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Battle Day0-Day246までのあらすじ (登場人物についてはサイドバーを参照してください)

 

 『BattleDay232-Day246あらすじ』Battle Day232-Day262までのあらすじ (登場人物についてはサイドバーを参照してください)  ある日、夜中に電話が鳴る。遼吾を待つコオだったが…リンクameblo.jp

 

BattleDay233~ここまでのあらすじ

結局、妹・莉子からは連絡がなく、父の希望していた老人ホームは、せっかくの空き部屋に入ることができず次の機会を待つことになった。コオはいら立ちを募らせる。莉子ばかり心配する父、同僚のソフィの事故のケア、などはコオを疲弊させる。その中で重症のアレルギー事故をを起こしたコオは、体調とともに心のバランスも大きく崩していた。そして父の誕生日がやってきて、父はケーキを持ってきたコオに、莉子は母と同じ、料理学校に通ったことがあること、それも続かず、アロマテラピーの資格を取ろうとしていたことを話す。コオは、莉子が《自分で働いて、食べていく》ということを考えてないのではないかと恐怖し、父の永住型老人ホーム入居のための資金プランを考え直さねば、と考える。思ったよりも、実家の財政は深刻なのかもしれない、これは8050問題、7040問題とよばれるもなのでは?とコオは思い始めた。

 膨大なストレスにコオは体調だけでなく、メンタルの調子も崩しつつあった。

そんな頃に母の一回忌がやってくる。コオは父から、莉子に法要に出席するかどうか連絡をするように言われるが、日にちの設定が謎であり、莉子に日付の確認をしてくれるように、父に頼む。同時に自分でも調べるが莉子が法要を頼んだ形跡はなく、結局母の命日は過ぎていった。

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 季節は冬になっていった。

 職場に行くのは、朝早くでなくても太陽にあぶられずにすむので楽になったが、寒くなってくると雨の日がしんどかった。コオは自転車用の雨合羽を買った。

 父のところに行くのも、必ずパスを使うようになった。バスを逃すと電車を降りた後、2キロほど歩くことになる。それが嫌だったが、ちゃんと乗れれば、コオのアパートのほぼ目の前で降りることができる。

 時折、遼吾に車を借りた。ずっとこの10年、この車で職場に通った。その車を借りて・・週末に返しに行く。その足で父の施設に行き、いつものようにバスで帰る。

 

 相変わらず、莉子から、父の年金の情報は得られず、施設についても何も言ってこなかった。 父は相変わらず、莉子のことをただ心配し、コオが声を荒げると、必ず自分も言い返してくる。面会の時は次第にコオは気が重い時になってきていた。

 

 「ねぇ、それでどうするの。」

 「どおって?」

 「次の3ヶ月はすぐ来るよ。施設だって、いつ空きの連絡が来てもおかしくない。もう諦めるって言うなら、もう、それでもいいけどどうするの。」

 「そうだな、よく考えたんだけど、お金を莉子ちゃんに残すには、施設じゃなくてこうして居るほうがいいんじゃないか?」

 

 今更…それ?

 これだけ動いて…人を動かしておいて…結局?

 

 「パパがいいならいいけど。それだど3か月でまた、チェックが入って一度家に戻って期間開けなくちゃいけないよ?それか…別の場所に移れるのかは知らないけど。私はあんまりおすすめはできない。病院も行けないしね。」

 

 コオは、怒りとも少し違う、なんとも言えない気持ちが湧き上がるのを止められないでいた。

 そこまで莉子が大事なの?私はなんなの?

 私には声を荒げるのに、何故莉子には遠慮するの?

 何故、莉子をたしなめないの?

 何故莉子を独り立ちさせようとしないの?

 何故、莉子が言っていることはおかしい、と莉子に言わないの?

