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これまでの話
Battle Day0-Day135 のあらすじは、以下のリンクをご覧ください、
登場人物は右サイドに紹介があります、
Day136-あらすじ
父は再び脳出血を起こしており、ICU入院となった。コオは、父と同居していた妹の莉子は当てにならない、と見切りをつけた。
コオは病院のケースワーカーと話をつけ、自分を連絡先の一つに入れてもらった。
父・莉子のことに加え、夫と通じ合えず孤独感に苦しみ、壊れていくむコオ。
離人症らしき症状がでていたが、コオは泣きながら働き続ける。
コオは、父と面会時に、莉子はパイプオルガンで仕事をしていくつもりだ、と聞いていぶかしく思う。また、
金銭的に恐ろしく莉子が甘やかされていたことを改めて知る。
支えのないままに家族と暮らすことに疲れ切ったコオは職場近くに一人引っ越し、
1日がかりの面会で、父の気持ちを聞き出すことにする。そして、初めて莉子は精神的に病んでいないのか、
と父に問うが、父はそれはない、といった。コオはその時点で聞いた父の言葉をケアマネジャー立石に伝える。
父の退院が近づき、今後のことについて話をするためコオは紅病院のケースワーカー、日辻と病院で面談。
暑い夏に向かい、莉子が退院後、北寿老人保健施設施設を希望していることを知る。父の移動先が決定して間もなく、
コオは新しい北寿老健のケースワーカーを訪れ、様々な事情を話す。
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父が次の週に移ることが決定した北寿老健(老人保健施設)は、遼吾のマンションの最寄りの電車の駅から歩いて10分くらいの場所にあった。紅病院のある駅からは、電車に乗って30分ほど。
何事も変化を嫌う莉子は、自転車で行ける近場であること以上に一度入ったことのある施設をを選んだのだろう。
2階建ての北寿老健は、コオが想像していたより新しく見えたし、綺麗でもあった。
もちろん、空調はしっかりしている。温度や湿度のコントロールされているこの施設での方が、夏を過ごすのは絶対いいに決まっている。
「全体としては賛成だな…」
コオはつぶやいて、帰り際に壁に貼ってある料金表を眺めた。
介護度数、保険証の負担割合によって、値段が変わるらしい。しかも項目が酷く細かく分かれているので理解しづらい。父の医療保険の負担割合は3割であった。介護度数は2.壁に貼ってあるのは、医療保険の負担2割の場合だったから、これよりは確実に高くなる。
莉子は何を考えているのだろう。と、コオは思った。
何故、私はパパを看る余裕がない、と言わないのだろうか。だから、お姉ちゃんにも助けてほしい、と一言いえばいいだけなのに。父の年金、私と莉子で少しお金を出し合えば、解決できると思うのだが・・・
コオの個人的な経験では、家賃を除けば、6万円あればそれなりに生活していける。実際今のアパートでコオは光熱費と水道代、携帯代を含めたライフライン料金は月割りすると2万円は行かない。一軒家はそれよりは光熱費はかかるだろうが、食費は3万あれば余裕だ。いや、外食さえしなければ2万で行ける。莉子が年金代や、健康保険代をどうしているのか知らないが、月に10万稼ぎ出せば家賃がかからないのだからかなり余裕で暮らせるはずだ。
アルバイトをフルにやっていれば、ほぼ10万の稼ぎははいるはず、と計算した。
「…。」
コオはそこまで考えた頭を振った。
コオより、頭がよかった。
コオをいつもバカにしていた。
(お姉ちゃんと私は覚悟が違うの!!!!)そう叫んだ莉子は、コオに、助けてと援助を頼む、などできないのだ。
プライドが高すぎるのだ。プライドなんて、食えやしないのに。博士号より役に立たないのに。
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これまでの話
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Day136-あらすじ
父は再び脳出血を起こしており、ICU入院となった。コオは、父と同居していた妹の莉子は当てにならない、と見切りをつけた。
コオは病院のケースワーカーと話をつけ、自分を連絡先の一つに入れてもらった。
父・莉子のことに加え、夫と通じ合えず孤独感に苦しみ、壊れていくむコオ。
離人症らしき症状がでていたが、コオは泣きながら働き続ける。
コオは、父と面会時に、莉子はパイプオルガンで仕事をしていくつもりだ、と聞いていぶかしく思う。また、
金銭的に恐ろしく莉子が甘やかされていたことを改めて知る。
支えのないままに家族と暮らすことに疲れ切ったコオは職場近くに一人引っ越し、
1日がかりの面会で、父の気持ちを聞き出すことにする。そして、初めて莉子は精神的に病んでいないのか、
と父に問うが、父はそれはない、といった。コオはその時点で聞いた父の言葉をケアマネジャー立石に伝える。
父の退院が近づき、今後のことについて話をするためコオは紅病院のケースワーカー、日辻と病院で面談。
暑い夏に向かい、莉子が特定の老人保健施設施設を希望しているが、その方が父にはいいのではないかと考えていることを伝える。
