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これまでの話
Battle Day0-Day135 のあらすじは、以下のリンクをご覧ください、
登場人物は右サイドに紹介があります、
Day136-あらすじ
父は再び脳出血を起こしており、ICU入院となった。コオは、父と同居していた妹の莉子は当てにならない、と見切りをつけた。
コオは病院のケースワーカーと話をつけ、自分を連絡先の一つに入れてもらった。
父・莉子のことに加え、夫と通じ合えず孤独感に苦しみ、壊れていくむコオ。
離人症らしき症状がでていたが、コオは泣きながら働き続ける。
コオは、父と面会時に、莉子はパイプオルガンで仕事をしていくつもりだ、と聞いていぶかしく思う。また、
金銭的に恐ろしく莉子が甘やかされていたことを改めて知る。
支えのないままに家族と暮らすことに疲れ切ったコオは職場近くに一人引っ越し、
1日がかりの面会で、父の気持ちを聞き出すことにする。そして、初めて莉子は精神的に病んでいないのか、
と父に問うが、父はそれはない、といった。父は、コオに本やテレホンカードの購入を頼む.
コオはその時点で聞いた父の言葉を立石に伝える。
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父の退院になる日が近づいていた。
コオは1日がかりの面会を週末続けていた。季節は夏に移り日に日に暑くなっていった。日本の夏は殺人的に暑くなっているし、空調が完全に管理されている病院や施設の方が父の体調にはいいだろうな、とコオは思っていた。コオは、今になっても、実家でどの季節も過ごしやすかったという記憶がない。ともかく断熱性が低い。日当たりが悪いにもかかわらず、クーラーを切ったら5分後には暑くなるし、冬は冬で、灯油ヒーターをつけっぱなしにしていても底冷えする。コオが8歳で、今の実家に引っ越す前、一家は隣町の恐ろしく古い1軒屋の社宅に住んでいたのだが、不思議なことにコオはそのおんぼろだった古い家のほうが、ある意味過ごしやすかった、と思っている。
莉子は、ほぼ父を老人保健施設に預けることを決定したらしい。
ケアマネージャー立石のすすめもあり、コオは紅病院の父を担当するケースワーカー、日辻に直接会って、父の今後をについて話を聞くとにした。
紅病院のケースワーカー日辻さんは、以前電話で受けた印象の通り、20代から30代前半の若い女性だった。コオが先に電話で話したいといったところ、日辻は快く承知してくれて、この日は名前を言うと相談用の個室に案内してくれた。一通り自己紹介が済んだところで、コオは現状を確認させてほしい、といった。日辻は薄く化粧をしていて、コオは綺麗だな、と思った。
「深谷莉子さん・・・妹さんですね?・・・は、やはり自宅ではなく、とりあえず老人保健施設に、とおっしゃってます。しかも、以前短期入所されたことのある北寿、という施設を希望していらして。どうしてもそこがいいと。」
「そうですか。実際これからまた殺人的に暑くなりますから、私も、実際は空調や温度管理されてる施設の方が、自宅よりいいと思ってます。できれば少なくとも季節が涼しくなるまで。」
日辻は、少しほっとしたような顔に見えた。コオから反対されるとでも思っていたのかもしれない。
「それで、現在待っている状況です。一応他の施設もあたってはいますが。」
「わかりました。それで、今後の私の希望なのですけど、その前に。」
コオは再び、繰り返した。
キーパーソンは、妹(莉子)であることはわかっている、ということ。
プロとして、コオの希望が妥当なものであると判断すれば、それを莉子に提案してほしいが、強制はしない。
それでも、莉子の希望とコオの希望が食い違う場合は莉子の希望を優先してほしい
「・・・父が、穏やかに最後まで過ごせれば、それでいいんです。いずれにしても、老人保健施設がきまりましたら、ケースワーカーの方とは、一度入所前に話をしたいと思ってます。お名前とかが分かった時点で教えていただけますか?」
コオはこれらを箇条書きにしてパソコンで打ち出してあったので、それを見せた。