平野幸夫のブログ -2ページ目

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

国会では防衛費倍増と少子化対策

ばかりに焦点が当たっているが、

その裏で高齢者を痛めつける看過

しがたい法案がこっそり閣議決定

されようとしている。自民党政権

の広報紙化している読売新聞が「

75歳以上の高齢者を負担増にさせ

る医療制度改正案が提出される」

と報じたのである。この目的は出

産時に支払われる「出産一時金」

を50万円に増額させるための財源

確保のためという。何のことはな

い、高齢者が支払ったか医療保険

料を政権の人気取りのために転用

させるだけだ。試算では年間1万

円以上も保険料が増額になるケー

スもある。高齢者はもっと怒りの

声を上げるべきではないのか。

歴代の首相や官房長官が毎月のよ

うに読売新聞本社を訪れ、渡邉恒

雄主筆ら幹部と会食をすることは

メディア界ではよく知られる。最

高部数を誇っているとはいえ、部

数減が激しい新聞界で、今なお渡

邉氏が政界に隠然たる力を保持し

ていることに驚かされるが、真正

面から政権批判をしない読売と自

民党がお互いに利権を享受しあっ

ているとみれば、双方が発信する

政策やニュースは一体化していて

もおかしくない。特に読売の政治

報道は政権中枢からリークされた

内容を世論の動向を探る観測球の

ように流されることがある。

先週末の4日、読売は「健康保険

法などの改正案の全容が判明した」

と報じた。「全容判明」という文

言にはスクープ気取りがにじんで

へきへきさせられるが、法案策定

者に近い政治家らからリークして

もらったであろう情報の中身は事

実と思わせる具体性があった。

記事を要約した前文には、「公的

医療保険から支払われる出産育児

一時金を50万円にするための財源

確保のため」とある。そのために

は「現役世代の負担軽減のため後

期高齢者医療制度を見直すのが柱

」とあり、そこに負担増を強いら

れる側の痛みへの共感はみじんも

もなく、立案側と一体となった酷

薄なスタンスがうかがわれる。

負担増を強いられる後期高齢者の

年金収入が153万円を超える人

の4割が対象になるという。試算

では年収400万円の人は年間1

万4000円もの増額になるとい

う。

岸田政権はこんな高齢者を痛めつ

けるような健保改正案を昨年、一

昨年の衆参院選挙で一切公約に掲

げておらず、だまし討ちのような

改悪案ではないか。出産一時金が

増えるとだけ聞けば、若い現役は

喜ぶかもしれないが、「老骨に鞭

打つ」ような中身を知れば、反発

を招く可能性もある。最も見逃せ

ないのは、人気取りの目玉政策の

ために世代間で「分断」を招くや

り方だ。

そもそも防衛費倍増に伴う増税の

目くらましのための出産一時金増

額でもある。一方で防衛費増税に

ついては、全容を明らかにしてい

ないが、復興税やたばこ税の転用

だけはしっかり決めてしまった。

こちらも「弱い者いじめ」で分断

を図る狡猾さである。財務官僚の

入れ知恵をそのまま受け入れた岸

田首相のだらしない姿がはっきり

浮き彫りになったともいえそうだ



世界に目を移せば、フランスでは

マクロン政権が年金支給年齢を62

歳から64歳に引き上げる改悪法案

がを打ち出し、2月に入って全土

で約127万人がデモに参加し「

NON]の声をあげた。

また10%以上の記録的なインフレ

が続く英国ではわずか2%増の賃

上げしか実現できなかったスナク

政権に対し、交通、医療など公共

部門のストライキが拡大している

。1日には過去数十年で最大にな

る約50万人ものストも起きた。ス

ナク首相の支持率は17%台に落ち

込んだという。

これに比べて、日本は政治の劣化

に世論の反発が高まらない。見方

を変えれば、自らの生活に打撃や

痛みしかももたらさない政権を変

える好機でもある。日々、政治を

しっかり監視するため、情報をク

ロスし政権に都合の良いのプロパ

ガンダ情報を排除したい。

     【2023・2・6】

聞きたくなかった金切り声がまた

テレビ画面から流れてきた。子ど

も手当が創設された2012年の

旧民主党政権に対し、自民党の丸

川珠代議員(元五輪担当相)が放