 

 これでいい、という父。

 父がいいならそれでいいんじゃないの、と言い捨てるコオ。

 

 でも、少しも自分はいいと思っていないことをコオは気づいていた。

 そして、莉子に勝ちたい、と思っている自分にも。 

 

 

 

 こんにちは、Greerです。

 このブログは友人Kの身に実際起こったことをもとにしていますが

 ・ 人物名・地名・などの固有名詞は基本、仮名です

 ・ 起こったことはほぼすべて現実ベースです

 ・ 登場人物の仕事・人間関係は身バレを防ぐための脚色あり

他の皆さんのブログと同じく現実ベースのフィクション小説形態で書かせてもらっています。

方針としてしては

 ・ 情報的な部分はできる限り正確に(老人ホームの料金プランとか)

 ・ コオのサイドから書いているので、小説の形態はとっているが、コオ以外の人物の感情は極力描写しない

・・・です

 

最後の記事より2週間以上開いてしまいました!!

仕事がKも私もすさまじく忙しくなったせいもありますが、更に、夏真っ盛りだったせいもあります。

私とKの暮らすこの地域は、夏がとても短いです。

なので夏はイベント目白押し。短い夏を、太陽をむさぼるように屋外イベントが目白押しになります。

コロナも落ち着いており、コロナ禍・・・という気が全くしないような状態です。嬉しくもあり申し訳なくもあり。

私もお付き合いもあって、空き時間はほとんど外出💦

楽しい反面記事を書く時間が取れませんでした

そして、、真夏はほぼ過ぎ去り、

雨の日が増えてきました。

またこれからぽつぽつとアップしていこうと思います

 

まだまだ日本は暑いと思いますが、皆さまお身体を大切にお過ごしください!!

 こんにちは、Greerです。

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方針としてしては

 ・ 情報的な部分はできる限り正確に(老人ホームの料金プランとか)

 ・ コオのサイドから書いているので、小説の形態はとっているが、コオ以外の人物の感情は極力描写しない

・・・です

 

暑いです。

エアコンがないってつらいです。頭はぼーっとするし。

実はRealTimeがググっと進んだのですが、仕事が忙しくて話を進められずにいます。

でも、このままいけば、BattleDay1500行かずに終わる?と思いました。

どうしようかな、と思ってます。

コオのモデルKが言うには、まだ安心できないし、もうしばらくはプレ・エピローグ的に記録をしてほしいということですが、

そのあとは、K自身の投稿に変更するのもありかな、と。

・・・あ、いやですか。そうですか(笑)

文章を書くのが嫌だそうなので、どっちにしても二人三脚投稿はしばらく続くかもしれません。

よろしくお願いします

 

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Battle Day0-Day246までのあらすじ (登場人物についてはサイドバーを参照してください)

 

 『BattleDay232-Day246あらすじ』Battle Day232-Day262までのあらすじ (登場人物についてはサイドバーを参照してください)  ある日、夜中に電話が鳴る。遼吾を待つコオだったが…リンクameblo.jp

 

BattleDay233~ここまでのあらすじ

結局、妹・莉子からは連絡がなく、父の希望していた老人ホームは、せっかくの空き部屋に入ることができず次の機会を待つことになった。コオはいら立ちを募らせる。莉子ばかり心配する父、同僚のソフィの事故のケア、などはコオを疲弊させる。その中で重症のアレルギー事故をを起こしたコオは、体調とともに心のバランスも大きく崩していた。そして父の誕生日がやってきて、父はケーキを持ってきたコオに、莉子は母と同じ、料理学校に通ったことがあること、それも続かず、アロマテラピーの資格を取ろうとしていたことを話す。コオは、莉子が《自分で働いて、食べていく》ということを考えてないのではないかと恐怖し、父の永住型老人ホーム入居のための資金プランを考え直さねば、と考える。思ったよりも、実家の財政は深刻なのかもしれない、これは8050問題、7040問題とよばれるもなのでは?とコオは思い始めた。

