第61話〜それぞれの生活
別々の生活がまたはじまった。
みきは新しい仕事に就いて忙しい毎日だった。
子どもとの生活はまた以前のようだった。
ひろは相変わらずの忙しさだったが、
一人の時間を持て余し、飲みに出るようになった。
ふたりの日課は朝のメールからはじまり、
昼休み、帰宅してからも何度となくメールを繰り返した。
昔なら、携帯などなかったから、
電話やメールなどをすぐにできるはずもなかったが、
今ならすぐに簡単に通じることができることを、
便利になったものだと言っていた。
もし、あの頃、
今のように携帯電話があったら、きっと状況は変わっているだろうなと
よく話したものだった。
しかし、すぐに逢うことのできない状況は
ふたりにとって寂しく苦痛なものだった。
逢いたいな
すぐにでも逢いたい
寂しいよ
同じ気持ち‥‥
そんな気持ちがメールで繰り返されるようになるには
そう時間はかからなかった。

みきは新しい仕事に就いて忙しい毎日だった。
子どもとの生活はまた以前のようだった。
ひろは相変わらずの忙しさだったが、
一人の時間を持て余し、飲みに出るようになった。
ふたりの日課は朝のメールからはじまり、
昼休み、帰宅してからも何度となくメールを繰り返した。
昔なら、携帯などなかったから、
電話やメールなどをすぐにできるはずもなかったが、
今ならすぐに簡単に通じることができることを、
便利になったものだと言っていた。
もし、あの頃、
今のように携帯電話があったら、きっと状況は変わっているだろうなと
よく話したものだった。
しかし、すぐに逢うことのできない状況は
ふたりにとって寂しく苦痛なものだった。
逢いたいな
すぐにでも逢いたい
寂しいよ
同じ気持ち‥‥
そんな気持ちがメールで繰り返されるようになるには
そう時間はかからなかった。

第60話〜フェリーターミナル
出航の夜は穏やかだった。
みきはひとりで旅立つつもりだったが、
やはりふたりはそうはいくはずがなかった。
あと数時間でフェリーはみきと荷物と思い出を乗せて出航する。
ターミナルの駐車場でふたりでじっとしていた。
話すことはなにもなかった。
ただ、ありきたりの言葉しか出てこなかった。
「元気でがんばれよ」
『うん きっと帰ってくるから』
「待っている」
『ちゃんとご飯は食べてね』
「ああ」
乗船手続きが終わって、
クルマを旅客用のクルマの待ち合いスペースに移動させる時も
ずっとクルマにふたりでいた。
手は握ったままだった。
シートの間が遠く感じた。
何度キスを繰り返した。
乗船の時間になり、助手席の窓を係のおじさんが叩いた。
「時間ですから、降りて下さいよ」
恨めしく思えた瞬間だった。
「じゃあな 元気でな。頑張れよ」
『うん 行って来るね』
「なにかありゃ いつでも飛んでってやる」
『うん ありがとう』
最後にキスをして、
握りしめていた手を離し、ひろはクルマを降りた。
クルマは順番にフェリーの中に吸い込まれるように入っていった。
それをひろは遠くから眺めていた。
「待っているからな みき‥‥」
『今度帰って来るのは ひろのところだから‥‥』
それぞれの思い‥‥
みきはデッキからひろの姿を探した。
ひろは港が見渡せる高い位置から、港を出るフェリーを見送っていた。

みきはひとりで旅立つつもりだったが、
やはりふたりはそうはいくはずがなかった。
あと数時間でフェリーはみきと荷物と思い出を乗せて出航する。
ターミナルの駐車場でふたりでじっとしていた。
話すことはなにもなかった。
ただ、ありきたりの言葉しか出てこなかった。
「元気でがんばれよ」
『うん きっと帰ってくるから』
「待っている」
『ちゃんとご飯は食べてね』
「ああ」
乗船手続きが終わって、
クルマを旅客用のクルマの待ち合いスペースに移動させる時も
ずっとクルマにふたりでいた。
手は握ったままだった。
シートの間が遠く感じた。
何度キスを繰り返した。
乗船の時間になり、助手席の窓を係のおじさんが叩いた。
「時間ですから、降りて下さいよ」
恨めしく思えた瞬間だった。
「じゃあな 元気でな。頑張れよ」
『うん 行って来るね』
「なにかありゃ いつでも飛んでってやる」
『うん ありがとう』
最後にキスをして、
握りしめていた手を離し、ひろはクルマを降りた。
クルマは順番にフェリーの中に吸い込まれるように入っていった。
それをひろは遠くから眺めていた。
「待っているからな みき‥‥」
『今度帰って来るのは ひろのところだから‥‥』
それぞれの思い‥‥
みきはデッキからひろの姿を探した。
ひろは港が見渡せる高い位置から、港を出るフェリーを見送っていた。

