こんにちは~。
今日は少しほっとできるような暖かさも感じました!
とても分かりやすく良い記事でした。
サイトにフィギュアの採点などが分かりやすく表なども見られますよ!
日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXZZO65539700Z10C14A1000000/?df=4&dg=1
フィギュアの採点、審判はどこを見ているか
■は踏み切り違反、※は後半ジャンプのため基礎点が1.1倍、スピン・ステップのカッコ内の数字はレベル
ソチ五輪が2月7日に開幕する。男女とも日本勢にメダルの期待がかかるフィギュアスケートへの関心は高い。しかし、どのような判断基準で得点が決まるのか一般的にわかりにくい面がある。審判は選手のどこを見ているのか、質のいい演技とは何か――。
■技術点と演技構成点の2項目で
フィギュアスケートの得点はジャンプなどを見る「技術点」、スケーティング技術や表現などを評価する「演技構成点」の2項目で構成されている。技術点は、技術スタッフがジャンプやス<ピンなど要素の一つ一つについて、回転数や難易度(レベル)を判定して「基礎点」が決定する。さらに審判が「出来栄え点」を7段階(プラス3~マイナス3)で評価、2つの合計が技術点となる。
まず最も得点の比重が高いジャンプ。審判はジャンプに入る前の動作や踏み切ってからの空中の姿勢、高さや回転に加え、ランディング(着氷)の姿勢やその後も流れがあるのかなどを総合的に見る。
ただ、その場で3回転を跳んで降りても、流れがないとなると出来栄え点は伸びない。高さがいくらあっても全体のバランスが取れていないと評価は高くならない。跳ぶ前に「さあ跳びますよ」と準備動作が明らかにわかるジャンプは質的に高いとはいえない。
■放物線的なジャンプ、高く評価
要するに、質がよく理想的といえるジャンプは十分なスピードと自然な流れのなかで、しっかりと回転がコントロールされ、なおかつ跳んだ後も流れがあるものだ。放物線的なジャンプが高く評価される。
高さやスピードはもちろん求められる。高さがあると滞空時間も長くなり回転も楽になる。全体に余裕が出てくる。
特に連続ジャンプは高さが必須で、1本目に高さがないジャンプを跳ぶと回転はギリギリとなり、2本目のジャンプは詰まったような形になって回転が足りなくなる。
高さを出すにはスピードが非常に重要になる。スピードがなくても、ジャンプに高さがある選手がまれにいるけれど、ジャンプそのものに流れがないからその場跳びのようになり、全体の演技の中でそこだけポコンと別物になってしまう。
■最近の選手、バランスとれレベル高く
跳んでいるときの姿勢も当然見る。質の高いジャンプというのは、ひと言でいえばきれいなジャンプのことで、軸がしっかり真っすぐになっているのがいい。現実に斜めになって氷に降りるジャンプは、転倒などの失敗につながる。今の採点法では出来栄えがプラスかマイナスかはっきり出て、得点を取るために意識しているので、最近の選手のジャンプは全体的にバランスがとれていて、レベルは高くなっている。羽生結弦(ANA)やパトリック・チャン(カナダ)、高橋大輔(関大大学院)もきれいなジャンプを跳ぶ。
スピンでは回転数や姿勢、軸が最後までしっかりしているかなどを見ている。最後にスピードががくんと落ちるとなると、出来栄え点はゼロになることもある。
■スピンのポイント、体を一本の軸に
今季はユリア・リプニツカヤをはじめとしたロシアの女子が非常に素晴らしいスピンを回っている。スピードが落ちるどころか、最後は逆に加速していく。難しい体勢で、回っている場所が動くこともない。レベルの評価も高く、出来栄えでも3点の加点が取れるほどで大きな武器となっている。
逆に悪いスピンというのは、回転数はあってもスピードがなく、回っている場所がどんどん移動していってしまう。バランスなどがコントロールできていないと評価されない。速さをキープするのは大変なことではあるが、正確な位置や姿勢といった基本をきっちりと押さえていれば、それほどスピードが落ちることはない。スピンは体を一本の軸にすることが大事で、スピンを真上からみた場合、軸の幹が太くなるのではなく、点に近いような状況になると速くなる。