 膨大なストレスにコオは体調だけでなく、メンタルの調子も崩しつつあった。

そんな頃に母の一回忌がやってくる。コオは父から、莉子に法要に出席するかどうか連絡をするように言われるが、日にちの設定が謎であった。コオは母の49日と初盆の事を思い出していた。

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 母の、1回忌として妹莉子が設定した日は、おかしなことに、母の命日より1か月前だった。

 コオが調べたところでは、確かに参列者の事を考えて命日より前の土日にずらすことはあるらしい。しかしもちろんいくら前でも1か月が限度。だから、限度内といえばそうなのかもしれないが、平日とは…

 

 「パパ、莉子、日付間違えてるんじゃないの?お母さんの命日はこの日付より1か月近く後じゃない。」

 「う、うん?そうか。」

 

 父はあまり気にしていないように見えた。

 参列者って言ったって気にしなければいけないのは私くらいだろう。・・・あとは私の子供たち。遼吾は、もう籍が抜けているから参列者にはならない。もっとも籍を抜いたことは莉子は知らない。それも莉子のことが原因だったことももちろん。

 

 「命日より前にやるのは構わないけど、それは行く人の都合で土日にやることが多いからでしょ。なんで平日なのよ。理由があってその日なら都合をつけるけど、パパ、きいておいてくれない?間違いかもしれないから。」

 「ああ、わかった。」

 

 そして、莉子からの連絡が来ることはなかった。

 コオは父にきくこともなかった。また、父が母の1回忌について言及することはその後もなく、その1か月前の日、は過ぎていった。

 コオは、念のためで母の四十九日の法要を頼んだ霊園に電話をかけてみた。母の名前を言うと、すぐにデータを調べてくれて四十九日の法要以降、何も頼まれていないと教えてくれた。更に、母の葬儀を頼んだ葬儀社にも、電話をしてみた。莉子の事だからこういうことは安易に流れる可能性もある、とコオは思ったからだ。(あの子は生活の上で少しでも安く、と考えるたちではないからな)それで、どれだけイライラさせられたかわからない。ともかく、コオだって、一周忌の法要なんて、どこに頼めばいいのか、調べなければわからない。ましてや、調べて・探す能力が極端に低い(とコオは思ってる)莉子の事だ。くそ高いあの葬儀屋に頼んでる可能性もある。

 

 ここもまた、データとして管理しておりコオが「一回忌を考えているのだが、妹がすでに頼んでいると二重になるし、今妹となかなか連絡が取れないので」というと、ちゃんと調べてくれた。

 

 果たして母の1回忌の申し込みがあった記録はここにもなかった。

 少なくとも、莉子が頼みそうな葬儀社と霊園、どちらにも莉子からの申し込みがなかったことだけは確認した。

 

 コオは結局、母の法要に出ることはなく、母の命日は過ぎていった。

 一回忌の法要を莉子が行ったのかどうかもわからなかった。

 

 (お母さん。あなたはこんな風になるって想像したことあったのかな)

 

 莉子はどうでもいい、死んだ母がどう思っているのか、コオは聞いてみたいと思い、

 いや、どうせひどいことを言われて傷つくだけだから、聞かなくていいのだ、と思い直した。

 

 

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Battle Day0-Day246までのあらすじ (登場人物についてはサイドバーを参照してください)

 

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BattleDay233~ここまでのあらすじ

結局、妹・莉子からは連絡がなく、父の希望していた老人ホームは、せっかくの空き部屋に入ることができず次の機会を待つことになった。コオはいら立ちを募らせる。莉子ばかり心配する父、同僚のソフィの事故のケア、などはコオを疲弊させる。その中で重症のアレルギー事故をを起こしたコオは、体調とともに心のバランスも大きく崩していた。そして父の誕生日がやってきて、父はケーキを持ってきたコオに、莉子は母と同じ、料理学校に通ったことがあること、それも続かず、アロマテラピーの資格を取ろうとしていたことを話す。コオは、莉子が《自分で働いて、食べていく》ということを考えてないのではないかと恐怖し、父の永住型老人ホーム入居のための資金プランを考え直さねば、と考える。思ったよりも、実家の財政は深刻なのかもしれない、これは8050問題、7040問題とよばれるもなのでは?とコオは思い始めた。

