• 43 音楽会へ

     夕暮れ時、シュンの部屋から見える景色は、夕焼けに焼かれて、暖炉の炎のように燃えて見えます。

    シュンは、その風景に

    「神様の焚き火」

    という名前をつけていました。

    シュンはハルナと一緒に風が運んだ落ち葉で焚き火をするのが大好きです。 

    何故なら、美味しい焼き芋ができるからです。 ママがお芋を投げ入れてくれると、焼きあがったお芋を小枝に刺して、ふうふうしながら食べます。

    すると、北風の口笛も、気にならないくらいあたたかくなります。

    「きっと、空の上にいる神様もお芋が好きなんだよ」

    シュンが、ほほ笑みながら言いました。するとママが

    「あら、どうしてそう思うの?」

    と、たずねました。

    「だって、森や山の木の葉を 炎の色に変えるでしょ」 

    シュンが、そう答えると

    「そうね。そのおかげで葉が落ちて、シュンの焚き火ができるものね」 

    と言ってママは、ほほえみました。

     バケツの水をかけると じゅっと いう音がして、今日の焚き火はおしまいです。  つづく

  • 43 音楽会へ

    いよいよ 後3日で音楽会です。

    「あっ。ハナコだ!!」

    まぁ、ハナコが練習にやって来ました。

    ふくろうのボンおじさんが、小枝を振り下ろすと、みんな歌い始めました。

    おや・・・

    ハナコは楽しそうに歌っています。

    「ハナコ、上手になったねぇ!!」

    みんなが手をたたきました。

    月があんなに きれいなのも

    星があんなに ひかるのも

    みんな みんなのためなんだ ♪

    ぶなの木陰から ボイスのとても美しい歌声が聞こえてきました。

    「ハナコがんばったものね」

    ボイスは、ハナコにウインクしました。

    そうです。

    ハナコはずっとボイスに歌を教えてもらっていたのです。

    「練習すれば、それぞれ良くなるよ。

    みんな 毎日しないから、みんな あきらめてしまうから、そのままなだんだ。

    僕も毎日練習するよ。

    もっと もっと 上手になるように」

    ボイスは、そう言うと 歌の続きを歌い始めました。

    ― あなたは 何かしていますか? ―

    「コノハ やっとみんなで歌えるね。 やっとみんなの音楽会だ!!」

    おほしさま きらきらと

    そよ風   さやさやと ♪    おしまい

  • 42 月経へ

    おほしさま きらきらと

    そよ風   さやさやと ♪

    もうすぐ 森の音楽会です。

    「ちょっと ハナコは いらないわね」

    意地悪コノハが、言いました。

    シュンとハルナが帰り道で、

    「ハナコ気にしないでおいでよ」

    と、何度も言いました。

    「私はいいけど、みんなに迷惑だから…」

    ハナコが寂しそうにつぶやきました。

     それ以来、何度さそっても、音楽会の練習にハナコは来ません。

    「コノハちゃん、なんでハナコちゃんの事をいらないって言ったの!」

    シュンが怒ってコノハに言いました。

    「だって、下手だし声小さいじゃん」

    確かにハナコの声は、小さく歌もあまり上手ではありません。シュンとハルナは、どうしたらいいかわかりませんでした。

     数日後、

    「こんにちは、ボイス相談があるんだ」

    シュンとハルナは、森一番歌の上手なカナリアのボイスにハナコの事を相談しました。

    ボイスは、音楽会では、一人で歌うのです。

    すると、ボイスは ウインクして

    「心配いらないよ♪」

    と、歌いだしました。

    「?!」    つづく

  • 42 月経の最初へ

    「これからは いつでも赤ちゃんが産めるから

    まずは 恋をすること。本当に好きな男の子がでてきたら、ママに相談してね」

    「ママ…」

    アキナは、ほほを染めてこくりとうなづきました。

    「忘れないでね。ママはいつも、あなたを信じているから」

    「ママ、お姉ちゃん??」

    「あらら、ハルナ ふふふっ」

    ハルナがアキナの部屋に入ってきました。

    「なぁに?ハルナにも教えて」

    「ハルナも レディーへの準備ができたらね」

    ママは アキナにウインクして部屋を出ました。

    「やだぁ。なぁに、なぁに??」

    ハルナは 手と足をばたばたさせて聞きました。

    「ちょっと 大人になった気分なの」

    「へっ? 大人の気分?」

    「ハルナには むつかしいよ」

    「・・・」

    なんだか いつもよりずっと アキナの事が、ハルナにはおねえちゃんに見えた気がしました。

    「大人の気分かぁ」 おしまい

  • 41 初恋へ

    「ママお姉ちゃんね。野いちごの実の上に座っちゃったみたいよ」

    「あらどうして?」

    「おしりに赤い点々がついてたもん」

    ママは、はっと気づいた顔をしてハルナのお姉ちゃんの部屋へ行きました。

    「アキナ気分はどう?」

    「ママ…」

    アキナは、机にふせていました。

    「おめでとう!」

    「えっ?」

    「来年の春は あなたも中学生なのだものね。レディーになる準備が 始まったのよ」

    どうやらアキナに月経が始まったようです。

    そして、ママは2つの約束をして欲しいと言いました。

    1 悩みがあったら今まで通り 何でも言う事

    2 レディーらしい ふるまいをする事

    アキナは、約束しました。

    ― 大人になる為には 約束がたくさんありますけどね―

                                             つづく

