マジすか学園3☆#8ー8☆
マジすか女学園ー
屋上には、手すりにもたれ、考え事をしている水色のフード付きパーカーのネズミがいた。ネズミの考えることといえば、ただひとつ。前田敦子を倒し、“てっぺん”を取ること、それだけであった。
最近、特に、目まぐるしく移り変わる情勢を鑑みる。
「風が、強くなってきたな…、この風は…、わたしたちにとって、追い風となるのか…、それとも、逆風なのか…」
誰もいない校庭を見下ろし、紙ヒコーキを投げ下ろす。
「ネズミ!」
急いで走って来たらしいジュリナが
息を切らし、肩を上下させている。
「どうしたんだ…?ジュリナ…、鳩が豆鉄砲、何発もくらったみたいな顔して」
「ま…、前田が…」
ジュリナの説明に、ネズミも、知らず、同じような表情になっていた。
「前田が…、学校を辞めただって!?」
ネズミには、出来の悪い冗談にしか聞こえなかった。
静かだった朝が、一転、校内はその話題で騒然となっていった。
私立S高校へと続く
緑の並木道ー
S高生の
須田アカリと平松カナの通学路でもある。普段は高校生らしく、何事もなく、学校に通っている。指定の緑のブレザーに緑と白のチェック柄のかわいいスカートが、カナは特に、お気に入りだった。
二人はいつものように仲良く登校していた。
昨日のディーヴァとの一戦では、それほどダメージを受けていない二人。
「シノブちゃん、大丈夫かなー?もきゅ」
入院中の仲間の心配をするカナ。
「首にキノハルの蹴りだもんね…、でも、シノブなら大丈夫っしょ。タフだし」
基本的に能天気なアカリ。
そのアカリの足が、ふと止まる。
二人の右前方の
木の陰から、隠しようのない邪悪で禍々しいオーラが溢れ出していた。
二人は、足を止め、三本先の木の陰を凝視する。戦士の顔つきでー。
木の陰から、黒い髪の束が揺れるのが見えた。
姿を見せたのは、矢場久根商業の制服を身につけた少女。長い黒髪は両サイドで束ねられた、いわゆるツインテール。
「矢場久根か…」
アカリもカナも、もちろん知っていた。マジすか女学園と双璧をなすヤンキー校のことはー。
犬猿の仲だということも周知の事実。
ツインテールの少女、矢場久根総長、市川ミオリは、愛らしい顔に似合わず、低く重い口調で話しかけた。
「お前たち、マジ女に荷担するつもりか?」
「だったら?」
アカリが強気で言い返す。カナはというと、アカリの制服の裾をつかみ震えていた。悪魔のようなオーラが、感受性の強いカナには堪えるのだった。
「ならば…、ぶち壊すだけだ!
マジ女に与する者たちは、ひとり残らず、すべて…な」
魔的な微笑を浮かべるミオリ。血の饗宴が始まる。
その背後の並木が、一気に冬枯れた錯覚に陥る二人。それは、まるで、どす黒い悪魔の手が何本も、地の底から伸びているかのようであった。
屋上には、手すりにもたれ、考え事をしている水色のフード付きパーカーのネズミがいた。ネズミの考えることといえば、ただひとつ。前田敦子を倒し、“てっぺん”を取ること、それだけであった。
最近、特に、目まぐるしく移り変わる情勢を鑑みる。
「風が、強くなってきたな…、この風は…、わたしたちにとって、追い風となるのか…、それとも、逆風なのか…」
誰もいない校庭を見下ろし、紙ヒコーキを投げ下ろす。
「ネズミ!」
急いで走って来たらしいジュリナが
息を切らし、肩を上下させている。
「どうしたんだ…?ジュリナ…、鳩が豆鉄砲、何発もくらったみたいな顔して」
「ま…、前田が…」
ジュリナの説明に、ネズミも、知らず、同じような表情になっていた。
「前田が…、学校を辞めただって!?」
ネズミには、出来の悪い冗談にしか聞こえなかった。
静かだった朝が、一転、校内はその話題で騒然となっていった。
私立S高校へと続く
緑の並木道ー
S高生の
須田アカリと平松カナの通学路でもある。普段は高校生らしく、何事もなく、学校に通っている。指定の緑のブレザーに緑と白のチェック柄のかわいいスカートが、カナは特に、お気に入りだった。
二人はいつものように仲良く登校していた。
昨日のディーヴァとの一戦では、それほどダメージを受けていない二人。
「シノブちゃん、大丈夫かなー?もきゅ」
入院中の仲間の心配をするカナ。
「首にキノハルの蹴りだもんね…、でも、シノブなら大丈夫っしょ。タフだし」
基本的に能天気なアカリ。
そのアカリの足が、ふと止まる。
二人の右前方の
木の陰から、隠しようのない邪悪で禍々しいオーラが溢れ出していた。
二人は、足を止め、三本先の木の陰を凝視する。戦士の顔つきでー。
木の陰から、黒い髪の束が揺れるのが見えた。
姿を見せたのは、矢場久根商業の制服を身につけた少女。長い黒髪は両サイドで束ねられた、いわゆるツインテール。
「矢場久根か…」
アカリもカナも、もちろん知っていた。マジすか女学園と双璧をなすヤンキー校のことはー。
犬猿の仲だということも周知の事実。
ツインテールの少女、矢場久根総長、市川ミオリは、愛らしい顔に似合わず、低く重い口調で話しかけた。
「お前たち、マジ女に荷担するつもりか?」
「だったら?」
アカリが強気で言い返す。カナはというと、アカリの制服の裾をつかみ震えていた。悪魔のようなオーラが、感受性の強いカナには堪えるのだった。
「ならば…、ぶち壊すだけだ!
