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これまでの話
Battle Day0-Day135 のあらすじは、以下のリンクをご覧ください、
登場人物は右サイドに紹介があります、
Day136-あらすじ
父は再び脳出血を起こしており、ICU入院となった。コオは、父と同居していた妹の莉子は当てにならない、と見切りをつけた。
コオは病院のケースワーカーと話をつけ、自分を連絡先の一つに入れてもらった。
父・莉子のことに加え、夫と通じ合えず孤独感に苦しみ、壊れていくむコオ。
離人症らしき症状がでていたが、コオは泣きながら働き続ける。
コオは、父と面会時に、莉子はパイプオルガンで仕事をしていくつもりだ、と聞いていぶかしく思う。また、
金銭的に恐ろしく莉子が甘やかされていたことを改めて知る。
支えのないままに家族と暮らすことに疲れ切ったコオは職場近くに一人引っ越し、
1日がかりの面会で、父の気持ちを聞き出すことにする。そして、初めて莉子は精神的に病んでいないのか、
と父に問うが、父はそれはない、といった。父は、コオに本やテレホンカードの購入を頼む.
コオはその時点で聞いた父の言葉を立石に伝える。
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ケアマネージャーの立石から連絡があったのはまもなくだった。
今思えば、本来ケアマネージャーは在宅介護の人が対象なのに、立石が定期的に連絡をくれていたのは本当にありがたいことだった。この時点では父は近日中に退院して自宅に戻れる予定だったこともあるが。
「・・・それでお父様はのお気持ちは聞けたのですね。」
「・・・ええ。ただ、これも私からお話しすると、バイアスかかってしまってるかもしれない、とご承知いただいたうえでお話しします。」
コオはそう断りを入れたうえで、父と病院で交わした会話を伝えた。
リハビリする気はある。デイケアも。だから見積もりを取ってくれ、といわれたこと。
自宅に戻ってからの食事に不安を感じているらしいこと。
欲しいものがあっても、莉子には言わず、コオに頼んでいること。
あまり莉子は面会に来ていないらしい、ということも。
「それで、ともかく、立石さんには父が自分の口で気持ちを話すように、と伝えました。」
コオはそう結んだ。
「わかりました。・・・一度お父様とはお話ししないといけませんね。・・・・・実ははそのことなんですが・・・」
立石が言いよどんだ。
「莉子さん、今はとても受け入れられる状態じゃないから、老人保健施設にお父さんをまず預けたい、とのことなんです。」
「・・・またですか・・・」
コオはため息をついた。《今はまだ、落ち着いていないから》《もう少ししたら、なんとかなるから》《今はその時ではないから》このモチーフは、母が亡くなったときから、ずっと繰り返されているものだ。
では、いつになったら落ち着くのだろうか?もう少し、とはどれくらいなのだろうか?コオは今まで何度もそう思った。「その時、なんてきやしねぇよ。」と夫の遼吾はかつて言った。コオも今はそう思う。
「まぁ、今回は、介護認定も通ってますけど・・・」
「老人保健施設は、基本3か月が原則です。でも、3か月したら一旦退院して、もう一度入所も可能です。そうやってつないでいく、という方法もありますよ?」
「派遣社員が、期間をおいて同じ職場に再就職するみたいなもんですね・・・」
父の安定した容態を維持するにはむしろそっちの方がいいのかもしれない、と思いながら、コオは言った。