社会人受験生にエールを | 子育てしながら◆公認会計士試験◆

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実はここのところ、Twitterから離れています。

 

離れているといっても、夜、布団の中で一回は見るけれど、昼間は開くことがなくなりました。

 

Twitterが、すごく疲れるから。

 

それに、不意に傷つく言葉を見ることも。

 

 

■ 時間が増やせないのは甘え

 

公認会計士の先輩の中に、その後、司法試験に予備試験ルートで合格した方がいらっしゃいます。

 

その方が、Twitterで

「自分より学歴もいい、自分より地頭もいい、自分より成績もいい人が、むちゃくちゃ勉強している訳です。せめて勉強時間だけでも勝たないと、その人に勝てる訳がない。勉強時間なんて気合いで誰だって増やせるのだから、勉強時間すら増やせないのは単なる甘え。」

ということを仰ったのです。

 

この言葉に当初は、本当にそうだと思う、目が覚めた、もっとがんばります、というような声を見かけました。

 

でもその後、特に司法試験側の受験生や講師の方から、このTweetは酷い、煽るなって言いたい、などのリツイートが立て続けに出てきました。

 

そうなるのも当然で、司法試験には働きながら子育てしながら勉強と両立している受験生が多いから、これを承知できない人が多いのもうなずけます。

 

併せて、司法試験受験生には、時間を投下しないと合格できないという考え方は、公認会計士ほどには強くないという面もあります。

 

「仕事や子育てを両立させながら可処分時間で必死に勉強している」というツイートもあり、この言葉からもわかるように、持ち駒が限られている中で、どう効率的に効果的に勉強するかを、社会人同士、受講生と講師の間でシェアしている背景がよく見てとれます。

 

また、「時間が限られる中で必死に勉強している人に対して、これは彼らのモチベーションを下げるだけ」というツイートもありました。

 

 

■ 会計士のポジショントーク

 

一方で、「勉強時間が増やせないのは甘え」というフレーズは、公認会計士の受験の世界では、今回に限ったことではなく、よく目にする言葉です。

 

私が推察するに、公認会計士受験生の多くが大学生で受験専念生だから、受験生や自分自身に対して発破をかけるつもりで口にしている人はかなり多いように思います。

 

自分の理想の勉強ができていない人にしてみれば、そんな気合を入れて、喝を入れて、自分を変えたいと思う人は多いでしょうし、多くの受験生は、自省もこめてこの言葉に感謝する人がほとんどです。

 

 

とはいえ。

受験生の中には社会人もそれなりの数がいるわけです。

 

司法試験ではよく使われている「可処分時間」に限りがある立場の人が、この言葉を聞いて何も思わない…わけがありません。

 

 

■ 社会人も専念すべきか

 

先日、最近人気の会計士の方がYouTubeで、社会人受験生の質問に答えた動画があると、ここでも書きました。

 

その方は、概ねこんな内容を話していました。

 

収入リスクがあるので自分は貯金をしてからの専念派、専念して期限を決めてコミットするべき。

 

社会人で働きながらの受験生を知っているがしんどそう、ただしサンプル1の限られた話なので反面教師で聞いてもらえればいい。止めているわけではない。

 

おすすめは、入門期は仕事と併走して、上級期になったら1年間専念してフルベット。

 

というお考えでした。

 

動画内で何度か言っていましたが、社会人受験生を否定しているわけではないということで、ここで改めて私もそこは強調して書いておきます。

 

 

が、しかし。

 

この動画で、賛同する声も多く見かけましたが、心が折れたというツイートもなかったわけではないです。

 

正直、私もこれを見て、ガクッときました。

 

確かに、ご自身の周りにいた社会人受験生の合格者はゼロだったのは、サンプル1であり、類友の限られた世界の中のケースだとご本人もおっしゃっていますが、それをそのまま回答にしてしまうことに疑問は感じました。

 

実際に「確かに納得で専念に決めました」「自分も途中で専念に切り替えて良かったと思っています」という方もいたので、響いた人が多かったのは想像できます。

 

でも、専念できない人もいるのは間違いなく、その人たちにとっては、期待していた分だけ、心が折れたという人がいるのも想像できます。

 

私は元社会人ですけれど、そして今は子育て中ですけれど、母親業をやめて専念することは不可能ですし、子どもを犠牲にすることは考えられないです。

 

「仕事(子育て)と勉強を両立するにはどうしたらいいのか」というところは大命題です。

 

 

この動画の先生の言葉を借りると、「大学生たちは120%の時間を投入してきている中で量は必要」「圧倒的に量を確保するする必要があるからそこをどうマネジメントするかはご自身で考えて欲しい」ということなので、考えてみました。

 

 

■ 当然の前提を疑う

 

いきなりですが、私は哲学科出身です。

 

哲学は、まずは議論の前提に対して常に問いを立てて問い直すことで、その問題の本質を解明し、解決への道筋を立てるのが、この学問の基本姿勢だと思っています。

 

なので、前提に対してあるべき問いを立ててみました。

 

 

本当に勉強時間を大量に投下しないと受からないのか?

