マジすか学園3☆#2ー8☆
東京港
芝浦埠頭ー
レインボーブリッジを見上げる絶好のロケーションに
潮風にあおられ、セーラー服の少女が二人と特攻服の少女が一人。どちらも、闇に溶け込むような灰色の影。
「前田を喰った!?」
「まったく、話にならんかったで…。全然、手、出してこんかったし…拍子抜けや」
ディーヴァ十二将
グレイの特攻服の近藤リナの報告に、キノハルは、さもありなんという表情。
「なるほどな…。まだ、喰べ頃やなかったみたいやな…」
「どうゆう意味や!?」
「そのまんまの意味やで」
「なんや!?前田が、本気やなかったってことか!?」
気の強さが、言葉にも態度にもあらわれるリナ。受け流すキノハル。
「そういうことや…。前田を熱くさせるには、それなりの準備が必要なんや…。じっくり、じっくり…な。そんでもって…、しっかり、燃えてもらったとこを…、おれが喰う!」
「前田の担当は、おれや!」
「お前じゃ、本気の前田には勝てへんわ」
「何っ!?ちょい待てや!ちょっと、総帥に気にいられとるからって…」
「やめとき!キノハル!…すまんな、こいつ、まだ、子供なんや…」
黙って聞いていた
キノハルのお目付役的な立場の岸野リカが、二人の間に割って入り、キノハルをたしなめ、リナの機先を制する。
本来、ディーヴァの軍師的な役割の少女。大人っぽい顔立ち。
キノハルは、幼顔ではあるが、実力は、十二将でもトップクラスの折り紙付きだ。ディーヴァ総帥の寵愛もあつい。
気まずい空気も
どこ吹く風。天真爛漫を絵に描いたような少女ー木下ハルナ。
「あーあ…早く、“アレ”届かへんかなー」
そしたら、始められるんやけどな…と
暗い海を、遠足前の子供のような面もちで見つめるキノハルだった。
「ぐはっ!おれたちが…、たったひとりに…」
暗い路地裏で、マジすか女学園の生徒が、数人、倒れている。
黒のニットカーディガンの少女が、
最後のひとりを倒し、冷たい視線をおくり、言う。
「うぬぼれたら、あきまへんえ」
同じく、マジすか女学園の生徒、横山ユイだった。
背後から、パチパチと手を鳴らしながら、ネズミがユイに近づく。
「作戦は、順調っスね。次は…」
「“まだまだ”なやつらばっかやねぇ。ほなね」
次の標的を聞き、つまらなそうに、ユイは、帰っていった。
ネズミは、その後ろ姿を見るともなく見送る。
顔を覆う灰色のフードの奥の、暗く、深い、底なしの…瞳。
(世界は…わたしの手のひらのなか…)
芝浦埠頭ー
レインボーブリッジを見上げる絶好のロケーションに
潮風にあおられ、セーラー服の少女が二人と特攻服の少女が一人。どちらも、闇に溶け込むような灰色の影。
「前田を喰った!?」
「まったく、話にならんかったで…。全然、手、出してこんかったし…拍子抜けや」
ディーヴァ十二将
グレイの特攻服の近藤リナの報告に、キノハルは、さもありなんという表情。
「なるほどな…。まだ、喰べ頃やなかったみたいやな…」
「どうゆう意味や!?」
「そのまんまの意味やで」
「なんや!?前田が、本気やなかったってことか!?」
気の強さが、言葉にも態度にもあらわれるリナ。受け流すキノハル。
「そういうことや…。前田を熱くさせるには、それなりの準備が必要なんや…。じっくり、じっくり…な。そんでもって…、しっかり、燃えてもらったとこを…、おれが喰う!」
「前田の担当は、おれや!」
「お前じゃ、本気の前田には勝てへんわ」
「何っ!?ちょい待てや!ちょっと、総帥に気にいられとるからって…」