 膨大なストレスにコオは体調だけでなく、メンタルの調子も崩しつつあった。

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 母の、1回忌が来たのは、そんな頃だった。

 いつものように週末面会に来たコオに、ノートを見せながら父は言った。

 

 「莉子ちゃんがお母さんの1回忌に出席するかどうか連絡してくれって言ってた。日付はこれ。」

 

 そうか、母が亡くなって1年たつのか、とコオは思った。

 たった1年。 父が倒れたのはその3か月後だった。

 この間に、どれだけ自分がたくさん物を失ってしまったのかを想うと、コオは気が遠くなりそうだった。

 

 父は、莉子からきいた日をきちんとメモしていた。それは母の命日とは違っていたのは覚えている。しかも1か月近く違っていた。莉子が何故その日にしたのかはよくわからなかった。土日であれば平日仕事をしているコオに合わせたのかもしれないと思うが、たしか平日だったように思う。今思えば、父の聞き違い、書き間違いの可能性もなかったわけではないが・・・いや、結果はやはり同じだったかもしれない。

 

 コオも夫だった遼吾も、高校を卒業後実家を離れ、ほとんど帰らなかったし、特殊な業界で仕事をしていたから社会常識に疎い。今回も、コオは、インターネットで一回忌について調べてみた。

 

 『一周忌と三回忌は四十九日法要に次いで大切な法要。親族を招いて、規模の大きな法要を営む』

 

 四十九日法要の時は、まだ父が倒れる前だったし、父・莉子・コオと遼吾と子供たちの家族で母のお墓のある霊園にある施設でお経をあげてもらった。その後、食事にもいっただろうか。しかし初盆の時は、少なくともコオは法要にはいかなかった。法要をやったのかも知らない。父も知らなかったし、初盆だ、という話が出た時に、

 

 「莉子ちゃんに、言ったら、自分が全部やるからいいっていうんだ。」

 

と父は言った。またはじまった、とコオはその時思った。全部やるって言って結局やらないじゃない。いつもそうだ。そしてぎりぎり最後になって泣きついてくる。いや、泣きついてくるならまだましだ。お姉ちゃんが協力するのが当然、とキレるのだ。やってられない。だから、コオは言った。

 

「初盆って、白提灯を用意するらしいんだけど、家に送ろうか?莉子にきいといてよ。」

 

それで、連絡がこなかったらもう知らない。莉子は母の位牌の前で、一人でお経を読んでもらうでもなんでもすればいい。

父は、うなずき更に言った。

 

 「お前も忙しいだろうし、日付がずれてもいい。お墓にお参りと掃除だけでもいいから、行きたい。」

 

 昭和の男だったけれど、母の事を大事には思っていたのだと思う。だから結局コオは、盆の週末には、涼しい朝の時間に父を母の墓まで連れていき、掃除をして、そば屋で昼食を食べた。別れたばかりだったが遼吾と子供たちも一緒だった。暑い日だった。陽に父が当たらずに済むように、工夫はしたけれど、父は疲れたようだった。それでもあの日、「ちゃんとお墓に行けて、ほっとした。」といったのを覚えている。でも、そのとき父は、こうも言った。

 

 「お姉ちゃんが、連れて行ってくれる、といったら、莉子ちゃんが『お姉ちゃんは、パパを殺す気!?』っていうんだよ。まったく」

 

