高タンパク質摂取が糖尿病リスクを上げる? その2 | 春月の『ちょこっと健康術』

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先日「高タンパク質摂取が糖尿病リスクを上げる?」 でご紹介した、日経メディカルオンライン の「蛋白質を多く摂取し続けると2型糖尿病リスクが約1.4倍に増大する可能性」 という学会ダイジェスト記事に関して、もうちょっとだけ詳しく書かれているものを発見しました。


それは↓こちら、メディカル・トリビューンの第47回欧州糖尿病学会(EASD2011)速報 です。以下*****から*****まで、少し長いですが文章のみ引用します。図はリンク先の記事を見てね。


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蛋白質と加工肉の多量摂取が2型糖尿病発症率上昇と相関

Ulrika C. Ericson 氏

Department of Clinical Sciences in Malmö, Lund University, Malmö, Sweden


 低炭水化物・高蛋白食が、短期間での体重減少と血糖コントロールに有効であることが以前から示されていた。しかし、最近の研究で、蛋白質、特に動物性蛋白質や加工肉の多量摂取が、2型糖尿病リスクを増大させることが指摘されている(Sluijs I, et al. Diabetes Care 2010; 33: 43-48Micha R, et al. Circulation 2010; 121: 2271-2283 )。ただし、蛋白質自体がリスク因子となるのか否かはよく分かっていない。


 Ericson氏らは、多量栄養素(macronutrients)、特に、蛋白質の多量摂取と2型糖尿病発症との関連を、スウェーデンの住民研究データを用いて検討した結果、蛋白質と加工肉の多量摂取により2型糖尿病発症リスクが増大することが示唆されたと報告した。


住民2万7,000人の食事データを詳細に調査


 スウェーデン・マルメの住民を対象としたMalmö Diet and Cancer研究の登録者から、ベースラインで糖尿病でない者2万7,140人(女性1万6,590例,男性1万550例。45~73歳)の食事データを1991~2006年まで追跡した。追跡期間中の2型糖尿病発症者は1,709例であった。蛋白質・脂肪・炭水化物からのカロリー摂取比率による5分位で階層化を行い、最低5分位とその他の群の糖尿病リスクを、身長・体重,ライフスタイル、社会経済的因子などで調整したCox比例ハザードモデルにより解析した。


 食事内容に関する調査では、7日間の食事記録と、摂取頻度や摂取量に関する質問を含む168項目からなる質問票、45分の面接により詳細なデータ収集を行った。


蛋白質と加工肉の多量摂取で2型糖尿病リスク増大


 炭水化物または脂肪によるカロリー摂取率と2型糖尿病発症リスクの間には、有意な相関は認められなかった。


 一方、蛋白質の多量摂取と2型糖尿病発症リスクの間には、有意(P<0.001)な相関が認められた。蛋白質によるカロリー摂取が最も高い5分位では、最低5分位と比べ、糖尿病発症リスクは1.37倍となった(図1)。さらに、炭水化物の摂取量を減らし、蛋白質や脂肪で置換するというモデルで解析した結果でも、男女ともに蛋白質への置換で糖尿病リスク増大との相関が維持された。


 次に、動物性蛋白質の種類別で検討した結果、加工肉と鶏肉、卵の多量摂取は糖尿病リスクを高める傾向にあり、赤身肉、魚介類、乳製品はリスクを低下させる傾向にあった(図2)。


食物繊維豊富なパンやシリアルの摂取でリスク低下


 一方、食物繊維を豊富に含むパンやシリアルの摂取が最も高い5分位では、最低5分位と比べ有意(P=0.002)に2型糖尿病発症リスクが低下した(図3)。ただし、精白穀類などを原料とするシリアルや豆類の摂取による糖尿病リスク低下は認められなかった。


 蛋白質摂取に関し、さらに、加工肉と果物、野菜、飽和脂肪酸の摂取率で調整したモデルでも、最高5分位における糖尿病リスクの有意(P=0.01)な上昇は維持され、蛋白質そのものがリスク因子である可能性が示唆された。


 以上の結果を基に、Ericson氏は「今回の大規模住民研究における知見は、蛋白質の多量摂取が2型糖尿病発症リスクを増大させることを示している。蛋白質摂取を減らして、炭水化物、特に食物繊維の豊富なパンやシリアルからの炭水化物摂取を増やすことで保護的効果が得られるかもしれない」と結論付けた。


監修者のコメント


 現在、食品交換表に従って糖尿病の食事療法を指導すると、炭水化物60%、脂肪25%、蛋白質15%ぐらいの比率となる。この比率が糖尿病患者の予後に良い作用を有するという根拠はないが、この指導後、多くの患者が、「理想の栄養比率では炭水化物の比率が高い」ことに驚く。


 すなわち、糖尿病になる前、多くの患者は炭水化物摂取量が少なく、脂肪、蛋白質の摂取が多いことが推定される。その中には、脂肪摂取は肥満や動脈硬化に促進的に働き、炭水化物摂取は食後高血糖を招くなどの理由から、蛋白の摂取比率が高くなっているケースも多いが、このような食事がどのような結果をもたらすのか、今まで明らかになっていなかった。


 今回の検討の結果、蛋白質の多量摂取は糖尿病発症リスクを増加させることが明らかになった。糖尿病発症リスクを増加させる食事療法が、長期の糖尿病の予後に良い作用をもたらすとは考えにくいため、おそらくは糖尿病患者にも高蛋白食は勧められないと考えられる。


監修:順天堂大学大学院(文科省事業)スポートロジーセンター センター長・教授 河盛 隆造

順天堂大学内科学・代謝内分泌学 教授 綿田 裕


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↑こちらの記事を読んでも、結局のところ疑問は残ってます。タンパク質・脂質・炭水化物の摂取比率で検証してるんだけど、タンパク質摂取比率の高い人は、やっぱり食事量そのものが多くなってるからなんじゃないかなぁ…と思えてなりません。


2型糖尿病の予防には、食後に血糖値と血中インスリン値が急上昇しないようにすることが大切で、そのために、野菜→肉・魚→ごはんの順に食べるといいワケだし、炭水化物の摂取量を減らしたほうがいいとも言われてきたワケです。


この論文を読むと、炭水化物の摂取量を減らす意味がなくなってしまうように見えます。そうなると、食後の血糖値や血中インスリン値の件はどうなっちゃうんでしょうね。


で、論文の中で炭水化物について書いている箇所を読みなおしてみると、「精白穀類などを原料とするシリアルや豆類の摂取による糖尿病リスク低下は認められなかった」とあるじゃないですか。つまり、糖尿病リスク低下に貢献したのは、炭水化物じゃなくて、食物繊維なんですよね。ポイントは食物繊維にある!


それに、この論文の研究がスウェーデンだということも、考慮に入れなくちゃいけないかな。彼らにとってのタンパク質は、肉・卵・乳製品が中心でしょ。ってことは、彼らがタンパク質摂取を増やすと、脂質摂取も比例して増えちゃうんじゃないかしら?大豆や魚からもタンパク質を摂っている日本人とは違いますよね。


「タンパク質の多量摂取」の「多量」が、どのくらいの量を示しているのか、知りたいところです。日本人の肉の消費量は欧米人の半分~3分の1くらいですからねぇ。食習慣の異なる国々での追試が待たれます。


一天一笑、今日も笑顔でいい1日にしましょう。


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