平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

Amebaでブログを始めよう!

 

 

 

 


毎年桜の季節になると、古都・京

都の花見を楽しみたくなる。必ず

花だよりに出てくるような名所を

避けて、散歩がてらに様々な種類

の桜に見入ると、いつも新たな発

見がある。先日は京都府立植物園

の桜林で、オオシマザクラの新種

である伊豆桜にで出会った。白い

大きな花弁が清楚な印象を与えて

いた。桜林を通り過ぎると、桃の

枝垂れやコブシに似た花木などに

見入った。

また賀茂川沿いの紅枝垂れや岡崎

公体を桜一色に包んでくれるよう

な存在感があった。花の種類は違

っても、いずれも豊かな気分にさ

せてくれた。ずっと記憶に残し続

けたい景観であった。その一部の

画像を紹介しておきたい。

 

(写真は上から京都府立植物園の吉野枝垂れ、伊豆桜、賀茂川

の紅枝垂れ、モモ枝垂れ、平安神宮前のソメイヨシノ)

 

           【2023・3・30】

 

(なお、このコラムは都合でしばらくの間休載します)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すべてはG7の議長国の面子の

ため」。隠密を気取ってウクライ

ナを訪問した岸田文雄首相の心情

が透けてみえる。帰国後の国会で

は「必勝」の字が書かれたしゃも

じをゼレンスキー大統領に贈った

ことが「戦場に行って、あまりに

も不適切だ」と追及された。首相

本人か側近か誰が指示したのか、

その浅薄な思いつきに言葉を失う

ほどだ。欧州訪問時の首相長男の

観光に続き、弛緩した思考による

振る舞いが絶えない。根底には「

G7議長国」の立場を最大限利用

し政権浮揚を図る目論見がある。

参院で「必勝しゃもじ」の適切性

を問われた岸田首相は「祖国や自

由を守るために戦っている努力に

敬意を表したい」と答弁になって

ない理由を述べた。「敵を召し捕

る」との意味がある地元広島の縁

起物が土産にふさわしかったのか

疑問だらけだ。何より、日本が戦

争相手でもないロシアを「敵」と

見なせば、改めて不必要な緊張を

呼び起こす。常に生死の境目にあ

るウクライナの兵士や市民にも「

だじゃれ」が込められた土産は不

謹慎極まる。側近の誰も止められ

なかった官邸。その機能不全ぶり

がさらけ出された格好だ。

今回のウクライナ訪問は首相が演

出した「電撃」ではなかった。す

でに2月時点で、インド訪問直後

にウクライナに向かう可能性があ

ることが一部の夕刊紙などで報じ

られていた。公然となっても「電

撃」を演出し、ウクライナ訪問を

強行したのは、G7トップでただ

一人現地に足を運んでいなかった

焦りからだった。

その舞台裏を昨日の朝日新聞が詳

報していた。それによると、バイ

デン米国大統領とイタリアのメロ

ーニ首相が訪問した2月20日ごろ

、岸田首相は外務省幹部に強い口

調でこう指示したという。


「安全と保秘を徹底した上でキー

ウにいけるよう調整してくれ。そ

れができなければ、外務省なんて

いらねえ」

外務省幹部の顔がこわばったとい

うが、自分の都合を優先させ、思

い通りに動かそうとする独善ぶり

が「いらねえ」という言葉ににじ

んでいる。

岸田首相は地元広島で開いた新春

の後援会でG7広島サミットの公

式ロゴを入れた、自身の似顔絵入

りの饅頭を配っていた。首相は外

務省から承認を得たというが、度

を超えたG7の政治利用も問題視

されている。外務省は政治活動を

目的としたサミットのロゴ使用は

認めないと規定している。首相は

サミット機運醸成のためと弁明し

ているが、後援会参加者に配布し

たのは明らかに政治の私物化であ

る。安倍元首相の「桜を見る会」

を思い出す。「安部背後霊政権」

と呼ばれるのは、政治家としての

発想や体質が同じからだろう。ま

さに「真実は細部に表れる」であ

る。

「G7饅頭」といい、「必勝しゃ

もじ」といい、首相周辺に迷いも

なく実際に贈った経緯からは、サ

ミット開催の意義や和平に導く意

思などはみじんも伝わってこない

。国会で連日野党が追及する放送

法文書や統一教会問題など民主主

義の根幹を揺るがす政治課題につ

いて、岸田首相は何ら政治決断を

示さないままだ。総務省から「文