 そんなことを伝える父も父だが、コオはあの時も思っていたのだ。

 莉子は父が生きているなら、好きなこともやりたいこともできずベッドにいるだけでいいと思っているかのようだ、と。

 個人の考え方の違いかもしれない。

 コオはベッドに縛り付けられてまで長生きするくらいなら、好きなことをやって早死にする方がいい派だ。それは、入院経験があるかないかの差なのかもしれない、とコオは思った。莉子があれだけ『体が弱いから』といって、両親に(特に母に)甘やかされてたにもかかわらず、入院経験がなく、コオは20代のころから平均で4年に1度は入院していた。

 

 (意地悪な考え方かもしれないけど)

 コオは思った。

 (パパが生きてさえいてくれれば、年金は入ってくるし、そのためには1日でも長生きしてほしい、とでも思ってるんじゃないの?パパ自身の幸せとか、本当に考えてるのかな、莉子は。)

 

 答えは出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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BattleDay233~ここまでのあらすじ

結局、妹・莉子からは連絡がなく、父の希望していた老人ホームは、せっかくの空き部屋に入ることができず次の機会を待つことになった。コオはいら立ちを募らせる。莉子ばかり心配する父、同僚のソフィの事故のケア、などはコオを疲弊させる。その中で重症のアレルギー事故をを起こしたコオは、体調とともに心のバランスも大きく崩していた。そして父の誕生日がやってきて、父はケーキを持ってきたコオに、莉子は母と同じ、料理学校に通ったことがあること、それも続かず、アロマテラピーの資格を取ろうとしていたことを話す。コオは、莉子が《自分で働いて、食べていく》ということを考えてないのではないかと恐怖し、父の永住型老人ホーム入居のための資金プランを考え直さねば、と考える。思ったよりも、実家の財政は深刻なのかもしれない、これは8050問題、7040問題とよばれるもなのでは?とコオは思い始めた。

 膨大なストレスにコオは体調だけでなく、メンタルの調子も崩しつつあった。

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 精神的にバランスを崩しつつあったコオは、父と穏やかに会話をすることが難しくなっていった。

 父に、永住型の高齢者住宅を探すことを頼まれるまでは、ともかく父が穏やかでいられるように、としか考えていなかったのに、そのためにコオが動いても、常にキーパーソンではない、というのが足かせになって何も進まない。

 正確には、莉子が父の年金絡みの管理をすべて握って、しかも情報を全く渡さないところが最大のネックになっていた。

 コオは繰り返した。

 

 「ねぇ、パパの年金の額、わからないと、もう私はこれ以上進められないんだけど。」

「何度も聞いてるんだ。だけど、心配しなくていいっていうばっかりで。」

「ちゃんとさ、莉子が来た時ケースワーカーさん呼んで、ケースワーカーさんのいる前で話しなよ。」

「うーん…」

 

 父が、何故か莉子に遠慮しているように見えることにコオはいらいらしていた。

 

 「パパの年金なんだよね?なんでそんなに莉子に遠慮なんてしてるの?」

 「いや、遠慮なんてしてないよ。ただ、心配はしている。あんまり聞くと莉子ちゃんはキーっ!!ってなるだろ?お前も知ってるだろ?ああなると手が付けられないんだ。」

「だから、ケースワーカーさんの前で話しなよ、っていってるの。あの子、他人の前では結構いい顔するから。」

 

 そう、外面だけはいつもよくて、家族には、特にコオには、全く別の顔を見せていた莉子。ただ、今は莉子は父にもそうであるようだった。莉子は、父とはもともとあまり折り合いがよくなかった。コオのように、莉子の思考回路は理解できない、と切り捨てることをしなかった父が、折に触れて莉子と衝突していたことはコオも知っている。しかし、金銭的にはおそらく父にぶら下がっているにもかかわらず、父が倒れたのを機に、莉子は、父を支配しているような気が、コオはしていていた。

 父に認知の問題はない。歳のせいだろうが確かに耳は遠くなったし、書類関係の事を面倒くさがり、任せたがる。それは一つは白内障の手術後に、視力がガクンと落ちて字を読むのが大変なせいもあるようだが…

 病院で聞いた話も、父から聞いた話も、そして今の北寿老健でも、莉子は、一貫して『父は、本当は理解も判断力も、もう頼りにならない』と主張して譲らないようだ。病院の医者が、『お父さんはしっかりしている』と言ってさえ、莉子は『いいえ、父は他人の前だと頑張ってしまうだけです』と言い続けていた。

 

 父はそれでいいのか?

