AKB48G☆マジすか学園☆乃木坂46☆欅坂46☆櫻坂46☆日向坂46☆好きな 「かつブログ☆」 -152ページ目

マジすか学園3☆#8ー5☆

その夜ー


外灯の明かりが不気味に点滅する公園で、

ひとりの“少女”が、五人の少女に囲まれていた。

異様な光景だった。

ひとりの“少女”に対し、五人の少女たちは、五人がかりで攻めているにも関わらず、その“少女”に、指一本触れることさえ出来ずにいた。ときには、すり抜けるような感覚を味わうほどにー。

五人の少女たちは、まるで、亡霊でも相手にしているかのような感覚にとらわれる。

ひるがえる
紺色のブレザーに白いシャツ。その“少女”の制服は、有名なヤンキー校である八木女子高のものだった。
髪色は茶色がかって、右で束ねるように纏められていた。
異様なものは、もうひとつあった。
顔には、白い包帯が巻きつけられていて、表情はわからない。ギラつく瞳だけが、月の光を反射し、煌めいていた。


“少女”の右の拳が、四人目の少女を吹き飛ばす。ジャングルジムに激突し、呻き声をもらしつつ、すでに三人が眠る地面に滑り落ちた。

最後のひとりは、腰がひけ、いまにも逃げ出したい気持ちでいっぱいだったが、足が思うように動かない。威勢のいい声を発し、恐怖心を拭いさろうとする。


「な、なんなんだよ?八木女のやつが、ガンギレに恨みでもあんのかよ!」

ガンギレ高校。八木女に負けず劣らずのヤンキー校。

「あぁ、恨んでるさ…死んでも死にきれないほどにな…」


「お…お前…、いったい…誰なんだ…?」


「忘れたのか?…、いや、忘れるはずがないだろう…」


続く“少女”の言葉に、五人目の少女は、愕然とするしかなかった。本当に、恐ろしいものを見るかのような表情で、“少女”が近づいてくるのを、ただ、見ていることしか出来なかった。





一時間後

警察車両のサイレンが事件現場である公園を囲んでいる。
暴行事件の現場。ガンギレ高校の生徒が五人、倒れている。酷い有り様だった。
制服警官が、現場を保全しているなか、ずかずかと規制線をくぐり抜けるパープルの鼈甲メガネの女刑事。その部下があわてるように、続く。


「主任!マズいんじゃないですか?」

「本庁の刑事(デカ)が所轄の事件(やま)に首を突っ込んでいいんですか?って話なら、もう聞き飽きた」


主任と呼ばれる女刑事は、部下の言葉を歯牙にもかけない。


「未成年の暴行事件だからって言うんで、飛んできたが…、Dの文字がないな…、模倣犯か…?」


救急車両によって、運ばれていく被害者たち。

しばらく、思案顔で、現場をうろつく女刑事。


「鑑識を待つまでもないな…、これは、いままでのやつらの手口とは違う。お前の言うとおり、ここは、所轄の皆さんにお任せして、わたしは、首をひっこめるよ」


「そうしてください。あんまり、暴走し過ぎると、また、上からドヤされますよ」


「そんなこと気にしてられっかよ!世の中にはな、越えちゃいけねぇ“一線”ってのがあるんだよ…」


「あの事件ですか…」


数ヶ月前に起きた
八木女子高生の過失致死事件。

女刑事の眼鏡の奥の瞳が曇る。

「もう、絶対に、あんな哀しい事件が、起きないように…」


所轄の捜査員が上司に報告を始めた。


「病院に運ばれた被害者たちの供述によりますと、たったひとりの少女にやられたということだそうです。名前もわかりました。その少女の名前は…」


傍に近づき
聞き耳をたてる女刑事に、信じられない言葉が飛び込んできた。



「…、八木女子高の…
“高橋みなみ”という生徒らしいです」

マジすか学園3☆#8ー4☆

「前田…、お前には感謝しとる…、死んだように生きとったキノハルを救ってくれたからな…
けどな…、キノハルが負けたからいうて、まだ、ディーヴァ(うちら)が負けたわけやない!うちらの悲願は必ず果たさせてもらう!」

それだけ言うと、岸野リカは、軍を率い、去っていった。


ようやく
嵐は過ぎ去った。

ついに
マジ女がディーヴァを斥けたのだった。


へなへなと全身からちからが抜けたかのように崩れ落ちる寒ブリとどっち。

「はぁ…、なんとか、助かったか」「あぁ…、なんとか、な」


「お前ら、よく頑張ったな」

ヲタが、声をかけた。なんだか、昔の自分を見ているようでー。

「うちら、マジ女が好きだから!」
「もっと強くなりたいです!ヲタさんみたいに」


「バーカ、もっと目標高く持てよ!」

ヲタが、頭を掻きながら話す。

「おれなんか、ヘタレだし、ビビリだし、リーダーシップもないし、喧嘩も弱いし…、誇れるものなんか何もない…、
って、今まで、ずっと、そう思ってたんだけどな。でも、違ったんだ。おれには仲間がいた。一緒に闘う仲間が…。仲間がいれば、どこまでも強くなれる。だからいまは、仲間が、おれの“誇り”なんだ」


