マジすか学園3☆#9ー3☆
路地裏にある寂れたゲームセンターに入っていく、ランドセルの女の子。
そこは、ディーヴァの隊員が大勢、我が物顔で占拠している吹き溜まり。彼女らの憩いの場となっていた。
「ケイラさん!?」
いくつも年上に見える少女が、ランドセルの女の子をそう呼び、立ち上がった。ほかのメンバーも一斉に立ち上がる。
「おい…、鼠が…、いや、猫が二匹紛れこんどったで…、ただの猫やないけどな」
「えっ!?まさか、前田が…」「噂は本当やったんか…」
顔を見合わす隊員たち。
前田が、ひとりで大阪に乗り込んできたという噂はすでに広まっていたが、誰も頭から信じてはいなかった。
「そういうことや…、お前ら、うちの手をわずらわせるつもりか?」
ケイラは、隊員のひとりの頭をつかみ、筐体の画面に叩きつけた。
隊員の頭が、ずり落ち、ひび割れ血に染まった画面には、GAME OVERの文字が浮かんでいた。
「とっとと、前田をぶっ潰してこい!ほかの隊に遅れをとんなや!」
あわてて、凶器を携え、飛び出していく隊員たち。
それを見送るディーヴァ十二将のひとりー死将、與儀ケイラ。
「“絶望のくに”へようこそ…前田」
ディーヴァの“エリア”から離れた
ファーストフード店の窓際に面したテーブル席に、前田とネコのような少女は向かい合わせに座っていた。
窓の外では
桜の季節も、もう、終わりかと言わんばかりに、花びらが次から次と、ひらひら舞い落ちていた。
「ん?顔に“はてなマーク”がいっぱいついてるよ」
前田の硬く怪訝そうな顔を見て、ネコのような少女は続ける。
「わかるよ。その気持ち…、不思議だよね。なんで、関東ではマックって言うのに、関西ではマクドって言うんだろうって…」
「そうじゃなくて…」
「オーマイガー!そっか、じゃあ、どうして関西では、ごはんとお好み焼きを一緒に食べるんだろうとか?」
ネコのような少女の屈託の無さに、ペースを乱される前田。
一転
少女は、急に、真顔になり、真面目に話し出す。
「まともに正面から行っても、ディーヴァの総帥には会えないよ。きっと、総帥に辿り着く前に、十回は殺されちゃうね。あの“エリア”に入るってことは、そういうことなんだよ。病院送りにされ、ヤンキーから足を洗うか、大阪からいなくなるか…、生きているのか死んでるのかすらわからなくなる…、だから、別名“ヤンキーの墓場”とも言われてる」
「あなた…、いったい…」
誰?
「わたしの名前は、肥川アヤメ、あやにゃんって呼んでニャ」
白の制服を着た、可愛らしく清楚な少女は、またも、招き猫のように、丸めた拳をクイクイと上下させた。猫の目のように態度をくるくる変化させる。つかみどころがない。
ディーヴァのことをよく知っている口ぶりで
ただ単にディーヴァの“エリア”に迷い込んだのではなさそうだった。
「ディーヴァのこと、よく知ってるの?」
「あなたよりは、ね。マジ女の“てっぺん”前田敦子…」
「わたしのことも…?」
「有名人だからね…、それよりも…、ディーヴァにはもう関わらないほうがいいと思うけど…、奴らはサイテーサイアクゴクアクヒドウの代名詞…、奴らにとって、“いのち”なんて…、ほら、あの風に舞う桜の花びらくらいの軽さなんだよ」
