醜い権力者への媚態 | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

聞きたくなかった金切り声がまた

テレビ画面から流れてきた。子ど

も手当が創設された2012年の

旧民主党政権に対し、自民党の丸

川珠代議員(元五輪担当相)が放

った野卑な声である。「この愚か

者めが。このくだらん採決をした

バカ者どもを絶対許しません」と

声高に罵倒した丸川議員。今「子

ども手当」の拡充を掲げる岸田文

雄首相は「節度を超えていたとの

指摘を謙虚に受け止める」と反省

してみせた。テレビ朝日のアナウ

ンサーから自民議員に転身し、「

権力に媚びた女」の姿は今、安倍

晋三元首相から歓心を呼ぶ発言を

繰り返していた自称国際政治学者

、三浦瑠麗氏の転落にも重なる。

岸田首相が掲げた「異次元の少子

化対策」の中身がまったく見えな

い。自民の茂木敏充幹事長が衆院

の代表質問で、かつて自身も反対

していた「子ども手当の所得制限

撤廃」を口にして驚かせたが、そ

れだけ与党が具体策をもっていな

い表れでもある。立憲の長妻昭政

調会長が13年前の丸川氏から浴び

た雑言を持ち出して、政府与党を

追及したのは当然である。

かつての批判がブーメランのよう

に岸田政権を直撃している。所得

制限撤廃を持ち出しても、その費

用は1000億円から2000億

円かかる。その財源の確保も目途

がたっていない。岸田首相は6月

を目途に内容を明らかにするとし

ているが、先延ばしにしているだ

けにみえる。

所得制限撤廃ぐらいでは、まった

く「異次元」に値しない。首相の

「少子化対策」が今春の統一地方

選に向けたアドバルーンに過ぎな

かったことが露呈したとも言えそ

うだ。しかも、最優先にした防衛

費倍増のための財源確保も増税の

中身が判然としないか。党内では

「軍事国債」発行の声も強い。

丸川氏は13年前の自身の野次にま

た焦点が当たるとは、夢にも思わ

なかっただろう。因果応報である

。思慮浅く、野次の直後には「愚

か者めが」と胸に大書したTシャ

ツまで作って、同党の平井卓也議

員(元デジタル相)と一緒に民主

党攻撃の気勢を上げていた。自民

党はこの時、子ども手当を「ポル

ポト政権か」とか「社会で子ども

を育てるというのはスターリン
だ」と反対していたのである。そ

れが臆面もない真逆の変わり様だ

。野党の政策を丸のみするだけの

空疎な思考には嘆息するしかない



丸川氏は昨日、首相の謝罪をその

ま口にして「反省すべきは反省す

る」と述べたが、それが野次なの

か政策なのか、何を反省したのか

まったく分からない。東京五輪を

汚職まみれにさせた自身の五輪担

当相時代の政治責任もぜひ問いた

だしたい。

一方、同じ安倍晋三元首相に政府

の有識者会議の委員などに重用さ

れ、メディアで政権を賛美する発

言を繰り返していた三浦瑠麗氏が

テレビから一切姿を消した。夫の
三浦清志氏が代表を務める太陽光

発電など再生エネルギーファンド

「トライベイキャピタル」が東京

地検から業務上横領容疑で捜索を

受けたからである。夫には10億円

の融資詐欺容疑もかかっているが

、三浦氏は「私は会社のことは知

りません」と関連を否定していた



ところが、それが嘘だったことが

すぐに判明してしまった。何と心

理学者の中野信子氏との共著「不

倫と正義」で「(夫と)お互いの

会社の株をほぼ半々で持ち合って

いる。財産分与より確実ですよ。

……経営を通じてパートナーシッ

プを結んでいるわけですね」と打

ち明けていたのである。瑠璃氏は

菅義偉首相時代には太陽光事業者

として政府に要望書まで出してい

たと雑誌フライデーが明らかにし

た。

地検特捜の捜査対象者にもなった

人物をずっとコメンテーターとし

て起用してきたテレビ朝日、フジ

テレビはどう釈明するのか。降板

させただけでは済まないのではな

いか。討論番組「朝まで生テレビ

」で重用し続けた田原総一朗氏ら

の責任も強く問われなければなら

ない。

丸川議員、三浦氏に共通するのは

権力者への媚態である。


    【2023・2・1】