「やめとき!キノハル!…すまんな、こいつ、まだ、子供なんや…」
黙って聞いていた
キノハルのお目付役的な立場の岸野リカが、二人の間に割って入り、キノハルをたしなめ、リナの機先を制する。
本来、ディーヴァの軍師的な役割の少女。大人っぽい顔立ち。
キノハルは、幼顔ではあるが、実力は、十二将でもトップクラスの折り紙付きだ。ディーヴァ総帥の寵愛もあつい。
気まずい空気も
どこ吹く風。天真爛漫を絵に描いたような少女ー木下ハルナ。
「あーあ…早く、“アレ”届かへんかなー」
そしたら、始められるんやけどな…と
暗い海を、遠足前の子供のような面もちで見つめるキノハルだった。
「ぐはっ!おれたちが…、たったひとりに…」
暗い路地裏で、マジすか女学園の生徒が、数人、倒れている。
黒のニットカーディガンの少女が、
最後のひとりを倒し、冷たい視線をおくり、言う。
「うぬぼれたら、あきまへんえ」
同じく、マジすか女学園の生徒、横山ユイだった。
背後から、パチパチと手を鳴らしながら、ネズミがユイに近づく。
「作戦は、順調っスね。次は…」
「“まだまだ”なやつらばっかやねぇ。ほなね」
次の標的を聞き、つまらなそうに、ユイは、帰っていった。
ネズミは、その後ろ姿を見るともなく見送る。
顔を覆う灰色のフードの奥の、暗く、深い、底なしの…瞳。
(世界は…わたしの手のひらのなか…)
マジすか学園3☆#2ー7☆
「きゃー!ケンカよー!」
泣き叫ぶ塾帰りの女子高生。有名進学塾の前。午後十時。
「サワコさん!早く!」
サワコと呼ぶ少女の手を取り、泣き叫ぶ女子高生とは逆に、野次馬に加わろうとする好奇心旺盛な同じく塾生の中俣シオリ。
「君…、喧嘩が好きなのか?」
男装が似合いそうな、すらっとした美形の
秦(はた)サワコが、嘆息する。前髪をかきあげながら。茶色のブレザーは都内随一の進学校のもの。
「お互い、受験生ともなると、ストレス溜まるでしょ?わたし、プロレスとか格闘技、テレビで見るのも好きだし」
かわいらしい、いかにも女の子の中俣が、サワコを見上げるように言う。
「プロレスと喧嘩を、一緒にしてるのか、君は…」
やれやれといった表情。
野次馬の中で、頭ひとつ出ている長身のサワコ。ショートカットが小顔によく似合う。
衆人環視のなか
喧嘩をしていたのは、二人の少女。
青いスカジャンの少女。内には、マジすか女学園の制服。
マジすか女学園、二年、
松井ジュリナ。
対するはー
矢場久根女子高校、一年、
市川ミオリ。
矢場久根女子校の新総長。
サドを沈めたー
ツインテールの…悪魔。
喧嘩の原因は、通りすがりに、目があった、ただそれだけのこと。
情勢は、ミオリがおしていた。
圧倒的にー。
おそろしいものを見るように、遠巻きから眺める野次馬たち。
ミオリの背中には、どす黒いオーラが吹き出してみえた。
無秩序で、無慈悲な拳が唸る。悪魔の拳。
ジュリナの両腕のガードをすり抜ける。いとも容易く。血にまみれる顔。視界がぼやける。
(軌道が…、読めねー…)
身軽さを発揮し
距離を取ろうとするも、瞬時に詰められる。防戦一方のジュリナ。いままで、味わったことのない、迅く、そして、重みのあるパンチ。天性の勘のみが、致命傷を防いでいた。
よろめく。
ギリギリ、意識を保つ。
(も…、もっていかれる…)
「お前のほうから仕掛けといて、この程度か!お前も、サド同様、“病院おくり”にしてやるよ!」
(サド…?)