「ヲタさん!」
「一生ついていきます!」
ウルウルと目を潤ませて、寒ブリとどっちは憧れのチームホルモンのように、ラッパッパに入ることを誓うのだった。


(お前は、リーダーだよ。誰がなんと言おうとな…、チームホルモンのリーダーは、お前しかいない)

バンジーが、ウナギ、アキチャ、ムクチと共に、リーダーであるヲタを誇らしげに見つめていた。




「帰るのですか?」

裏門へ向かう秦サワコの背後から、大矢マサナが声をかける。


「怪我人ばかりを相手にしても、アンダーガールズの名に傷がつくだけだ」

前田に“何か”を感じたことは疑いようのない事実だった。


「助かりました。あなたのおかげで、あれ以上、無駄な血が流れずにすみました」

アンダーガールズという存在が楔となった。


「三年前の借りを返したまでだ。特に何をしたわけでもないがな。それより、マサナ…、次に戦場で遭ったときは、全力で叩き潰す!問答は無用だ!」


「わかりました。総統とあなたが抱えている醒めない悪夢、我々が晴らしてみせましょう」

マサナの後ろに並ぶ、S(シュヴァルツ)のメンバー。
ふっと、口許を緩め、サワコは言う。

「祭り(カーニバル)は…終わらない」







「終わったな…、何とか…」

ミナがスズランに、ため息混じりにこぼした。自分たちでまいた種ー作戦だった。プレッシャーから解放された表情。


「いや、どうかな…?むしろ、これが、“はじまり”なのかもしれないよ」


「嵐は、また、来る…か?」


「ディーヴァは、まだ、戦力の三分の一も投入してないよ。将軍のなかには、キノハルより強いやつもいるって噂だし」


「げっ!それは噂であってほしいな」

スズランの表情に疲労の影が落ちる。

「結局、前田さんに頼ることになっちゃったね…、集団戦は、完全に押されてたし…、このままじゃ、危ないかも…、うちにも、軍師的なひとがいれば…」

戦力差を埋めることも出来るかもしれない。

「スズラン、お前がやればいいじゃん。頭いいんだし」


「器じゃないよ…。わたしは、あのひとがいいと思うんだけどね…、難しいかな…」

スズランの視線は、赤いフードの少女に注がれていた。
IQ180の頭脳をもってしても彼女の暗く深い双眸の奥は読み取れない。



(前田…、わたしがお前に対して、このフードを脱ぐことはない…、いまのうちに浮かれていればいいさ…)

くるっと
踵を返し、校舎に入っていくネズミだった。




前田の周りに集まるマジ女の生徒たち。賞賛と喝采。
“マジ女”コールが木霊する。


「あつ姐ー!」


「だから、やめろって!」

前田を抱きしめようとするだるまを後ろから羽交い締めにする学ラン。

皆の顔に笑顔が広がった。


皆の輪の外にいるジュリナに前田が近づいて言う。

「お前の声、聞こえたよ」

照れくさそうに言い返すジュリナ。

「早く、怪我治せよ!」

「お前こそ」

ちっと舌打ちしながら、笑みがこぼれるジュリナだった。



付近のビルの屋上から
一部始終を見ていた少女がいる。

スカイブルーのスカジャンには蝶の刺繍が輝いていた。


「敦子…」






ダンスが、校庭の中央付近で、うつ伏せになり倒れていた。それほど大きな怪我を負っているようには見えない。
伸ばした右手の人差し指の近くに、まるで、ダイイングメッセージのように、砂地に何かが書かれていた。



“犯人はヤス”


しかし、このボケは、誰からも、つっこまれることはなかった。

冷たい風が、校庭を吹き抜けていった。


「えぇーッ!」

マジすか学園3☆#8ー3☆

風が吹くー


校庭の中央で、激しく睨み合い、対峙する二人。

前田は、通常の構えとは対称的に、右半身を後ろに引き、右の拳を強く握っていた。
マジ女の制服の赤いスカーフが風に揺れる。

キノハルは、両拳を軽く上げ、いつでも、蹴りが放てるように、構える。迎え撃つように。
銀灰色(グレイ)の特攻服の肩口の“壱”の金文字が輝く。


カウントを止めたサワコは、二人を興味深げに眺めていた。
(体力、気力は、既に、限界を越えている…、攻撃できるのは、おそらく、あと一回、…、果たして、どちらが…、

生き残る?)