窓の外の景色を、指でさすアヤメ。
紙吹雪のように舞う桜。
それを見て
前田は、卒業式の後の“あのひと”の言葉を思い出す。
「桜の花びらたち…、その、一枚一枚には、そこに咲いた“いのち”の意味がある…無駄な花びらは無い…か」
「ん?」
「花びらは、決して軽くなんかない…、そこには、花びら一枚一枚の“想い”があるってこと」
それは、とても、“重い”ものー
「その大切な“いのち”を…、あっさり捨てるつもりなんだね」
「そうじゃない…」
「じゃあ、何でディーヴァと闘おうとするの?ひとりで行っても、殺されるだけだよ」
「たぶん…」
窓外に目をやる前田。
桜が散る。
その花びらが、風に舞い、地面とは逆に、空に向かって昇っていく。
「たぶん…、“バカ”だからじゃないかな…」
前田は、さびしそうに笑った。
そこは、ディーヴァの隊員が大勢、我が物顔で占拠している吹き溜まり。彼女らの憩いの場となっていた。
「ケイラさん!?」
いくつも年上に見える少女が、ランドセルの女の子をそう呼び、立ち上がった。ほかのメンバーも一斉に立ち上がる。
「おい…、鼠が…、いや、猫が二匹紛れこんどったで…、ただの猫やないけどな」
「えっ!?まさか、前田が…」「噂は本当やったんか…」
顔を見合わす隊員たち。
前田が、ひとりで大阪に乗り込んできたという噂はすでに広まっていたが、誰も頭から信じてはいなかった。
「そういうことや…、お前ら、うちの手をわずらわせるつもりか?」
ケイラは、隊員のひとりの頭をつかみ、筐体の画面に叩きつけた。
隊員の頭が、ずり落ち、ひび割れ血に染まった画面には、GAME OVERの文字が浮かんでいた。
「とっとと、前田をぶっ潰してこい!ほかの隊に遅れをとんなや!」
あわてて、凶器を携え、飛び出していく隊員たち。
それを見送るディーヴァ十二将のひとりー死将、與儀ケイラ。
「“絶望のくに”へようこそ…前田」
ディーヴァの“エリア”から離れた
ファーストフード店の窓際に面したテーブル席に、前田とネコのような少女は向かい合わせに座っていた。
窓の外では
桜の季節も、もう、終わりかと言わんばかりに、花びらが次から次と、ひらひら舞い落ちていた。
「ん?顔に“はてなマーク”がいっぱいついてるよ」
前田の硬く怪訝そうな顔を見て、ネコのような少女は続ける。
「わかるよ。その気持ち…、不思議だよね。なんで、関東ではマックって言うのに、関西ではマクドって言うんだろうって…」
「そうじゃなくて…」
「オーマイガー!そっか、じゃあ、どうして関西では、ごはんとお好み焼きを一緒に食べるんだろうとか?」
ネコのような少女の屈託の無さに、ペースを乱される前田。
一転
少女は、急に、真顔になり、真面目に話し出す。
「まともに正面から行っても、ディーヴァの総帥には会えないよ。きっと、総帥に辿り着く前に、十回は殺されちゃうね。あの“エリア”に入るってことは、そういうことなんだよ。病院送りにされ、ヤンキーから足を洗うか、大阪からいなくなるか…、生きているのか死んでるのかすらわからなくなる…、だから、別名“ヤンキーの墓場”とも言われてる」
「あなた…、いったい…」
誰?