った野卑な声である。「この愚か

者めが。このくだらん採決をした

バカ者どもを絶対許しません」と

声高に罵倒した丸川議員。今「子

ども手当」の拡充を掲げる岸田文

雄首相は「節度を超えていたとの

指摘を謙虚に受け止める」と反省

してみせた。テレビ朝日のアナウ

ンサーから自民議員に転身し、「

権力に媚びた女」の姿は今、安倍

晋三元首相から歓心を呼ぶ発言を

繰り返していた自称国際政治学者

、三浦瑠麗氏の転落にも重なる。

岸田首相が掲げた「異次元の少子

化対策」の中身がまったく見えな

い。自民の茂木敏充幹事長が衆院

の代表質問で、かつて自身も反対

していた「子ども手当の所得制限

撤廃」を口にして驚かせたが、そ

れだけ与党が具体策をもっていな

い表れでもある。立憲の長妻昭政

調会長が13年前の丸川氏から浴び

た雑言を持ち出して、政府与党を

追及したのは当然である。

かつての批判がブーメランのよう

に岸田政権を直撃している。所得

制限撤廃を持ち出しても、その費

用は1000億円から2000億

円かかる。その財源の確保も目途

がたっていない。岸田首相は6月

を目途に内容を明らかにするとし

ているが、先延ばしにしているだ

けにみえる。

所得制限撤廃ぐらいでは、まった

く「異次元」に値しない。首相の

「少子化対策」が今春の統一地方

選に向けたアドバルーンに過ぎな

かったことが露呈したとも言えそ

うだ。しかも、最優先にした防衛

費倍増のための財源確保も増税の

中身が判然としないか。党内では

「軍事国債」発行の声も強い。

丸川氏は13年前の自身の野次にま

た焦点が当たるとは、夢にも思わ

なかっただろう。因果応報である

。思慮浅く、野次の直後には「愚

か者めが」と胸に大書したTシャ

ツまで作って、同党の平井卓也議

員(元デジタル相)と一緒に民主

党攻撃の気勢を上げていた。自民

党はこの時、子ども手当を「ポル

ポト政権か」とか「社会で子ども

を育てるというのはスターリン
だ」と反対していたのである。そ

れが臆面もない真逆の変わり様だ

。野党の政策を丸のみするだけの

空疎な思考には嘆息するしかない



丸川氏は昨日、首相の謝罪をその

ま口にして「反省すべきは反省す

る」と述べたが、それが野次なの

か政策なのか、何を反省したのか

まったく分からない。東京五輪を

汚職まみれにさせた自身の五輪担

当相時代の政治責任もぜひ問いた

だしたい。

一方、同じ安倍晋三元首相に政府

の有識者会議の委員などに重用さ

れ、メディアで政権を賛美する発

言を繰り返していた三浦瑠麗氏が

テレビから一切姿を消した。夫の
三浦清志氏が代表を務める太陽光

発電など再生エネルギーファンド

「トライベイキャピタル」が東京

地検から業務上横領容疑で捜索を

受けたからである。夫には10億円

の融資詐欺容疑もかかっているが

、三浦氏は「私は会社のことは知

りません」と関連を否定していた



ところが、それが嘘だったことが

すぐに判明してしまった。何と心

理学者の中野信子氏との共著「不

倫と正義」で「(夫と)お互いの

会社の株をほぼ半々で持ち合って

いる。財産分与より確実ですよ。

……経営を通じてパートナーシッ

プを結んでいるわけですね」と打

ち明けていたのである。瑠璃氏は

菅義偉首相時代には太陽光事業者

として政府に要望書まで出してい

たと雑誌フライデーが明らかにし

た。

地検特捜の捜査対象者にもなった

人物をずっとコメンテーターとし

て起用してきたテレビ朝日、フジ

テレビはどう釈明するのか。降板

させただけでは済まないのではな

いか。討論番組「朝まで生テレビ

」で重用し続けた田原総一朗氏ら

の責任も強く問われなければなら

ない。

丸川議員、三浦氏に共通するのは

権力者への媚態である。


    【2023・2・1】

メディアはよく「論戦が始まった

」という語句を使うが、今国会を

みていると、まったくこのフレー

ズが当てはまらない一方的な岸田

文雄首相の政権運営である。代表

質問で強権的な政権運営を批判さ

れ「議員内閣制では政府・与党が

国政を預かっている。進め方に問

題があったと考えていない」と首

相は居直り答弁を繰り返す。国会

閉会中に防衛、原発、少子化など

