先進科学塾@名大2019.8.3「熱みえる化みえないか?」報告 その1 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 先進科学塾@名大にお手伝いに行ってきました。

 本日は熱がテーマ。講師は山本久守さん。

 「山本無双」がさくれつした一日でした。

 

【注】3日の報告ですが、同じ内容で4日も行いますので、4日に参加予定の方は、この記事はまだご覧にならない方がよろしいかと思います。参加されたあとで、ご覧ください。

 

 ぼくが会場についたとき、久守さんは会場準備をしていたのですが・・・

 

 最初に使う実験装置が5組しかないとぼやいています。黒板を見ると、今日の参加者の班は、全部で6つ。

 人数の上限を5組分として用意したのだけれど、参加者がそれより多いから、足りなくなったと・・・いきなり、え〜〜っとなりました。

 

 たまたま、遅刻する人や体調不良で欠席の人がいて、なんとその装置を使う時にはちょうど5組分の人数だったので、奇跡的になんとかなりましたが・・・

 

 今日は、このあともとんでもない状態が続きます。 まさに、自然科学研究とはこれだ、といわんばかりのトラブルの連続。

 

 その効果はてきめんで、参加者の積極的な議論(いや、ツッコミかな?)も非常に多く、とても実りある会になったと思います。すごいなあ・・・

 

 今回も、例によって、ぼくの私的な記録ですので、内容を網羅できていません。なるべく順を追って紹介しますが、今日の会を忠実に再現する記録ではありませんので、ご容赦を。

 

 会が始まる前、いきなりのぼやきでびっくりしたのですが、久守さん、マイペースで「お金がかかりすぎるので、今回は全員でやる実験の数は少なくて、見てもらう実験が多いんだ」とおっしゃる。

 「じゃあ、時間が余っちゃわないですか?」とぼく。久守さんはいやいやという表情で「それどころか、いろいろ用意したんで、全部やりきれるかどうかわからない」・・・今日のレポートを見ると・・・たしかに盛りだくさんです。熱の分野、全部網羅してるんじゃないか、くらいの量。

 

 さて、どうなりますか・・・(今日の参加者のみなさんだけが知っていますね)

 

 最初に、温度についての歴史も、少々。

 

 

 ガリレオ温度計と呼ばれる装置ですが、実際にガリレオが最初に作った温度計は、これとはまったく異なる形のもの。

 

 このあと、セルシウスやファーレンハイトの温度設定、カルノー、ケルビン卿(トムソン)、マクスウェル、シャルルと、お歴々の業績を紹介。久守さん、科学史に強いので、とうとうと語ります。(科学史に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ぼくの著書『いきいき物理マンガで冒険』をご覧くださいませ。物理理論をテーマにしたマンガですが、冒険仕立てで、科学史的なことも扱っています。リンクは一番最後に)

 

 さて、一連の科学史トリビアが区切りがつくと、温度に関するクイズと実験。

 

 

【Q】4つのビーカーに、A水、B鉄釘、C砂、D綿が入れてあり、部屋に2時間ほど放置してあります。それぞれの温度の大小関係はどうでしょう?

 イ・・A<B<C<D

 ロ・・A=B<C<D

 ハ・・A=B=C<D

 ニ・・A=B=C=D

 ホ・・A<B=C=D

 ヘ・・A<B=C<D

 ト・・B<A=C<D

 チ・・その他

 

 参加者の予想は・・・?

 

 

 トが一番多かったですね。水と砂が同じ温度、鉄釘が最低、綿が最高という予想。

 

 「じゃあ、どうでしょうか、みなさん自分の目で見てください」と久守さん。

 

 その結果を班ごとに聞いていってまとめたのがこちら・・・

 

 

 Cだけが温度が1度ほど高く、他はだいたい25度くらいだったという回答が多かった!