書捏造」を否定された高市早苗総

務相は依然居座り続けているが、

岸田首相は「更迭は論理の飛躍」

とかばい立てる。春なのに、嘆息

ばかりの日々だ。首相に政治の要

諦を説いたは中国の古典「春秋左

氏伝」にある警句を贈りたい。

「衆怒は犯し難く、専欲は成り難

し」


大勢の人の怒りを招くと、それに

対抗するのは難しく、自分一人の

欲望を満たそうとしても成功しな

いという意味だ。


    【2023・3・25】

言論弾圧の紛れなき証拠が出てき

たのに、知らぬ顔を決め込む岸田

文雄首相はきっとほくそ笑んでい

ることだろう。直近の内閣支持率

が毎日新聞と朝日新聞の世論調査

で、それぞれ7~ポイントはね上

がった。日韓首脳会談や「異次元

」をうたうこども・子育て対策が

評価されたとの分析が出たが、疑

問だらけだ。特に放送メディアが

政治の腐敗をまともに取り上げず

、WBC野球の過剰・画一報道に

うつつを抜かしている中、有権者

の政治意識が確実に劣化している



総務省文書で安倍政権時代に放送

法解釈が変更され、政府が「政治

的公平性」を名目に番組に介入し

ていた経緯が明白になった後の世

論調査はきっと内閣支持率がダウ

ンするとみていたが、まさかの支

持率回復である。放送法の解釈変

更を問題視したり納得できないと

する回答は朝日で62%、毎日43

%と予想より低かった。それぞれ

「問題と思わない」「納得できる

」の回答の2~3倍近くの数字だ

が、報道の自由が脅かされている

このニュースの本質を時間をさい

て取り上げる放送メディアが少な

いせいで、危うさに気付く視聴者

が増えなかったのではないか。

伝えても、内容が高市早苗元総務

相の文書を「捏造」と決めつけた

フェイク発言をめぐる国会でのや

りとりばかりである。一閣僚の発

言だけをクローズアップし、当時

の政権による言論弾圧や事実上の

検閲を継承している現政権の強権

的な政治姿勢に踏み込んでいない

。そのためニュースのはらむ内実

が隠されたままだ。皮肉にも当時

の安部政権の目論見通り、今の放

送局の番組作りの自主規制があち

こちではびこる。「忖度報道」は

各局共通で政府による「愚民化」

に手を貸す。

これを見破る有権者がいかに少な

いことか。この問題だけでなく、

防衛費倍増、財源が不明確の少子

化対策予算の拡充、原発再稼働、

統一教会の認可取り消しなど、ほ

とんどの政治課題は不都合なこと

を先送りしたり、既得権益を守る

ことばかりが際立つ。胸を張って

誇れる成果は何一つ見当たらない。

ジャーナリズムの三大責務は「権

力の監視」「弱者に寄り添う」「

戦争の芽を摘み取る」にある。
この立場で岸田政権を分析すると

、人の命や安全が脅かされるとい

う点では安部、菅政権以上に危険

であると断言したい。最も恐れる

近隣各国との戦争に一歩一歩近づ

いているからだ。

岸田政権が保有を決めた敵基地攻

撃能力について、防衛省は今月つ

いに沖縄本島、南西諸島のへの長

射程ミサイル配備の準備を始めた

。同省沖縄防衛局の職員が自衛隊

・米軍施設のある県内の25関連市

町村に説明行脚を続けているとい

う。しかし、住民の不安にまとも

に答えず、具体的な内容は隠した

ままで、各地で反発も高まってい

る。

原発再稼働についても、政府は具

体的計画を明らかにせず、なし崩

し的に動かそうとしている。専門

家らによると、政府は規制基準に

不適合や運転禁止命令が出ている

7基の再稼働をもくろむ。

福島の原発事故から12年が過ぎて

、まるで事故など忘れたかのよう

な対応が際立つ。「汚染水」を「

処理水」と言い換えて、福島の海

に流そうとするのは、行き詰まっ

た原発政策の詐術の最たるものだ

。「風評被害を許さない」という

一見正当に聞こえるスローガンは

放射性物質の恐怖を払拭できない

ことを糊塗する言葉でないだろう

か。汚染水が問題ないというなら

、岸田首相ら政府幹部に「公開の

場で飲んで」と言いたい。トリチ

ウムは分離できず、安全と立証で

きていない。それどころか、ほか

の核種も残存している可能性さえ

あり、住民に新たな犠牲を強いる

「放出」である。

眼前の危機が去ると、すぐ忘れる。

その繰り返しを「慢性健忘症」と

呼びたい。真に危機に瀕してから

それに気付いても、もう遅い。

 