 正常な人間がそんな扱いをされてなぜ黙っているのか? 

 

 父をなんとか莉子から引き剥がそうと コオは意地にもなっていたのだと思う。自分は面会に毎週来て父と話し、父に頼まれた老人ホームを探し、見学をし、見学につれていき・・・なのに莉子が絡むと、父はとたんに、自分ではなく、莉子の意志が最大優先事項に変わってしまう。

 

 莉子。いつも莉子だ。私じゃない。莉子なのだ。

 

 こんにちは、Greerです。

 このブログは友人Kの身に実際起こったことをもとにしていますが

 ・ 人物名・地名・などの固有名詞は基本、仮名です

 ・ 起こったことはほぼすべて現実ベースです

 ・ 登場人物の仕事・人間関係は身バレを防ぐための脚色あり

他の皆さんのブログと同じく現実ベースのフィクション小説形態で書かせてもらっています。

方針としてしては

 ・ 情報的な部分はできる限り正確に(老人ホームの料金プランとか)

 ・ コオのサイドから書いているので、小説の形態はとっているが、コオ以外の人物の感情は極力描写しない

 

あとちょっとでBattleDay1年分が終わりそうです。

ここ数回は、コオの親との確執は飛ばせない、と思って書きましたが、介護ジャンルとは少し違うのかもしれません。

母親の愛情をひたすら求め、得られなかったコオは

それでも自分はこれでよかったのだ、と思いたいがために

今までの感情に蓋をして父の面倒を看る。

そんな風に見るのは意地が悪いでしょうか。

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結局、妹・莉子からは連絡がなく、父の希望していた老人ホームは、せっかくの空き部屋に入ることができず次の機会を待つことになった。コオはいら立ちを募らせる。莉子ばかり心配する父、同僚のソフィの事故のケア、などはコオを疲弊させる。その中で重症のアレルギー事故をを起こしたコオは、体調とともに心のバランスも大きく崩していた。そして父の誕生日がやってきて、父はケーキを持ってきたコオに、莉子は母と同じ、料理学校に通ったことがあること、それも続かず、アロマテラピーの資格を取ろうとしていたことを話す。コオは、莉子が《自分で働いて、食べていく》ということを考えてないのではないかと恐怖し、父の永住型老人ホーム入居のための資金プランを考え直さねば、と考える。思ったよりも、実家の財政は深刻なのかもしれない、これは8050問題、7040問題とよばれるもなのでは?とコオは思い始めた。

 膨大なストレスにコオは体調だけでなく、メンタルの調子も崩しつつあった。

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 コオは、次男・健弥を妊娠した時のあの母の言葉を忘れない。忘れられない。

 娘がこんなにも傷ついていることを気づかない。だから私は実家が嫌いだ。

 思えば、その後まがりなりにもコオが父や母とぽつぽつを話をするようになったのは、父が急性アルコール中毒を起こし、倒れたのがきっかけだったように思う(Day0-(11) 参照)。 頼りにもならない母と妹・莉子。コオは義務感から話をしたに過ぎなかった。

 話をしたくない相手と無理に話をする。話したくない相手とは、実家の母であり、妹であり、父であった。心の負担は大きくなるばかりで、最終的には夫・遼吾のいうとおり、実家と絶縁することでようやく、コオは心の安定を取り戻したのだ。

 

 そして母が脳梗塞で入院。

 半身まひ。リハビリ中。

 