第59話〜ためらい
みきが広島に行く日程が決まりつつあった。
少しの着替えと身の回りのものを運ぶために
クルマに載せてフェリーでの出発だったが、
みきにはためらいがあった。
何度も予約をしようとしたけれど、
はっきりと決められないでいた。
それはみきを待つ最愛の子どものために向かうこと、
でもひろと離れたくないという気持ちがそうさせていた。
「いつ来るの?」
そんなメールと電話が頻繁に来るようになった。
行かなければならないとは分かっていても、
いつ行こうか、やはり決断できないみきだった。
「早く行ってやれよ。待っているんだぞ」
『うん‥‥』
予約をして、最後の日にふたりは最後のデートを楽しんだ。
ふたりで初めてプリクラを撮った。
プリントされた1枚ごとに幸せそうなふたりが写っていた。
そして別れを惜しむかのように肌を合わせた。
みきはひろと離れるとき、クルマの中で号泣した。
初めてみるみきのそんな姿にひろはいたたまれなかった。
なにもしてやることのできない自分が情けなく思った。
「もう行って。早く行って」
みきはひろを離すべく最後にそう言い放った。
ひろはゆっくりと、みきのクルマから降りた。

少しの着替えと身の回りのものを運ぶために
クルマに載せてフェリーでの出発だったが、
みきにはためらいがあった。
何度も予約をしようとしたけれど、
はっきりと決められないでいた。
それはみきを待つ最愛の子どものために向かうこと、
でもひろと離れたくないという気持ちがそうさせていた。
「いつ来るの?」
そんなメールと電話が頻繁に来るようになった。
行かなければならないとは分かっていても、
いつ行こうか、やはり決断できないみきだった。
「早く行ってやれよ。待っているんだぞ」
『うん‥‥』
予約をして、最後の日にふたりは最後のデートを楽しんだ。
ふたりで初めてプリクラを撮った。
プリントされた1枚ごとに幸せそうなふたりが写っていた。
そして別れを惜しむかのように肌を合わせた。
みきはひろと離れるとき、クルマの中で号泣した。
初めてみるみきのそんな姿にひろはいたたまれなかった。
なにもしてやることのできない自分が情けなく思った。
「もう行って。早く行って」
みきはひろを離すべく最後にそう言い放った。
ひろはゆっくりと、みきのクルマから降りた。

第57話〜貴重な時
春になり、
ひろは家を出て小さな部屋を借りた。
みきの住む街とひろの新しい住処はクルマで約1時間の距離だった。
そんな部屋にみきは通うようになった。
もうふたりには何の隔たりもなくなった。
しかし、みきの広島行きが決まったことは皮肉なことだった。
「みき 今すぐに逢いたい」
『うん わたしも‥‥』
「今からすぐ来いよ」
『うん これから向かうね』
数日間一緒に暮らし、みきは実家に帰って行く。
今朝まで一緒にいたのに、また逢いたくなる‥‥
そしておよそ1時間の道のりをみきはやってくる。
ひろはそんなみきが愛おしくてたまらなかった。
この1時間は昔の1年分に相当するくらい
待ち遠しいものだったと思う。
みきの作った料理とワインを、ふたりでいつも楽しんだ。
もうすぐ別れる時間などどこかに消し去ってしまいたいくらい、
ほんの少しの時間も惜しかった。

ひろは家を出て小さな部屋を借りた。
みきの住む街とひろの新しい住処はクルマで約1時間の距離だった。
そんな部屋にみきは通うようになった。
もうふたりには何の隔たりもなくなった。
しかし、みきの広島行きが決まったことは皮肉なことだった。
「みき 今すぐに逢いたい」
『うん わたしも‥‥』
「今からすぐ来いよ」
『うん これから向かうね』
数日間一緒に暮らし、みきは実家に帰って行く。
今朝まで一緒にいたのに、また逢いたくなる‥‥
そしておよそ1時間の道のりをみきはやってくる。
ひろはそんなみきが愛おしくてたまらなかった。
この1時間は昔の1年分に相当するくらい
待ち遠しいものだったと思う。
みきの作った料理とワインを、ふたりでいつも楽しんだ。
もうすぐ別れる時間などどこかに消し去ってしまいたいくらい、
ほんの少しの時間も惜しかった。

