魔法のタオルで大逆転 「エアーかおる」を開発した浅野撚糸 | シニアの の~んびり道草

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日頃の散歩や近場のドライブ、時には一晩泊りでぶらっと訪ね歩くことがある。そんな折、おお! これは綺麗だ、これは凄い、これは面白いと感嘆したり、感動したようなことを、思いつくまヽアルバム風に綴ってみる。

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10月9日(日)の新聞報道で岐阜県安八町の撚糸業「浅野撚糸」が、福島県双葉町に新工場を建設するという記事に接した。地元企業である浅野撚糸の会社動静は時折り耳にしていたが、訪れたこともなく、一度工場見学をしたいと思っていたので、早速、10月11日に行ってきた。

浅野撚糸㈱は1967年5月に設立。低コスト化の波により海外へ仕事が流れ、撚糸産業が衰退の一途をたどり、2007年には売上が全盛期の1/3の2.3億円まで落ち込み、社員数も1/3のたったの9名にまでになってしまう。そんな中、浅野撚糸も廃業の危機を迎えたが、大手化学繊維メーカー㈱クラレの下請けとして永年培った高度な技術やノウハウを活かし、5年間の開発期間を経て、糸を膨らませる特殊撚糸工法(特許取得)を開発。そうして「ナンバーワンよりオンリーワン」を目指し、紡績糸と水溶性糸を掛け合わせた「スーパーZERO」の開発に成功、繊維の間に隙間ができ、かつてないほどふんわりとした糸が出来上がった。その後、三重県津市のおぼろタオル㈱と共同開発した「エアーかおる」により2019年度には売上が23億円までに成長。2022年には、福島県双葉町に新たな撚糸工場「浅野撚糸双葉スーパーゼロミル(仮称)」が完成予定。写真は撚糸工場の起死回生を図ったオリジナルタオル「エアーかおる」。(浅野撚糸HP、リーフレット参照)


「エアーかおる」の6大特長は、軽量感、抜群の吸水力、速乾性、毛羽落ちの少なさ、ふっくら感の持続、キレのある拭き心地である。製品名の「かおる」は「K(クラレ)A(浅野)O(おぼろタオル)L(リブ、編む)」から考案し、3社の素材と技術と感性が生きるという意味を持たせている。


浅野撚糸工場棟と糸に撚(よ)りをかける撚糸機(左下)と複数の糸を引きそろえる合糸(ごうし)を行う合糸機(右下)。この日は工場内部見学はできなかったので、「エアーかおる」を生み出す特殊撚糸工法のスタッフ説明は聞けなかったが、タオルの素となる糸の撚り方に秘密が隠されているようだ。専門的なことは分からないが、普通の紡績綿糸と水溶性の糸を合体(合糸)、紡績綿糸が撚られている方向と逆向きに2倍撚り、後から水溶性の糸を溶解させ、逆撚りが元撚り方向に戻ろうとする反動によって繊維間に多くの隙間ができ、吸水性の高い撚糸が完成する。この工程が「魔法のタオル」の鍵となる作業のようで、それをトンネル型の機械に入れ、真空状態にして高温スチームプレスをして魔法の撚糸が出来上がるという。なお、撚糸とは糸に撚りをかけること、また撚りをかけた糸のことをいい、この撚りとは糸を1本、または複数本ねじり合わせることで、切れにくく強い糸に仕上げる技術である。布の風合いもこの撚りで決まり“腕によりをかける” “よりを戻す”といった表現もここから生まれた。


何故、地方の撚糸工場がこんなに多くのメディアに取り上げられるようになったのか!。その背景には、第5回ものづくり日本大賞「経済産業大臣賞」、科学技術分野の文部科学大臣表彰「科学技術賞」、第28回中日産業技術賞「特別奨励賞」、第9回百貨店バイヤーズ賞リビング「ベストセラー賞」、その他多数の受賞実績が挙げられる。賞を受賞したことにより様々なメディアから取材依頼のオファーがあり、それをきっかけにまた取材依頼があるという流れで多数の取材獲得に繋がったという。カンブリア宮殿の放送後は、世の中の「エアーかおる」が一日でなくなる(推定30万枚)ほどの大反響で、一時期は8ヵ月先まで発注が埋まるという状況になったという。日の目を見ない倒産寸前の会社が自社商品を開発してV字回復を果たしたというストーリーが視聴者から「がんばれ日本の零細企業」という応援に重なったようだ。写真は駐車場に掲示されたカンブリア宮殿やガイアの夜明け、NHKワールドJAPANの案内看板。なお、情報ドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」のエンディングテーマ曲「夜空の花」は私のお気に入り曲で繰り返し聴いている。


2021年4月、浅野撚糸株式会社設立50周年を期に、本社・本社工場・創業家本宅・日本庭園を含めた一連を「エアーかおる本丸」としてグランドオープン。


エアーかおる本丸の1Fオフィシャルショップの様子。吸水力抜群な魔法のタオル「エアーかおる」の全商品を品揃えし、ここでしか買えないアイテムも並ぶ。時期により変わるリアルショップ限定アイテムも販売している。


2Fアウトレットルームの様子。豊富な品揃えとここだけでしか買えないスペシャル価格の「秘密の商品」もある。


柔らかい肌触り、吸水性抜群の多彩な商品のラインナップ。「エアーかおる」の吸水性という特徴を活かした今までにない規格のサイズ「エニータイム」も大当たりの商品。社長夫人が開発したエニータイムは、普通のバスタオル(約60×120㎝)の横幅が半分になったサイズの約32×120㎝で、メッセージの発信も、面積は半分、干し場も半分、ハンガー干しもでき、全身が拭けてターバンにもなるというもの。


テレビで大人気の驚吸水タオル「エアーかおる」のバリエーションは、ウオッシュ(34×40cm)、フェイス(34×85㎝)、エニータイム、バスタオルがあるが、この独自サイズ エニータイムを購入した。普通のタオルより少し割高に感じるが、実際に使ってみて柔らかい肌触り、ふっくら感・拭き心地を実感、満足している。


学生時代を福島で過ごした縁がある浅野社長が、「仕事を通して双葉の復興の役に立ちたい」と独自の糸を量産し、輸出の強化を目指す新工場建設の記事(10月9日中日新聞[朝刊]。



岐阜県安八郡安八町中875-1 浅野撚糸株式会社・エアーかおる本丸のMAP