マジ女に与する者たちは、ひとり残らず、すべて…な」
魔的な微笑を浮かべるミオリ。血の饗宴が始まる。
その背後の並木が、一気に冬枯れた錯覚に陥る二人。それは、まるで、どす黒い悪魔の手が何本も、地の底から伸びているかのようであった。
マジすか学園3☆#8ー7☆
翌日
その日は、とても静かな朝だった。
前田は、いつものように制服姿で家を出る。
いつもと変わらぬ風景。
マジすか女学園ー
ラッパッパの部室では、チームホルモンたちの恒例の日課が始まっていた。
ヲタが、ホルモン焼きを口に運びながら、言う。
「いやー、それにしても助かったよなー」
「ホントだよなー。意外と安かったもんな、これ」
と、無煙の焼き肉機を箸で指すウナギ。部室に煙が充満しないように、昨日、中古品のものを購入したのだった。
「いやいやいや、おれが言いたかったのは昨日の喧嘩の話なんだけど…」
食い気味に否定するヲタを面白そうに見て、助け舟を出すバンジー。
「確かにな…、昨日はいろいろあったよなー。ネズミ軍団には狙われるわ、ディーヴァが攻めてくるわ、アンダーガールズも参戦か?って雰囲気だったよな」
「強いやつは狙われる…か」
先が思いやられるな、と、
しみじみ、ウナギがつぶやく。これからの行く末を案じー。
生傷の絶えない毎日。
「内からも外からも狙われてんのか…、負けらんねーな」
アキチャは、つとめて明るく、ふるまう。
狙われてなんぼのラッパッパ。
「そうだな…、おれたちみんなで、ラッパッパの伝統、しっかり守っていこうぜ。先輩たちに恥ずかしくないように…」
ヲタがリーダーらしく、話をまとめようとした時、ムクチが急に、立ち上がった。
「うちら、ティームホルモンだぜ!やるしかねーだろ!それがホルモン魂だ!いくぞ!ティームホルモン!おお!」
突然、テンションがあがり、饒舌になるムクチに、みんなの視線が集中する。
その視線を一身に浴び、にっこりと微笑むムクチだった。
部室の奥の部屋には
前ラッパッパ部長
大島優子の写真が飾られている。
サドの剣玉、シブヤのグローブ、トリゴヤの羽飾り、ブラックの聖書も置いてあった。卒業後に、それぞれが、のこしていったものだ。
そして、そのなかに、昨日まではなかった赤いスカーフが、きちんとたたまれて、写真の傍に置かれていた。
一輪の花とともに。
その意味にチームホルモンたちが気づくのは、少し、後のことだった。
校長室ー
「えっ!前田くんが?」
前田のクラスの担任、クウキが、驚きのあまり、眼鏡をとりこぼしそうになる。
校長の表情は複雑極まるものだった。
「今朝、早くに…」
机の上には、“退学届”と書かれたものが、置いてあった。
その日は、とても静かな朝だった。
前田は、いつものように制服姿で家を出る。
いつもと変わらぬ風景。
マジすか女学園ー
ラッパッパの部室では、チームホルモンたちの恒例の日課が始まっていた。
ヲタが、ホルモン焼きを口に運びながら、言う。
「いやー、それにしても助かったよなー」
「ホントだよなー。意外と安かったもんな、これ」
と、無煙の焼き肉機を箸で指すウナギ。部室に煙が充満しないように、昨日、中古品のものを購入したのだった。
「いやいやいや、おれが言いたかったのは昨日の喧嘩の話なんだけど…」
食い気味に否定するヲタを面白そうに見て、助け舟を出すバンジー。
「確かにな…、昨日はいろいろあったよなー。ネズミ軍団には狙われるわ、ディーヴァが攻めてくるわ、アンダーガールズも参戦か?って雰囲気だったよな」
「強いやつは狙われる…か」
先が思いやられるな、と、
しみじみ、ウナギがつぶやく。これからの行く末を案じー。
生傷の絶えない毎日。
「内からも外からも狙われてんのか…、負けらんねーな」
アキチャは、つとめて明るく、ふるまう。
狙われてなんぼのラッパッパ。
