先進科学塾@名大2019.8.3「熱みえる化みえないか?」報告 その2 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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マンガ・イラスト&科学の世界へようこそ。

 

 さて、前回の続きです。(といっても、時間順の記録ではありませんので、ご了承ください)

 

 イラストはケルヴィン卿、つまりウィリアム・トムソンさんです。

 

 絶対零度、絶対温度を作った人です。

 

 

 シャルルの実験(この日は実験できませんでしたが)で、温度と気体の体積が直線的な関係になることから、当時は実験できなかった低温レベルで、温度に限りがあることが予想できます。

 

 そこから、トムソンは絶対零度の存在を見抜いたのでしょうね。(まだ、トムソンに関わる原典的な書物を読んでいないので、ここは、想像に頼るしかありませんが、ほぼ確実だと思われます)

 

 「絶対温度はセ氏温度と同じ目盛り間隔になっているので、換算は非常に簡単です」と久守さん。

 

 なんと、熱力学の歴史を全部やっちゃう勢いです。すごいことになりそう・・・

 

 さて、前回のおまけを少々。

 

 

 砂の温度が高かったのは、温度計が正しい値を示していなかったからですが、スタッフ同士でささやいていたのですが、実際に砂の温度が高くなるケースもあるはずです。

 

 それは、砂に腐敗物が紛れていたとき、微生物による腐敗/発酵で温度が上昇します。生ゴミをほうっておくと暖かくなりますが、それと同じですね。

 

 希代の天才マンガ家、吾妻ひでお氏の『失踪日記』には、ホームレスをしていたとき、ゴミ置き場で腐ったリンゴを手に取り「あったかい」とつぶやくシーンがあります。腐敗が進んで、放熱反応が進んでいたのでしょう。

 

 久守さんが持ってきたのは高価な装置でしたが、今は特に、赤ん坊用の体温計として、もっと廉価なものが販売されています。

 

 ジョセフ・ブラックは比熱、熱容量、潜熱など、熱と温度に関する研究をしています。

 

Q お湯の100℃とサウナの100℃は、同じ100℃なのでしょうか?

 

 久守さんが講義の最初に出題した4つの問題のうちの一つです。参加者に答をいうことなく、講義が始まったのは、今回の講義が終わる頃には、参加者が自分で答が出せるようになるとの配慮でしょうか・・・

 

 画像はありませんが、非接触温度計は物体から放射される赤外線などの強度を測定して物体の温度を測る温度計。

 

 赤外線つながりで、参加者にスマホを取り出してもらい、リモコンの赤外線放出部を見てもらうという実験を。

 

 

 人間の目には見えない赤外線ですが、スマホやデジカメの受光素子はそれらを感じてしまうので、人間の目には見えないリモコンから放出される赤外線が、光として見えるのです。

 

 ところが・・・予想外のことが起こりました。

 

 

 こちらは、ぼくのiPhoneのカメラで見た画像。

 

 何も見えません。

 

 でも、アンドロイドのスマホでは、放射される赤外線の発光が見えました。

 

 どうも、iPhoneは、人間の目に見える可視光線に反応するように、カメラにフィルター(物理的なフィルターか、ソフトウェア的なフィルターかは、まだわかりません)をかけているようです。

 

 思いがけない結果に、スタッフがびっくり。もちろん、久守さんも予想していなかったでしょうね。

 

 次は火起こし器。

 

 

 成功しました・・・とはいえ、火がつくまではかなり大変でしたね。

 

 火起こし器、摩擦で水を沸騰させる装置、釘をたたいて温度上昇を知る実験など、いくつかの装置をセットして、好きな実験をしてもらうという時間帯。

 

 正直、条件設定が厳しいので、たとえば普通の高校でこんな実験をすると、みんな途中で投げ出してしまうのですが、さすがに先進科学塾の参加者は粘り強い。

 

 最終的には、すべての実験で結果を出していました。

 

 

 こちらは衝突による発熱。真っ赤になることはありませんが、たたいた直後だと、手で触るとけっこう、熱いと感じるくらいの温度にはなります。

 

 

 こちらは、前にも別記事で紹介した実験。「水で火をつける」実験です。

 

 

 普通に、フラスコ内の水が沸騰している状態では、出てくる湯気にマッチ棒の頭を当てても、火はつきません。

 

 

 フラスコから伸ばした銅管の巻いた部分をバーナーで熱すると、水蒸気の温度が100℃以上になり、マッチ棒の頭に火をつけられます。

 

 こちらが実験の写真。

 

 

 見事、着火しました。

 

 波瀾万丈の人生を歩んだベンジャミン・トンプソン(ランフォード伯)の紹介もありました。

 

 大砲の砲身をくりぬく工場の製造過程で、加工中の方針が熱くなるのをしり、それまで主流だった「熱素説」を捨てて、「仕事が熱に変わる」という現代的な発想を思いついた人です。

 

 久守さんはこの後、熱の正体が原子分子の熱運動にあるという話をちょっとして、飯田さんにバトンタッチ。

 

 その実験装置がこちら。

 

 

 飯田さん、登場。熱の分子運動論モデルを実際に作った装置です。

 

 1枚目の写真では、台車の衝突部分はプラスチックのバネがセットしてあり、壁と弾性衝突、つまり、もっていた運動エネルギーが熱に変わらない衝突をします。

 

 台車にセットした多数のおもりは揺れることなく、台車はそのまま後方へ跳ね返ります。

 

 しかし、衝突部分から「バネ」に相当する部品を取り去って壁にぶつけると・・・

 

 

 写真ではよくわかりませんが、この場合、おもりはかなり揺れ、台車はほとんど跳ね返りません。

 

 つまり、最初持っていた運動エネルギーが、おもりの思い思いの方向へ動くでたらめな運動のエネルギー(これこそ、熱のエネルギーですね)になったのです。

 

 モデル実験としては、非常に優れていますが、初めてこの装置を見る人には、難しい話だったんじゃないかなと思います。

 

 参加者で、この話がよくわからなかった人は、リンク先にあるぼくのマンガ「でたらめの国のミオくん」をご覧ください。こちらのバージョンはまだちょっとわかりにくいので、もし興味をお持ちなら、ぼくの著書『いきいき物理マンガで冒険』に、さらにリメイクした「でたらめの国」が掲載されていますので、そちらをご覧ください。

 

 では、今回はこのへんで。

 

 報告は次回に続きます。

 

 

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