 「・・・だから、行って励ましに行ってほしいんだ。」

 

 父から電話があった時、コオは、声を震わせた。

 

 「どうして。どうしていつもそうなの?いつも自分たちの都合ばっかり。どうして私にはいつもひどいこと言ってそのままにするの。どうして私の気持ちを無視するの?」

 

 この時の電話は、父が一方的に切ったか、コオの言葉を無視して『そういうことだから、いってあげて!」とだけ言って切ったのか、どちらかだったと思うのだが、よく思い出せない。

 いつも、コオは実家と電話をすると、激しく消耗し、しばらく寝込んだ。

 しかし、遼吾からの言葉はいつもなく、コオは孤独感を深めるだけだった。

 コオは今でも、遼吾が味方らしい言葉を言ったのは、『実家に行かなくていい』といったときだけだと感じている。

 

 

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結局、妹・莉子からは連絡がなく、父の希望していた老人ホームは、せっかくの空き部屋に入ることができず次の機会を待つことになった。コオはいら立ちを募らせる。莉子ばかり心配する父、同僚のソフィの事故のケア、などはコオを疲弊させる。その中で重症のアレルギー事故をを起こしたコオは、体調とともに心のバランスも大きく崩していた。そして父の誕生日がやってきて、父はケーキを持ってきたコオに、莉子は母と同じ、料理学校に通ったことがあること、それも続かず、アロマテラピーの資格を取ろうとしていたことを話す。コオは、莉子が《自分で働いて、食べていく》ということを考えてないのではないかと恐怖し、父の永住型老人ホーム入居のための資金プランを考え直さねば、と考える。思ったよりも、実家の財政は深刻なのかもしれない、これは8050問題、7040問題とよばれるもなのでは?とコオは思い始めた。

 膨大なストレスにコオは体調だけでなく、メンタルの調子も崩しつつあった。

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 何故、あんなにも、母の祝いの言葉を望んでいたのか。

 母がコオへ向けた、コオの物だけの笑顔を見たかったのかもしれない。コオは、母の笑顔をみたかった。ずっとずっと、見たかった。優しい、言葉が欲しかった。ただ、ただそれだけだったのだ、と今は思う。

 コオでなく莉子に向けられる笑顔、電話の向こうのコオの知らない友人と話しているときの笑顔、コオはそれに焦がれていた。自分に一度もむけられたことのないその笑顔に。

 

  「莉子ちゃんが泣いて帰ってきた!!いったいあんたは何を言ったの!?」

 

 コオは、混乱した。

 私じゃないの?何故、莉子なの?でも、でも・・・そうだ、言わなければわからない。なら、言わなければ。直接ちゃんと。

 

 「私は・・・お母さんにおめでとうって言ってほしかったって、莉子に言っただけだよ・・・」

 

 実際そうだったから。私は、お母さんにおめでとうって言ってほしかった、だから、お母さん。

 しかし、母は言ったのだ。

 

 「あんたには遼吾さんの・・・嶋崎のお義母さんがいるんだからいいじゃないの!」

 「私は・・・」

 

 コオは泣き出した。

 

 「私は、嶋崎のお義母さんじゃない、私のお母さんに言ってほしかったの、赤ちゃんできて、おめでとうって言ってほしかったの…!!」

 

 涙は止まらなかった。

 伝えても。

 どんなに伝えようとしても。

 私の気持ちは伝わらない。 母の心は私には向かない。

 コオは、激しく泣いた。子供のように。

 悲しくて、哀しくて、たまらなかった。

 母は、私を心配したのではない。

 母は『おめでとうって言ってほしかった』という私の気持ちより、莉子が泣いて帰ってきたという方が大事なのだ。

 母は、おめでとう、なんて思ってない。私なんてどうでもいいんだ。

 激しくコオは泣いた。

 そして・・・母は何も言わずに泣き続けるコオを置いて帰ったのだった。