一から学ぶ東洋医学 No.51 蔵象(14) 臓腑兼証(2) | 春月の『ちょこっと健康術』

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こんにちは ニコニコ

 

前回の臓腑兼証(1)では、春月流に肝鬱気滞系としてまとめた4病証をご紹介しました。 今回は、気虚血虚系の5病証をお届けします。

 

前回もお断りしたように、それぞれの臓腑兼証の症状については、代表的なものをあげてあります。 経過によって、兼証の一方の症状が強まることもあるし、それぞれの病証によくみられる他の症状が出ることもありますから。 そこのところは、それぞれの病証の項をみてね。

 

3 気虚血虚系の臓腑兼証

 

(5) 心肺気虚証 = 心気虚証 + 肺気虚証

(6) 肺脾気虚証 = 脾気虚証 + 肺気虚証

(7) 肺腎気虚証 = 肺気虚証 + 腎気虚証

(8) 心脾両虚証 = 脾気虚証 + 心血虚証

(9) 心肝血虚証 = 心血虚証 + 肝血虚証

 

復習になりますが、気の病理をみると、気虚には心気虚、脾気虚、肺気虚、腎気虚がありました。  肝気は、滞ることはあっても、不足することはまずないので、肝気虚はありません。 

 

(5)~(7)の3病証で、パッと見で気づくのは、どれも肺気虚がらみであることですね。 肺の生理と病理にあったように、肺は全身の気をつかさどっていますから、肺気虚は他臓の気虚をも引き起こしやすい。 同時に、他臓の気虚も肺の機能に影響しやすいのです。

 

(5) 心肺気虚証 

 

心肺気虚の症状は、心気虚+肺気虚で、↓以下のようになります。

・ 心気虚症状: 心悸、胸悶

・ 肺気虚症状: 無力な咳嗽、少気短息、水様性の痰

・ 気虚共通症状: 倦怠感、無力感、活動すると症状が悪化する

・ 舌脈所見: 舌質淡、舌苔白、脈虚無力

 

心肺気虚となるのは、肺気虚で宗気が不足し、それが心にも影響する場合が多いようです。 そして、宗気不足が長引いて、心血虚を生じると、肺気虚+心血虚となるので、この場合は心肺両虚証となります。 すると、顔色や唇の色が淡泊になるとか、眩暈や健忘なんていう心血虚症状が出てきます。

 

(6) 肺脾気虚証 

 

肺脾気虚の症状は、肺気虚+脾気虚で、↓以下のようになります。

・ 肺気虚症状: 無力な咳嗽、少気短息、水様性の痰

・ 脾気虚症状: 食欲不振、大便溏薄、腹脹

・ 気虚共通症状: 倦怠感、無力感、活動すると症状が悪化する

・ 舌脈所見: 舌質淡、舌苔白、脈細弱

 

東洋学術出版社の『中医弁証学』には、肺脾両虚証とありますが、その内容は肺脾気虚証です。 通常、両虚とする場合は、気虚と血虚とか、気虚と陰虚とか、異なる種類の虚証の組み合わせなんですけどねぇ…。 単なる誤字なのか、何かの意味があるのか、そこのところはわかりません。

 

(7) 肺腎気虚証 

 

肺腎気虚の症状は、肺気虚+腎気虚で、↓以下のようになります。

・ 肺気虚症状: 無力な咳嗽、少気短息、水様性の痰

・ 腎気虚症状: 喘息、呼多吸少、難聴、腰膝酸軟

・ 気虚共通症状: 倦怠感、無力感、活動すると症状が悪化する

・ 舌脈所見: 舌質淡、舌苔白、脈沈弱

 

肺腎気虚証は、東洋療法学校協会編の『東洋医学概論』にあるので取り上げましたが、『中医弁証学』にも、たにぐち書店の『全訳中医診断学』にも、載っていないんですよねぇ…。 しかも、『東洋医学概論』の解説も、「肺と腎がともに気虚を呈する病証」とあるだけで…。

 

そこで、まず肺と腎のつながりを考えてみました。 肺の生理と病理にあるように、肺には宣発と粛降という相反する作用があり、それゆえに呼吸を調節して、全身の気をつかさどることができる。 一方、腎の生理と病理にあるように、腎には納気という働きがあって、肺の呼吸を助けている。 ということで、気に関わる共通項は、呼吸ですね。

 

肺気と腎気がともに不足して虚となる、つまり肺腎気虚となれば、肺の主気と腎の納気が弱る。 そうなると、呼吸機能が著しく低下して、気のめぐりも悪化しそうなことは予想がつきますね? 呼吸機能の低下は、宗気の不足となりますから、やがて全身の気の不足へとつながります。

 

そこで、『中医弁証学』の腎不納気証をみてみると、「腎気虚衰のために摂納が弱くなり、喘息・息切れなどが起こる証候」で、「肺虚が腎に波及したり、腎虚が肺に波及した場合、また肺腎気虚となると、全身の気が不足し、運行も続かなくなる」とあります。 ということは、肺腎気虚は腎不納気と同じってことでいいみたい。 

 

(8) 心脾両虚証 

 

心脾両虚証の症状は、心血虚+脾気虚で、↓以下のようになります。

・ 心血虚症状: 心悸、胸悶、不眠、多夢

・ 脾気虚症状: 食欲不振、大便溏薄、腹脹

・ 舌脈所見: 舌質淡、舌苔白、脈沈弱

 

心脾両虚は、気血津液弁証で言えば気血両虚。 血の生理と病理にある血虚証のところで取り上げていますが、気虚があれば血虚は起こりやすい。 特に、脾は「気血化生の源」ですから、脾気虚の場合は生理物質の化生に直に影響して、血の生成不足による血虚を招きやすい。 その結果、心血虚を起こすと、心脾両虚となるのです。

 

(9) 心肝血虚証 

 

心肝血虚証の症状は、心血虚+肝血虚なので、↓以下のようになります。

・ 心血虚症状: 心悸、胸悶、不眠、多夢

・ 肝血虚症状: 目の乾き・かすみ、転筋

・ 血虚共通症状: 顔色淡白不華、眩暈

・ 舌脈所見: 舌質淡、脈細弱

 

心肝血虚は、見てのとおり、心と肝の血つながりです。 心の生理と病理にあったように、全身の血をつかさどるのは心。 肝の生理と病理にあったとおり、貯蔵することで血流量を調節しているのが肝。 心血の不足は肝血の不足を招きやすく、肝血の不足は放っておくと心血の不足につながります。 で、どちらも不足した状態になったのが心肝血虚ってことですね。

 

一天一笑、今日も笑顔でいい一日にしましょう。

 

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