「わたしの名前は、肥川アヤメ、あやにゃんって呼んでニャ」
白の制服を着た、可愛らしく清楚な少女は、またも、招き猫のように、丸めた拳をクイクイと上下させた。猫の目のように態度をくるくる変化させる。つかみどころがない。
ディーヴァのことをよく知っている口ぶりで
ただ単にディーヴァの“エリア”に迷い込んだのではなさそうだった。
「ディーヴァのこと、よく知ってるの?」
「あなたよりは、ね。マジ女の“てっぺん”前田敦子…」
「わたしのことも…?」
「有名人だからね…、それよりも…、ディーヴァにはもう関わらないほうがいいと思うけど…、奴らはサイテーサイアクゴクアクヒドウの代名詞…、奴らにとって、“いのち”なんて…、ほら、あの風に舞う桜の花びらくらいの軽さなんだよ」
窓の外の景色を、指でさすアヤメ。
紙吹雪のように舞う桜。
それを見て
前田は、卒業式の後の“あのひと”の言葉を思い出す。
「桜の花びらたち…、その、一枚一枚には、そこに咲いた“いのち”の意味がある…無駄な花びらは無い…か」
「ん?」
「花びらは、決して軽くなんかない…、そこには、花びら一枚一枚の“想い”があるってこと」
それは、とても、“重い”ものー
「その大切な“いのち”を…、あっさり捨てるつもりなんだね」
「そうじゃない…」
「じゃあ、何でディーヴァと闘おうとするの?ひとりで行っても、殺されるだけだよ」
「たぶん…」
窓外に目をやる前田。
桜が散る。
その花びらが、風に舞い、地面とは逆に、空に向かって昇っていく。
「たぶん…、“バカ”だからじゃないかな…」
前田は、さびしそうに笑った。
マジすか学園3☆#9ー2☆
かつては、一緒に闘った仲間であり、危ないところを身を挺してかばってくれたこともあるー
そんな山本サヤカに殴られ、見下ろされ、
前田は、言葉を失っていた。
「お前らは、“アイツ”を追え!前田は、うちが…」
前田を見下ろしたまま、上西と隊員たちに告げるサヤ。
隊員たちは、素直に従ったが、上西は何かを含んだ様子で、その場を離れた。
「総帥が、どこにおるかは、側近しか知らんこと…、たとえ、居場所がわかっても、お前がそこまで辿り着くことなんか、出来ん」
「サヤ…」
「虫けらは…、所詮、巨大なゾウには…勝てん…、何匹集まろうとな…、ただ、踏みつぶされるだけや」
実感のこもった言葉の端には、悔しさが滲んでいるようだった。
「今度、目の前にあらわれたら…、本当に殺す!」
そう言い捨て、サヤは路地裏に消えていった。
ふと
前田を殴った拳に痛みを覚えるサヤ。
それを抑えようと、震えるほど強く、拳を握りしめた。
(あっちゃん…、堪忍な…)
「トドメ…、ささんかったんや?」
上西ケイが、路地裏のビルの壁に寄りかかっていた。サヤは表情を変えず、言う。
「うちのやり方に、文句あるんか?」
「いや、お前がディーヴァに入ったおかげで、いままで、反抗してた雑魚共も、おとなしゅうなったし、それはそれで、ええねんけどな…」
「何が言いたいんや!」
「どういう心境の変化なんやろなぁ思て…、いままで、うちらに散々、逆らっとったんに…、仲間の安全のために降伏するだけやのうて、寝返るとは…
自由を買うために、自由を売り渡すなんてなぁ…、それとも、何か別の目的でも…」
上西の襟元をぐいっと掴み、顔を寄せるサヤ。
上西は笑みを浮かべたまま、
「おいおい、仲間割れはやめようや…、うちの“鉄の爪”を血に染めたいんか?」
サヤの首筋に、自慢の鋭利な銀色の爪を突き立てる。鮮やかな赤い血が、一筋流れた。
「くっ!」
上西から手をはなし、サヤは、路地裏の奥の闇へと進んでいった。
(いまに尻尾つかんだるで…)
サヤの背中を追う
上西の瞳と爪に、同時に、危険で妖しい光が宿った。
「にゃにゃにゃにゃーん」
茫然と立ち尽くす前田のもとに、ネコのような少女が再びあらわれた。
「助けてくれてありがとニャン」
と、言うやいなや
いきなり、前田の腕を引っ張り、駆け出す。
「とりあえず、この“エリア”から出ようか」
「ちょ、ちょっと…」
「あ!わたし?わたしは、通りすがりの“幸せを呼ぶ招き猫”だよ」
振り返り、顔の近くで、丸く握った拳を可愛らしく上下させる少女だった。
小学生の女の子が赤いランドセルを背負い、二人が走っていくのをー、正確には、一人が走り、もう一人が引きずられていくのを見ていた。
その赤いランドセルには、かわいい女の子にまったく似つかわしくない文字がひとつ刻まれていた。ずいぶんと物騒な文字がー。
ただ一文字。
“死”と。






