前回の続きです。後半(といっても、実際の講座の時間順とは異なりますが)の実験です。
燃焼には酸素が必要。それを別の形で示す実験。花火です。
花火に火をつけた後、水中に突っ込みます。
実験がうまくいくように、花火の先はビニールテープで巻いてあります。
成功すると・・・
水中でも火花が持続します。
水中の酸素を奪って燃える?・・・ちがいます。
花火の中に酸化剤が入っているので、空中の酸素は燃焼に必要ありません。
じつは、ぼくも学生時代にキャンプに行った先で花火をやり、それを水に突っ込んで遊んだことがあります。運がよければ、花火が水中で燃え続けるのを見ることができました。
とはいえ、この日の実験はけっこうぎりぎりでした。
何本も失敗し、なんとか成功。たくさん用意してあった花火を、全部使い切ることになりました。いやあ、実験はむつかしいですね。
たくさんの煙が出るので、火災報知器が反応しないよう、実験の場所を減らして対応しました。
さて、燃焼実験を積み重ねてきて、いよいよ燃焼の花形・・・ロケットです。
まず、かんたんな実験から。
底近くの側面に穴を開けたアルミボトルの中にエタノールを三回ほど噴霧し、紙コップでふたをして、チャッカマンで着火します。
すると、ポン、という音がして、紙コップがロケットのように飛び上がります。
こんな映像です。
こんな瞬間をとらえるのは少し前までは難しかったのですが、iPhoneのライブ写真を使うと、連続して数コマの写真を撮ることができます。上のが、その代表写真で、火をつけているところです。ライブ写真には紙コップが飛び上がり、落ちてくるまでが写っていましたが、ふつうに扱うとこの一枚しか使えません。
iPhoneやMacの独特の機能なので、そのままではフォトショップで加工しようとしても、代表的な写真一枚しか加工できないのです。
が、いろいろ調べてみたら、iPhoneのカメラには編集機能がついていて、一連のライブ写真の代表写真を変えることができることがわかりました。代表写真を変更してから、エアドロップという機能でMacにダウンロードさせたのが、下の写真。
うまくいきました。ちなみに、エアドロップ機能は、当日参加してくれた若いスタッフの人に教えてもらいました。
この実験には物理的な続きがあります。
紙コップを少し小さめに切ります。
まず、アルミボトルにその紙コップをつよくかぶせ、さらにその上からポテトチップスの容器を切ったものをかぶせます。
この写真では、かぶせる順がわかるように紙コップがすこし見えるようになっていますが、このあと、もっとポテトチップスの容器を押し込みます。
火をつけると、紙コップだけが飛び出します。
この図の通りです。
筒があると、2つの理由で、より高く飛び上がるようになります。
一つは、運動量と力積の関係。力積というのは力と力のかかっている時間をかけ算した量のことです。うける力積が大きいほど、物体の運動量が増すという法則があります。
筒があると、紙コップが筒を移動する間、余分に力をうける時間が増えるため、受ける力積が増え、紙コップはより大きな運動量を得て、速い速度で飛び出します。
吹き矢を吹くとき、筒が長い方が矢は速くなります。これも同じ原理ですね。
この講座の時、岡田さんが説明したのは、こちらの理由の話だと思います。(すみません、ちょうどそのとき、ぼくは座を外していたので、また聞きです)
もう一つは、燃えたときに発生したガスの圧力の問題です。
ポテトチップスの容器を上からかぶせたことで、紙コップはより強くアルミボトルに押しつけられ、摩擦が強くなります。
紙コップは燃焼ガスの圧力による力が摩擦力より大きくなると飛び上がるので、摩擦が弱い1つめの実験では、ガスの圧力がじゅうぶんに大きくなる前に、紙コップが飛び上がってしまいます。2つめの実験では、摩擦力がじゅうぶん大きいので、それにつりあうよう、ガスの圧力がもっと大きくなったときに紙コップが飛び上がります。
そのため、紙コップが飛び出すときの爆鳴音も大きくなるのです。
この二つめの理由の話、は当日はなかったようですので、補足しておきました。
さて、さきほどは紙コップをロケットにして飛ばしましたが、今度はもっと本格的にロケットっぽいものを飛ばします。
アルミボトルをロケットにして、燃料を燃焼させて飛ばすのですが、実験室の中なので普通に飛ばすわけにも行かず、床に沿って飛ばす方法となりました。