「いくぞ!キノハル!おまえのその瞳(め)で、見切れるものなら、見切ってみろ!」


「来いや!前田!うちの全身全霊をかけて、はねかえしてやるわ!」


まわりの応援がヒートアップする。

二人は、睨み合ったまま、動かない。

数秒だったのか、それとも数分だったのかー


ついに、前田が動きだした…


瞬間ー


辺りを熱風が、吹き抜けた。

熱い…


風。


二人の姿を、砂埃が覆い隠す。よく見えない。


「どうなった!?」「どっちだ!?」「どっちやねん!?」


また
風が吹きー


砂煙が、流されていく。

視界が、明るくなっていく。

校庭の中央、人垣の真ん中

二人の姿が、あらわれた。


キノハルが、立っていた。

その数メートル後ろに、前田は、いた。
すれ違い、背中合わせになり
右の拳を前に伸ばしたまま。


キノハルは、誰にも聞こえないくらい小さく、呟く。

「風…、か…」

一拍おいて
キノハルの全身を、衝撃が襲う。

口から血を吐き、前のめりに倒れるキノハル。

完全に意識を失いー。


その表情は、いつもの幼顔に戻り、心なしか笑ってみえた。


それきり、キノハルは起き上がることはなかった。


「やったー!」「前田が勝ったー!」「よっしゃー!」「さすが前田だぜ!」「さすが“てっぺん”」

マジ女サイドが一斉に盛り上がる。

「あつ姐ー!」


だるまが、前田を抱きしめた。


「だるま!敦子から離れろ!」

学ランが、二人を引き剥がそうとする。


「やれやれ…、この二人の争いは、いつまで続くんだ?」

「そうですねー、また、修行にでも行ってもらいますか、姉貴」

呆れる
歌舞伎シスターズ。


救急車が近づいてきていた。

岸野が倒れているキノハルに寄り添う。涙をこらえてー。

「キノハル…、満足か…?こんな結末で…、
いや…
そんなん訊くのは、野暮やな…、お前のその顔が…、闘いぶりが、十分、物語っとるわ…」


前田が、仲間たちを制し、岸野に近づく。
岸野は、顔を向けず、前田に語り始めた。


「前田…、実は、キノハルは…、医者から、余命一年の難病って、言われとんねん…、なんとなく、気づいとったかもしれんけどな…」


「あぁ…」


「余命宣告を受けたときの絶望感は、計り知れんかったやろ…、見とっても、痛々しかったわ…、こいつには、喧嘩しかなかったからな…、暴れて暴れて…、それでも、凍てついた心は、ちっとも癒やされんかった…、ディーヴァに逆らうようなやつは、関西にはおらんかったし…、キノハルに“いのち”を吹き込めるようなやつは…、どこにも…
そんなとき、新宿の事件を知った。あのアンダーガールズに、一杯くわしたやつがおる…それが、お前や」


「そうだったのか…」

キノハルの顔を見下ろす前田。


「手術をすれば治る可能性はある…、低い確率やけどな…、リハビリにも時間がかかる…、
キノハルは、『それやったら、いましかできんことやる!』言うてな…、お前と、大きな舞台で、“てっぺん”を賭けて、喧嘩するって決めたんや…、舞台が整う前に、散ってもうたけどな…」


「手術を…、受けさせてやってくれ…」


「わかった…、うちが命に代えても…」


サイレンが鳴り響く。

救急車が、校庭に入ってくるところが見えた。



数台の救急車に
大怪我をしている者から、順序よく運ばれていく。

キノハルもまた
担架にのせられ、救急車に…。

途中で、意識を取り戻す。

前田と岸野が、両脇で見守っていた。

「…、前田…」


「ちゃんと、手術うけろよ…
お前は、孤独(ひとり)じゃないんだ…
元気になったら、また、闘おう…、いつか、また…」


「ええ言葉やな…、未来(あす)があるって…、気分になってくるわ…

手術なぁ…、うち…、痛いの苦手やねん」


「微妙なボケかますな!アホ!」

岸野が、ツッコミを入れる。


「キノハル…、未来(あす)を信じろ…、そして、“マジ”になれ」


キノハルは、照れくさいのか、両腕で顔を覆い、救急車の中に入っていった。
扉が閉められる。


「前田ー!」

車内から
キノハルの声。




「今度は、負けへんからなー!」


救急車は、走り出し、徐々に遠ざかっていった。

サイレンと春雷と共にー。