「そうだな…、おれたちみんなで、ラッパッパの伝統、しっかり守っていこうぜ。先輩たちに恥ずかしくないように…」
ヲタがリーダーらしく、話をまとめようとした時、ムクチが急に、立ち上がった。
「うちら、ティームホルモンだぜ!やるしかねーだろ!それがホルモン魂だ!いくぞ!ティームホルモン!おお!」
突然、テンションがあがり、饒舌になるムクチに、みんなの視線が集中する。
その視線を一身に浴び、にっこりと微笑むムクチだった。
部室の奥の部屋には
前ラッパッパ部長
大島優子の写真が飾られている。
サドの剣玉、シブヤのグローブ、トリゴヤの羽飾り、ブラックの聖書も置いてあった。卒業後に、それぞれが、のこしていったものだ。
そして、そのなかに、昨日まではなかった赤いスカーフが、きちんとたたまれて、写真の傍に置かれていた。
一輪の花とともに。
その意味にチームホルモンたちが気づくのは、少し、後のことだった。
校長室ー
「えっ!前田くんが?」
前田のクラスの担任、クウキが、驚きのあまり、眼鏡をとりこぼしそうになる。
校長の表情は複雑極まるものだった。
「今朝、早くに…」
机の上には、“退学届”と書かれたものが、置いてあった。
マジすか学園3☆#8ー6☆
「おい!いまの話、詳しく聞かせてくれ!」
スーツの胸元から警察手帳を取り出し、捜査員に突きつけるようにつめよる女刑事。
「け、警部補?」
肩書きに
仰天する所轄の捜査員。
「いいから、被害者の証言を聞かせてくれ!」
「は、はい!被害者の少女たちのなかで、ひとりだけ意識を取り戻した者がいまして…何か取り乱した感じだったようですが…」
「それで!?加害者は顔見知りだったのか?」
「いえ、顔には包帯が巻かれており、はっきりとはわからなかったらしいのですが、加害者のほうが名乗ったそうです。“高橋みなみ”と…」
「そんなはずはない!そんなはずはないんだ!彼女は死んだはず…」
「えっ!」
不思議そうな捜査員をよそに、考えこむ女刑事。
「誰かがなりすましてるのか…?同姓同名…?それとも、本当は、生きて…」
「主任、調べてみましょう。あの事件と何か関係があるのかも」
隣で聞いていた部下が促す。
「あぁ、そうだな。死んだ人間には、逮捕状はおりないからな。早く車をまわせ!」
「はい!」
と、元気よく返事をし、部下の刑事は、車のもとへ走り出した。
「季節外れの怪談話か…、忙しくなりそうだ」
小野エレナの自宅ー
リビングでテレビを見ながら、宿題をしているエレナ。ほとんど、宿題は進んでいなかった。
玄関のドアの開く音がした。誰かが帰ってきたようだ。
お笑い番組に夢中で、エレナは気がつかない。
廊下を進む足音が
リビングに近づく。
リビングの扉を開け
エレナに声をかける少女。
「ただいま、エレナ」
振り返り、エレナが笑顔で応える。
「あっ、おかえり!お姉ちゃん!」
広尾ー
超高級マンションの一室に、部屋主のアンダーガールズ総統ー太田リオナと秦サワコがいた。
リオナは、先程、かかってきた電話を終えると、サワコの前のソファに腰を落とす。
「まるで、“シュレディンガーの猫”だな…」
ぽつりとつぶやくリオナ。その真意は読み取れない。
「物理学者シュレディンガーの思考実験のことですね…、箱の中の猫は生きているか死んでいるか、という…」
箱の中の猫が、生きている場合と死んでいる場合が重なり合った状態ー
同時に、生きている猫と死んでいる猫が存在する状態が生まれる。
「生と死が同時に存在する世界…、そんな事象(もの)は、ありえない…生きている確率が50パーセント、死んでいる確率も50パーセントなんてな…
だが、100パーセント、中の猫の状態を知る方法がある」
「それは、その箱を開けてみればいい、ということですか?」
リオナの表情に、特別な感慨はみられなかった。ため息をつきながら、言う。
「サワコ、お前は強い…、“最強”といってもいいだろう…」
