文化放送の朝のニュース番組、The NewsMasters Tokyoにこの2年ほど週1回、ニュース解説で出ておりました。この番組は今月いっぱいで終了となりますが、なかなか面白いお仕事でした。早朝の仕事はほかの業務とぶつからないし、早寝早起きの生活リズムキーパーにもなりました。
で、個人的にとくに楽しかったのが「楠木建の瞬間音楽」コーナー。どういうものかと申しますと、僕の好きな音楽の特定の瞬間(例えば、Deep Purple "Strange Kind Of Woman"の第1コーラス終了時に入るIan Paiceのドラムフィル)を手前勝手な解説とともに繰り返し聞く、という代物。今週もやります。当然ですけど。火曜日3月19日8時台、美味しいやつを仕込んでおります。当たり前ですけど。
この「瞬間音楽」と並ぶ僕の音楽演奏/鑑賞趣味の特徴として、「垂直音楽」というのがございます。どういうことかというと、
自分のスキな音楽を聴く
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聴くだけでなく踊ってみる
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踊るだけでなく歌ってみる
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歌うだけでなくBluedogs(という僕が所属のバンド)で演奏してみる
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演奏するだけでなくライブで実演してみる
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実演するだけでなくスタジオでレコーディングしてみる
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レコーディングするだけでなく出来上がったCDを自宅のオーディオ機器システムで聴いてみる
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聴くだけでなく踊ってみる……(以下、無限ループ)
という楽しみ方。垂直的に延々とつながっていくから垂直音楽。
で、この度は2019年現在の僕の垂直音楽システムについて、ご紹介したく存じます。起点は演奏。そこから順次システムの川下へと流れてまいりましょう。
まずは入力。それは指。僕の場合、楽器がエレクトリックベースですので、手の指で弦を弾くところから始まります。
これがそれ。弦を弾く方の右手。通常は人差し指と中指の2本弾きですが、曲によっては親指でいかりや長介奏法を用います。
で、左手で弦を押さえる。僕の場合、身長(182㎝)のわりに手がヒジョーに小さいので苦労します。1フレットに指を1本ずつではなく、できるだけ小指と薬指でひとつのフレットを押さえて力が入るようにしています。ジャズの人はこういう押さえ方が多いと思うのですが、ロックでは珍しいかも。ジャコ・パストリアスが教則ビデオでそうしろ!といっていたので昔からこういう押さえ方が身につきました。
で、次は弦。弦は永遠の定番、ダダリオのニッケル弦。0.45-0.65-0.80-1.00のレギュラーライトゲージを使っています。
これがそれ。太い音が出したいので、本来は0.50から始まるミディアムゲージを使いたいのですが、長く弾いていると疲れるので50歳を超えてからこちらになりました。あまり弦交換はしません。
で、弦の振動をとらえるベース本体。若いころはいろいろととっかえひっかえしていたのですが、この10年以上はFredom Custom Guitar Reaserchという東京の工房のPrecision Bassを使い続けております。
これがそれ。右側。ピックアップはVoodooのPB Hotというオーバーワインドしたモデルを使っています。太くてパンチある音がたまりません。これホント。左のは同じFreedomのJazz Bass。こちらはフレットレス仕様。レコーディングではしばしば使いますが、ライブはプレべ一本です。
で、次はケーブル。Nude Cableという日本のメーカーのベース用ケーブルを愛用しています。
これがそれ。ストレートな音。ライブでの信頼性もばっちり。
で、ここがポイントなのですが、エフェクターは無使用。音は無添加を旨としておりまして、ベースアンプに直結します。アンプはとにかくAmpeg。太くコシのあるサウンド。これ以外は考えられません。リハーサルスタジオやライブハウスにAmpegがあるときはそれを使いますが、ない場合は自宅で使用しているPF-500を持っていきます。
