第43話〜霧雨の夜に | Distance~時を超え距離を超えた二人の物語

第43話〜霧雨の夜に

再会の夜は霧雨が降っていた。

みきを迎えにクルマをのんびりと走らせた。
駅前を通過する時、ひろの心臓は張り裂けるくらいの緊張だった。
しかし、いつもの交差点を曲がってから、
不思議と気持ちが落ち着いてきた。

それはだんだんと遠い昔、
みきを迎えに行くときの気持ちと同じだった。
家が近づいてくるにつれて穏やかな気持ちになっていった。

家の前に着いた。

 「着いたよ」
 
 『うん、すぐ出るから、待ってて』

玄関の明かりが点いて、人影が見えた。
逆光で見えなかったが間違いなくみきだ。

あと数秒で、オレたちは会える‥‥

助手席の窓を叩く音がした。
ひろはドアを開けた。
みきが乗り込んできた。

 「おかえり」

 『ただいま』

 「元気だったか?」

 『うん、あなたは?』

 「元気だよ」

クルマの中はなぜか昔と同じ空気が流れていたようだった。
まったく不自然ではなかった。


 『昔と全然、変わっていないね』

 「そうか?』

 『うん 全然変わっていないよ』

みきは優しいお母さんの表情と、
大人の女性の雰囲気を漂わせていた。
だから、ひろは安心できた。

ひろの何にも変わらない口調と声に
みきは懐かしさを感じながら安心した。

二人で繁華街にある古い居酒屋に入った。
やっとふたりとも、明るい場所で顔を見ることができた。

家族のこと、仕事のこと‥‥そして昔話に花を咲かせた。

店を出て、昔のドライブコースを走った。
また帰省することがあれば会おうと約束して
この日は別れた。

夢のような数時間だった。
ふたりとも幸せな気持ちになれた。
それは日々の生活では味わうことのできない貴重な時間だった。

そして、次に会うのは3年後、そしてまたその4年後に。

この時お互いに、
その後の環境がガラリと変わるとは予想もしていなかった。

2001 Summer