第46話〜晩夏に
みきが春に帰ってきた。
突然ひろに電話がかかってきた。
「北海道に帰ってきたよ」
『そうか。元気なのか?』
「元気よ。ひろは?」
『元気だよ。今度メシでも食いに行こうぜ』
「うん」
忙しい仕事の合間を縫って、ふたりは4年ぶりに会った。
ひろはみきを見て驚いた。
みきは以前とは違ってやつれたように見えたからだった。
そして、きっと、相当苦労したに違いないと思った。
古い倉庫を改造した、おしゃれな喫茶店に入った。
「元気そうだな」
『うん、元気よ』
「そっか」
『元気そうね」
「うん」
煙草をプカプカとくゆらすみきを見て
ひろはみきのことを少し知った気がした。そして心配になった。
昔からの友だちのような会話‥‥
離婚のことなど話すことも聞くこともしなかった。
しかしひろは、自分の離婚のことをみきに話した。
「オレさ、女房から離婚を言われちゃった」
『えっ?どうして?』
「オレのことが嫌いになったんだろう」
『どうするの?これから』
「うん まだ何も考えていない」
『そう‥‥』
みきはひろにそれ以上聞くことができなかった。
ひろはみきにそれ以上話したくもなかった。
突然ひろに電話がかかってきた。
「北海道に帰ってきたよ」
『そうか。元気なのか?』
「元気よ。ひろは?」
『元気だよ。今度メシでも食いに行こうぜ』
「うん」
忙しい仕事の合間を縫って、ふたりは4年ぶりに会った。
ひろはみきを見て驚いた。
みきは以前とは違ってやつれたように見えたからだった。
そして、きっと、相当苦労したに違いないと思った。
古い倉庫を改造した、おしゃれな喫茶店に入った。
「元気そうだな」
『うん、元気よ』
「そっか」
『元気そうね」
「うん」
煙草をプカプカとくゆらすみきを見て
ひろはみきのことを少し知った気がした。そして心配になった。
昔からの友だちのような会話‥‥
離婚のことなど話すことも聞くこともしなかった。
しかしひろは、自分の離婚のことをみきに話した。
「オレさ、女房から離婚を言われちゃった」
『えっ?どうして?』
「オレのことが嫌いになったんだろう」
『どうするの?これから』
「うん まだ何も考えていない」
『そう‥‥』
みきはひろにそれ以上聞くことができなかった。
ひろはみきにそれ以上話したくもなかった。
第45話〜故郷へ
みきは離婚をし、子どもとふたりの生活がスタートした。
その時期、ひろは妻からの離婚の申し出を受け入れた。
これからのことを考えていた。完全に家庭内別居だった。
子どもたちのことを考えて、
いつ家を出ようかタイミングを待っていた。
春になってみきは、
ひとりで広島で生活すると決めた息子を残し北海道に帰ることにした。
そしてメールでひろに報告した。
「離婚しました。北海道に帰ります」
『そうか‥‥』
気の利いた返事ができなかった。
離婚するとは聞いていたが、
あまりそれを驚きもしなかった。
家庭のことや仕事が忙しすぎて身も心もボロボロだった。
みきのことを考える余裕もないくらいだったからだ。
みきはこれからどうするんだろうか‥‥
春になり、みきは北海道に帰ってきた。
その時期、ひろは妻からの離婚の申し出を受け入れた。
これからのことを考えていた。完全に家庭内別居だった。
子どもたちのことを考えて、
いつ家を出ようかタイミングを待っていた。
春になってみきは、
ひとりで広島で生活すると決めた息子を残し北海道に帰ることにした。
そしてメールでひろに報告した。
「離婚しました。北海道に帰ります」
『そうか‥‥』
気の利いた返事ができなかった。
離婚するとは聞いていたが、
あまりそれを驚きもしなかった。
家庭のことや仕事が忙しすぎて身も心もボロボロだった。
