虚飾の演出「G7の議長国」 | 平野幸夫のブログ

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ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

「何としても行く」とウクライナ

訪問に息巻く岸田文雄首相。戦乱

収まらない地に、はるか極東から

出向いてどんな成果があるのか。

疑問が強まる。「G7の議長国」

のリーダーシップを見せるのが目

的というが、米国に追随して敵視

一辺倒の対ロ外交は危うくし、身

の安全性も確保できる見通しも立

たない。軍事同盟であるNATO

加盟国ばかりのG7と一体化する

のは、安全保障上のリスクを自ら

かぶるように見えてしまう。身の

程知らずな首相の振る舞いは、虚

飾の演出に見えるだけだ。

24日の首相会見で「23時からゼレ

ンスキー大統領をお招きし、G7

首脳テレビ会議を私が主催いたし

ます」と自信たっぷりに語ったが

、日本のウクライナ支援はG7の

各国と比べて、格段に少ない。約

1500億円は米国の1%で、バ

イデン米大統領の電撃的なウクラ

イナ訪問後、あわててウクライナ

に世界銀行の融資を保証する財政

支出を増やしたが、リーダーシッ

プを強調するには実効性のある支

援の中身が貧弱である。

憲法に基づく防衛装備移転3原則

で武器の提供は制限されている国

のトップとして軍事同盟の他国と

一線を画すべきで、ウクライナに

送る民生品のメニューと量をさら

に増やすべきだが、会見では具体

的にその中身を明らかにできなか

った。

経済制裁が抜け穴だらけで、ロシ

ア経済があまり疲弊していないの

が、戦況が膠着している原因とさ

れているが、日本の制裁も不備が

目立つ。トヨタ、日産などが撤退

を余儀なくされたが、中古車輸出

はこの1年で増えた。輸出基地に

なった富山、新潟の各港はロシア

のウラジオストックへの貨物船が

連日、満杯で中古車を運ぶ活況だ

という。

また、ロシアからのカニなどの輸

入量は侵攻前を上回り、過去最高

額になった。G7での存在感を示

すというなら、こんな抜け穴だら

けの経済制裁を見過ごしていいは

ずがない。内閣支持率がずっと20

%台に低迷している首相の胸の内

は5月の広島サミットまで持ちこ

たえ、被爆地・広島でG7議長の

姿を内外に見せつけたい一心だろ

う。そのためにこれからは何事に

も「G7議長」というフレーズを

口にするだろう。単に順番が回っ

てきただけの議長という立場を飾

り立て、内外にアピールする機会

を増やそうとするのが目に見えて

いる。
しかし、どんな美辞麗句を飾ろう

と、その足元で揺らいでは何の説

得力も持たない。他のG7各国が

制定しているLGBT差別規制法

はその典型である。昨日の自民党

大会でも首相演説はLGBT理解

増進法案に触れないままだった。

 


本当に広島を舞台にしたサミット

を開催する資格があるのかという

疑念が岸田首相に付きまとう。現

在62カ国が批准している核兵器禁

止条約に日本が不参加であるから

だ。「核兵器をなくせ」という被

爆者らの血の出るような叫びに応

え続けないのが、広島の選挙区で

選ばれた岸田首相である。ウクラ

イナ侵攻で一段と核による脅しが

エスカレートしている今、広島で

のG7を意義あるものにするには

被爆者の思いを各国のリーダーに

伝え、参加国が一致して禁止条約

批准に向けた核廃絶宣言を発する

ことではないか。それができなけ

れば、岸田首相は被爆地でまた背

信行為を重ねることになる。

これからG7まで3カ月の間、岸

田首相がどれだけ「議長国として

」と口にして、主導力を誇示して

も内実が伴わなければ、どれも虚

飾の演出に見えるはずだ。それが

分からず、「議長」ばかりを言い

募れば言い募るほどプロパガンダ

だけの愚鈍ぶりが際立ってくるだ

ろう。
    【2023・2・27】