           【2023・3・20】

「まさか、かつての身内が背くは

ずがない」と高をくくっていたら

、後ろから撃たれてしまった。放

送法の政治的公平をめぐる総務省

の行政文書を「捏造」と主張して

いた高市早苗元総務相はそんな胸

の内ではないか。1昨日の参院予

算委員会で、総務省幹部は記述さ

れていた「高市氏へのレク(説明)

」が「あった可能性が高い」と答

弁し、局面は一挙に高市氏に不利

になった。それでも当事者である

放送メディアは、政府批判を控え

る及び腰姿勢が際立つ。まるで「

安部政権の背後霊」におびえて、

政府への「自発的隷属」を続け、

視聴者に恥じる気配もない。

さすがに文書の「捏造」を明快に

否定した1昨日の国会は詳報され

るだろうと予想していたが、昨日

の朝の情報番組の中で、これを十

分に報じた局は見当たらず、どこ

も相変わらず試合もないのにWB

C野球に過剰なまでに時間をさい

ていた。それは、放送法をめぐる

文書報道が政府を刺激したくない

と慮っているような扱い方だった

。高市氏は次々と当初の強弁を軌

道修正している。「悪意をもって

捏造」から「内容は不正確」に変

わり、「紙に書かれていることは

不正確」などところころ釈明内容

を変えた。

笑ってしまうほどお粗末な答弁だ。

「テレビ朝日に公平な番組なんて

あると書かれているが、テレビ朝

日をディスるはずもない。羽鳥ア

ナウンサーの大ファンなので」

言うに事欠き、閣僚にふさわしく

ない場当たり的な国会答弁に、身

内の予算委員長に「答弁は簡潔に

」と注意されたほどだ。それでも

「今まで我慢してきた」と言い張

り、与野党の議員から眉をひそめ

られた。もう閣僚に踏みとどまる

限界を超えたように見える。

今回の審議の最重要なテーマは「

放送の自由が守られているか」で

ある。今回明るみになった行政文

書はそれを疑わせる安倍政権時代

の政府方針に至る詳細な経過であ

る。岸田文雄首相は当時の外相で

あり、政権の言論弾圧に加担した

閣僚の一人である。「(放送法の

)解釈変更でなく、補充的な説明

をしたとの考え方を維持している

」との首相答弁は、この文書が「

検閲は、これをしてはならない」

と定めた憲法21条に抵触すること

を危惧しているからこその逃げに

見える。

それほど、この文書は民主主義国

家の根幹を揺るがせる「報道規制」

の深刻さをはらんでいる。201

5年、高市氏が国会で「一つの番

組のみでも、極端な場合には政治

的公平さを確保しているとは認め

られない」との見解を示した。こ

の国の放送メディアが顕著に萎縮

し始めたのは、この恫喝まがいの

見解後だったのは、多くのメディ

ア研究者の一致した見方だ。

立憲など野党は高市氏の「閣僚辞

任・議員辞職」だけに照準をあて

ず、改めて報道の自由を取り戻す

契機にする覚悟が重要だ。放送法

3条は「何人からも干渉され、規

律されない」と定めている。安倍

政権以降、この文書の政府見解を

踏襲しながら放送局の番組に政治

介入し世論操作してきた実態を、

放送業界内部からも呼応して明る

みに出す機会であろう。

それができず、押し黙ったまま見

過ごすと、一段と政府の政治介入

を強めることにつながる。放送局

経営者や幹部が政府からの距離感

を保てず、政府要人らと会食を重

ねるなどは「自発的隷属」体質に

どっぷりと染まった表われである。

放送業界全体の「報道の自由が毀

損されている」という自覚なしに

ジャーナリズムの再生はない。

    【2023・3・15】

「変なヤクザに絡まれたって話で

はないか」。安部政権が言論弾圧

していたことを示す総務相の行政