 

これに対して、合格した多くの先輩方は「そうだ」と答えるでしょうし、私もそのようなコメントをたくさんいただきました。

 

でも、「勉強時間が増やせないのは甘え」というツイートに、司法試験受験生は、この方法論が正しいのか疑問を持つという人もいましたし、物量作戦以外の戦略戦術を見出す必要について述べる方もいました。

 

実際のところ、司法試験と公認会計士試験は、資格の内容がかなり異なるので、論述展開の技量を求められる司法試験と、会計や簿記の計算力をつけないといけない公認会計士試験では、同じに論じるのは難しいとは思います。

 

計算は、量…という側面は確かにあります。

 

こんな話で何ですが、私は公文の指導者だったので、計算力をつけるために公文は量で勝負しているところがあるので、計算力を支えるのは量だということは実感しています。

 

でも、量を与えすぎると、急激に質が低下することも、何度も見てきました。

 

量は個人差があります。

 

計算のチャンクが弱い子には、かなりの量を与えないと、なかなか定着しない傾向はありますが、それは少ない例外で、ほとんどの一般的な子は、定着した…直後に新しい次の学習に移らないと、急に集中力を落としてだらだらモードに突入してしまうケースが多かったです。

 

そして忘れかけたタイミングで、少し前の学習を復習すると、最初は戸惑うものの、そこでしっかりと定着していきました。

 

何が言いたいかというと、エビング・ハウスの忘却曲線と、過剰学習です。

 

有名な忘却曲線については、忘れる前に復習すべきと思っている人がいますが、正しくは、忘れた頃か忘れかけのタイミングで復習するのが効果的と言われています。

 

過剰学習は、同じような問題を何回もたくさん解くことで成績は上がるものの、引き続き問題を解いても努力の割には成績が伸びなくなるという収穫逓減がみられたそうです。

 

どちらも、長時間勉強することの研究ではありませんが、ただ言えることは、最近の研究では、時間を区切って短時間で集中して勉強することに効果があるという研究結果はあっても、長時間勉強したことの効果を示したものは、私の知る限りでは見聞きしていないということです。

 

 

長時間の努力ができる人がいるのは事実です。

 

それは、一つの才能ですし、その力を持って多くの知識と技能を身につけられるのは、その人の優位性だと思います。

 

でも、長時間勉強できないことを持って、それを否定することそのものに、私は疑問を抱いています。

 

長時間の勉強時間を投下できない立場の人がいたときに、その人と、多くの時間を投下できる大学生とを比べて、専念することを良しとして、そのまま結論とすることに、私は一抹の寂しさを感じます。

 

大量の時間を投下しないと合格できない。

それは真なのか。

 

一日12時間13時間勉強してくる地頭が良くて努力ができる人がいるのだから、少ない勉強時間では彼らに「勝てない」というけど、それは「合格できない」と同じなのか。


「勝てない」と「合格できない」、そこを混同していないかと思うことがあります。

 

 

実際に、1日10時間以上を高いクオリティで勉強してくる人がいて、それが可能な人はいます。

 

彼らの合格は、相当高い確率にあることは間違いないです。

 

どこに行ってもそういう人はいて、自分のちっぽけさに絶望を感じることもあります。

 

そして私は、そういう彼らと同じ土俵に立っています。

 

でもだからといって、自分に劣等感を感じる必要はないですし、その人と同じことをして彼らに勝たなければならない…とまでは、思いません。

 

自分が合格されているために課されている目標の程度は、実際には個々に違うはずですし、なにをどうクリアしていくかは、個々で見極めていくものだと思います。

 

 

■ 夫婦の会話

 

これは公認会計士の勉強でよく聞く話です。

 

2年、長くても3年で合格するには大量の時間が必要。

 

勉強時間が確保できなければ、勉強が長期化する。

 

受験が長期化すると落ちるリスクが高まる。

 

 

「で、何で2年で合格させないといけないの?」

 

夫から、ポロリと出てきた疑問です。

 

「勉強時間が少ないと合格できないから」

 

「だったらまた次の試験にチャレンジしたら?」

 

「その分、受験期間が伸びる」

 

「そうだけど、でも合格できないわけじゃないよね?」

 

「落ちるリスクが高まる」

 

「落ちるリスクって、、、なに?笑」

 

笑いの後に続いた言葉です。

 

 

そもそも、何で大学生と同じでないと受からないの?

 

時間がかかることが受からないことにつながるの?