の重要課題について、これまでの

政府方針を大転換させた理由を説

明しようとしない。国権の最高機

関である国会審議を事実上多数で

押し切る「通過儀式」させる罪深

さがある。とりわけ「次世代型原

発」への建て替えなど原発フル稼

働に踏み切った判断は過去の惨事

を忘却してしまった愚行である。

岸田首相の言う通り「政府与党が

国政を預かっている」としても、

どんな政策でも成立させていいわ

けではない。国会質疑を経て、そ

の是非を多様な質疑をかわし、是

非を判断するのが国会の責務であ

る。原発政策では、2011年の

東電福島の事故をふまえ、政府は

新増設や建て替えは「想定してい

ない」との立場を取ってきた。ま

た放射性廃棄物処理の目途も立っ

ていない。ところが昨年末、岸田

首相は突然、原発フル稼働を政府

方針にしてしまった。この間、十

分な説明は一切なされていない。

一昨年の衆院選で「廃炉や処理水

の問題、心のケアなどやるべきこ

とがたくさんある」とアピールし

ていたことを思い起こすと、福島

の事故被災住民には看過し難い背

信行為であろう。

首相は2年前の就任時、原発依存

に消極的な姿勢を見せていたのに

、今回の豹変ぶりには岸田首相本

人が信念をもって政治信条を実現

する人物でないことを、図らずも

自ら示したとも言える。

言葉の詐術も目に余る。「次世代

型原発」という語句を使うと、一

見新たな技術革新で安全性も高ま

ったかのような印象を与えるが、

想定する「軽水炉」は事故で溶け

落ちた核燃料を受け止めて冷やす

「コアキャッチャー」という設備

を備え、約10年後に実用化させる

という。しかし、既にフランスで

稼働しているこの型の原発は革新

的な「次世代の技術」に基づいて

いるわけではなく、既存型に改良

を加えたに過ぎない。

また既存の原発の倍以上の1基1

兆円から2兆円という莫大な費用が

かかるとされており、立地場所もあ

てがない。ロシアのウクライナ侵攻

で、原発施設への攻撃のリスクも高

まった。新たな立地候補になる自治

体の住民が簡単に賛成するとは思え

ない。


福島の事故を教訓に日本のエネルギ

ー政策は再生可能エネルギーを中心

にシフトしたはずなのに、原発フル

稼働は唐突という言葉ですますこと

もできないあまりにも真逆の大転換

である。

新たな方針転換を政府は「グリーン

トランスフォーメーション」という

標語を掲げた。一見耳障りがよい「

グリーン」という言葉はまやかしに

すぎない。核廃棄物の最終的な処理

ができない原発が「グリーン」とは

、ブラックユーモアにもならない。

福島の悲劇を忘れて、電力会社の目

先の利益擁護に走る政権の醜態に言

葉を失う。

原発利権は電力会社ばかりでなく政

策を立案する政府の経産官僚や天下

りのOBらを含む「原発ムラ」のメ

ンバーらに多大な個人的利得をもた

らす。かつて東電の取締役を務めた

経産省元次官の嶋田隆首相政務秘書

官が先兵として官邸に送り込まれ毎

日、岸田首相と会っては原発フル稼

働を吹き込んだとされる。そうだと

すれば、ここでも「信念なき首相」

の政治家像が改めて際立つ。


    【2022・1・27】

もしかしたら岸田政権の命取りに

なるのではないか。それは首相が

内閣支持率アップのため唐突に掲

げた「異次元少子化対策」である

。急きょ19日に開いた関係府省会

議の初会合は形ばかりで、議論の

たたき台すら提示できなかった。

出生数が初めて80万人を割り込む

ことが確実になる中、この国の将

来の行方さえ決める最重要な政策

が明確な財源もなく、政権トップ

思いつきだけで方向性決められる

事態に今春の統一地方選では、特

に母親世代の有権者から強烈なし

っぺ返しをくらうのではないだろ

うか。

政策に何でも「異次元」を付ける

と、とてつもない大胆な転換が起

きるのではないかと期待させるが

、少子化対策の現状をみると、目

を覆うばかりのお粗末さばかりが

浮き立つ。旧民主党政権時代に子

育て世帯に所得制限のない月1万

3千円の「子ども手当」支給が始

まった。しかし、安倍政権になっ

た2012年、この所得制限も復

活させ「児童手当」に変えた。こ

の年の衆院選で掲げた子育て世帯

が減税となる「年少扶養控除」は