みきのことを考える余裕もないくらいだったからだ。
みきはこれからどうするんだろうか‥‥
春になり、みきは北海道に帰ってきた。
第44話〜それぞれの溝
10年数年ぶりに再会したふたり‥‥
みきはいつ会っても何も変わっていないひろに安心した。
ひろは幸せそうに暮らしているみきに安心した。
でもふたりとも、心のどこかでなにかを求め合っていた。
それからもメールや電話でお互いに通じていた。
日々の生活などの報告だった。
それは差し障りのない内容だった。
ふたりともお互いの家庭のことを話すことはあっても、
子どもたちのことだけだった。
本当のことを話しても変わることもないだろうし、
心配をかけてしまう‥‥そんな気持ちだった。
みきは夫との間にまただんだんと溝が深まり、
家庭内別居だった。
ひろは子どもたちの面倒はよく見たが、妻との距離が離れつつあった。
妻はひろに頼らない生き方を探しはじめていた。
そして年月が経つにつれて、ひろも夫婦間に溝ができていた。
いつしかふたりとも少しずつ、
お互いのことを思うようになっていった。
「ひろにまた会いたい」
「みきに会いたい」
やがてみきは離婚を決意した。
ほぼ同じ時期にひろは妻から離婚を言い渡された‥‥
みきはいつ会っても何も変わっていないひろに安心した。
ひろは幸せそうに暮らしているみきに安心した。
でもふたりとも、心のどこかでなにかを求め合っていた。
それからもメールや電話でお互いに通じていた。
日々の生活などの報告だった。
それは差し障りのない内容だった。
ふたりともお互いの家庭のことを話すことはあっても、
子どもたちのことだけだった。
本当のことを話しても変わることもないだろうし、
心配をかけてしまう‥‥そんな気持ちだった。
みきは夫との間にまただんだんと溝が深まり、
家庭内別居だった。
ひろは子どもたちの面倒はよく見たが、妻との距離が離れつつあった。
妻はひろに頼らない生き方を探しはじめていた。
そして年月が経つにつれて、ひろも夫婦間に溝ができていた。
いつしかふたりとも少しずつ、
お互いのことを思うようになっていった。
「ひろにまた会いたい」
「みきに会いたい」
やがてみきは離婚を決意した。
ほぼ同じ時期にひろは妻から離婚を言い渡された‥‥
第43話〜霧雨の夜に
再会の夜は霧雨が降っていた。
みきを迎えにクルマをのんびりと走らせた。
駅前を通過する時、ひろの心臓は張り裂けるくらいの緊張だった。
しかし、いつもの交差点を曲がってから、
不思議と気持ちが落ち着いてきた。
それはだんだんと遠い昔、
みきを迎えに行くときの気持ちと同じだった。
家が近づいてくるにつれて穏やかな気持ちになっていった。
家の前に着いた。
「着いたよ」
『うん、すぐ出るから、待ってて』
玄関の明かりが点いて、人影が見えた。
逆光で見えなかったが間違いなくみきだ。
あと数秒で、オレたちは会える‥‥
助手席の窓を叩く音がした。
ひろはドアを開けた。
みきが乗り込んできた。
「おかえり」
『ただいま』
「元気だったか?」
『うん、あなたは?』
「元気だよ」
クルマの中はなぜか昔と同じ空気が流れていたようだった。
まったく不自然ではなかった。
『昔と全然、変わっていないね』
「そうか?』
『うん 全然変わっていないよ』
みきは優しいお母さんの表情と、
大人の女性の雰囲気を漂わせていた。
だから、ひろは安心できた。
ひろの何にも変わらない口調と声に
みきは懐かしさを感じながら安心した。
二人で繁華街にある古い居酒屋に入った。
やっとふたりとも、明るい場所で顔を見ることができた。
家族のこと、仕事のこと‥‥そして昔話に花を咲かせた。
店を出て、昔のドライブコースを走った。
