東京都福祉保健局は11月13日、「第14回東京の福祉保健を考えるセミナー」を開催した。株式会社タムラプランニング&オペレーティングの田村明孝氏が「高齢者専用賃貸住宅の選び方、注意事項」について講演した。田村氏は「高専賃にもいろいろなタイプがある。例えば厚労省所管の適合高専賃(※)は、要介護5の人も入居でき、有料老人ホームと同様の介護サービスが提供され、「特定施設」の指定が受けられるが届出の義務はない。現在、適合高専賃の指定を受けているのは3%にすぎない」と述べ、「高専賃の実情は玉石混交。選ぶ時は慎重に」と参加者に呼びかけた。


【高齢者専用賃貸住宅(高専貸)とは?】
赤字はマイナス要素、青字はプラス要素。

●高専賃は、ただ単に指定機関に登録した住宅で、国土交通省が推奨しているものではない。
●建築設備や専有面積の基準はなく、食事・介護サービスの附置は問わない。
倒産や事業譲渡などによって退去を迫られても、住み続ける権利は賃借権によって保障されている。
介護状態になったからといって、賃貸契約の解約をしないで介護居室などに部屋を移されることはない。
入居費用が安く月額家賃方式が多い。入退去が利用権と比ペ簡単にできる。
連帯保証人がいなくても家賃債務保証制度を利用できる。(2年間で月額家賃の35%の費用負担)
●適合要件を満たせば有料老人ホームの届け出は不要。
(※床面積が25㎡(一部18㎡)以上、洗面・キッチン・トイレ・風呂など設備、前払い家賃の保全措置、介護・食事・家事・または健康管理サービスを実施)
適合を都道府県に届出すればり介護保険の特定施設の対象となる。
認知症や重度の要介護状態になった時、居住権はあっても、介護サービスなどの継続の保証はない。
●要介護状態になった時、特定施設とそれ以外の高齢者住居(高専賃や住宅型有料老人ホーム)では、要介護度3を境に自己負担で10~30万円余計にかかる。(高専賃の97%が特定施設ではない。)
●有料老人ホームには立ち入り検査改善命令など、都道府県知事の権限があるが、介護サービスの提供をしていながら高専賃にはこのような権限がなく行政の関与が薄い。(総務省勧告)


【失敗しない高専賃の選び方】
●気持ちの整理
どうして入居したいか?どのような生活が送りたいか?終の住まいとするのか?認知症や重度の介護になってもここで住み続けるか?など明確にしておく。家族との意思の疎通も不可欠。
●基礎的な知識を得る
介護保険制度や高齢者住宅・施設の種類、どんなサービスが受げられるかなど基礎的な知識を蓄えておく。種類は違っても高専賃も有料老人ホームも大きな差はない。
●情報収集
資料、パンフレットを取り寄せる。都道府県の福祉窓口、民間の紹介会社、テレビ新聞雑誌チラシなどの広告などからも得ることができる。
●比較検討
収集した貧料を基に、候補となる高専賃・有料老人ホーム、高齢者施設を絞り込む。費用・契約形態・医療介護サービス、食事サービス、建物設備など様々な観点で比較検討していく。
●現地見学・体験入居
実際に現地に足を運んでみる。住宅施設内などパンフレットではわからない面をチェック、疑問点なども職員に質問する。できれば複数を見ておきたい。ソフトサービスの確認に体験入居は欠かせない。
●再度比較検討
現地見学や体験入居で分かったことを合め再度検討しよう。2~3ケ所に絞込み再び見学や体験入居を。
●契約を結ぶ
充分納得した上で契約を結ぶ。重要事項説明書などに沿ってもう一度説明を受けておく。賃貸借契約とサービス提供契約が別になっているか、前払い家賃の保全はされているか?疑問点が解決できなければ再度検討することが大事。部屋がなくなるのでとりあえず手付をと言われても払わないこと。
●クーリングオフ制度
有料老人ホームにはクーリングオフが制度化されているが、高専賃にはその規定はない。充分に検計して契約したとしても、やむを得ず契約解除をすることもありえるので、クーリングオフが使えるかどうかの確認を。
●入居・心構え
居室の広さに制約があり、全てを持ち込むことが不可能なので荷物は入居前に処分・整理しておく。入居後は要望や意見を積極的に伝えていくなど、自身で良い環境をつくって行くという姿勢を持つ。