ドイツのキャロルであり作曲されたのは1818年。200年の時を経て、なおも歌い継がれている名曲中の名曲である。オーストリア南部の山間の教会のオルガニスト、フランツ・グルーバー(1787~1848)が作曲したものであり、1844年に出版されたことにより、全世界に普及したと言われている。キリストの降誕の喜びを表した曲であり、美しくかつ穏やかなメロディが印象的である。讃美歌第109番として、末永く愛唱されるであろう作品だ。
アメリカ・ニューヨークで活動しているムジカ・サクラの演奏は、この上なく美しいものであり、このキャロルの魅力を最大限に表現している録音といえる。
シベリウスの録音で一世を風靡したオスモ・ヴァンスカとラハティ交響楽団による録音もまた面白い。アツォ・アルミラ(1953~)の編曲によるオーケストラのみ演奏ではあるが、この曲が如何に美しい旋律に溢れているかを再認識させてくれる録音といえる。冒頭の弦楽器による主旋律は白眉であり、とにかくこの曲の穏やかな美しさを終始、表情豊かに表現している。
【推奨盤】

リチャード・ウェスタンバーグ/ムジカ・サクラ[1987年録音]
【DG:POCG-1602】
【推奨盤】

オスモ・ヴァンスカ/ラハティ交響楽団[1998年録音]
【BIS:CD-947(輸)】
名匠、セルジュ・チェリビダッケが唯一残したスタジオ録音であり、作曲家・チェリビダッケが残した数少ない作品といえる『秘密の小箱』を紹介する。
ユニセフの募金活動の一環として、1980年にレコードで発売されたものの、その後は全くと言っていいほどに陽の目を見ることがなかった作品であり、彼の音楽活動においての資料的価値の高い録音であり意義は深い。
作品は13の小曲から成っており、順に「子供たち,抽出しに入っておいで!」「風さんがチューリップを歌わせている」「アヒルのお説教」「謎かけ」「年老いたモミの木さん,お空は遠すぎるね」「カブトムシのダンス」「魚は夜歌う」「箒馬で疾走」「ぼくのハリネズミ君,どこにいるの?」「子供のお祈り」「ワーオ!ハリネズミ君が二匹になって帰ってきたよ」「じょうろの中に雨が降る」「これでおしまい」と題されており、子供へのファンタジーといった趣が強い作品だ。
想像以上にフランス的な色彩感覚が特徴的であり、フランス印象派の延長線上にある作風といっても過言ではない作品であり、聴いていて数多くの発見が出来る作品といえる。
【推奨盤】
セルジュ・チェリビダッケ/シュトゥットガルト放送交響楽団[1979年録音]
【DG:471 612-2(輸)】
アメリカのマーチ王、ジョン・フィリップ・スーザ(1854~1932)は行進曲以外にも数多く作品を残している。
『エル・カピタン』はマーチとして今日では有名だが、スーザはこの作品の発表前に同名の喜歌劇を作曲している。その喜歌劇は発表当時は人気を博し、アメリカを始めイギリスでも上演されたという。今日ではまったく演奏される機会がない作品であり、有名なマーチ『エル・カピタン』がどこまで喜歌劇のエッセンスを含んでいるのかは分からないが、さぞかし楽しい旋律に溢れていた舞台だったに違いないだろう。
ピーター・パークス/ウィリアムズ・フェアリー・バンド[1995年2月録音]
【CHANDOS:CHAN 4535(輸)】
『勝利のオラース』と題された管弦楽のための作品、オネゲル曰く「自分の作品の中で最も独創的で、最も成功した作品」という。作品自体は、攻撃的な響きに包まれ、無調へと向かう半音階的書法が駆使されており、8つのエピソードから成る20分弱を要するこの作品は、聴く側にとっては結構な体力を使う大作といえる。「ローマ建国史」に着想を得ており、一筋縄には行かない哲学的な要素を多く含んでいるこの作品を、オネゲル入門としては紹介はできないが、オネゲルの音楽的本質を感じるには最も優れている作品といえる。
【推奨盤】

ミシェル・プラッソン/トゥールーズ市立管弦楽団[1991年6月&9月録音]
【DG:POCG-1675】
最近では、パチンコ屋でもめっきり聞くことがなくなった軍艦マーチだが、この曲を聴くと必ずと言っていいほど誰もがパチンコ屋を思い出すのが不思議だ。植えつけられたイメージが与える影響のすごさを実感する。
瀬戸口藤吉は、海軍軍楽隊長の肩書きで数多くの行進曲を作曲したが、この行進曲『軍艦』が抜きん出て演奏される機会が多い。冒頭部ばかりの印象が強いが、中間部も聞き込むとなかなか面白く感じてくる。
武満曰く「詩のこころを生かすことに専一して、専門的なこだわりなど捨てて作曲しました。」との事。
まさに、武満が感じたままの響きを感じられる家族の風景である。武満徹を知るにはノヴェンバー・ステップスと並んで最適の音楽といえる。これこそ、「タケミツ・サウンドだ!」と声高に主張したい自分である。
【推奨盤】

小澤征爾/御喜美江(Acco)/遠野凪子(朗読)/サイトウ・キネン・オーケストラ[1995年9月録音]
【PHILIPS:PHCP-1493】
関西の吹奏楽の重鎮、木村吉宏率いるフィルハーモニック・ウインズ大阪の演奏は実に快活な演奏といえる。トリオ部で聞かせる美しさは、ライブ録音による手拍子により違和感を感じるが流麗で美しく仕上げられており、2度にわたる転調も色鮮やかに描き分けている名演といえる。
【推奨盤】

木村吉宏/フィルハーモニック・ウインズ大阪[2011年4月録音]【四つ葉印:YGMO-1011】
あまり演奏される機会は少ないが、曲の魅力を最大限に引き出したラトルとベルリン・フィルの演奏は一聴の価値はあるだろう。
【推奨盤】

サイモン・ラトル/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団[2005年6月録音]
【EMI:TOCE-55835-36】
彼の音楽がどのように育まれてきたかは謎に包めれているが、ここで聞くことのできる彼の作品はハイドンやモーツァルトの作品にも負けないくらいの味わいがある。本人もヴァイオリンを弾いていたこともあり、この協奏曲も美しさに包まれ、ヴァイオリンが可憐に花を咲かせている。西崎が奏でるヴァイオリンは、過度な脚色をせずに作品の持つ真の姿を表出しており、実に美しい。
【推奨盤】
ヘルムート・ミュラー=ブリュール/西崎崇子(Vn)/ケルン室内管弦楽団[2000年5月~6月録音]
【Naxos:8.555040(輸)】