京都再訪までに - - -
どうしても
黒髪に戻したかった - - -
恋の痛手を
経験したことが大きいと思う
そのひとと別れた時
腰まで伸ばした
長い髪を切るという
選択肢は - - -
そんな勇気は - - -
私にはなかった
そしてその勇気の無さは - - -
女としての覚悟の無さにも繋がって
彼との
恋愛の姿勢にも反映された
この歳になって
夫以外の男性を
それも - - - 私よりもかなり若いひとを
好きになるなんて
思いもしなかった
彼は独身男性だったが
私は - - - 違った
彼とは
去年の初秋に
京都の宿で出逢った
二人とも一人旅だった
映画好き
日本の古典文学好きの彼とは
旧知の間柄のように
気が合って
宿の朝食を一緒に食べながら
時間が経つのも忘れ
映画の話に熱中した
三日目の朝
彼が帰国する日
最後に哲学の道を二人で歩いた時
彼は言った - - -
「もっと早く君に会いたかった
君は僕の理想の女性だ
君が結婚していなかったら
ここで君にプロポーズをしていたはずだ
君のことは決して忘れない
ありがとう - - - 」
夫がいる私の立場を尊重して
私には指一本
触れなかった
彼が - - -
最後に自分の気持ちを
正直に話してくれた
外国人らしくストレートに - - -
彼のその気持ちが
とても嬉しかった ✨
もう - - - 逢うことはないと思っていた
彼・リチャードだったが - - -
運命の糸は二人を結びつけた
夫は - - - 私の変化に気づいていた
リチャードのことを
愛しているのと言った時の
夫・エドワードの
あの哀しい眼が
今でも忘れられない - - -
今思い返すと - - -
リチャードとの恋は
幸せでもあり
また辛く苦しくもあった
夫への
罪の意識だけではなく - - -
あの時
彼が言った
「もっと早く君に会いたかった」
その言葉を - - -
私自身も否応なしに
感じるようになっていく
夫への深い愛は
変わらずに - - -
強い恋の魔力と
青春時代に戻ったような
湧き上がる感情に押されて
理性を失ったように 飛び込んだ
若く知的な男との
運命的な出逢いと恋
彼の愛を強く激しく感じながらも
情熱的で直向きな
その愛に - - -
応えられなくなりそうで
不安で堪らなかった
若い頃に何度も経験した
恋愛という
激しい感情の渦に
再び身を置くことができるのか?
夫との静かな
穏やかな愛に慣れていた
この私に - - -
リチャードとの年齢差は
心の年齢差でもあることに
気づかされた - - -
恋愛は
体力と気力を消耗する
若い彼には普通にできることでも
もう若くはない私には
それは - - - 勇気のいることだった
若さ故の
本気のトライアングル・ラブ故の
嫉妬と独占欲が
激しい感情の波が
私を混乱させ
そして彼自身をも苦しめていった
もうこんな関係は嫌だ
夫とは別れて
俺だけの女になってほしい
何度も - - - そう言われた
その度に
曖昧な答えしか返せない
私は - - - いつの間にか
優柔不断な
狡い女になっていた
別れの言葉はなかった
本音を言わない
お互いの不満さえも言わない
そんな後味の悪い
苦い別れになった - - -
狡い女だって
悪い女だって
言ってほしかったのに
最低の女だって
怒鳴ってほしかったのに
その方がスッキリするのに - - -
最後の最後まで
傷つきやすい私のことを
気にかけて
本気の本気で愛してくれた
優しく誠実な恋人だった - - -
二人の男を傷つけて
また私自身も傷ついた
この恋の結末 ✨
彼のことを真剣に愛しながらも
自分の身も守っていた
身勝手な恋の結末✨
そんな奔放な私を - - -
夫は無言で迎えてくれた - - -
結婚するなら
エドワードのような
男と結婚しろ
亡くなった父の - - -
今となっては
意味深長な言葉を
思い出しながら - - -
父の墓参りを済ませた
恋多き女だった
私の伯母
私と伯母は
とても良く似ていると思う
感性と精神構造が - - -
まだ生きていてくれたらなぁ - - -
伯母になら - - -
夫以外の男を愛した
私の恋の話を
その哀しい恋の結末を
話せただろうに - - -
岩影で
ひっそりと咲く
伯母が愛した
沈丁花の花に - - -
そっと - - - 語りかけた - - -
映美
今回の帰国は
伯母との対話も
目的のひとつなんですよね
伯母の愛した花
沈丁花と - - -
対面できて良かった - - - ✨