********************* 

Battle Day0-Day246までのあらすじ (登場人物についてはサイドバーを参照してください)

 

 『BattleDay232-Day246あらすじ』Battle Day232-Day262までのあらすじ (登場人物についてはサイドバーを参照してください)  ある日、夜中に電話が鳴る。遼吾を待つコオだったが…リンクameblo.jp

 

BattleDay233~ここまでのあらすじ

結局、妹・莉子からは連絡がなく、父の希望していた老人ホームは、せっかくの空き部屋に入ることができず次の機会を待つことになった。コオはいら立ちを募らせる。莉子ばかり心配する父、同僚のソフィの事故のケア、などはコオを疲弊させる。その中で重症のアレルギー事故をを起こしたコオは、体調とともに心のバランスも大きく崩していた。そして父の誕生日がやってきて、父はケーキを持ってきたコオに、莉子は母と同じ、料理学校に通ったことがあること、それも続かず、アロマテラピーの資格を取ろうとしていたことを話す。コオは、莉子が《自分で働いて、食べていく》ということを考えてないのではないかと恐怖し、父の永住型老人ホーム入居のための資金プランを考え直さねば、と考える。思ったよりも、実家の財政は深刻なのかもしれない、これは8050問題、7040問題とよばれるもなのでは?とコオは思い始めた。

 膨大なストレスにコオは体調だけでなく、メンタルの調子も崩しつつあった。

*********************

 

 精神的にバランスを崩しつつあったコオは、父と穏やかに会話をすることが難しくなっていった。

 父に、永住型の高齢者住宅を探すことを頼まれるまでは、ともかく父が穏やかでいられるように、としか考えていなかったのに、そのためにコオが動いても、常にキーパーソンではない、というのが足かせになって何も進まない。

 正確には、莉子が父の年金絡みの管理をすべて握って、しかも情報を全く渡さないところが最大のネックになっていた。

 コオは繰り返した。

 

 「ねぇ、パパの年金の額、わからないと、もう私はこれ以上進められないんだけど。」

「何度も聞いてるんだ。だけど、心配しなくていいっていうばっかりで。」

「ちゃんとさ、莉子が来た時ケースワーカーさん呼んで、ケースワーカーさんのいる前で話しなよ。」

「うーん…」

 

 父が、何故か莉子に遠慮しているように見えることにコオはいらいらしていた。

 

 「パパの年金なんだよね?なんでそんなに莉子に遠慮なんてしてるの?」

 「いや、遠慮なんてしてないよ。ただ、心配はしている。あんまり聞くと莉子ちゃんはキーっ!!ってなるだろ?お前も知ってるだろ?ああなると手が付けられないんだ。」

「だから、ケースワーカーさんの前で話しなよ、っていってるの。あの子、他人の前では結構いい顔するから。」

 

 そう、外面だけはいつもよくて、家族には、特にコオには、全く別の顔を見せていた莉子。ただ、今は莉子は父にもそうであるようだった。莉子は、父とはもともとあまり折り合いがよくなかった。コオのように、莉子の思考回路は理解できない、と切り捨てることをしなかった父が、折に触れて莉子と衝突していたことはコオも知っている。しかし、金銭的にはおそらく父にぶら下がっているにもかかわらず、父が倒れたのを機に、莉子は、父を支配しているような気が、コオはしていていた。

 父に認知の問題はない。歳のせいだろうが確かに耳は遠くなったし、書類関係の事を面倒くさがり、任せたがる。それは一つは白内障の手術後に、視力がガクンと落ちて字を読むのが大変なせいもあるようだが…

 病院で聞いた話も、父から聞いた話も、そして今の北寿老健でも、莉子は、一貫して『父は、本当は理解も判断力も、もう頼りにならない』と主張して譲らないようだ。病院の医者が、『お父さんはしっかりしている』と言ってさえ、莉子は『いいえ、父は他人の前だと頑張ってしまうだけです』と言い続けていた。

 

 父はそれでいいのか?

 正常な人間がそんな扱いをされてなぜ黙っているのか? 

 

 父をなんとか莉子から引き剥がそうと コオは意地にもなっていたのだと思う。自分は面会に毎週来て父と話し、父に頼まれた老人ホームを探し、見学をし、見学につれていき・・・なのに莉子が絡むと、父はとたんに、自分ではなく、莉子の意志が最大優先事項に変わってしまう。

 

 莉子。いつも莉子だ。私じゃない。莉子なのだ。