ジュリナの両腕のガードが下がる。
悪魔が、その隙を見逃すはずがなく、黒い拳がとぶ。
「死ね!」
ジュリナの
つぶれかけた瞳に光が宿る。
初めて、その拳を左掌で完全に受け止めたジュリナ。
「そうか…、お前だったのか…」
ジュリナの右拳が閃く。閃光のような右ストレート。
間一髪かわした
ミオリの左の髪の束がほどける。ツインテールがハーフツインに…。
「サドには悪いが…、お前は、おれが…ぶっ潰す!」
怒りを込めて、ジュリナは、激しく言い放った。
泣き叫ぶ塾帰りの女子高生。有名進学塾の前。午後十時。
「サワコさん!早く!」
サワコと呼ぶ少女の手を取り、泣き叫ぶ女子高生とは逆に、野次馬に加わろうとする好奇心旺盛な同じく塾生の中俣シオリ。
「君…、喧嘩が好きなのか?」
男装が似合いそうな、すらっとした美形の
秦(はた)サワコが、嘆息する。前髪をかきあげながら。茶色のブレザーは都内随一の進学校のもの。
「お互い、受験生ともなると、ストレス溜まるでしょ?わたし、プロレスとか格闘技、テレビで見るのも好きだし」
かわいらしい、いかにも女の子の中俣が、サワコを見上げるように言う。
「プロレスと喧嘩を、一緒にしてるのか、君は…」
やれやれといった表情。
野次馬の中で、頭ひとつ出ている長身のサワコ。ショートカットが小顔によく似合う。
衆人環視のなか
喧嘩をしていたのは、二人の少女。
青いスカジャンの少女。内には、マジすか女学園の制服。
マジすか女学園、二年、
松井ジュリナ。
対するはー
矢場久根女子高校、一年、
市川ミオリ。
矢場久根女子校の新総長。
サドを沈めたー
ツインテールの…悪魔。
喧嘩の原因は、通りすがりに、目があった、ただそれだけのこと。
情勢は、ミオリがおしていた。
圧倒的にー。
おそろしいものを見るように、遠巻きから眺める野次馬たち。
ミオリの背中には、どす黒いオーラが吹き出してみえた。
無秩序で、無慈悲な拳が唸る。悪魔の拳。
ジュリナの両腕のガードをすり抜ける。いとも容易く。血にまみれる顔。視界がぼやける。
(軌道が…、読めねー…)
身軽さを発揮し
距離を取ろうとするも、瞬時に詰められる。防戦一方のジュリナ。いままで、味わったことのない、迅く、そして、重みのあるパンチ。天性の勘のみが、致命傷を防いでいた。
よろめく。
ギリギリ、意識を保つ。
(も…、もっていかれる…)
「お前のほうから仕掛けといて、この程度か!お前も、サド同様、“病院おくり”にしてやるよ!」
(サド…?)
ジュリナの両腕のガードが下がる。
悪魔が、その隙を見逃すはずがなく、黒い拳がとぶ。
「死ね!」
ジュリナの
つぶれかけた瞳に光が宿る。
初めて、その拳を左掌で完全に受け止めたジュリナ。
「そうか…、お前だったのか…」
ジュリナの右拳が閃く。閃光のような右ストレート。
間一髪かわした
ミオリの左の髪の束がほどける。ツインテールがハーフツインに…。
「サドには悪いが…、お前は、おれが…ぶっ潰す!」
怒りを込めて、ジュリナは、激しく言い放った。
マジすか学園3☆#2ー6☆
「海の向こうの世界でも…、愛が…壊れ始めている…」
六本木にあるよく当たると噂の完全予約制占星術ショップ。
通称ー魔女の館。
現時点で、峯岸みなみが、次期生徒会長になれないことを知っているのは、館の主人ー六本木の魔女と呼ばれる彼女だけだろう。未来を視る能力を持つー漆黒の衣に切れ長の瞳ー元ラッパッパ副部長。
「…日本では、すでに嵐が吹き荒れている。闇の嵐。灰色の空…」
しなやかで艶やかな指の先には、タロットカードがあった。
【悪魔】のカード。
DEVIL…
D…
「前田…、あなたは太陽…。あなたが皆を照らし、闇を振り払うのです…灰色の闇を…」
大島優子の代わりではなく、あなたはあなた。
前田敦子。マジ女のてっぺん。
(ただ、あなたひとりのちからでは、この未曽有の危機を乗り越えることは困難…。まだ、ピースが足りない…。そのために…、あの子たちには、イヤな役回りをさせてしまいました…)
ガチャ…
古びた木製の扉を開く音。
「ここに来れば、強くなれるって聞いてきたんだけど」
ぶっきらぼうに言う
学ランを先頭に、大歌舞伎、小歌舞伎、だるまが、順番に、はいってきた。
「本当に強くなれるのかい?」
「あたしたち、強くなりたいんです!」
「強くならんと…、いかんのや…」