実行されていない。

岸田首相は小池百合子東京都知事

が18歳以下の子どもがいる世帯に

付き5000円の現金給付を発表

「国が遅い」と批判すると、あわ

てて小池知事に対抗するかのよう

に「異次元」と言い出した。岸田

首相は「将来的な子ども予算倍増

」をアピールするが、財源につい

ては何も示していない。2022

年の給付総額は1兆9988億円

で、所得制限をやめて倍増するに

は、名称をめぐって批判が強かっ

た今春発足の「こども家庭庁」の

新年度予算4兆8000億に加え

て、新たに5兆円近くの財源が必

要になる。

そんな財源はすぐに見当たらない

が、毎日新聞の20日付け記事によ

ると、水面下で年金、医療、介護

、雇用の四つの社会保険から拠出

金を集めて基金化し、給付倍増に

あてる構想が出ているという。合

計年70兆円程度の1%を基金化で

きれば、年7000億円程度捻出

でき、それぞれ保険料率を一部引

き上げる目算という。

しかし、社会保険は本来病気、失

業、高齢などのリスクに備えるた

めであり、子どものいない人や高

齢者らから反発が出るのは必至だ

。そもそも、子育てとは筋違いの

保険に手を突っ込んで、加入者に

負担増をしいいるなどあってはな

らない。自民党の甘利明前幹事長

が「将来の消費税の増税を含め議

論を」と発言し大きな批判がわき

上がったほどだ。それほど、見通

しが見えないのに、岸田首相は自

身の考えも述べず、関係府省庁に

丸投げするだけだ。

岸田首相は国会にもかけず、年末

に防衛倍増を打ち上げ、増税方針

を打ち出したが、こちらも増税に

ついては党内合意もとれていない

。そんな混乱を招いておきながら

、こちらも財源のない「異次元の

少子化対策」を掲げた。こんな国

内「口ばかり」の首相の無責任さ

に嘆息しか出ない。

少子化対策は子ども手当増だけで

解決できる課題ではない。働く世

代の賃金アップ、保育所整備、育

休制度充実などがセットで向上し

なければならない。国内総生産(

GDP)に対する子育てに関わる

日本の公的支出はわずか1・74%

。スウェーデン3・42%、仏2・

72%に比べて低すぎる。また現金

給付はOECD各国の平均1・16

%の半分以下いう(朝日新聞)。

子育てを若い世代の自己責任ばか

りにさせてきた国の長年の不作為

のツケが改めて明白になった。そ

んな反省もせずに、トップが「異

次元」など語る資格はない。

    【2023・1・22】

年間の平均家計支出増は14万円(2

人以上世帯)。生活用品の相次ぐ

値上げラッシュや燃料費高騰の影

響について、民間のエコノミスト

らが衝撃的な数字を公表している。

市民生活の窮状をよそに、政府は

防衛費倍増を打ち出し、その財源

として24年度からの増税を決めた。

そんな中、連夜飽食三昧を繰り返

す岸田文雄首相ら政権幹部に対す

る怒りが高まる。23日から始まる

通常国会は約300億円以上にの

ぼる議員特権の剥奪や定数削減を

最大の政治テーマになるべきでは

ないのか。有権者の「痛み」を知

ろうとせず、危機をあおるだけの

政治に決別させる年でありたい。

年頭の訪米前、岸田首相は「異次

元の少子化対策」に取り組むとア

ピールしたが、具体策は皆無だっ

た。そんな無策を見越してか小池

百合子東京都都知事が子供手当1

人5000円と0~2歳時の第二

子以下の保育料無償化を打ち出し

た。今春の統一地方選を見据えた

得票作戦にも見えるが、国の無策

を際立たせたのは確かだ。したた

かな小池知事の「風見鶏」政治で

も「手厚い支援」と子育て世帯か

ら歓迎されている。

一方、岸田首相はホワイトハウス

に到着時、バイデン大統領に玄関

で出迎えられたと側近が親密さを

アピールする。しかし、米国への

「属国化」を一層進める防衛戦略

を土産にしたのだから、無碍にす

るわけがない。国民に「増税」と

いう痛みを強いて、自分だけ媚び

をうったとみられても仕方がない。
帰国後も、高級レストランで側近

や知人との宴会を繰り返す。16日

も宴席が待ちきれないように銀座

の高級日本食店で歯科医連盟の幹

部と贅沢な料理をたんのうした。

「飽食終日、心を用うるところな

きは、難きかな」(論語・孔子)