ペットボトルの中にはやはりエタノールを霧吹きで三回ほど入れてあります。ふたには割り箸が通るくらいの穴が開けてあります。その穴をチャッカマンの炎であぶると・・・
こんなふうにすごい速さで飛び出します。この写真もライブ写真の機能を利用して撮影しました。
ここで岡田さんから参加者のみなさんに挑戦状。
岡田さん「ふつうのプラスチックのペットボトルでも、おなじようにすれば、ロケットになって飛び出すでしょうか。やってみてください」
これはうまく行きません。
岡田さん「じゃあ、このプラスチックのボトルでもうまく飛ぶようにするには、どうしたらいいと思いますか?」
岡田さんは、ペットボトルとアルミボトルを両手に持って質問。
選択肢がないため(笑)、ペットボトルにアルミのフタをするということを試すことに。
こちらは、うまく飛びました。
この方式は事前の打合会の時に、スタッフの一人山本さんが出したアイディアです。フタがアルミだと、十分加熱することができるので、ペットボトル内のアルコール蒸気が燃焼しやすくなるのでは、というアイディア。うちの娘の提案で、その逆も試し、フタが金属のとき、うまくロケットとして飛ぶことがわかりました。
8月31日(前日)の講座中に、参加者の工夫で、フタがプラスチックでも、フタにも外からアルコールを霧吹きすると、うまく飛び出すこともわかりました。この場合は、フタについたアルコールが燃え、その熱で内部のアルコール蒸気も引火したと考えられます。
この日はそれも試しておこうとみなでロケット飛ばし大会。みなさん、うまく飛ばしていました。
この日の新しいアイディアはこちら。
線香に火をつけて、フタの穴から中に入れて直接点火すれば、オールペットボトルでもうまく飛ぶのではないか、というアイディア。さっそく、試してみることに。
何回かチャレンジしましたが、点火しません。
スタッフの多くは、うまくいくのではないかと思ったのではないでしょうか。ぼくも、行けるかもと思いました・・・
結果は・・・
線香では、点火に必要なじゅうぶんな火力を得ることができないことがわかりました。
これもまた、新しい発見ですね。
講座の締めに、林ヒロさんからドイツのV2ロケットが液体燃料ロケットであったことのお話もありました。戦争で物資不足だったため、芋からとったアルコール燃料で飛ぶロケット(兵器なので、ミサイルですね)を開発したという逸話です。
V2ロケットって、芋で飛んでいたのか・・・と、ぼうぜんとなった人も少なくなかったのでは・・・
白板左側がV2ロケット、右側はホリエモンさんがスポンサーになって作ったロケットだそうです。やはりこちらも液体燃料ロケットだとか。(このときもぼくは座を外していたので、他のスタッフからの伝聞です)
最後に、後片付けの写真を。
講師の岡田さんがこの日のためにどれだけのものを用意したのかがわかる写真です。
すごいですね・・・
実験机のこちら側と向こう側にびっしり二列分、道具と材料が並んでいました。
頭が下がります。
最後の最後に、今回の写真を一人で撮影してくれた小さなカメラマン(ぼくの娘)にお礼をいわせてください。サンキュー!
関連記事
先進科学塾@名大2019.8.3「熱みえる化みえないか?」報告 その3
先進科学塾@名大2019.8.3「熱みえる化みえないか?」報告 その2
先進科学塾@名大2019.8.3「熱みえる化みえないか?」報告 その1
先進科学塾2019.3.9『電気と磁気のシンクロナイズドダンシング』報告その2
先進科学塾2019.3.9『電気と磁気のシンクロナイズドダンシング』報告その1
先進科学塾打ち合わせ会@名大2018.12.16
先進科学塾4月28・29日〜飛行を考える
先進科学塾@名大「遊びで探る重心の世界」2017.10.22
〜ミオくんと科探隊 サイトマップ〜
このサイト「ミオくんとなんでも科学探究隊」のサイトマップ一覧です。
*** お知らせ ***
日本評論社のウェブサイトで連載した『さりと12のひみつ』電子本(Kindle版)
Amazonへのリンクは下のバナーで。
『いきいき物理マンガで冒険〜ミオくんとなんでも科学探究隊・理論編』紙本と電子本
Amazonへのリンクは下のバナーで。紙本は日本評論社のウェブサイトでも購入できます。
『いきいき物理マンガで実験〜ミオくんとなんでも科学探究隊・実験編』紙本と電子本
Amazonへのリンクは下のバナーで。紙本は日本評論社のウェブサイトでも購入できます。