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ほどなくして、コオは、紅病院のケースワーカーから父が北寿老人保健施設に決定した、と連絡をうけた。北寿の父の担当ケースワーカーの名前を聞き、コオは迅速に動いた。
北寿の担当ケースワーカー、中田、という女性。事情を伝えたい、ということで会う約束を取り、仕事は半休を取ってとって北寿まで行く。現在の状況をはなす。キーパーソンを優先にしてほしい。けれど、こちらの希望は、父の回復なのでリハビリを重点的になるべく回数を多く行ってほしい。いったい私は何回同じ話を色々なところでしなければいけないのだろう。
老人保健施設、略して老健は、あくまで自宅介護に戻るまでのつなぎとしての施設として機能するので、長期間を念頭に置いていない。そこまでは理解していた。だが、知らなかったのは、リハビリは、たとえこちら希望しても、基本3か月すぎると規定の最小限のリハビリ回数に自動的に変更になる、ということだった。
「そうですか。では、基本3か月で、元気だったら退所、と考えおいた方がいいんですね?」
「ええ、まぁ…」
ケースワーカーの中田は、歯切れが悪かった。悪い人ではないようだったが、コオは、施設のスタッフからかすかに、役立たずの市役所の職員の同じようなにおいを感じた。
同時に、家族のもめごとは管轄外であろうということも理解はしていた。だからこそ、彼らをもめごとそのものに巻き込むつもりはない、あくまでも家族としての希望を伝えるだけ。
ただし、優先順位ははっきりしている、キーパーソンは莉子。
コオが頼みたいのは、キーパーソンではない自分にも、父の状況変化がある時は伝えてほしい、ということ、また、コオが関わっていることそれ自体は、莉子には積極的には知らせないでほしい、ということだけだった。
「聞かれたら、言ってくださって構いません。嘘をつく必要も隠す必要もないです。ただ聞かれない限り、知らせないでほしいです。」
コオは言った。
「わかりました。お父様、今回は大部屋になると思います。まだちょっとわかりませんけどね。前回は個室で・・・」
「個室、だったんですか?」
「ええ、お値段もそれなりになってしまうんですが、その時、個室しかなくて。でも、妹さんが、ともかく、個室でもいいから入所を希望されていたので・・・」
コオは心の中で舌打ちした。
そこまでしても、莉子は父を施設に置きたかったのだ。
(介護の覚悟もないくせに!!介護する気のない人になんて関わってほしくない!!私と覚悟が違うんだよ、お姉ちゃんは!!)
1か月半前の莉子の叫ぶ声がよみがえった。
父が、最初の退院後に家にいたのは実際は2か月にも満たない。父は、自分で歩けるし自分でトイレも行ける。認知症もない。母の時は…ケアマネージャーの立石も、父自身も言っていた。『莉子は介護などしてない。実際に世話をしていたのは父だった。』
その言葉を信じるなら、莉子自身、実際、介護などしてなかったのに。
莉子は、実際の介護が始まる前に、逃げようとしているようにしかコオには思えなかった。
しかし老健には入所期間に限りがあるのだ。
彼女の介護の覚悟とはなんなのだ?
コオにはわからなかった。
わからなかったし、それ以上に無性に腹立たしかった。
今週は、動きがあったのでとりあえずRealTimeを3連あっぷしました。
これを書くにあたって、何名かの統合失調症の方にお話を伺いました。
統合失調症というのは、本当に症状、状態(病識のあるなし)が千差万別です。
しかし、早期にわかれば治療を受け、作業所などで仕事をされている方も、
回復して会社経営されている方もいる。
抵抗はあっても、周囲は、治療を受けさせてあげる方が何より大事だと感じました。
このブログのモデルKの体調がよくありません。
ちょっと心配です。
RealTimeのアップがあるとは、まだコオの戦争が結末を見ていない、しかも動きがあるということです。
そのたびに疲弊し、それでも生き抜こうとしてるコオを応援してください
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父は再び脳出血を起こしており、ICU入院となった。コオは、父と同居していた妹の莉子は当てにならない、と見切りをつけた。
コオは病院のケースワーカーと話をつけ、自分を連絡先の一つに入れてもらった。
父・莉子のことに加え、夫と通じ合えず孤独感に苦しみ、壊れていくむコオ。
離人症らしき症状がでていたが、コオは泣きながら働き続ける。
コオは、父と面会時に、莉子はパイプオルガンで仕事をしていくつもりだ、と聞いていぶかしく思う。また、
金銭的に恐ろしく莉子が甘やかされていたことを改めて知る。
支えのないままに家族と暮らすことに疲れ切ったコオは職場近くに一人引っ越し、
1日がかりの面会で、父の気持ちを聞き出すことにする。そして、初めて莉子は精神的に病んでいないのか、
と父に問うが、父はそれはない、といった。コオはその時点で聞いた父の言葉をケアマネジャー立石に伝える。
父の退院が近づき、今後のことについて話をするためコオは紅病院のケースワーカー、日辻と病院で面談をする。
