今までのあらすじ

ついにケースワーカー立ち合いの元、妹・莉子と、北寿老健で会ったコオ。
父の身分証を手に入れるため耐えた不毛な話し合いでコオは精神的に崩壊仕掛ける。
しかし友人美奈と会い、その言葉に救われ安定を取りもどす。
父の身分証を使い、コオは実家(=父)の銀行の明細を請求したこと、2週間の海外出張に行くことも伝える
 

 実際、この頃、コオの脳は限りなく限界だった。
 (私は莉子のようにはならない。私は、現実と戦う術を知ってるから)
コオを壊していったのは間違いなく妹の莉子で。
でもその莉子に対する怒りと負けないという想いがコオを生かしていたのは
皮肉なものだ。
 
 
 そう。
 2週間の海外出張から帰った時のことをコオは今、全く思い出せない。
 父に何を持って帰ったのか。
 息子たちに何を買って帰ったのか。
 おみやげを買ったはずだが、何も、覚えていない。
  
 覚えているのは、あの国では
 日本よりずっと日が沈むのが遅かったこと。
 ホテルのシャワー室が驚くほど質素だったこと。
 そして、あれほど言葉のことが心配だったのに
 何故か現場ではまるで自分ではない誰かが自動的に話しているかのように
英語を話していたこと。
 
 そして、観光など全くする暇がなかったけれど、
 コオを技術指導ということで招いてくれたH氏が、自転車を貸してくれたこと。
 ホテルまで毎日、その自転車で3キロほどこいで帰るのが、
 唯一の楽しみだったこと。
 
 水面には、夜の街灯がキラキラと映り。
 夜の湖のほとりを自転車をこぎながら、コオは、
 
   このまま、日本に帰らず、失踪してしまえたら、それもいいな
 
   そんな事を考えていた。
 
 
 
 
 
 
 

 

 

K(コオのモデル)に聞いてみた

ーこの海外出張のときは、もう、海外で働くこと考えてたの?

『まさか。全然。次男はまだ高校生だったし。ただ…自分はまだ,できることはある,って思いたかったの。…多分ね。

 あの頃…今もだけど、無価値観と、無力感が大きくて。元々その傾向はあったんだけど、父と妹にそれを強化されちゃった。

出口の見えないなか、暗い沼の中を泳いでるみたいな。だから、私もまだ役にたつ、価値があるって思いたかったのかな。』


ーえ、でもその半年後には、海外転職してたって…

 

『うーん…そうなんだよね…でも、あの頃、40件以上、日本国内の会社に履歴書送ってたんだよ?派遣会社の登録もしたし。国内で就職することしか基本考えてなかった。』

 

ーでも決まらなかった。

 

『うーん、一応内定は3つあって、そのうち1つに決まったっていうか、決めたんだよ?一旦は。でも、色々あって…ダメになった.慌てて、勢いで海外転職決めたっていうのが本当のところ。』

 

ー勢いで決めるか?普通😂まあ、それも含めて聞かせてもらうからさ、これからも。

 

 

今までのあらすじ

ついにケースワーカー立ち合いの元、妹・莉子と、北寿老健で会ったコオ。
父の身分証を手に入れるため耐えた不毛な話し合いでコオは精神的に崩壊仕掛ける。
しかし友人美奈と会い、その言葉に救われ安定を取りもどす。
父の身分証を使い、コオは実家(=父)の銀行の明細を請求したことを、父に報告する。
 

 コオの海外出張。
 今までも、2.3年に1度くらいは行っていた。
 別に英語が流暢なわけでもないコオには、修行の感の強い仕事で、
 いつも憂鬱なのは、
  •  英語を聞き取れるか
  •  質問をちゃんとできるのか
  •  有益な情報を持って帰れるのか
だった。時差もあって、1週間の主張の間に目の下に真っ黒なクマができるのが常だった。
次の日の準備や、当日のnoteを取るのに忙しく、ちゃんと寝る暇がないからだ。
 
 今回は現地での予習はいらないし、有益な情報を取らなければと貪欲になる必要はない、
 技術指導出張。しかも2週間。たった一人で。
(私ちゃんとできるんだろうか…)
 そんな大きな不安を抱えながら、一人コオは準備をしていた。
 
 父には言えなかった。excitingであるより不安なことも。
    それより、
 お父さん、私が海外に行くって言ったら喜んでたな。
 戻ってきたら、たくさん、話しをしてあげたい。
そしたら、もっと喜んだ顔が見られるだろう。そして…元気にもなるだろう
 
 そんな事を考えていた



 

今までのあらすじ

ついにケースワーカー立ち合いの元、妹・莉子と、北寿老健で会ったコオ。
父の身分証を手に入れるため耐えた不毛な話し合いでコオは精神的に崩壊仕掛ける。
しかし友人美奈と会い、その言葉に救われ安定を取りもどす。
父の身分証を使い、コオは実家(=父)の銀行の明細を請求したことを、父に報告する。
 