飲んで食べてごろごろして、さっ

ぱり頭を使わない連中はまったく

困ったものだという孔子の嘆きだ

。やる気のない人間に成長や進歩

がないと孔子が嫌った為政者像と

岸田首相ら政権幹部の姿が重なる

。そんな姿を見てか、麻生太郎元

首相も自分のことを棚に上げて、

地元で岸田首相を「あまり頼りな

い」とこきおろした。言い過ぎと

思ったのか続けて「間違いなく日

本は世界の中で地位を高めつつあ

る」と持ち上げてみせた。また「

リーダーシップがないという理由

はどこにあるのか」と褒め殺しの

言葉を放った。まさに「どの口が

言うか」であるが、岸田首相を嫌

っている本心は表れている。

その麻生元首相も以前自分の政治

資金管理団体「素准(そわ)会」

の政治資金から3年間で約600

0万円もの飲み食いをしていたこ

とを指摘され、今も続いている。

銀座や六本木のバーレストランへ

の支出はすべて交際費名目だった

。有権者の血税が毎晩、飽食をむ

さぼる議員らの胃の中で浪費され

ているのである。


防衛費増税でネット上では「国会

議員定数を大幅に減らせ」「交際

費など議員特権の剥奪を」の声が

高まり始めた。こんな批判をすく

い取った週刊アエラの特集記事(

14日付)が注目される。明治大研

究員の分析によると、国会議員の

年収は約2200万円で国家公務

員の最高給を上回るといい、国会

法に違反している。他にも年間1

200万円の調査研究広報滞在費

が、領収書なしでOKで支給され

ている。給与と合わせると約35

00万円近くになる。これは米国

の1914万円、ドイツ1466

万円、英国1126万円を抜いて

、先進国トップである。

さらに年間780万円の立法事務

費、JR無料パス、定期航空券な

どが支給される。総額を国会議員

数で割ると、実に1人4200万

円の費用がかかっている計算にな

るという。議員数も大きく他国を

上回る。まさに「議員天国」であ

る。

岸田首相らの使う官房機密費は中

身が分からないままだ。与野党議

員らがともに「甘い蜜」を吸いあ

っている実態を変えるには、有権

者が一段と強い批判の声を上げ続

けるしかない。


     【2023・1・17】

新年早々から元首相2人の暴言、

妄言が止まらない。麻生太郎元首

相は講演で、岸田文雄首相が決断

した「防衛増税」について根拠も

なく「多くの国民の理解を得た」

と決めつけた。菅義偉元首相は自

分が派閥の力に頼んで首相の座に

ついたのを忘れたのか、派閥会長

の岸田首相に「派閥政治を引きず

っている」と批判し、再登板への

権力欲をむきだしにした。2人の

暴言や妄言は政局の主導権を握ろ

うとする裏の意図が透けてみえ、

辟易させられる。共に不人気で退

場を強いられた過去を忘れたよう

な暗愚さが際立つ。

相次ぐ自分勝手な放言は岸田首相

の内閣支持率低迷が背景にある。

何を言われても、首相が自分に刃

向かう力がないことを見越してい

る。麻生元首相の発言はエールの

押し売りのように恩着せがましく

映るが、かえって逆効果だろう。

近く開会する通常国会では、審議

の最重要テーマになることは間違

いない。岸田首相から防衛力強化

のために増税が必要という明白な

説明は何もなされていない。専守

防衛から逸脱する「敵基地先制攻

撃」は攻めどころが多く、野党か

らサンドバック状態にされるので

はないか。防衛の専門家からも「

相手国に仮に攻撃の兆候があって

も、こちらから攻撃されれば、一

挙に全土が反撃される」という指

摘も出た。日本にそれを防げる防

衛力はない。国内の米軍基地周辺

も攻撃対象になって、一般市民が

巻き添えになる危険性が高まるの

は必至だ。

そんな時、米国のシンクタンク「

戦略国際問題研究所」(CSIS)