文書には同省出身の山田真貴子首

相秘書官が同省局長に怒るシーン

が詳細に記述されていた。安部首

相の意向を受け、放送行政に露骨

な政治介入をしてきた礒崎陽輔首

相補佐官を「ヤクザ」呼ばわりし

て、わずかながらもまだ気骨を示

していた。当時の上司でこの文書

を「捏造」と決めつけた高市早苗

経済安保相は自分の部下の職務の

正当性を否定したことにもなる。

こんな「天に唾する」行為を悔い

ないしても悔いない閣僚は辞任と

は議員辞職を迫られても当然だろ

う。

この行政文書に記述されていた高

市発言は生々しい。「政治的公平

」をうたった放送法4条の解釈変

更を迫った礒崎首相補佐官からの

伝言を同省幹部から聞いた高市元

総務相は「そもそもテレビ朝日に

公平な番組なんてある」と問いか

け「官邸には『総務大臣は準備し

ておきます』と伝えてください」

と指示していた。

礒崎首相補佐官は総務省局長から

「菅義偉官房長官にも伝えておき

ます」と言われ、「局長ごときが

言う話ではない。この件は俺と総

理が2人で決める話」「俺の顔を

つぶすようなことになれば、ただ

じゃ済まないぞ。首が飛ぶぞ」と

恫喝していた。まさに「ヤクザま

がい」ではないか。この文書が明

るみになった後、礒崎氏は「言葉

が荒くなったかもしれない」とや

りとりを全否定しなかった。

総務省幹部との間に立った山田真

貴子首相秘書官に問いただせば、

すべて経過が明るみになるはずだ

。山田首相秘書官はその後、菅前

首相の長男の接待問題で供応をう

け、NTTによる供応でも高額な

会食に呼ばれていたことが発覚、

国会で追及される直前に辞職した

。その官僚人生は末期に泥にまみ

れた形だが、官邸の不当介入に当

時ささやかな抵抗していた姿はせ

めてもの救いか。

山田元補佐官が当時「政府がこん

なことをしてどうするつもりなの

か。どこのメディアも萎縮するだ

ろう。言論弾圧ではないか」と嘆

いた通りの展開になってしまった

。安倍政権に批判的だったTBS

、テレビ朝日の報道番組のキャス

ターやコメンテーターらは次々降

板させられたのである。

高市元総務相がいくらこの行政文

書を捏造と決めつけても、このや

りとりの後の参院総務委員会で「

一つの番組でも、極端な場合は政

治的公平を確保しているとは認め

られない」と答弁し、放送局の免

許を取り上げる停波まで口にして

いた。こうして「安部官邸」のも

くろみ通りに放送法の解釈が変更

されたのである。

高市元総務相がいくら抗弁しよう

と、文書が行政文書であることを

松本剛明総務相は認めた。一部だ

けを「捏造」と主張しても無理が

ある。もう潔く閣僚を辞任し議員

辞職したらどうか。岸田文雄首相

に政府ぐるみの「もみ消し」をあ

てにしていたとしたら、とんだ目

算違いだ。霞ヶ関全体の官僚をも

敵にした自己保身はあまりにも見

苦しい。

立憲民主など野党は、安倍政権に

よって報道の自由が根幹から揺る

がせられた経緯を明らかにするた

め調査委の設置を強く求める時だ。
放送業界は存立基盤まで脅かされ

、政治報道はまだ政府への忖度報

道を続けている。この期に及んで

もWBC野球一色の番組ばかりを

編成、政府の政治介入を真正面か

ら批判しようとせず、危機感がな

い。
米国の伝説のテレビキャスターの

ウォルター・クロンカイトはこう

言った。

「独裁政治台頭の最初の兆候は間

違いなく言論の自由に対する介入

という形で現われる」

まさにヤクザまがいの言論弾圧に

よって専横政治を進めた安部政権

の本性を露わにした今回の行政文

書である。
     【2023・3・9】

(次回は3月15日に掲載予定)

 

