39本目(8月1日鑑賞)
終戦のエンペラー
監督:ピーター・ウェーバー
プロデューサー・キャスティング:奈良橋陽子
プロデューサー:ゲイリー・フォスター/野村祐人
脚本:デヴィッド・クラス/ヴェラ・ブラシ
撮影監督:スチュアート・ドライバーグ
美術:グラント・メイジャー
衣装:ナイラ・ディクソン
編集:クリス・プラマー
音楽:アレックス・ヘッフェス
原作:岡本嗣郎
出演:マシュー・フォックス/トミー・リー・ジョーンズ/初音映莉子/西田敏行/羽田昌義/火野正平/中村雅俊/夏八木勲/桃井かおり/伊武雅刀/片岡孝太郎
1945年8月30日、敗戦国となった日本の統治のために連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の司令官マッカーサー(トミー・リー・ジョーンズ)が厚木基地飛行場に降り立った。本国がマッカーサーに期待しているのは天皇の極刑。しかし、それを実行すれば日本人が暴動を起こすと確信し、着任早々、日本通として知られるフェラーズ(マシュー・フォックス)に、開戦が天皇の意思なのかどうかを調べよと極秘任務を下す。本国が示すリミットはわずか10日間。フェラーズは戦犯リストにあるひとりひとりに尋問を始める。
厚木飛行場に降り立ったマッカーサー。
忌わしい映像から映画は始まる。今日がその日、原爆投下である。今まできのこ雲をみても「原爆の悲劇を繰り返してはいけません」、そんな実態のない、教わったようなきれいごとしか浮かばなかった。ところが、今回、冒頭のその映像を観て絶句した。痛かった。哀しかった。泣きそうになった。あの時の感覚に近いことに気付いた。そう、旅客機の衝突により壁面をえぐられ、黒煙を吐き続けるビル…9・11だ。
街の上空に光の球があらわれる。みるみる大きくなる。光に包まれた人々は、自分の死を覚悟する時間さえ与えられなかった。生きながらえた方もまた、自分はおろか自分の子供たちにまで「被ばく」の言葉がついて回る事態を予測しえなかったはずだ。
あらためて思う。「原爆の悲劇を絶対に繰り返してはいけません」。前に思っていた時より、少しだけ実態がある気がする。それでも、まだまだ。「気がする」だけなのだろう。
衝撃のシーンで幕を開けた本作。飛行機内のフェラーズらの映像に切り替え。厚木飛行場に現れたマッカーサー。パイプをくわえたその姿は、よくみるあの写真と同じだ。以降、フェラーズの思い出パートの一部以外は全編日本が舞台。
日本を描いたハリウッド映画に、なんちゃってTOKYOが多いのは、みなさんご承知の通り。GIジョーしかり。待機作「ウルヴァリンSAMURAI」も心配。「47RONIN」はかなりきな臭い。ま、いいかと、笑って許せるレベルであってほしいと切に願う。
で、本作はどうか。凄い。日本そのものの風景。終戦直後の廃墟と化した東京。こんな惨状だったのか。フィクションではあるけど、どこまでホントか、判断する知識がない。ただ言えるのは、今までドラマなどで観てきたどの光景よりも、確実にひどかった。
リアルに再現された日本の風景。
日本人のエキストラの配置がいい。アジア人ひっくるめて「日本人」としてエキストラをバラまく映画は数多くある。今作はおそらく、ほとんどがホントの日本人なのではないか。背景音として聞こえてくる日本語の呟き…これがホントの日本語…だと思う。蕎麦屋のおかみがいかしてる。
今作は多くの日本人俳優も参加。しかも、2、3の例外を除き、普段からテレビや映画でお目にかかっているお馴染みの面々。今作でクローズアップされたのは、プロデューサーの奈良橋陽子さんの存在。ハリウッドでキャスティングの仕事をしていた奈良橋さんは、これまで渡辺謙、真田広之等々、錚々たる日本人俳優を世界のエンターテイメント市場に送り出しています。その奈良橋さん、日本人のキャスティングのみの依頼に応えるだけでなく、日本人の一人として「太平洋戦争」という、日本だけではなく、世界中の人々にとって大切なテーマを発信してみたいと、一冊の本『終戦のエンペラー 陛下をお救いなさいまし』をひっさげ、プロデュースに乗り出しました。
日本人のリードによるハリウッド映画。いままで見せられていた「なんちゃって」はどこにも存在しない、生な日本像が発信されることになった。
実は奈良橋さん、今作にも登場する、夏八木勲さん演じる関屋宮内次官のお孫さんなのだそうです。
フェラーズ役のマシュー・フォックス、マッカーサー役のトミー・リー・ジョーンズが話の中心になるのですが、火野正平さん、中村雅俊さん、夏八木勲さん、伊武雅刀さん、西田敏行さんらの日本人俳優たちが、メインの二人に気後れすることなく対峙する。素晴らしかった。
ヒロインを演じた初音映莉子は初見。いや、「ノルウェイの森 」に出ていたそうなのですが、申し訳ありません、記憶にございません。大抜擢といっていい。もしかしたら蒼井優でもあってたかも、と思ってしまい…さらに申し訳ございません。公開間近の「ガッチャマン」にも出ているそうなので注目。
通訳としてフェラーズにつきっきりだったのが羽田昌義。「ラスト・サムライ」で映画デビューなのだそうで、奈良橋さんの秘蔵っ子? たしかに彼、よかったです。どことなく竹野内豊にも似てたり。今後もハリウッド中心の活動なのだとか。顔を覚えておいて損はなさそう。
衝撃の事実を語るシーンの伊武さん。
hiroは太平洋戦争のこと、全然知らなかったと痛感。
なぜかこの頃昭和史、とくに太平洋戦争についての知識欲に駆られる。日本史を教わっていた頃も、3学期になって時間がなくなり、飛ばし飛ばしにスル―された時代。日本史好きを気取っていても、ほとんど無知に近い時代。戦争全般を否定していた。それはいい。が、知りもしないで否定していた。その時代に生きていた人々の「事情」も知らずに。それがよくない。
太平洋戦争に対する無知。「宮城(きゅうじょう)事件」…聞いた記憶はあるが、皇居を襲った軍事クーデターなんてただ事じゃない。知っておくべき事件。真珠湾攻撃直前の「宣戦布告」についても、知ったのはつい最近。映画「聯合艦隊司令長官 山本五十六」を観てからだ。いかん。知らなすぎだ。
小説「永遠のゼロ」との出会い。宮崎アニメ「風立ちぬ 」は零戦の開発者・堀越二郎の物語。「永遠のゼロ」は映画化となり、今冬公開。そしてこの「終戦のエンペラー」の公開。
符合…なんでしょうか。まずは知ろう。意見するのはその後で。
どこまで事実で、どこまでフィクションなのか、まだ判別できない。だけど、ラストの片岡さん演じた天皇裕仁には胸を打たれた。これが日本映画だったとしたら、おそらくここまでは描かなかっただろう。ハリウッドだからこそ。
hiroでした。
8月6日。今日、これをアップしたかったんです。