  • 41 初恋の最初へ

    森の長老ふくろうのホーおじいちゃんは、チョコの銀紙をはずしながら 

    「ツックは、どうしたいんだ?」

    と、たずねました。

    「その子を見ても どきどきしなくなりたい」

    「なんじゃぁ?まったく そのどきどきが 人生を彩るのじゃ。たわけもの…。

    その子とまず、話してみなさい。お前さんのその胸に何か変化が起こるじゃろうよ」

    「うん…。だけど、話すのが大変なんだ。どきどきして どもってしまって…」

    「重症だな…。じゃぁ 話せるようになるまで ゆっくりと観察していなさい。

    良い子かどうかとか、お前さんの好きな研究とやらをすればええんじゃよ」 

    「!そっか。観察ね。わかった」

    「まったく。お前さんのたくさんある知識が、まったく役にたたんのじゃなぁ」

    ホーおじいちゃんは、ため息をひとつついて、チョコを口へとなげこみました。

    「ありがとう、長老!!がんばるよ」

    ツックは 文房具屋で ノートを買ってかえりました。

    そして自分の気持ちを正直につけはじめました。

    ノートの表紙には、「恋の観察日記」と書かれています。 おしまい

  •  白テンのツックが、いつものようにぶ厚い本を読んでいました。ツックはとても勉強をよくしていて、何でも知っていました。

    「おにいちゃん、どうしてすてきなものを見ると、ドキドキするのかしらね…」

    ハルナがツックに質問すると、これまたぶ厚いメガネを人さし指であげながら

    「それは、目がキャッチした情報を脳が…」

    「情報?」

    「いや…」

    ツックは、何でも良く知っていたのですが、説明の言葉が難しいのが困りものでした。

    「あら、ツック こんにちは」

    ツックがハルナにあれこれ説明している所に

    つい最近 この森に引っこしてきた 白テンのララが、通りかかりあいさつをしました。

    すると、ツックは

    「ハルナちゃん 今日は失礼するよ」

    そう言うと、真っ赤な顔をして、走り去ってしまいました。

    「おにいちゃ…ん…?」

    ツックは、図書館のけんさく用のパソコンの前で 考えこんでいました。

    「何の本を読んだら いいんだろ…」

    ツックがそうつぶやくと、図書係りのたぬきのブックおばさんがやって来て

    「何をさがしているの?」

    と、聞きました。

    「いやぁ、不思議な事が起こったんだ。初めて見た物に、これも初めてのとても強い気持ちが起こって、その初めて見たものを見る度にどきどきして…

    なにか…調べているのだけれど それが どうも 恋というものらしいんだ。

    これを どうしたらいいか 調べているんだが…」

    それを聞いたブックおばさんは、ふきだして

    「それなら…長老に聞くのが 一番早いわよ」

    と、笑うのをがまんして苦しそうに言いました。

    「そっか」   つづく

  • 40 毛皮の最初へ

    すると、ジョンは笑いながら、

    「血の匂いがしないものは、人間に知らせないから安心しな。おいら達だって、こんな仕事は嫌だけど、生きる為だ。許してくれ」

    そう言ってジョンはそのまま何処かへ行ってくれました。

    「あぁ。助かった」 

    シュン達は 急いでお家へ帰りました。 

    「シュン。心配したのよ」 

    ママは 涙を目にためてシュンを抱きしめました。 

    「ママ。どうして人間は、僕達の毛皮が欲しいの?」

    ― どうして ですか…― 

    ママは、ため息をつきました。

    「僕達の毛皮も 羊さんみたいに、命を落とさなくても人間にあげる事ができると良いのにね…」 

    シュンも ため息をつきました。 

    あなたも ため息をついて下さい。  おしまい

  • 39 友情へ

    バーン!!

    ワン ワン

    森中に響き渡る 悲しい音です。

    シュンはハルナと 杉の穴に震えながら隠れていました。

    また、誰か撃たれたのです。

    人間が猟犬を連れて、時々やってきます。

    シュン達動物の毛皮は、人間にとって宝物だそうです。

    だんだんシュン達の隠れている杉の穴へ人間の足音が近づいてきます。

    「シュン、こわいね」

    「しっ、静かに」

    その時です、穴の入り口から猟犬のジョンが 顔を出しました。

    「おや? 何かいるなぁ。くんくん」

    シュン達は恐ろしさのあまり声も出ません。

    ことっ。

    まあ、大変です。あまりに怖くてハルナが持っていた花かごを落としてしまいました。  つづく

  • 39 友情の最初へ

    帰り道シュンとハルナとハナコとで、ゆっくり下って行くと、のぼる時にひとやすみした切りかぶに、コノハとコノミがすわっていました。

    「どうしたの?」

    「なんだか つかれちゃった。ママむかえに来てくれないかなあ」

    コノハとコノミは、登るのに力を使いすぎたうえに、帰りも急いでいたので、とても つかれてしまったようです。

    シュン達は、コノハとコノミに ゆっくり先におりているからと言って、また てくてくと、おりていきました。 

    「あら、もう帰ってきたの?うちのコノハちゃんは?」

    むかえに来たコノハのママがハルナにたずねました。

    「とちゅうの切りかぶに すわっていたけど…」

    シュンたちは、とっくに帰ってきているのに コノハたちは、まだ まだのようです。

    「ハナコちゃんとゆっくりのぼって良かったよ。つかれているけど。なんだか、気持ちいいよ」

    と、シュンが楽しそうに言いました。

    すると、ハナコは ほほえんで言いました。

    「ともだち だもん!!」      おしまい