四人の決意が、言葉の端々、からだ全体にあふれている。魔女は、全身が震えるような希望を覚えた。
だが…
「気持ちはわかりました…。しかし、気持ちだけで強くなれるものではありません…。下手をすれば、死ぬことも…」
1を10にするのは簡単。しかし、11を20にするのは難しい。
つまり、実力がある者ほど、飛躍的な強さを得ることは難しい。それぞれの限界というものがある。キャパシティ。
トップアスリートが、世界記録を、0.1秒、1センチ、更新するようなもの。並大抵の努力では、到底おぼつかない。
“死”というフレーズを聞いても、平然としている四人。覚悟は、すでに出来ていた。ほんの少しでもいい。強くなれるなら…。
(わかっては、いました…。あなたたちが、死ぬことなど、恐れるはずがないということは…。なぜなら…、あなたたちは…、私たちの後輩…マジ女の生徒なのだから…)
喧嘩で負けるくらいなら、死を選ぶような者たちだということをー。
「奥へ…進みなさい」
マジすか女学園
吹奏楽部室ー
前田の目の前が、血で染まっていた。血の赤。
決意表明に来た前田を襲った悲劇。
前田が、部室にはいったとき、すでにー
ラッパッパの四人
昭和、ジャンボ、アニメ、ライスが、見るも無惨な姿で、やられていた。
部室内はメチャクチャに荒らされている。
窓ガラスは割られ、椅子は倒され、楽器が散乱していた。
壁には、血文字で大きく、Dと…。
怒りにまかせて
前田は、その壁に向かって、左の拳を、ぶち込んだ。
決意の瞳。
「ディーヴァ…ゆるさねぇ…」
六本木にあるよく当たると噂の完全予約制占星術ショップ。
通称ー魔女の館。
現時点で、峯岸みなみが、次期生徒会長になれないことを知っているのは、館の主人ー六本木の魔女と呼ばれる彼女だけだろう。未来を視る能力を持つー漆黒の衣に切れ長の瞳ー元ラッパッパ副部長。
「…日本では、すでに嵐が吹き荒れている。闇の嵐。灰色の空…」
しなやかで艶やかな指の先には、タロットカードがあった。
【悪魔】のカード。
DEVIL…
D…
「前田…、あなたは太陽…。あなたが皆を照らし、闇を振り払うのです…灰色の闇を…」
大島優子の代わりではなく、あなたはあなた。
前田敦子。マジ女のてっぺん。
(ただ、あなたひとりのちからでは、この未曽有の危機を乗り越えることは困難…。まだ、ピースが足りない…。そのために…、あの子たちには、イヤな役回りをさせてしまいました…)
ガチャ…
古びた木製の扉を開く音。
「ここに来れば、強くなれるって聞いてきたんだけど」
ぶっきらぼうに言う
学ランを先頭に、大歌舞伎、小歌舞伎、だるまが、順番に、はいってきた。
「本当に強くなれるのかい?」
「あたしたち、強くなりたいんです!」
「強くならんと…、いかんのや…」
四人の決意が、言葉の端々、からだ全体にあふれている。魔女は、全身が震えるような希望を覚えた。
だが…
「気持ちはわかりました…。しかし、気持ちだけで強くなれるものではありません…。下手をすれば、死ぬことも…」
1を10にするのは簡単。しかし、11を20にするのは難しい。
つまり、実力がある者ほど、飛躍的な強さを得ることは難しい。それぞれの限界というものがある。キャパシティ。
トップアスリートが、世界記録を、0.1秒、1センチ、更新するようなもの。並大抵の努力では、到底おぼつかない。
“死”というフレーズを聞いても、平然としている四人。覚悟は、すでに出来ていた。ほんの少しでもいい。強くなれるなら…。
(わかっては、いました…。あなたたちが、死ぬことなど、恐れるはずがないということは…。なぜなら…、あなたたちは…、私たちの後輩…マジ女の生徒なのだから…)
喧嘩で負けるくらいなら、死を選ぶような者たちだということをー。
「奥へ…進みなさい」
マジすか女学園
吹奏楽部室ー
前田の目の前が、血で染まっていた。血の赤。
決意表明に来た前田を襲った悲劇。
前田が、部室にはいったとき、すでにー
ラッパッパの四人
昭和、ジャンボ、アニメ、ライスが、見るも無惨な姿で、やられていた。
部室内はメチャクチャに荒らされている。
窓ガラスは割られ、椅子は倒され、楽器が散乱していた。
壁には、血文字で大きく、Dと…。
怒りにまかせて
前田は、その壁に向かって、左の拳を、ぶち込んだ。
決意の瞳。
「ディーヴァ…ゆるさねぇ…」