これがそれ。ベストはAmpegのチューブアンプ、SVT-CLなのですが、これはとにかく重くて持ち運びや設置が困難。PF-500は小型軽量のDクラスアンプなのですが、これでも十分にAmpegの音。しばらく前は同じシリーズのPF-350という350ワットのを使っていて、こちらのほうがツマミの数が少なくシンプルな構成がよろしいのですが、Bluedogsのライブは音がデカいのでパワーが足りず、買い換えました。500ワットでツマミがメイン、ゲインの2つしかついていない(トーンコントロールはすべてフラットで固定)のが欲しいものです。
で、自宅ではキャビネットはAmpeg Micro CLという小型アンプのを流用しています。
これがそれ。ルックスはCLのキャビネットっぽいのですが、高さは61㎝しかありません。自宅演奏用のアップはヘッドもMicro CLを使っていましたが、こちらは動作不安定かつ音も今一つなので使うのを止めました。
で、後述するシステムで出す音楽に合わせてベースを弾くというわけですが、家人在宅時や夜に音が出せないときはヘッドフォンをAmpegのヘッドにつなぎ、音楽とベース音をミックスして聴いています。ヘッドフォンはもちろん業務用標準器のSONYのMDR-CD900STスタジオモニター。どこのスタジオに行ってもヘッドフォンはとにかくこれなので、家でもノーチョイスでこれを使い続けています。
これがそれ。素晴らしい工業製品。これでないとそれぞれの楽器の音が聴き分けられない。
で、自宅演奏の場合はだいたいオーディエンスがいます。
これがそれ。お蝶さん。必ずといっていいほど座って聴いています。
で、以下はスタジオやライブの場合。Ampegの先は現場のシステムにお任せなのですが、繰り返し申し上げるように、エフェクターはなし。これ基本にして原理原則。
ライブをやっている渋谷TAKE OFF 7でのBluedogsのステージセッティング。ベースはもとより、ギターもきれいさっぱりノーエフェクト(ただし、ワウだけは許容)。
で、好きな曲を好きなように演奏して気持ちよくなるという次第です。
これがそれ。いやー、ロックってイイですね!
で、以下は自分たちでレコーディングした音源(アズウェルアズ、もちろん人様のさまざまな曲)を聴くための自宅の再生システムです。今年に入って思うところあり音楽再生システムを大きく入れ替えました。去年まではMcIntoshのCDとアンプをmusikelectronic geithain ME100という旧東ドイツのスタジオモニターのメーカーのスピーカーにつないでおりました。もともとレコーディングスタジオっぽい音で聞きたいのでスピーカーはスタジオモニター、濃い音が好きなのでアンプはMcIntoshを使っていたのですが、もっとストレートなスタジオの音にしたかったんですね、これが。
で、ケーブルを含めて全部売り払って、Genelecのパワーアンプが入った業務用スタジオモニターの定番、8350Aを導入いたしました。
これがそれ。さすがに多くのスタジオで使われている(文化放送のNewsMastersのスタジオもGenelecを使用。当然ですけど)だけあって、これぞスタジオのポストプロダクションという音が愉しめます。パワーも低温もバッチリ。これはホントにイイ。音楽を聴く時間が増えました。
スタジオモニターは自宅で聴くと疲れるという意見をよく耳にしますが、そんなことはまったくございません。大きな音で熟聴しても、小さな音でBGMとして流していても、むしろGenelecは自然な鳴り方で耳に心地よろしゅうございます。
アンプが必要なくなったので、GenelecをMYTEK Digital社のBrooklyn DAC+というD/Aコンバータに直結、音源はPCからUSBケーブルでとっています。
これがそれ。MYTEK Digitalにしても元来はスタジオ業務用のメーカー。装飾のないストレートかつ元気な音が出ます。このDACと8350Aでもう十分。オーディオ趣味はもうやめた。前はケーブルもそれなりに凝ったものを選んでいましたが、思えばずいぶん無駄遣いをしたものです。これを機会にすべてBeldenの質実剛健な業務用のそっけないやつに替えました。
で、PCの音楽再生ソフトはMusicBee。iTunesはとても使いにくく、アップルユーザ以外にとっては意図的に不親切な仕様になっていると思います。 MusicBeeは多様なフォーマットに対しておおらかで、音楽好きの気持ちをよくわかった設計。フォーマットはFLACにしています。
かくして、自分がスキな曲を自分で演奏し、レコーディングし、再生し、その曲がますますスキになり、また演奏したくなるという垂直音楽の無限ループが今日も作動しているのでありました。
音楽をスマートフォンからイヤホンで聴くだけという向きも多い昨近ではありますが、これは実にもったいない。音楽を好きな方におかれましては、PC→DAC(これは何でもいい)→Genelecのパワードモニターという聴き方を推奨いたします。これまでに聴いていた音が何だったのかと思うほど、豊かな音楽体験が得られることでしょう。当然ですけど。瞬間音楽にも最適です。当たり前ですけど。
ということで、電通の安田部長、いかがでしょうか。