安部政権が不当にメディアの政治

報道に不当介入していた内幕が白

日の下にさらされた。昨日の参院

予算委員会で、総務省の内部文書

が明らかになり、当時の磯崎陽輔

首相秘書官がTBSの報道番組に

「番組にはおかしいものがある」

と圧力をかけていた実態が詳細に

綴られていたのである。岸田文雄

首相は「正確性や正当性が定かで

ない」と答弁したが、文書の存在

を否定できなかった。このニュー

スは、放送各局に自らの存在意義

が根本的に問いかける。しかし、

各局は他人事のようなの扱いが目

立つ。自民党政権にいかに政治的

に隷属してきたかを改めて示して

いる。

立憲の小西洋之参院議員が総務省

職員から入手したという2015

年から書かれた内部文書は約80枚

にのぼり、当時の安部首相や高市

早苗総務相らがTBSの「サンデ

ーモーニング」や「NEWS23」

を問題視していた発言が時系列に

沿って細かく記述されていた。真

偽を問われた松本剛明総務相も「

精査中」と内部文書であることを

否定できなかった。

文書には磯崎首相補佐官が放送法

4条に定める「政治的公平性」に

ついて、放送事業者の番組全体を

みて判断するとの解釈変更を迫る

場面がリアルに記述されていた。

磯崎補佐官は「一つ一つの番組を

見て全体を判断すべき」と総務相

の担当者に迫っていたのである。

思い出されるのが、当時の高市総

務相が「一つの番組でも、極端な

場合は政治的公平を確保している

と思われない」と言及、場合によ

っては放送局の停波もあり得ると

恫喝したことである。この時自民

党は在京6局に選挙報道に「公平

中立」を要請する文書まで出して

、選挙報道に圧力をかけ、言論弾

圧という批判がわき上がったほど

だ。

それでも安倍政権はメディアへの

政治関与を強め、放送各局は圧力

に屈してしまったのである。NH

K・クローズアップ現代の国谷裕

子キャスター、テレビ朝日・報道

ステーションの古舘伊知郎キャス

ター、TBS・NEWS23の岸井

成格アンカー、同膳場貴子キャス

ターが一斉に降板させられた。以

後、放送各局は政権の意向を受け

入れしまい、政治報道が加速度的

に劣化してしまった。その象徴が

報道の自由度ランキングが世界71

位に落ちてしまっていることだ。

日々の情報番組でも政権批判は極

度に抑えられ、ニュースもまるで

政府のプロパガンダのような表現

に変容させられている。権力の腐

敗や暴走を監視して、視聴者らに

警告する最大の使命は忘れ去られ

たままである。

そもそも「政治的公平」を誰が判

断するのかという疑念が払拭でき

ない。特に第二次安倍政権は海外

メディアから「ウルトラ右翼」と

呼ばれるほど、戦前の保守思想回

帰を指向してきた。いわば「右」

に行き過ぎた立場からみて、真ん

中は「左」によりすぎて見えるだ

ろう。「公平中立」は情報の受け

手である視聴者がそれぞれ判断す

べきなのである。

民主主義の大義を掲げる米国の憲

法修正第一条は「報道の自由」を

うたい、政治権力より優先させる

機能を保障している。しかし、放

送事業者に求めた「フェアネス・

ドクトリン」(公平原則)があっ

ても、左右双方の立場から偏向報

道も目立ち「政治的公平」を維持

できないとして、この原則が撤廃

された。以後FOXニュースのよ

うな政治的に右よりの放送局も誕

生したが、今は時の政権から規制

を公平原則の規制を受けず、政治

的立場が異なる自由な報道が放送

が成立している。

政権がメディアを支配しようとす

るのは専制政治への逆行である。

「自民党1強」という政治の現状

は、総務相による電波免許行政を

含め政府の強固なメディア規制も

起因している。それを見抜く視聴

者のメディアリテラシー(情報の

真偽検証)能力も問われている。

    【2023・3・4】

「何としても行く」とウクライナ

訪問に息巻く岸田文雄首相。戦乱

収まらない地に、はるか極東から

出向いてどんな成果があるのか。

疑問が強まる。「G7の議長国」

のリーダーシップを見せるのが目

的というが、米国に追随して敵視

一辺倒の対ロ外交は危うくし、身

の安全性も確保できる見通しも立

たない。軍事同盟であるNATO

加盟国ばかりのG7と一体化する

のは、安全保障上のリスクを自ら

かぶるように見えてしまう。身の

程知らずな首相の振る舞いは、虚

飾の演出に見えるだけだ。

24日の首相会見で「23時からゼレ

ンスキー大統領をお招きし、G7

首脳テレビ会議を私が主催いたし

ます」と自信たっぷりに語ったが

、日本のウクライナ支援はG7の

各国と比べて、格段に少ない。約

1500億円は米国の1%で、バ

イデン米大統領の電撃的なウクラ

イナ訪問後、あわててウクライナ

に世界銀行の融資を保証する財政

支出を増やしたが、リーダーシッ

プを強調するには実効性のある支

援の中身が貧弱である。

憲法に基づく防衛装備移転3原則

で武器の提供は制限されている国

のトップとして軍事同盟の他国と

一線を画すべきで、ウクライナに

送る民生品のメニューと量をさら

に増やすべきだが、会見では具体

的にその中身を明らかにできなか

った。

経済制裁が抜け穴だらけで、ロシ

ア経済があまり疲弊していないの

が、戦況が膠着している原因とさ

れているが、日本の制裁も不備が

目立つ。トヨタ、日産などが撤退

を余儀なくされたが、中古車輸出

はこの1年で増えた。輸出基地に

なった富山、新潟の各港はロシア

のウラジオストックへの貨物船が

連日、満杯で中古車を運ぶ活況だ

という。

また、ロシアからのカニなどの輸

入量は侵攻前を上回り、過去最高

額になった。G7での存在感を示

すというなら、こんな抜け穴だら

けの経済制裁を見過ごしていいは

ずがない。内閣支持率がずっと20

%台に低迷している首相の胸の内

は5月の広島サミットまで持ちこ

たえ、被爆地・広島でG7議長の

姿を内外に見せつけたい一心だろ

う。そのためにこれからは何事に

も「G7議長」というフレーズを

口にするだろう。単に順番が回っ

てきただけの議長という立場を飾

り立て、内外にアピールする機会

を増やそうとするのが目に見えて

いる。
しかし、どんな美辞麗句を飾ろう

と、その足元で揺らいでは何の説

得力も持たない。他のG7各国が

制定しているLGBT差別規制法

はその典型である。昨日の自民党

大会でも首相演説はLGBT理解

増進法案に触れないままだった。

 