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「パパ、今、日辻さんと話してきた。 あと少しで退院らしいね。良かったね。」
父は、どっこいしょ、と介護ベッドに座り、うなずいた。
「莉子ちゃんは大丈夫なのかなぁ?」
「・・・どういうこと?なにか言ってた?」
「いや、あんまり来ないし、来てもすぐ帰っちゃうからあまり話してないんだ。だけど、莉子ちゃんはともかくちゃんと食事が作れないから。」
父はあくまでも退院後の食事を心配している。
昭和のサラリーマンにありがちな、家事全般を妻に任せきりにしていた父だ。もっとも、母が倒れたときは、驚くくらいちゃんと作っていたというのは、うっすら聞いている。今は食材をレシピをセットで宅配してくれるシステムがあるから、それを利用していたらしい。それでも、やはり自分で作るのは億劫なのかもしれない。
「でも、パパ、作れるんでしょ。」
「ああ、うどんとかならな。でも、もう莉子ちゃんに台所ににさわるなって言われてるんだ。」
またか。もっとも気持ちがわからないといえば嘘だが。
脳出血でERに搬送される前に、父が電気ポットをガスコンロにかけてしまい、プラスチックが溶けた、という話は、遼吾を通して聞いたことがある。そういう事があれば、台所をいじってほしくない、という気持ちはわからないでもない。
ただ、父はボケているわけではないから、おそらくその時すでに脳出血がはじまっていたのだろう。何故すぐ病院にかからなかったのか、とは今は思う。
「前に退院したとき2週間くらいいた施設、あるじゃない?これから暑くなるから、涼しくなるまでそういう場所で過ごしたほうが、体にはいい気もするよ。」
「うん、でも、あれすごく高かったんだぞ、確か。」
ち。やっぱりそうか。
「今回は介護認定も通ってるから、そんなに高くならないと思うけどね。」
自宅があるのに、施設に行ってくれ、というのは心苦しい。しかも父は莉子が父を施設に入れるとはあまり思っていない。
しかし、食事のことなどで不安を感じているのは事実らしい。
コオは、少しずつ、父に施設に入る心の準備ができるよう、情報を小出しにしていこう、と決心していた。
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父は再び脳出血を起こしており、ICU入院となった。コオは、父と同居していた妹の莉子は当てにならない、と見切りをつけた。
コオは病院のケースワーカーと話をつけ、自分を連絡先の一つに入れてもらった。
父・莉子のことに加え、夫と通じ合えず孤独感に苦しみ、壊れていくむコオ。
離人症らしき症状がでていたが、コオは泣きながら働き続ける。
コオは、父と面会時に、莉子はパイプオルガンで仕事をしていくつもりだ、と聞いていぶかしく思う。また、
金銭的に恐ろしく莉子が甘やかされていたことを改めて知る。
支えのないままに家族と暮らすことに疲れ切ったコオは職場近くに一人引っ越し、
1日がかりの面会で、父の気持ちを聞き出すことにする。そして、初めて莉子は精神的に病んでいないのか、
と父に問うが、父はそれはない、といった。コオはその時点で聞いた父の言葉をケアマネジャー立石に伝える。
父の退院が近づき、今後のことについて話をするためコオは紅病院のケースワーカー、日辻と病院で面談をする。
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今私が話したことを、箇条書きにしてプリントアウトしてきました、と言って、コオはケースワーカー日辻に差し出した。
「お気持ちはわかりました。そういうことでしたら、そうですね決まり次第、島崎さんにご連絡いたしますので、しばらくお待ちいただけますか?」
「はい…わかりました。」
そのまま、コオは父にあっていくことにした。父の病室は、不思議なことにたびたび移動した。前の部屋は向かいがマンションの壁であまり日当たりが良くなかったが、今の部屋は、かなり陽ががあたっている。温度管理はされているから、今の明るい部屋のほうがいいな、とコオは思った。
父はちょうどリハビリ中で、看護師はその間にベッドのシーツ交換をしている看護師は、コオに少し待っていてください、と言った。
「だいぶお元気になりましたよね!!」
「はい、おかげさまで。ありがとうございます。」
「そういえばね、お父様の靴下がちょっと足りないみたいなんですよ。」
「・・・あの、父の物は・・・同居の妹が全部準備してるんです、すみません。でも、妹が持ってこないようでしたら、私が用意しますが。」
「あら!!ごめんなさい。そうなんですね、妹さん、しばらく見ないんですよねぇ、洗濯物もちょっと溜まっちゃって。」
「・・・すみません。来ないようだったら連絡ください。洗濯物、取りに来ますから。」
コオは看護師にあやまりながら、そういえば、日辻さんも、この2週間は一度も見ていない、と言っていたな、と考えていた。いったい莉子は何をしているのだろう。確かにこの病院はさほど交通の便がいいとは言えないが、コオは週末だけはこれているわけだし、莉子はフルタイム社員ではないのに、何をしてるのだろう。やはりパイプオルガンの練習なんだろうか?
「おお、来てくれたのか。ご苦労さん」
リハビリが終わったらしい父がニコニコしながら部屋に戻ってきた。


