熱力学4回目は気体の状態変化をPV図で見る方法。
これ、物理基礎の発展でやった内容のまるまる復習です。微妙に新しいのは、ボイルシャルルの法則の代わりに状態方程式が使えること、内部エネルギーUが絶対温度Tに比例するという定性的な比例式が、U=3/2nRTと、きちんとした式に変わることくらいです。あと、定積モル比熱、定圧モル比熱を用いてPV図の計算をするのですが、このPV図復習の段階では扱っていません。
PV図の扱いは高校生が混乱するところなので、モル比熱まで登場すると混乱が増す一方だからです。
モル比熱は、この復習が終わったところで扱う順にしてあります。
(このへんの教育的な構成は、教科書ではほとんど意識されていません。教科書通りに授業を進めると、「?」の生徒を量産することになります)
冒頭のイラストはアイルランドのロバート・ボイルです。ボイルシャルルの法則のもう1人はフランスのシャルル。温度T一定のもとでpVが一定になるのを見つけたのがボイルで、圧力p一定のもとでV/Tが一定になるのを見つけたのがシャルル。これを合わせて、pV/T=一定としたのがボイルシャルルの法則ですね。さらに、気体の出入りも考え、一定値の中身がモル数n×定数(気体定数R)であることを式にしたのが、状態方程式pV=nRTです。
もっと少女マンガ風に美化された肖像画もあるんですが、あまりにあまりなので、無視しました。
絵師がお金をもらったパトロンに気を遣って描くので、そうなるんでしょうが、ボイルのその肖像画は、あまりに美化されすぎていて、笑ってしまいます。(機会があれば、それをもとにしたイラストを紹介しますが、あまりにすごいので、線画の段階でやめてしまいました。いくらなんでもこれはないだろう、と・・・気が向いたら、描きます。)
このイラストの元になった肖像画は、比較的それっぽいものです。
では、PV図についての授業プリントです。
物理基礎の発展でもまったく同じ事をやっているんですが、とにかくPV図の扱いは、教科書通りに学ぶとわかりにくい。それは、高校生のせいではなく、教科書を書く側の問題です。体系的にPV図を理解する方法を提示していないんですね。
このプリントでは、PV図を理解するための3つの法則を最初に紹介しています。
この3つを組み合わせれば、PV図の定性的な問題は、すべて解けるからです。
(1)ボイルシャルルの法則(もしくは状態方程式)
どちらでも構いません。これらの法則を用いることで、グラフから圧力pと体積Vの変化を見て、残る物理量である絶対温度Tが上昇したか下降したかを判断できます。
しかし、グラフさえ与えられていたら、これらの式を用いて、計算する必要はまったくありません。
グラフに等温線を描くことで、気体の状態変化で温度が上昇したか下降したかがわかるからです。
物理基礎では詳しく説明していますが、ここでは復習なので、簡単にまとめてあります。
PV図に等温線(同じ温度の場所をつないだ線)を書き込むとわかりやすい。
等温線はpとVが反比例する双曲線になります。
そして、この双曲線は、温度が高いほど原点から遠ざかります。
ボイルシャルルの法則pV/T=一定を書き直すと、pV=一定×T。Tが一定なら、pV=一定となって、反比例のグラフになりますが、Tの値が大きいときはpとVをかけた量は大きくなり、原点から遠ざかります。
プリントの(1)の横に書いた等温線の図の通り、温度が高いと原点から遠ざかる場所に曲線が写り、温度が低いと原点に近づく場所に曲線が移ります。
そこで、pVグラフ上では、等温線によって温度の上下がわかるようになります。
例えば、(3)のAとBを見れば、Bの方が高い温度の等温線上にあることが、一目瞭然ですね?
だから、(3)のpV図の場合、AからBへ移動した気体の温度が上昇したことは、計算なしにわかるのです。
でも、等温線自体が、ボイルシャルルの法則から描いた曲線ですので、グラフ上で等温線を見て温度の上下を判断することと、実際にボイルシャルルの法則を用いて計算によって温度の上下を判断することとは、数学的に同等なのです。
だったら、計算せずにグラフを見て判断した方が早いですよね?
pV図が得意になるかどうかは、このへんで差がつきます。
(2)気体の内部エネルギーが絶対温度Tに比例する(もしくはU=3/2nRT)。
(1)でグラフから気体の温度変化がわかれば、自動的に内部エネルギーが増加したか減少したかがわかります。逆に、内部エネルギーの増減がわかるケースなら、温度変化の上昇下降もわかりますね。
(3)熱力学第一法則。熱と仕事の出入りで内部エネルギーの増減がわかるので、それを用いることで、おもに熱の出入りを判断することができます。そのためには、温度変化で内部エネルギーの増減を判断できることと、グラフから気体が外へ仕事をしたのか、外から仕事をされたのかを判断できることが必要です。
もちろん、前回のプリントで復習したように、気体が膨張しているときは外へ仕事をし、収縮しているときは外から仕事をされる、というのが、仕事の出入りの基本でしたね。
高校の物理で登場するのは、2.の代表的な4種類の状態変化に尽きます。
もちろん、ばねが絡む問題もあるにはありますが・・・大学入試でも、ほとんどがこの4種類。
逆に言えば、この4種類をきちんと理解しておけば、受験対策はばっちりということでもあります。
復習なので、余り詳しくは書きませんが、このPV図の問題では、いわゆる「常識」と実際に起きる現象では、大きな違いがあります。
一言でいうなら、次の2つの文章に尽きます。
・等温変化では、熱の出入りが必ずある。
・断熱変化では、温度変化が必ずある。
一般の「常識」はこうではありませんね。
・温度が変わらないなら熱の出入りはないはずだ。(間違い)
・熱の出入りがないなら温度は変わらないはずだ。(間違い)
詳しくはプリントを見ていただきますが、気体の温度はじつは熱の出入りではなく、内部エネルギーの値で決まっているからです。気体は熱以外に仕事という形でエネルギーの出入りがありますから、熱と仕事の出入りのバランスにより、内部エネルギーの増減が決まり、温度変化が決まるんですね。
これが物理を学ぶ人の「新しい常識」になれば、PV図の問題で間違う人は激減します。
プリントの書き込みを見て下さい。
3つの法則をどれから使うかは、臨機応変に判断してください。
4つの例題の書き込みを見ていただければ、だいたいわかると思います。
まあ、くどいようですが、このプリントは、物理基礎の復習なので、コメントはこのくらいにしておきます。
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