本当に広島を舞台にしたサミット

を開催する資格があるのかという

疑念が岸田首相に付きまとう。現

在62カ国が批准している核兵器禁

止条約に日本が不参加であるから

だ。「核兵器をなくせ」という被

爆者らの血の出るような叫びに応

え続けないのが、広島の選挙区で

選ばれた岸田首相である。ウクラ

イナ侵攻で一段と核による脅しが

エスカレートしている今、広島で

のG7を意義あるものにするには

被爆者の思いを各国のリーダーに

伝え、参加国が一致して禁止条約

批准に向けた核廃絶宣言を発する

ことではないか。それができなけ

れば、岸田首相は被爆地でまた背

信行為を重ねることになる。

これからG7まで3カ月の間、岸

田首相がどれだけ「議長国として

」と口にして、主導力を誇示して

も内実が伴わなければ、どれも虚

飾の演出に見えるはずだ。それが

分からず、「議長」ばかりを言い

募れば言い募るほどプロパガンダ

だけの愚鈍ぶりが際立ってくるだ

ろう。
    【2023・2・27】

朝令暮改、君子豹変……。突然の

政治家の変節を表す言葉は数々あ

れど、たった1日で方針転換をし

たケースはそれほどない。岸田文

雄首相が子育て予算を倍増すると

した国会答弁を一夜にして反古に

したのである。新聞各紙は「重み

失う首相答弁」(朝日)「リスク

要因」(毎日)の見出しで報じた

が、元々の「岸田政治」の本性を

見抜いていれば、格別驚くことで

はない。統一教会や同性婚法制化

の答弁でも何度も似たようなトー

ンダウンを見せつけたことを振り

返れば、当初から「重み」などな

かった。確固とした政治信条がな

いから、その場も雰囲気で中身の

ない言葉を口にする。名付けて「

スッカンラカン政治」である。

22日の衆院予算委でも子育て予算

倍増答弁の修正が集中砲火を浴び

そうだ。岸田首相は子育て予算を

含む「家族関係社会支出」につい

て15日、「家族関係社会支出を2

020年度の段階でGDP比2%

を実現した。それを倍増しようで

はないかと申し上げている」と胸

を張った。ところが、この支出を

倍増しようとしたら、さらに10兆

円の財源が必要だったことが判明

したのである。

しかし、財源確保の目途はなく、

首相側近の磯崎仁彦官房副長官あ

わてて翌日、「将来的な倍増を考

える上でのベースとしてGDP比

に言及したわけでない」と首相答

弁を修正した。これで批判がさら

に強まり翌日、松野博一官房長官

が「今整理している。どこをベー

スとして倍増するか整理中だ」と

軌道修正を図った。さらに松野長

官は「首相は子ども予算を強化し

、防衛費との関連でも決して見劣

りするものでないという趣旨で申

し上げた」と釈明を重ねた。不用

意発言を重ねる首相への「尻拭い

」だ。醜態が極まる。

今国会冒頭から「異次元の少子化

防止対策」をアピールした首相は

もう「異次元」を口にしなくなっ

た。詰めた政策でないので、野党

から追及されると、破綻してしま

うからだ。

「存在の耐えられない軽さ」とい

う洋画のタイトルが頭に浮かぶ。

冷戦下のチェコの「プラハの春」

を舞台にした映画のストーリーと

は関係が皆無だが、その言葉だけ

を岸田首相に重ねたくなる。昨年

の国会で統一教会への解散命令審

議で岸田首相は「民法における不

法行為は含まれない」としていた

のに、政権への批判が高まると、

首相は「不法行為も含まれる」と

真逆の方針転換をして、党内をも

驚かせた。

同性婚の法制化についても「社会

が変わってしまう課題」と述べ、

擁護しようとした首相秘書官の差

別発言につながった。すでにお粗

末な首相答弁の数々がが自らの足

元を揺るがせている。二階俊博元

幹事長、菅義偉前首相らが手ぐす

ねをひいている姿が見えるようだ

。内閣支持率がずっと20%台に低

迷し、さらなる失態が続くと、対

抗勢力が倒閣の声を上げ始めるか