「恐れ入ります」
「ただ…、潔癖すぎる…、高潔と呼べるかも知れない…、それが、お前を縛り付ける鎖となるだろう」
「縛り付ける…鎖」
「わたしが、箱の中身を知りたいと思ったら、迷わず箱ごと、叩き潰す。すべてをー」
右手で何かを握りつぶす仕草をみせるリオナ。
サワコは、うやうやしく、目を伏せる。
「わたしは、まだ、甘いということですね」
「気にするな…、いい知らせを期待している」
サワコが退室した後、リオナが、コードレスフォンを耳にあて、コールする。ほどなく、相手と繋がった。
「ユリア…、お前に調べてもらいたいことがある」
スーツの胸元から警察手帳を取り出し、捜査員に突きつけるようにつめよる女刑事。
「け、警部補?」
肩書きに
仰天する所轄の捜査員。
「いいから、被害者の証言を聞かせてくれ!」
「は、はい!被害者の少女たちのなかで、ひとりだけ意識を取り戻した者がいまして…何か取り乱した感じだったようですが…」
「それで!?加害者は顔見知りだったのか?」
「いえ、顔には包帯が巻かれており、はっきりとはわからなかったらしいのですが、加害者のほうが名乗ったそうです。“高橋みなみ”と…」
「そんなはずはない!そんなはずはないんだ!彼女は死んだはず…」
「えっ!」
不思議そうな捜査員をよそに、考えこむ女刑事。
「誰かがなりすましてるのか…?同姓同名…?それとも、本当は、生きて…」
「主任、調べてみましょう。あの事件と何か関係があるのかも」
隣で聞いていた部下が促す。
「あぁ、そうだな。死んだ人間には、逮捕状はおりないからな。早く車をまわせ!」
「はい!」
と、元気よく返事をし、部下の刑事は、車のもとへ走り出した。
「季節外れの怪談話か…、忙しくなりそうだ」
小野エレナの自宅ー
リビングでテレビを見ながら、宿題をしているエレナ。ほとんど、宿題は進んでいなかった。
玄関のドアの開く音がした。誰かが帰ってきたようだ。
お笑い番組に夢中で、エレナは気がつかない。
廊下を進む足音が
リビングに近づく。
リビングの扉を開け
エレナに声をかける少女。
「ただいま、エレナ」
振り返り、エレナが笑顔で応える。
「あっ、おかえり!お姉ちゃん!」
広尾ー
超高級マンションの一室に、部屋主のアンダーガールズ総統ー太田リオナと秦サワコがいた。
リオナは、先程、かかってきた電話を終えると、サワコの前のソファに腰を落とす。
「まるで、“シュレディンガーの猫”だな…」
ぽつりとつぶやくリオナ。その真意は読み取れない。
「物理学者シュレディンガーの思考実験のことですね…、箱の中の猫は生きているか死んでいるか、という…」
箱の中の猫が、生きている場合と死んでいる場合が重なり合った状態ー
同時に、生きている猫と死んでいる猫が存在する状態が生まれる。
「生と死が同時に存在する世界…、そんな事象(もの)は、ありえない…生きている確率が50パーセント、死んでいる確率も50パーセントなんてな…
だが、100パーセント、中の猫の状態を知る方法がある」
「それは、その箱を開けてみればいい、ということですか?」
リオナの表情に、特別な感慨はみられなかった。ため息をつきながら、言う。
「サワコ、お前は強い…、“最強”といってもいいだろう…」
「恐れ入ります」
「ただ…、潔癖すぎる…、高潔と呼べるかも知れない…、それが、お前を縛り付ける鎖となるだろう」
「縛り付ける…鎖」
「わたしが、箱の中身を知りたいと思ったら、迷わず箱ごと、叩き潰す。すべてをー」
右手で何かを握りつぶす仕草をみせるリオナ。
サワコは、うやうやしく、目を伏せる。
「わたしは、まだ、甘いということですね」
「気にするな…、いい知らせを期待している」
サワコが退室した後、リオナが、コードレスフォンを耳にあて、コールする。ほどなく、相手と繋がった。
「ユリア…、お前に調べてもらいたいことがある」