ジャンプとスピンは運動能力があると、若いジュニアの選手でもどんどん習得していって、シニアに負けない演技をすることもある。ところが、ステップは正確なエッジ(刃)を使ったフットワークがベースになるので、選手の実力やスケーティング技術がものをいう。
■目を見張るフットワーク、高橋と浅田
正確なターンやひねり動作が要求され、なおかつ今は最高難度のレベル4を取るとなると、いろいろな複雑で多様な動きが必要になってくる。正確なエッジワークをできているかどうかで違いがパッと出る。
逆に正確にこなせない選手は加速するどころか失速し、最後は止まってしまうような状態になる。フットワークで目を見張るのは男子だと高橋、女子だと浅田真央(中京大)になる。
2人ともステップで観衆から拍手をもらえる。ステップそのものは得点の割合が低いかもしれないが、プログラム全体の表現や構成、演出面で大きな効果を生み出す。審判はステップの正確さ、それと同時に音楽との関係を評価する。ステップそのものが音楽となるのが一番いい。それだけ難しいものだ。
■スケーティング技術、選手の総合力
演技構成点は5コンポーネンツとも呼ばれ、「スケーティング技術」「技のつなぎ」「演技の表現」「振り付け」「曲の解釈」の5項目で構成され、0.25点刻みの10点満点で評価される。技術点がジャンプなど一つ一つの要素を評価しているのに対し、演技構成点は演技全体を見て評価する。「ジャンプで転倒したのになぜ高得点が出るのか」と疑問を持つ人もいると思うが、技術点でマイナスになっても、演技構成点で総合的な滑りを評価されることはある。
スケーティング技術は、選手が持っている全体の技術レベル、総合力のようなものだ。細かい部分ではバランスやリズミカルな膝の動き、足の運びの正確さなどを評価するが、演技を見て「滑りが素晴らしい」「能力的にハイレベルだ」などと感じさせる要素がすべて含まれている。この選手はどんなことがあっても、8点以上の点数を出せると思うこともある。
技のつなぎは「はい、ジャンプを跳びますよ」と演技が一つ一つ途切れるのではなくて、うまくつながっていて自然な流れになっているかがカギになる。ジャンプについていうと、多かれ少なかれ準備動作があり、評価を得るのが一番難しい項目かもしれない。
■演技の表現、プログラムの出来が左右
演技の表現、振り付け、曲の解釈の3項目は重なる部分も多い。演技の表現はプログラムの出来が左右する。いい演技をすればパフォーマンスが上がっていい評価になる。音楽との関係や滑る選手が持っている個性をうまく生かしているかどうかも大きい。
振り付けはジャンプやスピンの一つ一つが、リンク全体にどうレイアウトされているかという点も審判は見ている。リンクの同じところで同じジャンプを跳んでいたり、ジャンプがプログラムの前半に集中していたりすれば、いまひとつの評価となる。配置のバランスのよさもシビアに見ている。一番大事な点はその選手が持っている能力を音楽と調和させること。その要素の中にバランスがとれたプログラム内容を考えていくことが大切だ。選手を生かすも殺すもプログラム次第だといえる。
曲の解釈は音楽の持つ雰囲気や情感を選手がどれだけ出しているか。「滑りそのものが音楽だ」となってくると高い得点が出る。たとえば浅田、鈴木明子(邦和スポーツランド)はそれを感じさせる選手だ。経験が浅い選手には情感を出すことは難しく、年齢が左右する部分でもある。
■フィギュアと音楽、切り離せず
フィギュアと音楽は切っても切り離せない。ステップ一つとっても、音楽性によって体をひねったり、手足を十分に使ったり、いろいろな表現法がある。いくら難しい内容を盛り込んで得点を取ろうと思っても、音楽そのものを体全体で表現できなければ高い評価は得られない。音楽と調和のとれたプログラムを、会場の空間まで利用するように立体的に表現できれば、審判も感銘を受け、演技構成点は伸びる。審判は一つ一つの技術からプログラム全体まで見ており、ありとあらゆる面をチェックしている。
(日本スケート連盟名誉レフェリー)