もしれない。

岸田首相が浮揚できる回生策はす

ぐに見当たらず、ひたすら5月の

G7の議長国をアピールするぐら

いしかないのではないか。

先週末、大阪府豊中市で開かれた

集会で政治学者の白井聡氏が「岸

田政治」の本性を政治学者らしい

分析で見事に言い当てていた。安

部元首相、菅前首相、岸田首相を

一括りにして現代史の「2012

年体制」と名付けた。ひたすら米

国に「へいこら」し、文化、学術

人権を無視する専制政治と位置付

けていた。白井氏はこの流れに抵

抗するために「日常の生活から我

慢ならないことに一つ一つ声を上

げていくことが大事」と強調して

いた。強くうなずき、気分を新た

にしたのである。


     【2023・2・22】


政治家で最も大切な資質とは何か

。それは進取の気質と人の意見を

聞く謙虚や自省と答えたい。次期

首相候補と人気が高いとされる河

野太郎デジタル担当相がまた衆院

予算委で異様な答弁を繰り返し、

評判を落とした。過去の外相時代

の答弁や政治姿勢を問われ、12回

も「所管外だ」と事実上答弁を拒

否し続けたのである。以前も自分

に記者の質問に答えず「次の質問

どうぞ」と4回も不誠実な答えを

した経緯があった。一連の「制御

不能」ぶりは政治課題に真摯に向

かい合う資質の欠如をみせつけ、

首相にすれば、何をするか分から

ない「最も危険な男」を想起させ

る。

衆院予算委で答弁に立った河野担

当相の姿は野党議員を「小バカ」

にするような言動に終始していた

。足を組んで、質問を聞いていな

い素振りを見せながら、口をゆが

めて「所管外」を連発したのだ。

以前の防衛相時代の2020年6

月、仙台上空に飛来した気球につ

いて記者に聞かれた河野防衛相は

「気球に聞いてくれ」と答えてい

たのだ。今回野党議員が「安全保

障上の問題はない」とした当時の

対応をただしたのは至極当然であ

った。

米国が中国の偵察気球を撃ち落と

し、国際問題に浮上したが、自分

が過去の不作為が問われるのが気

に食わなかったのか、答弁の逆上

ぶりには改めて驚かされる。自省

のなさが際立つ。

過去「反原発」をアピールしてい

たのも嘘のような豹変ぶりだ。10

年前の野党議員時代、原発関連の

天下りを追及し、当時の原子力委

員会が「所管外」と逃げ回った答

弁を繰り返したことを河野担当相

自身が追及していたのだ。まるで

ブーメランのように今回自分に返

ってきた世論の反発だった。

岸田首相の内閣支持率がずっと20

%台に低迷し続ける中、次期首相

候補ナンバー1にあげられる河野

担当相が相対的に持ち上げられ、

待望論がわき上がってもおかしく

ないが、まったくその気配はない

。それどころか党内外からその振

る舞いに反発が強まっている。

人として不誠実な言動を繰り返す

人物に人気が高まるはずがない。

何度も同じ失敗を繰り返すのに、

首相候補と持ち上げるのは、菅義

偉前首相、二階俊博元幹事長ら「

冷や飯組」だけだ。河野担当相を

手駒として「岸田おろし」ののろ

しを上げても、同調者が増えるは

ずがない。

河野担当相は何とか存在感を見せ

ようと、健康保険証をマイナンバ

ーカードに一体化させるプランを

ぶち上げたが、高齢者らから大き

な反発を招いてしまった。結局、

紙の保険証も残すと言い出したが

、その安易なパフォーマンスはさ

らなる評判を落とす結果をもたら

した。今回もネット社会の利便性

だけを見て、その影をみようとし

ない驕りと狭窄ぶりが浮き彫りに

なった。再検討当初は紙の発行は

有料されたが、また高齢者以外か

らさらなる怒りが広がり結局、無

料化に追い込まれた。お粗末とい

うしかない。

自分の周りの世界にしか目が向か

ない政治家はリーダーには不向き

だ。「すぐ切れる」性情は、特に

危険極まりない。自民党はいつま

でこんな人物を首相候補に抱き続