「それとね、私今月末、出張に行くから。パパ。ヨーロッパだよ。」
「え!?」
 
父の顔が輝いた。
 
「うちの会社の人が転職して…そこで新しい部署を立ち上げたの。でね、技術指導に来てほしいんだって」
 
「コオがか!?そりゃすごい。どこの国?英語は通じるのか?」
 
コオは国名を口にした。大きな国ではない。
 
「うん。職場は通じるみたい。そのうちの会社の人も、英語でやりとりしてるらしいし。
2週間ほどいってくるから、その間は御見舞いにこれないけど。」
 
「そうか、そうか、そりゃすごい。… 不思議にね、だんだん言葉も聞こえてくるようになるから大丈夫だよ。
ましてや、コオは、普段仕事でも英語話してるんだし。」
 
「まぁ、他の部署のひとよりはね。うちは、その・・・ボスと話すときは英語だったから。」
 
父はそうか、そうか、と顔を上気させて、嬉しそうに頷いている。
父は若い頃に出向で、海外で働いていた。母も連れて。
父にとっても母にとっても、忘れがたい数年間。
 
今はコオもわかる。
母は、その頃の海外生活が忘れられず、そして、日本に戻ってきたとき、
うまく適応できなかった。多分軽い鬱だったのだと思う。
 
コオがまだ幼かった頃
国際電話がかかってきたことがあった。
「もしもし....え!?yes... yes!! ...wow, long time no see!」
電話に出た母は、今まで見たこともないような
キラキラとした目で、興奮して、涙をにじませて、笑顔だった。
 
お母さんて、こんなふうに笑うんだ。嬉しいときはこんな顔をするんだ。
こんなお母さん・・・はじめてみた。
 
それはコオにとっては衝撃的だったのを、今も、覚えている。
 
 
 

今までのあらすじ

ついにケースワーカー立ち合いの元、妹・莉子と、北寿老健で会ったコオ。
父の身分証を手に入れるため耐えた不毛な話し合いでコオは精神的に崩壊仕掛ける。
しかし友人美奈と会い、その言葉に救われ安定を取りもどす。
身分証を使い、コオは実家(=父)の財政を明らかにしようとする
 

「パパ。銀行に手続きしてきたよ」
コオはその日のうちに、父のいる北寿老人保健施設に行き、報告をした。
「莉子が年金のこと、教えてくれなかったから、銀行に直接教えてもらうことにした。」
 
「そうか。…こないだ、莉子ちゃんと喧嘩したのか?」
 
父は、あの地獄のミーティングのことを言っているのだ、とコオは思った。
 
「別に。なんか自分で言ったことに自分で興奮してたよ…なんか言ってた?」
 
「うん、あのあとここに来てね…ベソかいてたぞ」
 
「ふーん。」
 
つまらなそうにコオは鼻をならした。
 
図々しい、と思ったのだ。
 
あれだけ人を貶めて、挙句の果てに仕事も押し付けたくせに
なんで父のところに行って泣く必要があるのだ?
 
気に入らないことがあると、泣き顔を作ってから親のところに行って言いつけた、
子供の頃から変わらない。
 
 
 
 

今までのあらすじ

ついにケースワーカー立ち合いの元、妹・莉子と、北寿老健で会ったコオ。
父の身分証を手に入れるため耐えた不毛な話し合いでコオは精神的に崩壊仕掛ける。
しかし友人美奈と会い、その言葉に救われ安定を取りもどす。
 

 
さて。父の身分証を手に入れたことで一番やらねばならなかったことをやってしまおう、
 
とコオは思った。
 
父がいくら年金をもらっているのか、を知ること。
脳出血後の父の記憶は一部がスコンと抜けてしまっている。
コオは父がメインで使ってるはずの銀行に行き、
明細を出してもらうことにした。
 
まだ莉子に動きを知られるわけには行かない。
何故なら、コオは疑っているからだ。莉子はおそらく父のお金を食いつぶしている。
 
まずは父の、財政状況を明らかにする。
これには時間がかかる。
銀行に事情を説明し、明細書の発行を願い出ると
印鑑・通帳の紛失の手続きをしたうえで、父の身分証、そしてコオの身分証明が必要。
 
印鑑・通帳が変わることになるが、莉子に知られることはおそらくない。
彼女はキャッシュカードを使うだけで、性格的に通帳で確認などしないだろう。
 
コオは、母が亡くなる少し前から今日までの2年分の明細を発行してもらうことにした。
父は2つの口座を持っていた。
使い分けはわからないから、両方取り寄せるしかない。
5000円以上かかるが、仕方ない。
発行までに時間はかかるが、7月には間に合うだろう、とコオは思った。
 
郵便局という可能性もあるが、おそらくメインはこの銀行だ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

最後に再開したい、と書いたのは2年くらい前だったでしょうか。

一緒に暮らすKは、当時かなりの鬱状態で、

何も思い出したくない、何も思い出せないと

ぐったりしていました。

私が、Kがすごいな、と思ったのは、そういう中で彼女は新しく仕事を見つけてきたことです。

 

