厚生労働省は来年春の診療報酬改定で、身体疾患の治療のために急性期病院などに入院した認知症患者のケアの質を高めるため、専門医や認定看護師といった多職種で構成するチームでの対応を新たに評価する方針だ。現状は、そうした患者の受け入れ体制が十分でなく、入院中に家族が付き添いを求められることが少なくない。また、認知症患者は入院が長引く傾向があることから、早期の退院を促す狙いもある。

 同省が25日の中央社会保険医療協議会(中医協)の総会に示した見直し案によると、身体疾患を治療するために入院した認知症患者への対応力を強化するため、医療専門職で構成されたチームが回診することや、院内研修を開催することを新たに評価する。その評価では、認知症の症状の悪化防止や身体拘束の廃止、入院後早い段階での退院支援といった取り組みも促す。

 2012年に462万人いた認知症の高齢者は、25年には700万人程度まで増加すると予想されている。このため厚労省は来年春の診療報酬改定に向け、身体疾患を持つ認知症患者の受け入れ体制を入院・外来で整備する施策を検討している。

 肺炎や骨折といった身体疾患の治療のため、急性期病院に入院する認知症患者は今も少なくない。しかし、国立長寿医療研究センターの研究事業による実態調査では、身体疾患で入院した認知症患者の家族(179人)の半数超が、入院中の治療に問題があったと回答。問題(複数回答)の多くは家族が付き添いを求められたこと(55.4%)で、そのほかに患者の身体拘束(46.7%)や、入院中に身体機能が低下して介護が大変になったこと(35.9%)などが多かった。

 また、中医協の分科会の調査では、7対1入院基本料を届け出る急性期病院に入院した認知症患者の入院日数の平均(23.8日)は、そうでない患者(17.1日)より長く、退院後に在宅復帰した割合も、認知症患者(57.8%)とそうでない患者(83.8%)とでは差があった。

 そうした患者のケアの質を高める取り組みとして医療現場からは、医療専門職のチームで対応した結果、手術後のせん妄を最小限に防ぐ効果や、在院日数を短縮する効果があったとの報告がある。チームのメンバーは、認知症専門医や認知症看護認定看護師、薬剤師、作業療法士、臨床心理士などで、来年春に新設される評価では、そうした職種の参加が要件になる見通しだ。

 中医協で、診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)がこの案に賛成。支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)も賛成したが、要件として在院日数の短縮や在宅復帰率の向上といった実績を求めるよう注文を付けた。(CBニュース)