から背筋が寒くなるようなレポート

が公表された。2026年に、中国

軍が台湾に上陸侵攻した時を想定し

た机上演習によれば、在日米軍や自

衛隊基地が攻撃され26隻の艦船や平

均122機の航空機を失うとされて

いる。

この机上演習では中国軍は台湾の全

土制圧には失敗するが、台湾軍は約

3万5000人の犠牲者を出すとい

う。米国の演習運営者は「中国は多

くのシナリオで在日米軍や自衛隊基

地を攻撃した。日本は九州・沖縄の

基地の強靱化など、備えを進めるべ

き」と指摘する。いったん戦争が始

まると、お互いに一般市民が巻き込

まれるのは疑いようがない。そんな

事態を招かないためにも、今こそ市

民が反戦の声を上げなければならな

い。

国民的合意もなく、岸田政権は防衛

費倍増のための増税を政治決断して

しまった。この動きをストップさせ

るには、通常国会の審議で徹底追及

されなければならない。野党やメデ

ィアは過去の歴史を繰り返さないた

めにに重大な覚悟が求められている

のである。タレントのタモリが「今

は新しい戦前か」と問いかけ話題に

なった。肌感覚で、きな臭さを感じ

取ったからだろう。残念ながら、多

くの野党議員や記者らにそんな自覚

さえないのではないか。

特に岸田首相の欧米行きに付き従う

同行記者らは現地から政府のプロパ

ガンダを一斉に報道している。英国

ではスナク首相と合意した軍事協力

を新たな「日英同盟」ともてはやす

。米国では外務・防衛閣僚(2プラ

ス2)協議で、日本の敵基地攻撃能

力を双方が確認し合った。この後の

岸田首相の訪米に向けた最大の土産

だったことが分かる。日本が攻撃力

を高めれば、それだけ一般市民のリ

スクが高まるのは必至で、中国の台

湾侵攻時机上演習でも確認された。

防衛設備購入も米国の言い値で買わ

されるだろう。

ジャーナリズムで大事な懐疑的視線

を保てない随行記者らは、その発信

記事によって好戦的気分を盛り上げ

る罪深さがある。権力者に寄り添う

「御用政治記者」らは「金魚のフン

」と侮蔑される。情けないことに、

ここ数日彼らが発した記事がメディ

アにあふれそうだ。

    【2022・1・12】


「この国をずっと非戦の国に」と

の願いが、一瞬にして打ち砕かれ

た。「専守防衛」という国是を守

って、海外で戦いによる血が一滴

も流れなかった国の行く末はこの

先どうなるか分からない。そんな

沈んだ気分を少しでも変えたくて

岸田政権が「先制攻撃保有」を決

めた週明けに、雪の金沢へ日帰り

の旅に出かけた。この地にかつて

勤務した3年間で一度も経験しな

かった激しい霰が空から絶え間な

く降り、顔面を強く打ち続けられ

た。一層落ち込ん気持ちになりか

けたが、北国ならではの豊穣な人

々の営みの中に身を置くと、いつ

の間にか癒やされ、「負けてなる

ものか」という気丈な思いが戻っ

ていた。

大阪から金沢に向かう特急サンダ

ーバードは琵琶湖を過ぎたあたり

から窓の景色が白一色に変わった

。敦賀を後にすると、道路や田ん

ぼの積雪は約10センチ近くあり空

はあっという間に晴天からにび色

に変わっていた。車内は京都から

乗ってきたフランス人の団体客が

隣同士でがきゅうくつそうに談笑

しあっていた。リクライニングの

座席を倒す方法に気づいていない

ように見えた。年配の女性に声を

かけて、座席の内側のボタンを押

してあげると、体を後ろに倒しな

がら、ほほえんで礼を返してくれ

た。

すこしほっこりした気分になり、

まどろんだ。加賀平野に入っても

雪景色は変わらなかった。いつも

なら福井を過ぎたあたりから、雪

景色は見られなくなるのだが、こ

の日は違って雪は降り止まない。

それどころか、雪が大粒の霰にか

わりポツンポツンと激しく車窓を

打ち続けた。

金沢駅に着くと、すぐに近江町近

くにあるかつての行きつけの寿司

店に向かった。ところが、店はの

れんが掛かっておらず、入り口に

張り紙があり、「勝手ながら都合

で22日まで休みます」と書かれて

いた。主人に何があったのか、仕

方なく他の市場の寿司店に出向い

たら、こちらもウィークデーとい

うのに6人の行列。以前この店の

にぎり寿司がリーズナブルで、魚

のアラ汁がめっぽううまかったこ

とを思い出し、思い直して並んだ

。新幹線が開通して金沢の町は旅

行客が多すぎる「オーバーツーリ

ズム」の様相だ。

すしは期待通りうまかった。年配

の女性の裏方さんが調理するアラ

汁はおかわりを頼みたくなるほど

だった。食後は七尾市出身で世界

のパテシェとして知られる辻口博

啓さんがコーディネートする石川

県立美術館のスイートレストラン

に向かった。満席だった客席が途

絶え、ちょうど席が空いた。窓際

のカウンターに座ると、斜めに大

きくカットデザインされた窓には

、また激しく霰が打ち付けた。そ

れは絵画のような一景にも見えた

。チーズのショートケーキが濃い

目のコーヒーによく合った。

美術館のホールで「金沢芸妓の舞

」の集いが開かれると聞き、迷わ

ずチケットを買う。金沢勤務時代

、毎晩のように散歩していた茶屋

街「主計町」の芸妓ら4人が舞う

という。笛「夢香山」から始まり

、舞踊「山中しぐれ」「満月」「

金沢風雅」などの演目はどれも華

麗で粋。百万石の城下町の伝統を

存分に味わせてくれた。「お座敷

遊び」体験もあり、我先と観劇の

女性が舞台に上がり、鼓打ちに興

じていた。

「空から謡いがふってくる」と言

われた城下町の豊かな文化の香り

を感じたひとときであった。帰路

、兼六園脇の下り坂には滑り止め

筵がびっしり敷かれ、安心して香

林坊に向かった。途中の石浦神社

の石垣にはアート模様のように雪

の塊ができて、緑と白のコントラ

ストが鮮やかだった。見上げると

、兼六園入り口の松の雪吊りがす

っくと先端が抗うように空に向か

っていた。しばらく見上げている

間に、どこか気分が一新された。

来年は雪吊りの突端を思い描き、

理不尽なことに鋭く突き刺さるよ

うに生きよう。

    【2022・12・21】

(今年は今回で最終とします。今

年もご愛読ありがとうございまし

た。次回は1月12日から始めます)