…ちょっとしたコネだったけど。

そしてなんかえ~~っていうかんじでいきなり決めちゃってたけど。

ちょうど契約期間がまだ少し残っていたのですが

新しいことを始めたい、とKは言いました。

 

そして私たちは一緒に別の国に移りました。

 

私の仕事はどこでもできますから。それからもう2年立ちます。

Kは契約がまだ1年ほど残っているけれど次の仕事を考えないと、といいました。

この2年。彼女の鬱状態は決して、劇的によくなったわけではありません

彼女の家族との確執は彼女の父が亡くなったことで、解決ではなく、

これ以上悪くはならなくなっただけ。

た彼女自身が今まであったことを消化しなければならないのは同じこと。

でも、そのためにはこのブログも、ちゃんと最後まで終わらせよう、とKはいいました

『生きていくってことは仕事して稼いでくってことだし、もう少し私も頑張る』

とKは呟きました

 

私は別の仕事をしながら、もうこのKの話しは終わらせられないのかもしれないな、

と思っていました。

私の方は私の方でまた別の仕事がありますし。

でも、Kのために、そして、このKの8050戦争をみて

少しでも前に進む気持ちを持つ人が一人でもいたら意味があるかも

 

そんなふうに思います

 

 

 

 

ご無沙汰しております

相棒のKが、鬱になってどうにもこうにもならなくなってほぼ1年経ちます。
生きて
仕事をこなす
という2点のみに全エネルギーを注ぐしかなく、
ブログの中身を見てもらう余裕もなく…


そしてこの1年、realは大きく変わりました。
鬱状態になったKの足掻く様は
見ていて痛々しい。
そして、Realの変化はある意味
この数年間のゴタゴタの収束でもありました。

Kが復活する(と信じてる)まで今しばらくかかりそうですが
半年以内には再開したいです

今までのあらすじ

ついにケースワーカー立ち合いの元、妹・莉子と、北寿老健で会ったコオ。
父の身分証を手に入れるため耐えた、不毛な話し合いで消耗したコオは友人美奈に会い、録音した莉子との話し合いを聞いて客観的な感想を言ってくれ、と頼んだ。美奈は『おかしいいのは莉子』といい、コオの泣きながら話す言葉を受け止める
 

 
 「でさ…とりあえずこれで手に入れたわけだよね、お父さんの身分証。これからどう動く?」
 
 美奈は口調を変えてそう尋ねてきた。
 
「…そういうとこだよ。」
 
 コオは涙を拭いて破顔した。
 
「何よ」
「次へ向かわせてくれるところ。」
「ばかね。これが私達、I高のカラーじゃないの。」
 
 コオと美奈は二人で笑い出した。
 
 美奈は、私の高校時代からの友達は、こうやって私をいつも救ってくれる。
 いつもいつもベッタリと仲がいい訳じゃない。
 喧嘩だってしてきた。
 モヤモヤとして、距離を取るときだってあった。
 それでも、大事なときコオを救ってくれるのは、いつでも高校時代からの友人たちだ。
 家に帰りたくなかった高校時代のコオを、部員でもないのに受け入れてくれた、美恵子や愛美といった同級生たち。
 介護システムが全くわからなかったコオに、丁寧に教えてくれた京子。
 そして、混乱したコオに、何も問いただすことなく会いに来てくれた美奈。
 
 「あのさ、コオ。」
 
 美奈は、ごくごくワインを飲むと、口調を変えた。
 
 「昔は知らないよ。コオとは高校からの付き合いだからそれより前は知らない。でもさ、少なくとも、その後はあんたはちゃんとやってきたじゃない。順風満帆とはお世辞にも言えない、波乱万丈だったけど。でも、仕事して。結婚して。子供育ててさ。あたし達と友達付き合いずっと続けてさ。あんたは…世間の全人口から言えば、トップ10%くらいのちゃんとうまくやってきた人なのよ?あんまり自分を卑下するもんじゃないよ。」
 「トップ10%は…言い過ぎだと思う…」
 「ま、ま、100歩譲ってもさ、30%には入ると思うけど?あたしら、I高に行って、大学入ったっていうだけで半分より上にいたと思うし。そこまでは・・・あれだよ。親がやってくれた面が大きいけどさ。そっからあと仕事してー、子育てしてーしかもちゃんと子供が高校入るまで育ててさ、それはうちらの力じゃない?しかもあんたには、ちゃんと、友達がたくさんいる。」 
 
 ちゃんとやってきたじゃない。
 うまくやってきた人なのよ。
 あんたには友達がたくさんいる。
 
 それがどれだけコオの心にしみたことか。
 コオの心は、安定を取り戻していた。
 あれだけ、混乱して、そのまま線路に飛び込みかねないほど自分を見失っていた数時間前が嘘のように。