けるのか。もっとましな政治家は

他にいないのか、そろそろ考え直

した方が良い。


    【2023・2・17】

今春の大阪府知事・同市長選挙の

ダブル選挙が、が然面白くなって

きた。出馬表明した谷口真由美、

北野妙子両女性候補の勝算は薄い

というのが大方の見方だが、争点

をカジノ誘致の是非を問う一点に

絞れば、大阪維新の牙城に風穴を

空けるかもしれない。一昨年の横

浜市長選では当時の菅義偉首相が

担ぐ自民候補らを、「ハマのドン

」と言われ、保守系の地元実力者

、藤木幸夫氏が「ハマにバクチ場

は許さない」と大学教授を対抗馬

に立てて勝利、菅首相退陣につな

げた。勝因はカジノに反対する横

浜市民の怒りだった。巨額の血税

を投じるカジノと時代遅れの万博

に狂奔する吉村洋文大阪府知事ら

に怒りの鉄槌を下せるか、大阪の

市民もその覚悟が問われる選挙で

ある。

先週、驚くべきニュースが報じら

れた。大阪府警が万博の会場にな

っている此花区の夢洲に、新たに

夢洲署を新設するという組織再編

だった。現在ほとんど無人の埋め

立て地に万博期間に向け約300

人の警察官を配置するというが、
こんな過剰な人員配置は聞いたこ

とがない。1970年の大阪万博

や90年の花の万博は既存の吹田署

や会場警察隊で会場警備を担った

。今回の万博も現在の此花署の出

張所を期間中増員すれば、対応で

きるはずだ。

費用、人員共に過剰とも思える警

察署の新設を強行するのは、万博

に間に合わなかったカジノ建設を

既成事実化事実化させてしまうた

めの維新政治の策略にも見える。

何よりカジノはまだ国の正式認可

が下りていない。それに先んじて

の警察署新設などあってはならな

い。

夢洲のカジノ建設は数々誤算の連

続である。埋め立て費用、交通ル

ートの整備の費用見積もりがずさ

んで、既に約2000億円もの血

税が余分に投じられようとしてい

る。これだけをみても、もっと多

くの大阪の市民がカジノ反対に大

きく意識変化してもおかしくない

はずだ。

しかし、カジノ反対を掲げるダブ

ル選の谷口、北野両候補は「アッ

プデートおおさか」という超党派

の政治団体が担ぐが、勝利するた

めの確たる戦術が見えず、根回し

も感じられない。最も障害になる

のが、吉村知事の対立候補が谷口

氏に一本化できていない点だ。い

ち早く出馬表明をした共産の辰巳

孝太郎元参院議員と調整すべきだ

った。三つ巴になれば、谷口、辰

巳両氏に勝ち目はないのは火を見

るより明らかだ。

国会で森友事件の追及で切れ味を

見せた辰巳氏もこのままでは事実

上、次回国政選挙に向けた党勢維

持の場にするだけになってしまう

。人柄も良く、論理的な対話がで

きるとされる辰巳氏が「万年負け

犬」に甘んじてしまうのは、もっ

たい過ぎる。

国政でも大局の判断ができない共

産は、また大きな失態を重ねてい

る。志位和夫委員長が「党首公選

制」を求めたジャーナリストを除

名した問題で党対応を批判した朝

日新聞の社説に「朝日に指図され

るいわれはない」とかみついたの

だ。そればかりか、田村智子政策

委員長が記者会見で、同じ論調で

党批判をした毎日新聞社説に「党

に対する攻撃と攪乱以外のなにも

のでもない。怒りさえ覚えた」と

述べた。

最高幹部が2人そろって複数のメ

ディアを批判することが、どう見

られるのかという思考に欠ける。

批判を許さぬ党の閉鎖性が改めて

際立ったともいえよう。党リーダ

ーらの独善的な振る舞いが支持者

離れを招いている想像力もないの

だろうか。

大阪のダブル選でタッグを組んだ

の女性候補2人の陣営はこんな時

だからこそ、理を説いて辰巳候補

の出馬見送りを求める時ではない

か。横浜のケースのように「オー

ル大阪」の陣営を再構築する道し

か2人そろっての当選の姿は見え

てこない。


    【2023・2・11】