「スッカラカン政治」の醜態 | 平野幸夫のブログ

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ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

朝令暮改、君子豹変……。突然の

政治家の変節を表す言葉は数々あ

れど、たった1日で方針転換をし

たケースはそれほどない。岸田文

雄首相が子育て予算を倍増すると

した国会答弁を一夜にして反古に

したのである。新聞各紙は「重み

失う首相答弁」(朝日)「リスク

要因」(毎日)の見出しで報じた

が、元々の「岸田政治」の本性を

見抜いていれば、格別驚くことで

はない。統一教会や同性婚法制化

の答弁でも何度も似たようなトー

ンダウンを見せつけたことを振り

返れば、当初から「重み」などな

かった。確固とした政治信条がな

いから、その場も雰囲気で中身の

ない言葉を口にする。名付けて「

スッカンラカン政治」である。

22日の衆院予算委でも子育て予算

倍増答弁の修正が集中砲火を浴び

そうだ。岸田首相は子育て予算を

含む「家族関係社会支出」につい

て15日、「家族関係社会支出を2

020年度の段階でGDP比2%

を実現した。それを倍増しようで

はないかと申し上げている」と胸

を張った。ところが、この支出を

倍増しようとしたら、さらに10兆

円の財源が必要だったことが判明

したのである。

しかし、財源確保の目途はなく、

首相側近の磯崎仁彦官房副長官あ

わてて翌日、「将来的な倍増を考

える上でのベースとしてGDP比

に言及したわけでない」と首相答

弁を修正した。これで批判がさら

に強まり翌日、松野博一官房長官

が「今整理している。どこをベー

スとして倍増するか整理中だ」と

軌道修正を図った。さらに松野長

官は「首相は子ども予算を強化し

、防衛費との関連でも決して見劣

りするものでないという趣旨で申

し上げた」と釈明を重ねた。不用

意発言を重ねる首相への「尻拭い

」だ。醜態が極まる。

今国会冒頭から「異次元の少子化

防止対策」をアピールした首相は

もう「異次元」を口にしなくなっ

た。詰めた政策でないので、野党

から追及されると、破綻してしま

うからだ。

「存在の耐えられない軽さ」とい

う洋画のタイトルが頭に浮かぶ。

冷戦下のチェコの「プラハの春」

を舞台にした映画のストーリーと

は関係が皆無だが、その言葉だけ

を岸田首相に重ねたくなる。昨年

の国会で統一教会への解散命令審

議で岸田首相は「民法における不

法行為は含まれない」としていた

のに、政権への批判が高まると、

首相は「不法行為も含まれる」と

真逆の方針転換をして、党内をも

驚かせた。

同性婚の法制化についても「社会

が変わってしまう課題」と述べ、

擁護しようとした首相秘書官の差

別発言につながった。すでにお粗

末な首相答弁の数々がが自らの足

元を揺るがせている。二階俊博元

幹事長、菅義偉前首相らが手ぐす

ねをひいている姿が見えるようだ

。内閣支持率がずっと20%台に低

迷し、さらなる失態が続くと、対

抗勢力が倒閣の声を上げ始めるか

もしれない。

岸田首相が浮揚できる回生策はす

ぐに見当たらず、ひたすら5月の

G7の議長国をアピールするぐら

いしかないのではないか。

先週末、大阪府豊中市で開かれた

集会で政治学者の白井聡氏が「岸

田政治」の本性を政治学者らしい

分析で見事に言い当てていた。安

部元首相、菅前首相、岸田首相を

一括りにして現代史の「2012

年体制」と名付けた。ひたすら米

国に「へいこら」し、文化、学術

人権を無視する専制政治と位置付

けていた。白井氏はこの流れに抵

抗するために「日常の生活から我

慢ならないことに一つ一つ声を上

げていくことが大事」と強調して

いた。強くうなずき、気分を新た

にしたのである。


     【2023・2・22】