 

 この結果に一同(スタッフも含め)うろたえます。久守さんも「あれ?」という表情。

 

 アルコール温度計はそれほど正確ではないので、念のため、温度の高かった砂ととなりの綿で、温度計を取り替えてみました。少したって目盛りを読んでみると・・・

 

 

 砂25度、綿26度。

 

 逆転というより、温度目盛りがそのまま変わらなかったのですね。つまり、最初に砂に入れてあった温度計は目盛りがあっていなくて、26度という表示になっているけれど、実質25度だったということがわかります。

 

 ということで、測定結果はA=B=C=Dでした。

 

 でも、これは久守さんが用意した答とは違っています。理論上は、A<B=C=Dとなるはずでした。

 

 蒸発熱のため、水は他より低めの温度になるのですが、部屋の湿度を測ってみたら70%。それでできるはずの差が消えてしまったようです。

 

 温度計のずれが大きいことで、参加者からも「最初の状態の温度計の温度が合っているかどうか調べましたか」というツッコミも。久守さん「どうも、安物を使うとだめだということですね」いやはや・・・すばらしい。

 

 参加者1つめの体験実験は、熱膨張。

 

 

 長い棒の下に敷いてあるのはシャーペン芯。棒が伸びると芯が回転し、のびの量が芯につけた紙切れの回転角でわかるという仕組み。

 固形燃料に火をつけて棒を暖めます。しばらくすると、下の写真のように、棒がのびて紙切れがのびに応じた回転をします。

 写真ではガラス棒ののびはわかりにくいのですが、金属に比べると熱膨張は少ないですね。

 

 ちなみに、固形燃料をあまり縁近くに置くと木の台も燃えてしまうので、ご注意を。最近、小学校では、文科省の指示でアルコールランプを使わなくなったとか。科学館のイベントでも火が使いにくくなったということです。困ったものですね。

 

 熱膨張つながりで、林ヒロさんにバトンタッチ。鉄道のレールが熱膨張を見越して、隙間を空けるように設計されているという「昔話」から始まり、今はどう進化しているかをクイズとして出題。

 

 

 さすがにみんな、思いつきません。

 

 こちらが答。

 

 

 黒板左がその答。隙間なしで、熱膨張にも対応する方法です。外に向けて伸びるようにすれば、隙間はいらなくなる、との発想。列車の車輪が、レールの内側に引っかかって回転することを利用しています。レールの外側に車輪が乗り上げることはありません。(今の鉄道のレールに隙間がないということは、鉄道マニアの子には知られているようです)

 

 これをさらに応用したのが、右図の工夫。

 

 「真ん中のレールがのびたら困らないですか?」と、参加者が突っ込みます。

 

 久守さんは動じず、図にちょっと追加。

 

 

 真ん中の部分は短く、20メートルくらいしかないので、熱膨張も無視できる範囲だと。一同なっとくしました。

 

 

 2枚の銅板の間に挟まっているのはペルチェ素子。異なる金属を接合してあり、温度の違う水に片方ずつを入れると、電流が流れます。

 

 

 ちょっと見づらいですが、太陽電池用のモーターが回っているのを撮りました。コップの片方には氷がいれてあります。

 

 シャルルの法則は、気圧一定の元で温度と体積が直線的な関係になるという結果ですが、この実験から絶対零度の存在が予想されたのですね。

 

 ・・・ということで、おもむろにシャルルの法則の実験に入ろうとしたのですが・・・

 

 

 おもわぬアクシデント。

 

 たっぷり入れておいたはずの液体窒素が、容器の中にほとんど入っていません。どうも、入れたときにちゃんと入っていなかったようです。

 

 ぼくも学生時代、供給タンクから容器に液体窒素をもらって実験していたのですが、容器自体が冷えるまでは容器内に液体窒素がたまらないので(入れた液体窒素がどんどん蒸発してしまうため)、容器が冷えるまで待って、そこから液体窒素を必要量入れる、という作業をしていました。初めて入れたときは、やはり、今回と同じ。注ごうとしたら、中はほとんど空っぽでしたね。

 

 というハプニングで、予定していたシャルルの法則の実験は、中止になりました。

 

 はてさて、トラブル続きの会ですが、最後までうまく乗り切れるのでしょうか・・・

 

 参加者は、こういったトラブルも含めて楽しまれていたようなので、よかったのかな。科学って、そう思い通りにはいかないのですが、それを身をもって体験できる講座であります。

 

 ・・・まだまだ、話題にことかかない会だったのですが、今日はここまで。

 

 冒頭のイラストも気になるでしょうが・・・以下、次回、ということにさせていただきます。

 

 

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