また帰省することがあれば会おうと約束して
この日は別れた。
夢のような数時間だった。
ふたりとも幸せな気持ちになれた。
それは日々の生活では味わうことのできない貴重な時間だった。
そして、次に会うのは3年後、そしてまたその4年後に。
この時お互いに、
その後の環境がガラリと変わるとは予想もしていなかった。
2001 Summer
みきを迎えにクルマをのんびりと走らせた。
駅前を通過する時、ひろの心臓は張り裂けるくらいの緊張だった。
しかし、いつもの交差点を曲がってから、
不思議と気持ちが落ち着いてきた。
それはだんだんと遠い昔、
みきを迎えに行くときの気持ちと同じだった。
家が近づいてくるにつれて穏やかな気持ちになっていった。
家の前に着いた。
「着いたよ」
『うん、すぐ出るから、待ってて』
玄関の明かりが点いて、人影が見えた。
逆光で見えなかったが間違いなくみきだ。
あと数秒で、オレたちは会える‥‥
助手席の窓を叩く音がした。
ひろはドアを開けた。
みきが乗り込んできた。
「おかえり」
『ただいま』
「元気だったか?」
『うん、あなたは?』
「元気だよ」
クルマの中はなぜか昔と同じ空気が流れていたようだった。
まったく不自然ではなかった。
『昔と全然、変わっていないね』
「そうか?』
『うん 全然変わっていないよ』
みきは優しいお母さんの表情と、
大人の女性の雰囲気を漂わせていた。
だから、ひろは安心できた。
ひろの何にも変わらない口調と声に
みきは懐かしさを感じながら安心した。
二人で繁華街にある古い居酒屋に入った。
やっとふたりとも、明るい場所で顔を見ることができた。
家族のこと、仕事のこと‥‥そして昔話に花を咲かせた。
店を出て、昔のドライブコースを走った。
また帰省することがあれば会おうと約束して
この日は別れた。
夢のような数時間だった。
ふたりとも幸せな気持ちになれた。
それは日々の生活では味わうことのできない貴重な時間だった。
そして、次に会うのは3年後、そしてまたその4年後に。
この時お互いに、
その後の環境がガラリと変わるとは予想もしていなかった。
2001 Summer
第42話〜再会へ
夏休み、みきが帰ってくる日が決まった。
子どもを連れて北海道に帰省する。
みきからメールがきた。
いま、千歳空港に降りたよ
テレビの取材を受けちゃった
帰省で賑わうニュースに出るって
みきに言われてテレビを見ると
ニュースにみきと子どもの姿が映し出された。
優しいお母さんのみきの表情と声にひろは
うんうん、と頷いていた。嬉しかった。
みきとの距離が一気に近く感じた。
テレビを見たよ
しっかり映っていた
懐かしい気持ちでいっぱいだよ
落ち着いたらメールをくれよ
メシでも食いに行こう
みきからの返事を待った。
やっと会える‥‥
ふたりにとって夢のような気がした。
この日をどれだけ待ち望んでいただろうか。
約束の時間‥‥ひろは昔のように、
みきを家まで迎えに行った‥‥
子どもを連れて北海道に帰省する。
みきからメールがきた。
いま、千歳空港に降りたよ
テレビの取材を受けちゃった
帰省で賑わうニュースに出るって
みきに言われてテレビを見ると
ニュースにみきと子どもの姿が映し出された。
優しいお母さんのみきの表情と声にひろは
うんうん、と頷いていた。嬉しかった。
みきとの距離が一気に近く感じた。
テレビを見たよ
しっかり映っていた
懐かしい気持ちでいっぱいだよ
落ち着いたらメールをくれよ
メシでも食いに行こう
みきからの返事を待った。
やっと会える‥‥
ふたりにとって夢のような気がした。
この日をどれだけ待ち望んでいただろうか。
約束の時間‥‥ひろは昔のように、
みきを家まで迎えに行った‥‥