熱力学という言葉を作ったのはアイルランドのウィリアム・トムソン。後のケルヴィン卿であります。
トムソンは気体の内部エネルギーの正しい解釈に辿り着いており、それが分子運動のエネルギーであろうことも予測していました。
小さな頃から天才として知られ、古典物理学の名手として、さまざまな問題に着手しました。海底電信ケーブルの設置にも関わっています。あのマクスウェルの兄貴分といった存在です。ファラデーの電気力線や電場の概念に最初に興味を示したのも彼。マクスウェルはトムソンの勧めでファラデーの研究を知り、歴史的な交流が始まりました。
このプリントで登場する熱機関は、カルノーサイクルとも呼ばれますが、創案者のカルノーは、熱が滝の水のように高いところ(温度の高い熱源)から低いところ(温度の低い熱源)へと「落下する」さいに水車を回し(つまり、熱機関を動かして仕事をさせる)という発想をしていました。
現在のように、熱がエネルギーの仲間で、仕事をした分だけ熱が減る、という考えではなく、カルノーの熱機関では、熱の量は不変です。熱量の保存則はかなり強い法則だと、当時の科学者たちは考えていたのですね。現在の目で見ればあきらかに間違っているカルノーの熱機関理論を、当時芽生えつつあった保存される「力」(のち、トムソンがエネルギーと命名)の概念と照らし合わせて修正していったのが、カルノーに続く研究者たち。トムソンもその1人です。でも、カルノーの研究はそれまでにない発想で、熱力学が発達する第一歩となりました。
現在、高校の物理で簡単に習う熱機関の理論は、おおむねカルノーの熱の落下モデルを修正したものになっています。
今回のプリントは、1〜5が新しい内容、6以降が物理基礎の復習になっています。
モル比熱は言葉通り、気体1モルの温度を1K(度)上げるのに必要な熱量です。
物理基礎で習う比熱は正確にはグラム比熱といって、1グラムの温度を1K上げるのに必要な熱であり、物質によって細かく異なります。身の回りのものでは、水の比熱がもっとも大きいと、習ったことがありますよね?
でも、不思議なことに、モル比熱で表すと、物質の個性の違いが消えてしまいます。
具体的にいえば、例えば、酸素と水素の区別がつかなくなります。
これを不便と考えるか便利と考えるかは、人次第。
おおむね、化学者は不便だととらえ、物理学者は便利だととらえます。
分子の粒の数をそろえて比熱を比べっこすると、どれもこれも似たような値になる・・・これは、すばらしい法則です。
厳密に言えば、単原子分子気体、2原子分子気体、多原子分子気体で、モル比熱の値は異なります。
さらにいえば、物質の種類によるモル比熱の差はなくなるのですが、同じ気体でも、熱の加え方や気体のふくらみ方によって、モル比熱の値は激変します。
それは、気体が熱をもらって膨張するときに、仕事の形でエネルギーを失うからです。
もっとも代表的な例として、高校では「定圧モル比熱」と「定積モル比熱」を習います。
でも、これはそんなに難しいことではありません。定積変化のときは気体の体積が変わらず、気体が仕事をすることもされることもないので、固体同様、熱の出入りだけで温度変化が決まります。定圧変化のときは、気体が膨張・収縮する際に出入りする仕事の分だけ、同じ温度変化するにも余分な熱が必要になります。だから、比熱が定積変化のときより大きくなるんですね。
定圧モル比熱と定積モル比熱の差は、まさしくこの出入りする仕事pΔV=nRΔTをnΔT(1モルあたり、1Kあたり)で割った値の分だけになります。だからその差はちょうどRになるんですね。
詳しくはプリントの書き込みを見て下さい。
定圧モル比熱と定積モル比熱の差は、気体が単原子分子か2原子分子かによって違いが生じません。当たり前といえば当たり前ですが、気体が一定の気圧でする仕事は圧力×体積変化なので、気体の種類によらないんですね。
5で、内部エネルギーをなぜだか定積モル比熱Cvを使って表していますが、もちろん、これはどんな状態変化についても成立します。
高校生はよく混乱しますが、Cvは熱の出入りを計算するときは定積変化のときに限って使う記号なのですが、内部エネルギーは温度変化だけで決まる量なので、状態変化の種類に応じて変化しません。
たまたま、内部エネルギーの式を詳しく調べてみたら、Cvを使って表すと都合がいい、という単純な理由で、Cvを使っているだけです。ですから、内部エネルギーの式は状態変化が何であろうと、Cvを用いた式U=nCvTを使うことができます。
もちろん、脈絡のない偶然の一致ではなく、定積変化の時の熱の出入りと内部エネルギーの変化が一致するからなのですが・・・
さて、7以降は物理基礎で一度学んだ内容です。以前習った内容とかぶりますが、一通り授業で解説し直しています。物理基礎のこの内容がわかっていないと、新しく物理(熱力学)を学んでもさっぱりわからなくなるからです。
7以降は復習になりますので、ここでの詳しいコメントは差し控えさせていただきます。
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