Distance~時を超え距離を超えた二人の物語 -14ページ目

第56話〜転機

みきには未成年の一人息子がいた。

自分の力で生活すると、みきと遠く離れた街で暮らしていた。
その息子を、
母親として当然ながらみきは心から愛し、見守っていた。

すべてが順調にいっていたと思っていた矢先、
元夫からメールがくるようになった。

未成年の子どもに一人暮らしをさせるとは、
母親として失格だ‥‥
親権は自分に譲ってもらう‥‥弁護士を立てて手続きをする‥‥

何ら問題がないにも関わらず、
みきと息子との関係を阻害するようなメールや電話。
親子でしっかりと話し合って決めた生活に、
水を差すような内容に、みきは困惑していた。

それはやがて、息子にまで及ぶようになっていった。
少年にとって、それは耐えられないものだった。

 「もう どうしていいか わからない‥‥」

そんな悲痛なメールや電話がみきに届くようになった。

ひろはみきから、
その内容の大筋を聞いて知っていた。

男として、父親として、
元夫のそんな態度に理解をすることができなかった。
どうしてそんなことを言ってくるのか‥‥
ひろなりに考えてみても理解のできないものだった。

逆に、みきの息子の気持ちが理解できた。


 「子どものところに行ってやれよ。
  そして、どんな生活をしているのか確認して来いよ」

 『う、うん‥‥』

 「ちゃんと確認して、落ち着いたらまた帰ってくるんだ」

 『うん‥‥』

みきは息子の住む広島へ様子を見に行く決心をした。





Distance~時を超え距離を超えた二人の物語-小さな幸せ

第55話〜流氷の海へ

ふたりでテレビを見ていたら
映像には流氷が映し出されていた。

 『流氷って見たことないな』
 「そうか、それじゃ見に行こう」
 『えっ?ほんと?』
 「うん、行こう」
 『嬉しいな』

テレビやインターネットで色々と調べた。
街に流氷が接岸する日が分かり、2泊3日の旅に出た。

ひろは、自分が今まで見たたくさんの風景をみきに見せたかった。
みきは、ひろが見て来たたくさんのものを見たかった。

大きな海を見渡せる岬にふたりで立った。

 『うわー凄くきれい!』

歓声をあげるみきをみて、ひろは嬉しかった。
一緒に来て良かったと、また思った。

白鳥の佇む湖へも行った。

広大な平野が続くいつもなら退屈な道も、ふたりだと時間はすぐに過ぎた。
クルマの中では懐かしい曲の並ぶCDをかけた。
夜は、星の見える露天風呂で空を見上げた。

ふたりで同じ道を走ること、歩くこと‥‥
ずっとこのまま続くことができたら‥‥

心の中でふたりとも願っていた。

しかし、神様はそれをまだ善しとしなかった‥‥





Distance~時を超え距離を超えた二人の物語-オホーツクの海

第54話〜24年目のクリスマス

クリスマスはふたりで過ごそうと、
運河の近くにある古い建物を改造したホテルを予約した。

大きなホールのあるレストランで食事を楽しんだ。
ステージのピアノの弾き語りの曲が懐かしかった。
赤ワインはきれいな色に見えた。

部屋に戻り、シャンパンを抜き乾杯した。
予約してあったケーキを食べた。
飽きることなくキスをした。

そして昔のようにいつものように
また朝まで抱き合って眠った。
それはもう、とても自然だった。

ずっとふたりでいたい‥‥

その日も違う部屋でずっと抱き合っていた。

24年ぶりのふたりだけのクリスマス‥‥

またこうしてふたりで過ごせることに感謝をした。
そして、新しい年もふたりだけで迎えた。





Distance~時を超え距離を超えた二人の物語-クリスマス

第53話〜逢瀬

週末になるとふたりは夜をともにする日々が続いた。

港が見えるホテル、ネオンが見える高層のホテル‥‥
のんびりとふたりの時間を楽しんだ。

若い時、できなかったデートも楽しんだ。

古いバーで色んな酒を飲んだり
焼き鳥屋で日本酒を傾けたり、
思い出のカラオケ店で歌ったり‥‥

みきの「逢いに来て!」というメールに
ひろは深夜にクルマを飛ばしたこともあった。

しかしそれは、
まだ正式に離婚していないひろとみきの関係は不倫でもあった。
みきにはそれが不満で不安でならなかった。

 「みき ずっとオレのそばにいてくれよ」

ひろは甘えるようにみきのうなじにキスをしたとき

みきは身を返し、

 「それじゃ早く 奥さんと別れて」

ひろはみきのその言葉に我に返った。
重い一言だった。

きちんとこれからのことを考えていない自分に腹が立った。
同時に、みきの自分に向いている気持ちが嬉しく思った。

そして、家を出る準備に取りかかった。
すべてにけじめをつける用意をはじめた。





Distance~時を超え距離を超えた二人の物語-語らい

第52話〜一緒の朝

ふたりで朝を迎えた。
そしてダム湖の寒い湖畔にいた。

クルマの中でみきは、
ひろに寄り添うようにもたれかかっていた。
そしてキスをせがむような仕草を見せた。

ひろはそんなみきが愛おしく思えてならなかった。

 「みき またオレと 付き合ってくれないか?」
 
 『うん』

ふたりにとって夢のような瞬間だった。

 「ここにこうしていること 夢じゃないよな」

 『うん 夢じゃないよ』

ひろはみきを強く抱きしめた。
シートの間が邪魔に思えた。

ひろはみきに、みきはひろに
別れてから今までの暮らし、お互いへの正直な思いを話した。
隠すことなどもう何もないからだった。

 「オレはオマエのことをずっと思っていた。
  忘れたことなど一度もなかった」

 『いつも、ずっとあなたのことを思っていた。
  だからどうしているのか気になって検索してみたの』

どんな女、どんな男と出会い、別れたかさえも話した。

ひろはみきの前を過ぎ去った男たちに自分を重ねた。
みきはひろと一緒にいた女たちに嫉妬した。

時折、強い秋風がクルマを揺さぶった。

またすぐに、肌を重ねたいと思ったふたりだった。










Distance~時を超え距離を超えた二人の物語-運河の街にて