ちょっと聞いてください。

女子高生のようなことをいうようですが、僕はパスタ料理が大好きであります。普段は料理はいたしませんが、これだけは自分でスキなものをスキなようにスキなだけつくって食べることを日常の喜びとしております。僕にとっての自分で料理をする最大のメリットは量をスキなだけつくれるということ。

「美味しいものをちょっとづつ……」という大人っぽい方もいらっしゃいますが、僕はまったく逆の嗜好でありまして、美味しいものであればそれだけをおなかいっぱいになるまで食べたいという小学生スタイル。キャンティ(もしくはアッピア)のスパゲティ・バジリコはそれはそれは美味しいものでありますが、僕は2.5人前つくってもらうようにしております。それだけ大量に食べるともちろんメインディッシュはおなかいっぱいで食べられなくなるのですが、それでイイんです。そのほうがよっぽど喜びが大きい。

子供のころ、マクドナルドのフライドポテト(だけ)をおなかいっぱいになるまで食べたいものだ……、と祈念しておりまして、25歳ぐらいのころ大人になったのを機にこれ幸いとLサイズを4個購入して一気に食べたことがありますが、気持ち悪くて吐きそうになりました。それ以来、しっかり学習しまして、いまではLサイズ2個にとどめるようにしています(調子がいいときは3個いくけど)。

話は横にそれますが、まだ実行していない目標として、美味しい桃(だけ)を気持ち悪くなるまでおなかいっぱい食べるというのがあります。毎年実行しようと思いつつ果たせないでいるので、今年はぜひやってみよう。

で、話を戻すと、パスタといってもさまざまな種類がございますが、自分で料理するのは基本のスパゲティ。スパゲッティーニよりもスパゲティ。標準湯で時間表示で13分ぐらいの太目のがイイ。それを10分ぐらいで引き上げて、あくまでも固めに料理します。

で、スパゲティといってもさまざまな料理の種類がございますが、いちばん多くつくるのはいちばん基本のオリーブオイルのやつ。オリーブオイルとにんにくと鷹の爪の基本3点ソースをベースに、気分によってバジル(もしくは大葉)の刻んだのを大量に入れたり、パンチェッタを入れたり、冷蔵庫にあるくず野菜をいれたりします。

で、20代の若かりしころ、イタリアはミラノになるボッコーニ大学という学校のビジネススクールで教えていた時期がありまして、さすがに本場、スパゲティーの美味しさに目覚めました。パスタはどれも美味しいのですが、とくにスパゲティーは(当時の日本の水準でいえば)、日伊のレベル差が大きかったように思います。

で、いろいろと工夫して先述の基本スパゲティをなんとかそのレベルに近づけようと創意工夫していたのですが、先日ついに成功しましたことをここにご報告します。

種明かしをすれば簡単な話でありまして、味の決め手は「コラトゥーラ・ディ・アリーチ」という天然発酵旨味調味料にございました。

これがそれ。


これを知ったのは、いつかブログに書いたマイスタヴェルクという食材店であります。「コラトゥーラ・ディ・アリーチ」を直訳すると「カタクチイワシの濾過液」だそうで、ジャンルとしては魚醤になります。マイスタヴェルクで購入したのはデルフィーノ社製で、南イタリアのアマルフィー海岸を臨むチェターラという街で伝統的な製法で生産されています。カタクチイワシの頭と内臓を手作業で取り除いて熟成させているため、他のコラトゥーラと比べて雑味が少ないということ。これをつかって、まずは基本3点ベースにキャベツを入れたスパゲティを(大量に)つくってみました。


で、一口食べて「これか……!」と腑に落ちました。マジで美味しいんです。本場の味。これまで使っていたアンチョビフィレと比べて、旨味の深さ、塩味のまろやかさ、スパゲティへの均等な絡まり方がまるで違います。

ポイントはコラトゥーラ以外にはお塩を使わないこと。すなわち、普通はスパゲティをゆでるときにお鍋にお塩を一掴み入れるわけですが、それをしないで、スパゲティ100グラム当たり大匙一杯のコラトゥーラ・ディ・アリーチを後工程で入れる。これでばっちり本場の味。気分はアマルフィー。つーか、ポジターノの路地裏の料理店で昼食に食べるスパゲティの味。

先のメディカルピローと並んで、このおかげで生活の質が大きく向上しました。