 

大学生とは時間の使い方も、生活も、考え方も、全然違うし、彼らができることが同じようにできるわけもないし、その上で、どうやって合格するかを考えるべきではないの。

 

大学生は2年で受かるのがベストかもしれないけど、復習のスパンが長くなってその分、トータルで勉強に費やす時間も増えるだろうけれど、それが大学生よりも長くかかることになるかもしれないけれど、それのどこが悪いのか。

 

なにもトータルの時間を短くさせて合格したいとか言ってるわけじゃないし、期間が大学生よりもかかるかもしれないけれど、自分の生活と勉強を維持しつつ、最終的にそれ相当の勉強を積み上げて合格させいたんでしょ。

 

勉強期間が長くなることが、ベテとか言われてカッコ悪いみたいな風潮は困ったもんだけど、忍耐強く勉強を続けて生活もフォローして、しんどそうに見えるかもしれんけど、そのどこが悪いの。

 

大学生や若い子が、受験期間が長くなったら、そりゃしんどいだろうし、モチベーションを維持するのは難しいから撤退するとかいう話になりやすいんだろうけど。

 

そもそも、今でも食い下がっているぐらいなんだから、そう簡単にモチベーション切れていなさそうだし。

 

ダラダラやるのは俺も反対だし、受からなくて止めどきがわからないとかいう状態はあるのかもしれないけれど、そんなの、今は今年の勉強方針が立てられて、合格への勉強法が考えられているんだから、続けていいと思うよ。

 

止めどきがあるんだったら、そういう時には、自分で見極めて判断できるでしょ。そのぐらい。

 

今はやれると思うなら、やればいいし。

 

試験に落ちて、落ちた原因がわからないままにまた1年続けるとしたらそれは落ち癖ということになるかもしれなけれど、その対策をきちんと把握できているのなら、落ちることをリスクとは言わん。

 

いや、大学生には落ちるのもリスクかもしれないけど、こっちはそのぐらいで揺らぐようなものでもないし、気持ちをしっかり持って、勉強を続けたらいいんじゃないの。

 

で、年齢でBig4が切ってきたとしても、それが全てではないし、中堅だってあるんでしょ。

 

それがダメだったとしても、それはその時に考えればいいんじゃないの。

 

何か、きっと方策を考えるんでしょ、あなたなら。

 

 

というようなことを言っていました。

 

そう、私もこの考え方はすごくしっくりきました。

 

 

■ 社会人受験生へのエール

 

ただ「でも、社会人の受験のことを業界として受け入れる雰囲気がないとしたらそれはそれで、そっちの方が問題だよね」と。

 

私も、こちらの方をすごく不安に思っています。

 

協会が、女性や子育て中の会計士の働き方を重視しているのは知っていますが、社会人の女性や元社会人の母親、そもそも男性で社会人で受験を突破してこようとする人への受け皿も狭いように思えます。

 

また、現役の会計士の方々が、勉強時間が増やせないのは甘えという言葉を何度となく言っているところは耳に入ってきます。(でも、だからといってこちらの立場を理解していただこうにも共感していただけない現状があって、どうにもならないのは承知しています。)

 

ただ本当に悲しいのは、予備校の講師の方が、「働きながら合格するのは難しいですね」とさらっと口にして終わるのは、やはり何度も書きますが、何とも言えない後味の悪さがあります。

 

今まで、働きながら合格していった社会人の方が、実際にはそれなりに多くいらして、その方たちは、無言で努力し続けていったわけで、私たちも同じようにいろんな苦労やしんどさを抱えながら勉強しているわけで、そこは承知してますし、そして私もそれに続こうと思っていますが。

 

その先達の成功の事例、すごく知りたいです。

 

 

たとえば。公文の指導者をしていた時、いろんな相談を受けましたが、学習障害や発達障害の子たちの相談も、他の先生たちのケースをたくさん集めて、自分のところのケースも発信して、共有しあって、マイノリティの人たちにも光が当たるようにしていました。

 

少数派の人たちに不足しがちなのは、情報です。

 

少数派同士で横のつながりを持つ機会を作るのはすごく難しいことなので、講師といった相談を受ける立場の側が、積極的にケーススタディを共有しあって、それを発信することには、ものすごく大きな意味を持っています。

 

 

会計士の業界が、すぐに変わることは難しいかもしれないけれど、何か思ってくれる人がいたのならば、そして小さなことでも「何か」を投じてくださったのなら、それはいつか、形になっていくことだと思います。

 

社会人受験生を、個人の努力に任せるだけにしないでほしいのです。

 

そして、多くの大学生への発破で「勉強時間増やせないのは甘え」と言っているすぐ横には、社会人受験生もいることにも気づいてほしいです。

 

 

公認会計士試験が、大学生や専念生だけの試験ではなく、社会に開かれた試験であってほしいと思います。

 

一人一人事情を抱えながら、でも合格させたいの気持ちで、長くなってしまっている道も、一歩一歩踏みしめています。

 

社会人それぞれ異なるバックグラウンドを持ち、いろんなキャリアを持っている人たちが合格していけば、またそれは社会への還元となっていくことに疑いはありません。

 

 

もう少し、社会人受験生にとって、勉強に邁進できる風土があればいいなと願っています。

 

 

 

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最後になりましたが、CPAでは、時々、社会人受験生向けの交流会を開いてくれ、また、講師の方も、個別に具体的な勉強の仕方を指導してくれています。

 

そこには、本当に感謝しかありません。