まるで戦前の軍部が言論を封殺し

ていった同じ手法ではないか。防

衛省がAI技術を使って世論誘導

する研究に着手したという共同通

信のスクープに体が震えるような

寒気が走った。この研究は「イン

ターネットで影響力のある『イン

フルエンサー』が無意識のうちに

防衛省に有利な情報発信をするよ

うに仕向ける」のが目的だ。ネッ

ト空間で、有事での相手国への敵

対心を醸成させ、国民の反戦気分

を高めるという目標を公然と掲げ

ている。防衛費倍増や先制攻撃容

認にひた走る政府がかつての「大

本営発表」のようなフェイクニュ

ースねつ造に政府自らが着手し始

めた兆しである。

既に岸信夫前防衛相は昨年、「厳

しい安全保障環境」を理由にイン

フルエンサーや政府寄りの有識者

らに世論誘導研究の必要性と予算

増額を説いてきたといい、今回の

防衛費倍増についての巧妙に世論

誘導を実践してきた。その効果の

表れが先制攻撃を容認する結論を

出した有識者会議だった。政府寄

りのメンバーばかりで、憲法学者

は一人も入れていなかった。それ

なのに、会議があたかも第三者機

関であるよう平然と装い、メディ

アも結論をプロパガンダのように

たれ流すだけだった。

政府主導のSNS対策はフジTV

の「テラスハウス」に出演してい

た木村花さんが交流サイトで中傷

され亡くなった事件以後、被害者

救済を口実に加速した。自民党や

法務省は「心ない誹謗中傷で人を

傷つけるやり方に対してルール化

が必要」と素早くプロジェクト

チームを作った。ところが、政府

与党の主導の規制には懸念の声が

根強かった。政権がSNS上の政

権批判に神経をとらがらせており

「正当な批判を誹謗中傷と利用さ

れたり、監視されてはならない」

という言論封殺への危機意識があ

るからだ。

実際に昨年末、財務省の決裁文書

改ざんによって自殺したした近畿

財務局職員について、自民党と取

引のあるウェブ会社から「野党議

員2人が職員を1時間吊し上げた

」という虚偽事実の投稿が流され

、議員が会社に880万円の損害

賠償を求める訴訟が起された。裁

判は係争中だが、ネット空間で政

府批判を中傷・誹謗する投稿がま

かり通っていることを見せつけた


AIを使えば、反戦意識の高い有

権者を探すことは容易な時代にな

った。同時に憲法で保障された表

現の自由が侵害されるケースも頻

発しかねない。今回の防衛省によ

る世論誘導研究着手は言論封殺に

つながる憲法違反の疑いが濃厚だ

。野党は国会で厳しく政府を追及

すべきである。

改めて歴史は繰り返すという思い

を強くする。軍部独裁色が強まっ

た戦前の昭和9年(1934年)

、陸軍の統制派が「日本を総力戦

に見合う強固な軍事体制国家にす

る」という目的を掲げ、国家改造

への道を示す「陸軍パンフレット

」(通称陸パン)を作成し、陸軍

省新聞班が公表した。「たたかひ

は創造の父、文化の母である」と

いうスローガンを掲げた好戦的な

プロパガンダ文書だった。(半藤

一利氏著・昭和史から)。自由主

義を否定した天皇制国家の強調な

どの内容で国民に国家総力戦態勢

の意識を強めさせる効果をもたら

した。

形こそ違え、「陸パン」は今回の

防衛省のAIによる研究は好戦的

な世論形成という目的は同じだ。

けっして看過できない。

    【2022・12・16】

「専守防衛」の国是を大転換させ

る防衛費倍増予算が財源不足をめ

ぐって岸田政権が大揺れだ。使い

途が分かっていないのに、岸田首

相は来年度からの5年間の防衛予

算を5倍強の約43兆円に増やすこ

とを決め、不足財源を増税でまか

なうと表明したが、党内安倍派か

ら「新たな赤字国債を発行すべき

」という要求が強まった。さなが

ら「岸田おろし」の様相を呈して

いる。党内合意もとれない性急な

予算編成方針が自ら墓穴を掘るこ

とにつながるかもしれない。そも

そも想定する相手国から際限のな

い反撃を招きかねない。想像力に

欠ける対米追随予算は、やがてこ

の国を亡国の崖っぷちに追いやり

かねない。

今回の反撃能力保持と防衛予算倍

増は国会の審議を経てない。かつ

て安倍政権時代に、毎日放送の報

道番組で、安保法制の是非を論じ

たあった柳沢協二・元内閣官房副

長官補は強く今回の政策決定を批

判している。その警鐘に耳を傾け

たい。

「中国や北朝鮮は相当数のミサイ

ル施設があり、全て一気につぶせ

なければ、日本が報復される。…

…さらに相手国の国土をたたけば

、むしろ日本を攻撃する理由を与

え、ミサイルの応酬により国民に

甚大な被害が出る」(30日付け東

京新聞)

「専守防衛」については「国土防

衛に徹し、相手の本土に被害を与え

るような脅威にならないと伝え、

相手に日本を攻撃する口実を与え

ない防衛戦略だ。(先制攻撃能力)

