何と言うかなと思って辞書を見ると、lip と書いてある。
ドイツ語では Lippe となる。
このように唇すなわち lip という知識を持って、ゴールズワージィの有名な 「林檎の木」 という短編小説を読んで行くと、不思議なことにぶつかってしまう。
登場人物の一人が 「唇にヒゲの生えた男」 と書いてあるのだ。
こんな化物みたいな男がいる筈はないが、bearded lip を文字通り訳せば、どうしてもそうなってしまう。
実は、唇と lip は夫々が指示する対象の範囲がちがい、lip の方は、鼻と唇の間の部分も含めることが出来る言葉なのであり、その点ドイツ語の Lippe も同様である。
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朝霞(埼玉)の花火大会 8月4日 中央公園にて撮影