を持てば専守防衛は完全に崩れ、

有名無実化する」と危惧する。

1500発もの核弾頭の保有を目

指す中国に、根拠が不明のまま仮

に先制攻撃した場合、かえって圧

倒的な武力行使によって、完膚な

きまでに反撃され、国土が蹂躙さ

れるのは必至である。現在でも彼

我の戦力の差を冷静に分析すれば

、外交によって攻撃させない道を

探ることこそ最重要ではないのか



柳沢氏の指摘は素人でも分かりや

すい分析で、大いに納得すできる

。政府方針は相手国が攻撃に着手

したことをどう認定するのかとい

う根本的な疑問が払拭できていな

い。今春、参院の公聴会に出席し

た名古屋大の松井芳郎名誉教授は

「政府は武力攻撃の発生時点につ

いて、具体的な定義をはっきりさ

せていません。自衛権を行使する

には相手国の武力攻撃が先行する

必要があるというのは、国際法、

または裁判所の判例でも一致して

認められていません」と政府の前

のめりの判断に疑念を投げかける



さらに「相手国の『着手』の判断

は客観的事実で裏付けられたもの

でなければなりません。『着手』

のあり方も多様で具体的に定める

のは大変難しいです」と解説する

。専門家でさえ、定義ができない

のが現実なのである。

一方昨日、衝撃的なスクープを月

刊文春が報じた。「日本の信者ら

から集めた統一教会のマネー45

00億円が北朝鮮のミサイル開発

資金に使われた可能性がある」と

米国国防総省の報告書が一部機密

解除されたという。事実なら岸田

政権が成立を急いだ被害者救済法

は、自民党の過去の教団との癒着

を目隠しする効果をもたらす。教

団の「底知れぬ闇」を白日にさら

さなければ、この国の浄化はでき

ない。

自民党の政策懇談会で、岸田首相

の増税表明に安倍派議員を中心に

「選挙に影響大」と赤字国債によ

って防衛費倍増の不足財源をまか

なうべきと強い反発がでたが「な

ぜ先に倍増ありき」か根拠が不明

のままだ。一基何百億もする長距

離ミサイルの保有やステルス戦闘

機の開発など次々、防衛利権がら

みの構想が表面化するが、インフ

レ脱却や賃金上昇政策などは何ら

具体政策がみえない。「亡国の予

算編成」を引き続き厳しく監視し

なければならない。


    【2022・12・11】

TVのニュース番組欄はまるで世

界はサッカーW杯しかないかのよ

うだ。そんな錯覚は、過剰で画一

的な編成のせいだ。サッカー史を

塗り替える日本チームの健闘に酔

いしれることを否定はしないが

、あまりに節度を失っている。

大事なことを報じないうちに、国

の進路が危うい方向に大きく転回

しようとしている。国是である「

専守防衛」を放棄する政策転換が

議論なく進んだ。視聴率至上主義

から権力監視をしなくなった放送

業界の近年の堕落が、この国の愚

民化に拍車をかけている。

サッカーW杯で浮かれる視聴者を

狙っているかのように、自公両党

は「敵基地攻撃能力」保有を認め

、防衛費倍増で合意した。戦後一

貫して続けられた抑制的な防衛基

本政策が一挙に変えられ、先制攻

撃が可能になる政策転換である。

ロシアのウクライナ侵攻、北朝鮮

の止まらぬミサイル発射、中国の

武力攻勢による「台湾有事」など

がその名分だが、敵と想定した国

の攻撃着手を果たして事前に判断

できるのかという根本的な疑念を

払えていない。認定基準が明白に

な示されていないまま、先制攻撃

に踏み切れば、専守防衛の国是に

逸脱するのは確かではないか。

性急な与党間の合意は自民党タカ

派の要求だけでなく、公明党の安

易な妥協から生まれた。支持母体

の創価学会の一部の会員はこれま

で安保法制制定などで歯止めの役

割を果たしてきたが、今回は旧統

一教会の被害者新法の適用先が学

会に波及しないように法案を修正

させるため、岸田政権と妥協せざ

るをえなくなった内情がある。い

わば身内の利益を国民の命と安全

を優先させた政治判断を下したゆ

えの自公合意であった。

「戦争する国」になる大きな階段

を上ったこんな大事なニュースを

TV番組はほとんど報じていない

。新聞は一面トップか準トップ扱

いにし、中面を数ページ割いて解

説記事を展開し、読者に問題提起

する務めを最小限ではあるが果

たしてきた。それに比較してこの

一週間TV報道を点検してみたが

、各局ともBS以外の地上波の主

要情報番組での取り扱いは皆無だ

った。

特にサッカーW杯で日本チームが

ドイツ、スペインチームを破った

当日と次の試合までの数日間、朝

から晩までニュースのトップはW

杯に長時間あて、他の少ない時に

当日発生の事故事件を並べるだけ

だった。「報道特集」「サンデー

モーニング」など比較的にバラン

スをとったラインナップを配慮し

たTBS以外の民放各局のW杯の

過剰報道には目を覆いたくなった。

朝から晩まで日本チームのゴール

シーンばかりがたれ流され、スタ

ジオでは同じ顔ぶれのサッカー解

説者が入れ替わり立ち替わり登場、
視聴者をまるで「他に大事なニュ

ースはない」と思考停止にさせて

いる。放送業界はサッカーW杯の

視聴率が「30%を超えた」「こち

らは40%だ」などと浮かれている

が、放送の公益性を忘れ、権力を

監視する使命などないと思わせる

惨状を広く業界全体を覆う。

それでも、心ある有権者は少なか

らず存在する。内閣支持率が比較

的高めに出るJNN系の最新世論

調査で岸田内閣の支持率は34・2

%と先月から4・2%低下した。

これは菅前内閣の数字と同水準に

なった。注目すべきは不支持率が

4・2ポイント上昇し61・9%に

なったことである。6割の人が「

NO」と言った政権が長く続いた

例は皆無に近い。

放送業界の幹部らは視聴者らが示

した世論に真摯に向き合わなけれ

ばならない。ベトナム戦争反対の

論陣をはった米国の伝説のキャス

ター、ウォルター・クロンカイト

は放送が社会に果たすべき役割を

日本公演でこう語っていた。

「民主主義を守るためには、隠さ

れたものにこそ、光を当てなけれ

ばならない。……他人を寄せつけ

ようとしない人間にこそ監視の目

を向けないといけない」

    【 2022・12・6】